4人の世界から外されたもの達

ユウ

文字の大きさ
2 / 7
1章これまでの4人の人生

今までのウサギの子の人生

しおりを挟む

僕は1人で座っている。
薄暗くて寂しい所で。
隣が奇声をあげて騒いでいる。
皆がその声に顔をしかめる。
男の声が聞こえる。清掃員と呼ばれるものだ。
「ほら、1-36b。行くぞ。今日はお前の番だ。」
女の子の声が聞こえる。
「嫌だ!行きたくない。怖い。行ったら殺されるんでしょ?絶対にやだ。」
言うことを聞かないとどうなるのか分かってる。腕をハサミでかっ切られるのだ。
「「-----------------------------!!!!!!」」
声にならない声が聞こえる。

僕達は捨てられた子供で、女の人に預けられ、施設に行った。
と思ったら、そこは実験室で、
毎日毎日1人ずつ子供が犠牲になっている。
新しい薬の開発とか言って。
いつもいつも奇声が聞こえる。

だから僕達には名前が無い。
僕は産まれて、すぐに預けられたから、
前の名前もない。
その代わり記号で呼ばれるのだ。
僕の記号は4-47f。

僕が捨てられた理由は耳が使えないから。
ウサギなのに。
ホントはアルビノっていう髪が白くなる病気で、視覚も嗅覚も弱いのだが、僕の場合、耳は聞こえるが、ウサギのような機能がない。
耳が立たない。危険も察知できない。
まぁ親も捨てるだろう。
お面がないのは普通だ。
今から殺されるのにお面はいらないと預けられた時に取られるのだ。
僕はマスクをお面代わりとして、つかっていた。
明日にも誰かが犠牲になる毎日。
僕はもう心底疲れていた。
こっそりと抜け出す子は少なくなかった。
だから僕も。
僕の部屋は隣に清掃員がいる。
だからいつもいつも出られなかった。
だから、今日こそは。
僕は料理で使った小麦粉を袋に詰めてそれを清掃員の部屋に投げた。
小麦粉が宙を舞う。
「うわぁ、なんだなんだ!!!!!!ゲホッゲホッ」
よし、上手くいった。僕は高い塀を超えて逃げた。
でも僕の獣人の種類がウサギで良かった。
高い塀も軽々と超えられる。
アルビノで、耳が立たない。たったそれだけの理由で僕は捨てられたんだ。
誰かが耳元で囁く。「この子はきっと、うちの家の子じゃないのよ。だって私たちの誇りである、耳が使えないのよ。」
そんな風に言わないで、僕をちゃんと愛してよ。母さん。



季節が夏で良かった。
僕は森の中で夜を過ごした。
いつも床で寝ていたから草がフワフワのベッドのように思えた。飛んだ馬鹿だ。
その朝、町外れの実験室とは逆方向に街中の方に向かった。
たくさんの食材が並んでいる。僕は生唾を飲み込み、食材を盗ろうとすると、
咄嗟に腕を掴まれた。けど、優しく、暖かかった。
恐る恐る振り返ると女の子がいた。
茶色いロングの優しい笑顔で。
彼女は顔の右上と左下をお面で覆っていた。
僕はシロウサギ。彼女はクロウサギ。
それに…耳が立っていた。
なんかやだな。っと思ってしまった。
「…大丈夫?具合悪そうよ。えっと、ものは盗ってはダメよ。ちゃんと働かないと。
…友達になりましょうよ。あなた、お名前は?」
何故。何故、物を盗ろうとしている奴にそんな優しくするのか分からなかった。
けど友達という魅力的な言葉には、逆らえなかった。
「…友達になりたい。けど、名前が無い。」
「じゃあ、名無しの権兵衛君。私が勝手に住んでる森へ行きましょうか。」
そう言うと、僕の手を優しく引っ張った。
僕は顔を下に向け、嬉しさのあまり、涙がこぼれ落ちるのを必死に我慢していた。


「着いたわよ。」
そこは秘密基地みたいな綺麗な自然が広がっていた。
「ほら、来てよ。怖がらないで。」
天使のような優しい口調で僕に話しかけてくる。
身長は僕より下なのに。
年齢は僕と同じか、下くらいなのに。
僕みたいな耳が使えないような奴とじゃなくて、すごい奴とも遊べるだろうに。
なんで僕に構うのか。
聞きたいことは山ほどある。

「ほら。おいで、一緒に遊ぼう。」
遊ぶ…なんて素敵な響きだ。
彼女はたくさんの僕が欲しいものを知っている気がする。
「…君の名前は?歳はいくつなの。あとなんで僕をここにつれてきたの。」
「そうね。名前は自分から言わないと失礼ね。ごめんなさい。でもレディに年齢を聞くなんてそっちも失礼よ」
彼女は悪戯っぽく笑った。
「だからこれでおあいこ。
私はニスラ。15歳よ。あなたと単純に遊びたいと思って連れてきたの。まぁそれ以外もあるかもしれないけどね。」
…僕と同じ年齢。
それにとても優しい。
僕にとっては同年齢の、僕より背が小さい女の子が天使に見えた。
僕は彼女にひろわれた。
僕達は奇妙なお面同士、仲良く暮らし始めた。



そして、何日か経ち、ニスラは年齢を装って仕事、僕はいつも通り食べられる木の実がないかと森を散策していると、女の子が座っていた。木の下で。奇妙なお面を付けてて。クマの獣人だろうか。ムラサキのクマ耳がついている。
だから声をかけた。僕にニスラがしてくれたように。
「なぁ、大丈夫?」
「…」泣いていたのだろうか。鼻をすする音が聞こえる。
僕みたいに、なにか辛い、心に傷ができるようなことがあったのだろう。
僕はさっきもいだ木の実を1つ渡した。
「おいで、僕達と一緒に遊ぼう。」
手を優しく、引っ張った。以外にもすんなりと着いてきてくれた。
秘密基地に戻るとその女の子は小さく「…わぁ」と呟いた。多分ここの景色が良かったのだろう。
ニスラがちょうど帰ってきた。
「あら。可愛い女の子。背が小さいのね。ほんとに可愛い」
その後もニスラは可愛いしか言わなかった。
女の子は耳が赤くなっていた。
「あなた、お名前は?」
「……ラムア。」
名前があるんだ。いいな。
名前があるって。でも今は僕にも名前がある。
ニスラが本気で考えてくれた。
男なのにその時はニスラの膝の上で泣き崩れたぐらいだ。
「私はニスラよ。」

「僕はラムアだ。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...