愛理の場合 〜レズビアンサークルの掟〜

本庄こだま

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4.肉欲の海原へ

ハプニング・モード



 肌寒い夜の風が、長い黒髪を悪戯に掻き乱して吹き抜けてゆく。

 ヒールを響かせて雑居ビルの地下階段を一歩、また一歩と降りてゆく愛理の胸は、コンクリート壁の冷たい空間とは裏腹に熱くたかぶっていた。

 階段を降り切った先の受付で、若い女に話しかける。

 「あの、19時から史織さんと待ち合わせをしている愛理という者ですが……」

 「あっ、愛理さんですね!そのままお入り下さい!」

 女は手元の名簿を確認すると、笑顔で会釈し愛理に入場を促した。

 愛理が下調べをした結果、この「DEEP LOVERディープ ラヴァー」という店、形態上はバー経営をうたっているものの、その実態はサークルが運営するイベントなどを定期的に催すハプニングバーであるようだった。

 重い防音扉を両手で引き開けると、想像以上に広い空間が愛理の眼前に現れる。

 (すごい……ライブハウスみたい)

 天井に吊るされた照明やスピーカー、バーカウンターの中にある各種酒類のボトルやグラスの鮮やかな煌めき……。

 ただ異質といえば、店内の彼処かしこに配置された、男女の性器を模したであろう卑猥な造形のオブジェと、やはりバーカウンター上に並べられたアダルトグッズの諸々……。

 そして、フロアの奥にある一段高い舞台には、おそらく今宵のイベントで使用されるであろう、大きな黒いレザーマットレスが敷かれていた。

 愛理がドアを開けて入店しても、気付く者はまだいない。
 どうやら営業前のようで、店内にいるのは数名のスタッフらしき人物のみ。明るい照明の下で今宵のイベント設営に勤しんでいた。

 「愛理ちゃん♪」

 背後から声を掛けられ、愛理は一瞬驚いたように肩をすくめる。

 「史織……!」

 平静を装うつもりであったが、愛理の表情には憎悪の色が滲んでいた。

 「そんな怖い顔しないで♪今日は愛理ちゃんにとってスゴく大事な日になるかもなんだからっ❤︎」

 警戒する愛理とは対照的に、ニコニコと笑顔を向ける史織。

 (私にをしておいて……!)

 史織の能天気な調子が、尚更なおさらに愛理を苛立たせた。

 「大事な日?ここ、ハプニングバーよね?アナタが私に何をさせたいのかは知らないけど、くだらない事ならすぐに帰らせてもらうわよ?」

 大きな瞳を一際ひときわ見開き史織を牽制する愛理だが、史織は一切態度を変えずに首を横に振る。

 「ううん、愛理ちゃんは絶対に帰らないわ♪負けず嫌いでプライドの高い愛理ちゃんにの舞台なんだもんっ❤︎」



 20時、店内の照明が薄暗く調整されバーがオープンすると、次々と客が入場する。もちろんこの空間にはレズビアンしかいない。

 フロアに展開されたソファに座り、グラスを片手に寄り添い合う、若いカップル。
 バーカウンターで1人、スタッフと談笑する常連と思しきOL風の女。

 大勢の客がフロア狭しとひしめき合い、その中をあらわにも数名のランジェリー姿のスタッフが、ドリンクを片手に接客に興じて場を盛り上げる。

 愛理はバーカウンターの1番隅の席で、会場の様子を観察していた。

 人目をはばからずキスを交わす女と女。
 2組のカップルは互いのパートナーを交換し合い、抱き合いながら衣服を次々と脱いでゆき、果てには4人とも全裸になって絡まるような愛撫を見せつける。

 次から次に目の前で巻き起こる倒錯的な光景に、愛理は困惑しながらも固唾を呑んで見守っていた。

 (異様すぎるわ……ハプニングバーってこんな……)

