4人の世界から外されたもの達

ユウ

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1章これまでの4人の人生

今までのクマの子の人生

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私は道を歩いている。
可愛い靴でコツコツと。
怖くて歩く事ができなかった。
自分で動こうとしなかった。
でも今こうして歩いている。
自由に道を。走れるし、何もかもが可能になる。
それまでに私の大事な物を捨てたのだった。
皆が歩く事が普通だと思っても私の場合、
それが私にとって幸せな事だった。


産まれてからずっと嫌われていた。
髪の毛は異常な金髪だし、この世界にとって重要(法律的に)な、お面も付けられない。
(顔の半分から上を隠さなければならない。)
なんにせよ、顔が醜いと言われ続けてきた。
家族にさえも。
嫌な人生だと小さい頃から思ってた。
だから、「家系の恥だ。」と学校にさえも行かせてもらえなくて、ずっとずっと一生人と会わないように。と、地下の薄暗くて寒くて悲しい地下牢にしか見えない部屋とも呼べない所に15年間閉じ込められ続けてきた。
手錠とか、足枷とかをつけられて。


15歳の誕生日にいつもは祝って貰えないのに
盛大に祝って貰えて嬉しかった。
愛されることがなかったからホントに心から嬉しかった。
もうこの薄暗くて寒くて悲しい場所じゃなくて、あたたくて、柔らかい部屋にいてもいいんだ。っと思った。
お風呂に入った。もう、何年ぶりだろう。
暖かいシャワーは私の汚い醜い顔を洗い、はぎ落としてくれる気がした。
それに可愛いお洋服も着た。いつもは妹の
ミアナが着ているようなフリフリの黒の
ドレスだった。
何故私の好きな色を知っているのか不思議に思った。
ピカピカの靴も履いて、新品の革の匂いがするバッグを持って。
これら全てがプレゼントかと思った。
いや、プレゼントだが、まだあると思わなかった。
でもさっきとは違う、目の前にキレイに包装された箱があった。
恐る恐る開けた。とてもワクワクする
ドキドキ感。初めて感じた。
開けた中には、お面だった。でも、みんなとは違う、自分の顔が全部覆い隠せるかのようなお面。私ためだけのためのお面。
全部覆い隠せるのは私の顔が醜いからだろう。
でも嬉しかった。何故って、お面があるということは、外に出ていい、という証拠だからだ。
法律で目の模様を縫わなくちゃいけないけれど、私のは口も塗ってあった。
でもほんとに良かった。
それでも親が愛してくれるのなら。

























でも、違った。
親は愛してもくれない。
むしろ、愛する気なんて1ミリも無かった。

私は手錠や、足枷を外されて、学校に行く。
学校は本とかで読んで想像を膨らましていた。
みんなと仲良く、私なんかでも救ってくれるようなそんな場所。
親はくれたばかりのバッグに食べ物とか、服とか、日用品を詰めている。

ー学校で必要なのかな。きっとそうだ。
    そうに違いない。ー

あの頃は信じたかったのだ。親を。まだ愛してくれるって。
でもその希望は一瞬でかき消されたのだ。
ドアを開ける。重くて重厚感があるドア。
私は獣人の中のクマであるのにものすごく身体が小さい。
だからドアが全然開かなくて、結局父が開けた。父は茶色の耳。柔らかそうで優しそうだ。でも私は…何故ムラサキの色なんだろう。
玄関に女の人が立っていた。
にっこりと笑っているが目が笑ってない。
獣人の種類は…オオカミだった。
私はお面をつけて、挨拶をした。
「…こんにちは。」
自分てこんな声だったっけ。と呑気に考えていた。
「可愛いお嬢さん。あなたのお名前は?」
柔らかいけどちょっと怖そうな声。
まるで毒林檎だ。
「…
「ラムアちゃん。これからよろしくね。
私が新しいママよ。これから新しい兄弟達と仲良く暮らして、楽しく学校に行きましょうね。」
頭の中が真っ白になった。
数秒後やっと理解したのだ。
━━━━私は捨てられた。━━━━

恐る恐る後ろを振り返ると、女の人よりも笑ってない冷たい視線と目が合った。
その冷たい視線の持ち主の親は私の同じ背になるようにしゃがみこみ、ギュッと抱きしめてきた。
そして、耳元で
「さよなら。」って。

私はすぐにたって、ぎこちない足取りで走った。
「「待ちなさい!!!!!!」」
大きな声を出して、女の人が走ってくる。
「「ママの言うことが聞けないの!?」」
ーあんなやつ。ママなんかじゃない。ー
何度も振り返りながら一生懸命走った。
喉から血の味がしてくるくらいに。
差がついて、見えなくなって、気がついたら、薄暗くて寒くて悲しい檻みたいな森が広がっていた。
朝なのに太陽がない。

ーああ、ずっとずっと一生私は薄暗い場所から逃げられなくて、暖かくて柔らかい場所には行けないんだ。ー

私は疲れ果て、泣き崩れ、木の根を背もたれにして、座ってずっとずっと泣いていた。

そしたら、男の子が居た。
獣人の種類は…ウサギ?でも耳がたってない。
それに…顔半分から下が隠されていた。
(法律の反対のお面?)
その子に手を引っ張られ、もう1人のウサギの獣人の女の子に会った。
名前は男の子がウルカ。女の子がニスラ。
どちらも優しくて、暖かかった。
もしウルカが手を引っ張ってくれなかったら、一生私は暖かいものに触れられなかった。
ありがとうみんな。私はみんながとても大好きだ。
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