愛理の場合 〜レズビアンサークルの掟〜

本庄こだま

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1.愛理と恭子

愛理という女



 「ハッ❤︎ハァンッ❤︎あ……愛理さんッ……❤︎もうダメ私……イキそッ……❤︎」

 「あン❤︎あぁン❤︎はぁン❤︎いいよ❤︎きてッ❤︎思いきりイッて❤︎」

 土曜日の昼下がり。

 ラブホテルの一室で一心不乱に乱れる二人の女。

 俗に“松葉崩し”と呼ばれる体位で足を絡め、互いに熱く濡れそぼった剥き出しの性器を当てがい、相手に腰をぶつけるように前後に動かす。

 激しい摩擦により二人の陰唇は紅潮し、互いが分泌する愛液が興奮の絶頂へと向かう度にその粘度を増し、ビチャビチャと卑猥な音が室内いっぱいに響く。

  「ダメッ❤︎愛理さんッ❤︎もうイッ……あ~ッ❤︎マンコイクイクイクぅぅ❤︎……あゥッ❤︎❤︎❤︎」

 終始押され気味だった片方の女の身体が大きく仰け反り、腰と膝がガクガクと激しく痙攣する。女はとうとう、自らの体重を支えきれず、力尽きたように仰向けに倒れ込んだ。

 息を荒げ、朦朧とする女を尻目に、もう一方の女「愛理」は不敵に微笑むと、自らの右手中指の指先に唾液を垂らす。

 そして、その指を今まさに“イキたて”の女の、包皮が捲れて限界まで勃起した剥き出しの無防備な陰核に押し当てると、激しく唾液を練り込むように上下にしごき上げた。

 「あ~~ッ❤︎ダメッ❤︎今ダメッ❤︎まだイッてる❤︎クリ気持ちいッ❤︎マンコ死ぬゥ❤︎」

 「ほらイキなさいッ❤︎何度でもッ❤︎レズSEXで狂い死ぬなんて最高じゃない?❤︎❤︎❤︎」

 歯を食いしばり、身悶えする女の必死の抵抗をまるで相手にせず、愛理は容赦なく責め続ける。

 陰核に直接唾液を垂らし潤滑を加えると、今度は掌を押し当て性器全体を包み込むようにすると、小刻みに震わせ刺激を与える。

 すると、女は極めて呆気なく二度目の絶頂を迎えた。

 「イッ……グぅぅ……❤︎アッ❤︎❤︎」

 女はぐったりと全身くまなく脱力し、愛理はその姿を満足げに眺めながら、自らの唾液で汚れた指先を、チュピッと音を鳴らしてしゃぶってみせた。

 夕暮れ時

 ラブホテルから出た二人の女は、駅へと続く道すがらで別れ、その背中を見送った愛理は踵を返し、またラブホテル街の点り始めたネオンの光の中へと歩みを進めていった。



 愛理、29歳。真性レズビアン。

 普段は地元のイタリアンカフェでホール担当のアルバイトをしているフリーターである。
 短大を卒業後、都内の企業に就職するが、恋愛が原因の人間関係で精神を病み1年で退職。
 その後、キャバクラや風俗店勤務などを経て、インターネットのレズビアン交流掲示板やSNS、出会い系サイトでサポート相手を募り、都内で“肉体を売る”ことを生業としている。

 平日は夜、週末は終日、都内へ足を運び掲示板で交渉成立した相手を待つ。

 愛理を買う相手は様々だ。興味本位の女子大生、レズビアンのOL、バイセクシャルの人妻、果てはレズ専風俗嬢まで……。

 レズビアンの世界は狭く、愛理の美貌と卓越したテクニックはネットの評判でたちまち拡散され「大当たりのウリ専レズビアン」として、その界隈では突出した存在として知られていた。

 愛理自身はそんな自分の境遇の変化に、さして反応を示すことは無かった。

 愛理にとって、自らの美貌と肉体は人生における最大の武器であり、肉体関係は常に「求められるもの」であり続けた。故に、パートナーの取捨選択は常に愛理に与えられた権利であり、それはネット上の「ウリ活動」でも変わらない。

 相手側の顔写真の譲渡、金額の設定、合流場所からラブホテルの指定まで、それらを決定する権利はすべて愛理サイドにあった。

 だが、それでもひとたびネットで募集を掛ければ、一晩で何十人というユーザーからの応募があり、愛理はその中から好みの相手を選んでウリ専行為をしているのだ。

 プレイの内容も、基本的には愛理が主導で行われる。
 明確なNG行為は無いが、募集で選ばれた相手は「愛理とのSEXを体験したい」という一点のみを所望し、その対応に反発することは愛理の機嫌を損ねる可能性があるため、素直に従う者が殆どであり、ごく少数の「タチ希望者」は、募集の時点で切られてしまう為、余程のことがない限りは愛理が「ネコ」を演ずることは無かった。