 そこには社会通念的な常識などは一切無く、たまたま今夜この空間に集まった女達が、自らの性的欲求を解放するためにを晒し合う、〝肉欲のパーティー〟が催されていた。



 そんな愛理の隣に、1人の女が座る。

 「お姉さんすっごい美人さん……ここ、よく来るんですかぁ?」

 「えっ?あっ……いや」

 黒く焼いた肌に、明るい金髪のロングヘアの片側を耳に掛けた、いかにも〝性に奔放〟という風な女が、ビールグラスを片手に愛理に話しかけてきた。

 思い掛けない声掛けに愛理は困惑し返答に戸惑うが、お構いなしに女は話を続ける。

 「お姉さんひょっとして1人?」

 「ええ、でも今日は……招待されて来たのよ」

 愛理の返答を女はグラスを傾けながら聞いていたが、喉を鳴らしてグラスの中身をあおると、大きな吐息を1つついて感嘆の声を上げた。

 「えっ!?招待ってことはVIPなの?お姉さんヤバイねっ!」

 「そんな……ただ知り合いに呼ばれただけよ。単なる関係者枠みたいなモノで、VIPとかじゃないわ」

 「ふぅん……そっか」

 愛理の言葉に、女は理解したような、していないような、曖昧な反応で空になったグラスを見つめている。

 女が纏う空気は完全に夜のオンナのであり、極めて露出の多いタイトな豹柄のミニドレスからは、豊満かつ瑞々みずみずしい〝オンナの魅力〟が、隠す事もなく晒されていた。

 若く遊び慣れた女の肌、匂い、カラダ……。

 (この娘……)

 初めて訪れたパプニングバーの異様な空気に萎縮していた愛理も、目の前の〝好物〟に思わず生唾を飲み込む。

 足元から胸元へ、舐めるように視線を這わせる。
 
 濡れた唇、ギラギラとした獣のような瞳──。

 (……イケるかも)

 愛理の心に、密やかな〝劣情の火〟が灯された。



 「ハプバーとか初めてなんでしょ?」

 隣に座った女が、グッと顔を寄せる。

 2人の間に漂う、強めの香水とオンナの淫らな匂い。

 「えぇ……初めてよ」

 愛理は女の問いに素直に答える。力強い眼力に負けじと、じっと大きな瞳で見つめ返す。

 それが〝交渉成立〟の合図だった。

 「あッ……」

 女が、愛理の右手を取って指を絡める。他人の温もりに、愛理は思わず目を細めた。

 「で、どうする?奥に……あるけど」

 手を伸ばし、愛理の肩を抱く女。
 愛理の耳元で囁くように最終確認をすると、愛理の顔を覗き込んでその意思を再び問いかける。

 同時に、愛理の右手首を握り、手のひらを自らの股間に押し付ける。

 そこには、ミニドレスの上からでも確認できるほどの硬度を秘めた〝淫らな肉竿〟が存在していた。

 (……!!)

 「どうする……?」

 有無を言わせない女の追求に、愛理は目を瞑り小さく2回頷く。

 薄目を開けた次の瞬間、唇を奪われた。

 ムチュッ……チュパッ……❤︎

 「フーッ❤︎フーッ❤︎」

 「んンッ……んフゥ……❤︎」

 無理矢理ねじ込まれた、長くねっとりと湿った舌。生温かい感触の中で、ピアスの冷たい金属の音がカチッ、と愛理の前歯に響く。

 愛理の口内は瞬く間に、淫らで甘酸っぱいオンナの味に犯されてゆく。

 (あっ……ヤバッ❤︎この味ッ……好きィ……❤︎)

 一度のキスで、愛理はこの〝倒錯的な集団〟の一部に成り果てた。

 ジュルッ……チュッ……パ❤︎

 やっと離れた唇から、唾液の糸がだらりと垂れ下がる。

 のキスをされ、愛理の心と身体は完全に〝モード〟に突入していた。

 「あはッ、ノリノリじゃん❤︎……じゃ、行こっか❤︎」

 「はぁ……はぁ……❤︎」

 女に肩を借りるように、店舗奥のプレイルームへと歩き出す愛理。

 (私って……本当ギャルに弱いわね……❤︎)

