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14章 十四日目 走ったり揉んだり
14-5 いつもなのかいつもじゃないのかよくわからない午後
しおりを挟む本日最後のコマはプログラミングの授業。
ということで、休み時間に教室からPC室への移動をした。
その途中……。
「あれ? カバントレーニングのおにーさん?」
「え?」
いるはずのない人物がそこにはいた。
今朝駅まで一緒だったジャージの女の子。
なぜかその子が、廊下で俺に声をかけてきた。
今はジャージではなく、うちの学校の制服を身に着けていた。
「あははっ。なんだ、同級生だったんだ」
「は? 同級生? マジで?」
「だっておにーさん二組でしょ? 私四組だもん。って、同級生なのにおにーさんは変か」
おにーさん呼ばわりされたために年下のような気がしていたが、たしかに言われてみればほぼ同年代な感じだ。
「私、卯花。卯花アマンダ。よろしくね」
「俺は黒柳悦郎」
「あ、おにーさんが噂の黒柳悦郎だったんだ。へー、なるほどね」
変かとか言っていたくせに、結局おにーさん呼びに戻っている卯花さん。
というか名前からすると、ハーフかクォーターってとこだろうか。
顔立ちもちょっと異国風だし。
「あ、また悦郎がよそのクラスの女子に手を出してるぞ。誰か麗美さんか咲ちゃんに言いつけろ」
近藤たちが俺を指差し、物騒なことを言い始める。
俺は面倒なことになる前にと、卯花さんに挨拶をしてその場を立ち去った。
「うちのクラス次プログラミングだから。俺もう行くね」
「うん。授業もトレーニングもがんばってね」
ヒラヒラと手をふる卯花さん。
俺も軽く手を振り、その場を離れようとした。
だが……。
「は!?」
卯花さんと偶然遭遇したのは、四組の黒板側にある出入り口。
そこから廊下の奥に向かって進む俺の前方には、四組の後ろ側……ロッカー側にあるもう1つの出入り口がある。
そこから……。
「う、卯花さん?」
「?」
さっき別れたばかりの卯花さんが出てきた。
俺は思わず驚いて、声をかけてしまう。
当の卯花さんは、キョトンとした表情を浮かべてこちらを見ていた。
(あれ?)
微妙な違和感が湧き上がってくる。
さっきまで見ていた顔と、なんだか違う感じが……。
「あー、また悦郎が違う女子に声かけてるー。緑青さんにも言いつけろー」
またしても近藤が妙な言いがかりをつけてきた。
俺は逃げるようにその場を立ち去る。
「よくわからないけどまたね、卯花さん」
「?」
手を振り、俺は足早に立ち去る。
卯花さんは相変わらず何を言われているのかよくわからないような表情を浮かべていた。
そして俺の方も、どうしてそんな顔をされるのかがよくわからなかった。
* * *
そして本日最後の授業プログラミング。
正直、俺にはちんぷんかんぷんだった。
謎に砂川が妙に詳しいのは、なんとなくムカついた。
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