 しかし、そのが、ある夜に起きる。

 恭子との出会いであった。



 その日も愛理は出会い系アプリで募集を掛け、投稿の数分後には10名ほどの返信があった。

 レズ未経験で初体験希望の21歳大学生、ギャル風の遊び慣れた様子の25歳ビアン寄りバイセクシャル、真性レズで歳下好きの38歳看護師……。

 そのすべてに目を通しながら、今夜の「相手」を吟味する愛理。
 身を売る側の立場でありながら、その様はまるで今宵の夜伽を共にする妾を品定めする女帝のようである。

 ここに集まるメッセージ、そのすべてが「自分の肉体を求めている」「自分との性行為を所望している」ーー。

 そう思うと、愛理の中の小さな自尊心と承認欲求が幾許いくばくか満たされ、自身の存在意義を見出せるのだ。

 愛理自身は自らを「色狂い」だと自認しているし、実際に奔放なSEXが好きで堪らない。

 出会ったばかりの、互いに素性も、名前すらも分からない女同士が、白昼からラブホテルにしけこみ、互いの性欲を満たす為に倒錯的な性行為に及ぶ、というシチュエーションをこよなく愛しているし、恋愛よりも目的意識が明確な分とても気楽で有意義な趣味だと思っている。

 ましてやそれで生計を立てられてしまう程に稼ぎに困らないのだから、この行為を慎む理由はない。性欲と、承認欲求と、金銭が満たされ、愛理にとって「ウリ専」は天職だとすら思えていた。

 その中で、一人気になる女を見つけた。

 プロフィールの写真は、目鼻立ちのはっきりとした顔。力強い眼差しに、それを強調するかの様な更に力強い眉。髪は耳にも襟にも掛からない程のベリーショートの黒髪で、前髪をやや左側に捌いている。

 一見すると「美少年」の様な雰囲気もあるが、確かに女性であることは写真から視認できるほどに豊満な胸の膨らみから感じ取れた。

 今までに出会ったことのないタイプの女に、愛理の好奇心が疼いた。

 「恭子……か、ふぅん」

 今宵の相手が決定した。



 都心のとある主要駅、帰宅ラッシュで混雑する改札の前に愛理は立っていた。

 愛理は辺りと手元のスマホ画面を忙しなく交互に見つつ、誰かを探している。

 不意に、スマホ画面に新着メッセージが浮かぶ。

 「今着いたよ。時計前でいいんだよね?」

 そのメッセージに、愛理の鼓動が俄かに高まる。
 ウリを始めてから数年経ってはいるが、確かに相手との初対面は緊張するものである。実際に相手を目の前にした時「私はこれから、この娘とSEXをする」という生々しい実感と快楽への期待が、緊張と興奮を高めることは必然だ。

 しかしこの時、愛理が抱いた緊張の種類は、明らかにそれらとは異なる性質を持っていた。

 恭子は、私を見てどう感じるーー?

 己の外見に絶対的な自信を持つ愛理だが、一つだけコンプレックスと呼べるものがあった。153cmという身長である。

 女性の平均身長としても比較的低い部類に入る愛理の身長。対して、恭子の身長はプロフィールには169cmとあった。女性としては高身長である。

 愛理自身が興味を示す程の端正な顔立ち、それに加えて自身には無い「身長」という武器……。

 愛理は、恐らく生まれて初めての「他人の容姿に対する劣等感」を感じ、その相手に直接会うという事が、今になって恐怖にも似た感情となって彼女の心を包み込んでいた。

 だがそれと同時に、常に「求められる側」であった愛理が、恭子に対しては「求めてしまっている」という事実があった。しかし、愛理自身は認めていない感情である。

 身体の火照りと胸の鼓動が、汗となってジンワリと愛理の身体を濡らす。

 こんな痴態、恭子に見られてはいけないーー。

 なんとか平静を保てるように、大きく息を吸い、ゆっくりと吐いた。

 その時

 「愛理?ゴメンお待たせしちゃって」

 不意に真横から声を掛けられ、驚いたように目を見開いて咄嗟に声の方を向く愛理。

 「あっ……恭子……?」

 「うん、恭子ですっ」

 目を細めて微笑む恭子。まだ緊張からか、瞬きを繰り返してしまう愛理。

 ベリーショートな髪型に薄化粧の目鼻立ちがはっきりとした顔。黒のライダースジャケットにタイトなデニムパンツをブーツインした、ボーイッシュなスタイルの女、恭子。

 腰まであるロングヘアーにメイクを決めた、大きな瞳とぽってりとした唇が特徴の顔。ピンクのファーコートにフリルスカートの、フェミニンなスタイルの女、愛理。

 真逆の女同士が、出会った。

 時間にして僅か数秒だが、互いに見つめ合ったまま動けないままでいた。

 (始まる。始まってしまうーー)

 意を決したように、小さくコクリと頷き、愛理は唾を飲み込むと、無言のまま恭子の手を握り歩き出す。恭子も何も言わず、握り返して愛理の歩き出した方向へと足を進める。

 出会ってものの1分弱で、互いの意思を確認し終えた二人は、足早にホテル街へと姿を消した。
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