 自らのと節操の無さを些か恥じるが、抗い難い〝淫乱の本性〟のたかぶりに、疼く肉体を抑え込む術を持ち合わせてはいない。



 プレイルームはフロアと仕切られたカーテンの奥にあった。
 行きずりの女に手を引かれ足を踏み入れると薄暗い通路があり、湿った熱気が愛理の肌に纏わり付く。

 「一番奥の部屋、借りてるから❤︎」

 「すでに準備万端なのね、誰でもいいからつもりだったのかしら❤︎」

 部屋とは名ばかりの、薄い壁に区切られたスペースが3つばかりあるだけだ。
 1畳よりやや広い程度の極めて狭い空間にはマットレスが敷いてあり、ティッシュ箱、ローション、コンドームが枕元に常備されていた。

 そして驚いたことに、各部屋の扉にはガラス窓が付いており、廊下側から内部の様子が確認できるようになっていた。

 (ここで……本当にするの?)

 先程までその気になっていた愛理だが、想定外の場所にやや尻込みする。

 だが、戸惑いながらも部屋に入ると、女に力任せに抱きしめられ、強引に唇を奪われた。

 「んむッ❤︎ふンッ❤︎……ぅ……❤︎」

 身体から力みが抜け、女に一切の身を委ねる愛理。
 好みのギャルに抱かれ、愛理の心は〝快楽の沼〟へと真っ逆さまに急降下してゆく。

 「ぷはッ❤︎……お姉さん、名前聞いてなかったね」

 「はァ❤︎はァ❤︎……愛理って呼んで……❤︎」

 「愛理ね❤︎ウチ、侑菜ゆなって言うから、ヨロシク❤︎」

 「侑菜ッ❤︎あァッ❤︎んチュッ❤︎」

 侑菜に頬を寄せる愛理。黒く熱い肌の匂いが、愛理の〝欲望〟を刺激する。

 「愛理、脱ごっか❤︎」

 「きてッ❤︎侑菜きてッ❤︎」

 互いに辛抱堪らず、衣服を次々と脱ぎ捨ててゆく。
 そこには情事に挑む恥じらいなどは存在せず、ただいち早く相手のカラダにむしゃぶりつきたい一心の、貪欲でなオンナの本能だけがあった。

 一足早く脱ぎ終わった侑菜は、まだ下着にブーツ姿の愛理をマットに押し倒し、上から覆い被さった。



 「きゃッ……ああンッ!❤︎」

 ジュルッ❤︎ジュルルッ❤︎

 侑菜は押し倒した勢いそのままに、愛理の首筋にしゃぶりつくと、わざとらしく湿った音を立てながら激しくねぶり立てた。

 狭く薄暗い空間で、オンナがオンナの身体を舐める、卑猥な音だけが響く。

 「あァンッ❤︎侑菜ッ……激し……❤︎」

 「ジュル……❤︎愛理って、めっちゃ感度イイね❤︎」

 手荒にブラをまくり上げ、愛理のたわわな白い乳房が弾け出る。
 侑菜は焦らす素振りも見せず、真っ先に右の乳首に食らい付いた。

 チュッ❤︎ヂュル……ッ❤︎

 「おォォッ❤︎乳首ィィッ❤︎」

 暗闇に、愛理の淫らな悲鳴が響き渡る。

 咄嗟に侑菜は人差し指を自らの口元に当てがって、愛理に沈黙を促す。

 「しー……愛理、もうちょい声抑えめで……ね❤︎」

 「おッ……ご、ごめんなさい……んン……❤︎」

 自らの痴態をたしなめられるも、非日常的な空間は愛理の性感度を思いの外たかめていたらしい。

 (はぁッ❤︎この娘……巧い……声出ちゃう……ッ❤︎)

