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1章これまでの4人の人生
今までのウサギの子の人生
しおりを挟む僕は1人で座っている。
薄暗くて寂しい所で。
隣が奇声をあげて騒いでいる。
皆がその声に顔をしかめる。
男の声が聞こえる。清掃員と呼ばれるものだ。
「ほら、1-36b。行くぞ。今日はお前の番だ。」
女の子の声が聞こえる。
「嫌だ!行きたくない。怖い。行ったら殺されるんでしょ?絶対にやだ。」
言うことを聞かないとどうなるのか分かってる。腕をハサミでかっ切られるのだ。
「「-----------------------------!!!!!!」」
声にならない声が聞こえる。
僕達は捨てられた子供で、女の人に預けられ、施設に行った。
と思ったら、そこは実験室で、
毎日毎日1人ずつ子供が犠牲になっている。
新しい薬の開発とか言って。
いつもいつも奇声が聞こえる。
だから僕達には名前が無い。
僕は産まれて、すぐに預けられたから、
前の名前もない。
その代わり記号で呼ばれるのだ。
僕の記号は4-47f。
僕が捨てられた理由は耳が使えないから。
ウサギなのに。
ホントはアルビノっていう髪が白くなる病気で、視覚も嗅覚も弱いのだが、僕の場合、耳は聞こえるが、ウサギのような機能がない。
耳が立たない。危険も察知できない。
まぁ親も捨てるだろう。
お面がないのは普通だ。
今から殺されるのにお面はいらないと預けられた時に取られるのだ。
僕はマスクをお面代わりとして、つかっていた。
明日にも誰かが犠牲になる毎日。
僕はもう心底疲れていた。
こっそりと抜け出す子は少なくなかった。
だから僕も。
僕の部屋は隣に清掃員がいる。
だからいつもいつも出られなかった。
だから、今日こそは。
僕は料理で使った小麦粉を袋に詰めてそれを清掃員の部屋に投げた。
小麦粉が宙を舞う。
「うわぁ、なんだなんだ!!!!!!ゲホッゲホッ」
よし、上手くいった。僕は高い塀を超えて逃げた。
でも僕の獣人の種類がウサギで良かった。
高い塀も軽々と超えられる。
アルビノで、耳が立たない。たったそれだけの理由で僕は捨てられたんだ。
誰かが耳元で囁く。「この子はきっと、うちの家の子じゃないのよ。だって私たちの誇りである、耳が使えないのよ。」
そんな風に言わないで、僕をちゃんと愛してよ。母さん。
季節が夏で良かった。
僕は森の中で夜を過ごした。
いつも床で寝ていたから草がフワフワのベッドのように思えた。飛んだ馬鹿だ。
その朝、町外れの実験室とは逆方向に街中の方に向かった。
たくさんの食材が並んでいる。僕は生唾を飲み込み、食材を盗ろうとすると、
咄嗟に腕を掴まれた。けど、優しく、暖かかった。
恐る恐る振り返ると女の子がいた。
茶色いロングの優しい笑顔で。
彼女は顔の右上と左下をお面で覆っていた。
僕はシロウサギ。彼女はクロウサギ。
それに…耳が立っていた。
なんかやだな。っと思ってしまった。
「…大丈夫?具合悪そうよ。えっと、ものは盗ってはダメよ。ちゃんと働かないと。
…友達になりましょうよ。あなた、お名前は?」
何故。何故、物を盗ろうとしている奴にそんな優しくするのか分からなかった。
けど友達という魅力的な言葉には、逆らえなかった。
「…友達になりたい。けど、名前が無い。」
「じゃあ、名無しの権兵衛君。私が勝手に住んでる森へ行きましょうか。」
そう言うと、僕の手を優しく引っ張った。
僕は顔を下に向け、嬉しさのあまり、涙がこぼれ落ちるのを必死に我慢していた。
「着いたわよ。」
そこは秘密基地みたいな綺麗な自然が広がっていた。
「ほら、来てよ。怖がらないで。」
天使のような優しい口調で僕に話しかけてくる。
身長は僕より下なのに。
年齢は僕と同じか、下くらいなのに。
僕みたいな耳が使えないような奴とじゃなくて、すごい奴とも遊べるだろうに。
なんで僕に構うのか。
聞きたいことは山ほどある。
「ほら。おいで、一緒に遊ぼう。」
遊ぶ…なんて素敵な響きだ。
彼女はたくさんの僕が欲しいものを知っている気がする。
「…君の名前は?歳はいくつなの。あとなんで僕をここにつれてきたの。」
「そうね。名前は自分から言わないと失礼ね。ごめんなさい。でもレディに年齢を聞くなんてそっちも失礼よ」
彼女は悪戯っぽく笑った。
「だからこれでおあいこ。
私はニスラ。15歳よ。あなたと単純に遊びたいと思って連れてきたの。まぁそれ以外もあるかもしれないけどね。」
…僕と同じ年齢。
それにとても優しい。
僕にとっては同年齢の、僕より背が小さい女の子が天使に見えた。
僕は彼女にひろわれた。
僕達は奇妙なお面同士、仲良く暮らし始めた。
そして、何日か経ち、ニスラは年齢を装って仕事、僕はいつも通り食べられる木の実がないかと森を散策していると、女の子が座っていた。木の下で。奇妙なお面を付けてて。クマの獣人だろうか。ムラサキのクマ耳がついている。
だから声をかけた。僕にニスラがしてくれたように。
「なぁ、大丈夫?」
「…」泣いていたのだろうか。鼻をすする音が聞こえる。
僕みたいに、なにか辛い、心に傷ができるようなことがあったのだろう。
僕はさっきもいだ木の実を1つ渡した。
「おいで、僕達と一緒に遊ぼう。」
手を優しく、引っ張った。以外にもすんなりと着いてきてくれた。
秘密基地に戻るとその女の子は小さく「…わぁ」と呟いた。多分ここの景色が良かったのだろう。
ニスラがちょうど帰ってきた。
「あら。可愛い女の子。背が小さいのね。ほんとに可愛い」
その後もニスラは可愛いしか言わなかった。
女の子は耳が赤くなっていた。
「あなた、お名前は?」
「……ラムア。」
名前があるんだ。いいな。
名前があるって。でも今は僕にも名前がある。
ニスラが本気で考えてくれた。
男なのにその時はニスラの膝の上で泣き崩れたぐらいだ。
「私はニスラよ。」
「僕はラムアだ。」
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