 侑菜は長く柔らかな舌を愛理の胸元に這わせながら、両手の指先を愛理の背中から腰へと、その丸い輪郭をなぞってゆく。
 
 「ふぅぅ……ッ❤︎あはァ❤︎ひィッ❤︎」

 「また声でてるよ?ちょっとイジってるだけじゃん❤︎愛理、超スケベなカラダしてんね❤︎」

 愛理の自慢でもあり最大の武器でもある熟れた美乳。
 それを目の前に有難がる素振りすら見せず、遠慮もなく揉みしだき舐めまくる侑菜。

 歳下ギャルのしつこい乳責めに、愛理はまるで防戦一方となるが、今の愛理は〝責められる悦び〟を甘受していた。

 初めて訪れたパプニングバーで、自分好みの女とのセックスに興じる興奮に、ここに来た当初の目的も忘れてひたすらに身悶えする愛理。

 その時、個室のドアの向こうに人影が見えた。

 「きゃッ……!!」

 愛理は口を抑えながら小さく悲鳴を上げる。
 侑菜もその気配に気付き、愛撫の手を休めてドアの方に目線をやるが、別段気にすることもなくすぐさま乳房を舐めることを再開した。

 「侑菜、待って……!人がいる……!覗いてるの……!」

 愛理の目には、ドアのガラス窓越しにこちらを覗く女の姿がはっきりと映った。それは1人ではなく、2人……いや、3人……。

 覗き込む女たちは声を出さず、代わる代わるにニヤついた〝好奇の目〟で愛理たちの情事をしていた。

 (嫌ッ!顔……見られてるッ!)

 咄嗟とっさに愛理は顔を横に背け、性感に喘ぐ声も唇をつぐんで必死に飲み込もうとする。

 「んンッ……ふゥンッ……❤︎」

 人差し指を噛んで声を殺す愛理だが、侑菜の止まらない責めに吐息が漏れる。

 「見せてあげればいいじゃん❤︎ウチらのスケベなカラミ❤︎」

 侑菜はあっけらかんと言うと、背後の〝見物客〟を気にすることもなく愛理の乳房を舐り続ける。
 心なしか、その責め方は先程までよりもさらに強く、激しかった。

 ズッ……プ……❤︎

 「フーッ❤︎フーッ❤︎くッ……ん"ッ!?❤︎お"ォッ❤︎」

 仄暗ほのぐらい個室の中に、抑えていた愛理の嬌声が一際ひときわ大きく響く。

 (くぁぁ……❤︎指ぃぃ……❤︎)

 乳舐めに気を取られ、すっかり無防備となった下半身を突然襲った快感の一撃。

 侑菜の巧みな愛撫によって充分に潤滑した愛理の〝淫らな花弁〟は、驚くほど容易に2本の指を招き入れてしまった。

 「愛理すご……❤︎エロ汁、マンコから溢れてくるよ……?」

 クチュッ❤︎クチュッ❤︎ジュプッ……❤︎

 侑菜は愛理のパンティにねじ込んだ手首を恥丘に撫でつけるように捏ねくり、粘着質な体液の音を殊更ことさらに響かせる。

 暗い静寂の部屋でその淫猥な音色はやけに大きく響いて聞こえ、愛理は羞恥と快感で顔をくしゃくしゃにして悶える。

 「はンッ❤︎ダメぇッ❤︎侑菜ッ❤︎聞こえちゃうからッ❤︎」

 侑菜の自由にされぬよう、下から抱きつき耳元で必死に訴える愛理。
 だが、侑菜はそんな愛理の願いを無視して手荒に膣内を指で掻き回す。

 クチュッ❤︎クチュッ❤︎クチュッ❤︎

 「ほォォォッ❤︎むゥゥゥゥンンッ❤︎」

 「ほら、腰浮いてきてるよ❤︎愛理、もうイキそ?」

 先程まで恥じらいに懸命に声を殺していた愛理だが、今やそんな事も忘れて侑菜の責めのままに悦楽の味を甘受していた。



 「イッ❤︎イクッ❤︎イキそッ❤︎」

 「いいよ愛理ッ❤︎ほらイキなよッ❤︎のスケベなお姉さま達に、愛理のイクとこ見せつけてやりなッ❤︎」

 ドアガラス越しにこちらを覗く女達は、口を押さえ驚きに目を丸くする者、絶頂への期待に舌舐めずりする者、身体の疼きを抑えられずに自慰行為に耽る者まで反応は様々だ。

 だが、彼女らの頭の中はおそらく一致しており、愛理はその妄想の中の〝被虐者〟として彼女らの欲望を満たしているだろう。

 このオンナと、ヤリたい──。

 「お"ッ❤︎お"ォ❤︎くォッ❤︎あ❤︎あ❤︎あ❤︎イクッ❤︎イクイクイクッ❤︎イッ……クッッ❤︎❤︎❤︎」

 ブリッジするように身体全体をビクンッ、と仰け反らせると、愛理は侑菜の腕に抱かれながら性的絶頂オルガズムに達した。

 「おぉッ❤︎すごッ❤︎マンコ締まるッ❤︎指ッ❤︎喰らいつくッ❤︎抜けないんだけどッ❤︎」

 ヒクヒクと痙攣する愛理の凄まじい膣圧に、侑菜は思わず驚嘆の声を上げる。

 愛理の膣肉から2本の指を無理矢理に引っ張り抜き、すぐさま愛理にねぎらいのキスをする。

 絶頂を迎え感覚が最大限にまで研ぎ澄まされた状態の愛理の肉体に、侑菜のキスは

 「んむゥッ❤︎うンッ❤︎ふゥゥゥッ❤︎」

 キスに込めた侑菜の温もり、匂い、感触のすべてが、メーターの振り切れた愛理のカラダに〝追い討ち〟を掛けた。

 慈しむように優しく抱き寄せ、唇を舌先でなぞりながら一気に口内へねじ込んでやると、愛理は小さく痙攣した。

 「ウソ?キスでイッちゃった?ヤバ❤︎」

 「はーッ❤︎はーッ❤︎うっ……ぉ……❤︎」

 侑菜は愛理の髪を撫でてやりながら、優しく微笑みかける。愛理はトロンと据わり切った目で中空を眺めていた。

 (ダメ……この娘には勝てない……!)

 好みの女を食ってやろうと、ナンパに応じた結果がこの有様。責め好きギャルに身体をとことん責め立てられ、挙げ句の果てにはキスで絶頂する。
 
 (この娘のすべてがカラダにハマっちゃう……責められることをカラダが悦んでる……)

 セックスには〝身体の相性〟というものが重要であり、例えばどんなに技巧に長けた相手でも相性が悪ければ快感は得られないという事は往々にしてあることだ。

 しかるに、愛理と侑菜のセックスの相性は「百点満点」だったのだろう。愛理は本能から、侑菜という女を受け入れてしまっていた。



 「大丈夫?立てそう?」

 「はぁ……んッ……大丈夫……」

 未だに朦朧もうろうとする頭で、侑菜の肩を借りて起き上がる愛理。  
 ゆっくりと衣服を着て、フラフラとした足取りで個室から出てゆく。

 侑菜に腰のあたりを支えられホールへと戻り、先程まで座っていたバーカウンターに再び座るとミネラルウォーターを注文し、プレイ後の渇きを癒すように喉を鳴らして一気に飲み干した。

 「愛理、さっきキスでイッちゃったよね?感じやすいの?」

 「あんなこと初めてよ……自分でもビックリしたわ……」

 乱れた髪を指で梳きながら、愛理は苦笑いで答える。
 理屈でなく、感情でもない。〝オンナ〟として、身体が彼女を受け入れてしまった。

 情けないとも思えるし、恥ずべきこととも思う反面、二十歳ハタチそこそこの小娘に良いように身体を弄ばれてしまう屈辱的なプレイに、得も言われぬ幸福感を抱いてしまっていたのも事実である。

 だがそれと同時に、この〝効き過ぎる媚薬〟のような女に警戒心も抱いていた。

 「ウチら絶対相性いいよね❤︎場所変えてホテル行っちゃう?」

 侑菜は愛理の腕に絡みつき、耳元で甘えた声で囁く。

 「ヤろうよ、さっきの続き……❤︎」

 鼻腔を刺激する若いオンナの甘酸っぱい匂い。絡めた指の湿り。

 (ヤリたい……雰囲気に任せて、欲求に流されてしまいたい……)

 身体が疼く。一度果てたくらいでは、この疼きを抑える事はできない。それは他でもない、愛理自身が誰よりも分かっていた。

 だが愛理は、テーブル下で絡めた侑菜の指をゆっくりと解いた。

 「ダ……ダメよ、私……用事があってここに来たんだから……」

 「えー?じゃあその用事終わったら行こう?」

 「ええ……?」

 上目遣いに逢い引きをねだる侑菜に、愛理は強く断れない。

 (どうする?もういっそ……このまま……)

 愛理が欲望と葛藤していたその時、突如フロアが暗転しステージ上の幕が開く。



 『ご来場の皆さま、お待たせ致しましたー!3ヶ月に一度の大型キャットファイト・イベント〝El Doradoエルドラード〟番外編、特別マッチを行いまーす!』

 ステージ上でマイクを持った女性スタッフが高らかに宣言する。フロア内の客からは一気に歓声が上がり、皆一様にステージに注目していた。

 「エルドラード……?」

 愛理は怪訝けげんそうに、スポットライトで眩しいステージ上を目を細めながら見つめる。

 「そっか、来月開催されるんだよね。El Doradoエルドラード

 愛理の肩に抱き付きながら、侑菜が答える。
 どうやら侑菜は、その聞き慣れぬ言葉の意味する所を知っているようだ。

 「要はキャットファイトの大会なんだけど、ただの女同士の格闘とは違くて、なんてゆーか…………ってカンジ?」

 「イカセ合い……って」

 侑菜の説明で、愛理はあらかたの意味を理解した。

 要するに「El Doradoエルドラード」とは、演者同士の性的なカラミをキャットファイト風に見せる催しのようだ。

 (まさか、史織が私にやらせたいのってコレのこと?)

 愛理は下唇を噛み締める。

 (ふざけないでよ!誰がこんな下品な見せ物……)

 このサークルで昇り詰めるのだ。馴れ合いなんてするつもりは毛頭無い。
 色狂いな女たちの衆目に晒される馬鹿げたショーで、自慢のカラダを安売りするなんて、ありえない──。

 どれだけけがれようと、自分に嘘はつきたくない。媚びへつらうような真似だけは、愛理のプライドが許さなかった。

 『Cランク最上級トップ、〝ペニスキラー〟香織かおり、入場!』

 スタッフのアナウンスと共に、ステージ端のカーテンから1人の女が現れる。

 年齢は20代半ば程、目鼻立ちのハッキリとした彫りの深い顔。
 浅黒い健康的なボディは低身長ながらムチムチと肉付き良く、しっかりとした四肢の太さはパワーを感じさせる。

 黒い極小のマイクロビキニは着るというよりもといった風で、乳輪や陰毛は隠すこともなく露わになっていた。

 「Cランクっていうのは、どういう意味?」

 ステージ上で観客にアピールを続ける香織を横目にしながら、愛理が侑菜にたずねる。
 
 「El Doradoエルドラードは戦績でランク分けされてるの。基本的には同じランク同士で1シーズン戦うんだけど、そのランク内で最上級トップの戦績になると上位ランクとの対戦チャンスが与えられるんだよ」

 「ふぅん、そのチャンスが今日ってワケね」

 「そういうコト♪上位の相手に勝ったら、ランクアップできてギャラも増えるの」

 侑菜の説明から察するに、どうやらこの催しはかなり本格的なイベントのようだった。

 (エロよりもバトルの要素が強いのかしら……?)

 未だに全貌の見えない中、次に現れた女の姿に、愛理は我が目を疑った。

 『続いてAランク2位、〝鉄槍の性戦士〟恭子、入場!』

 「きっ……恭子!?」

 眩ゆい光に包まれたステージの真ん中に、際どいコスチュームを身に纏った恭子が立っていた。
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