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5.El Dorado(エルドラード)
晒されるオンナ
1
21時の西口駅前広場は仕事を終えたサラリーマンやOLで溢れかえっていた。
彼らはまるで海中をただ脇目も振らずに直進する魚群のように、足早に黙々と家路を急ぐ。
そんな黒い人波が何度となく行き交う広場の入り口、アーチ状の車両止めに腰掛けてスマホ画面を操作する女がいた。
歳は20代中頃ほど。
《可奈子さんお疲れさま♬めぐです!今着きました(。・ω・。)ノ》
慌ただしく巡るこの夜の街で、彼女だけが1人、まるで時間が止まったようにスマホの画面に目線を落としたまま、じっとその場を動かずにいた。
彼女は週末にこの界隈で、小遣い稼ぎにウリをするフリーターだ。
時折、都心のビル風の寒さに首を竦めながら、悴む指に白い息を吐きつける。
やがて、もう1人の女が彼女の前に立ち止まる。
こちらは歳の数、30代前半くらい。
眼鏡を掛けた、化粧気のない、野暮ったい女。
2人の女は軽くお辞儀をし合い、一言二言、言葉少なに会話を終えると、手を握り合ってラブホテル街へと歩き出した。
2
円形のベッドの上で縺れ合う裸の女たちは、その艶やかな肌を汗に輝かせながら肉体の快楽を貪り合う。
「はッ❤︎はッ❤︎はッ❤︎あぁ❤︎ゴメンなさいイキそッ❤︎またイクッ❤︎すぐイクぅぅ❤︎」
「あンッ❤︎あンッ❤︎いいよッ❤︎きッ、きてッ❤︎どんどんイッて❤︎いっぱい射精してェェェ❤︎」
「くぅぅッ❤︎あゥッ❤︎❤︎❤︎」
ビュッ❤︎ドプッ❤︎ドクッ……ドクッ……❤︎
女は激しい腰のピストンの末、今宵3度目の絶頂に達した。
「おォ……❤︎すご……❤︎可奈子さん、まだまだ濃ゆゥい……❤︎」
膣から引き抜かれたペニスには、黄ばみがかったような特濃精液がたっぷりとコンドームに注がれて、水風船のようにブラブラと揺れている。
それを指先でプニプニと弄びながら、目を丸くして感嘆の声をあげる。
3度目の射精を終えても女のペニスは未だ硬度を保ち、絶頂の余韻を楽しむような微かな痙攣でヒクヒクと裏スジが脈打つ度に、亀頭の鈴口からは尿道に残った濁り汁が輝いて垂れ落ちる。
「はぁ……❤︎はぁ……❤︎可奈子さん……〝絶倫〟ってヤツ?何発イッても全然萎えないからヤバイ……❤︎」
「ご、ごめんなさい……❤︎めぐさんの膣内すごい気持ちよくて……すぐ出ちゃうんだけど……何度も射精したくなっちゃう……ごめんね、キモチわるいよね、こんなオバさんが……」
彼女は申し訳なさと恥ずかしさで顔を伏せながら、自らの〝抑えられない性欲〟を年下の女に詫びる。
「ううん!全然!ふたなりの人ってみんな性欲強いけどさ、可奈子さんくらい射精の量も、ザーメンの濃さも変わらない人って初めてかも❤︎それってスゴくない?」
そう言うと、「めぐ」と呼ばれたウリ女は射精したばかりのペニスを咥え込み、音を立ててバキュームし始めた。
ジュルッ❤︎ズルルッ❤︎ジュポッ❤︎
「やッ……はァァンッ❤︎めぐさんッ❤︎そ、それダメッ❤︎い、今ッ、イッたばっかだからッ❤︎あゥッ……またイッ……イクッ❤︎❤︎❤︎」
ビュルッ❤︎ドクッ❤︎ドクッ❤︎ドクッ❤︎
「んッ!?うゥン……❤︎まだまだすっごい量……❤︎」
ペニスを咥えて、ものの数秒。お掃除フェラで4度目の射精。
彼女には、その〝絶倫〟がコンプレックスだった。
3
可奈子、34歳。
普段は都立高校の養護教諭、いわば「保健室の先生」と呼ばれる仕事に務めている。
可奈子が〝性欲〟に目覚めたのは小学4年の頃。
2次性徴が訪れ、男女の性に興味を抱き始めたクラスメイトの男子児童らが教室に持ち込んだ、成人雑誌のグラビア写真を見た時だった。
全裸に白いスクールソックスのみを履いたポニーテールの女性は、檻の中で正座をしたまま犬のように鎖に繋がれ、真っ赤な首輪と口枷で肉体の自由を奪われ、涎の糸を床まで垂らしながらこちら側に許しを乞うような潤んだ瞳を向けていた。
そのグラビア写真を見た時、幼い身体が未だかつて経験したことのないような〝強烈な疼き〟を覚えたのを、可奈子は記憶していた。
「いやらしく、汚いもの」という嫌悪ではない、「見てはいけないものを見てしまった」という背徳でもない。
心の奥底からマグマのようにドロドロと沸き上がる、あの時の感情をあえて言うならば、そう……。
〝羨望〟
脳裏にこびりついた、あのグラビアの女性の倒錯的な姿と、媚びるような目線──。
その日の夜、可奈子は生まれて初めて、手淫による射精をおこなった。
4
その後の可奈子はまるで淫魔に取り憑かれたように、暇さえ見つけては手淫に耽った。
皮被りの矮小なペニスを指先でコリコリと揉みしごいてやると、1分も満たずに射精に達した。
可奈子の手淫は場所を選ばず、時には放課後、クラスメイトの体操着や靴下、給食当番用のマスク、リコーダーなどの私物を無断で借用しては、トイレの個室で手淫することもあった。
身近なクラスメイトを妄想の慰みとする優越と背徳、学び舎で手淫に及ぶという非日常的なスリルに、可奈子の性欲は暴走していった。
5
そんな非日常がもはや日常となり、倒錯的な自慰行為に麻痺しきっていた中学3年の夏。
可奈子が普段のように放課後の教室で目当ての女子生徒の私物を物色していた時、その本人と運悪く鉢合わせになってしまった。
部活中であるはずのその女子生徒〝裕香〟は、偶然にも忘れ物を取りに教室へ戻ってきていたのだった。
「何やってんの、アンタ」
「あ……あ……」
可奈子と裕香は特別親しい関係ではなく、普段は必要以外の会話などしたこともない。
可奈子はクラスでも目立たない地味な存在、一方で裕香は交友関係も広く、クラスの中心にあり、バレー部のキャプテンでもあった。
交わることのない仲でただ一方的に、可奈子が彼女に好意を寄せていた。
裕香の、強い嫌悪感と侮蔑を孕んだ視線に、可奈子はその場から一歩も動けず、言葉すらも出てこなかった。
手足が震え、血の気が引き、目眩のように教室の風景がグラグラと揺れ動くのを感じた。
(終わった。もう生きていけない)
自らの〝異常性欲〟が招いた、平穏な生活の終わり。
もう2度と、学校に来られない──。
だが、裕香は笑みを浮かべると、可奈子に近づきその腕を掴んで予想外の提案をしてきた。
「このこと、バラされたくないでしょ?レズの変態ってバレたら、学校来れなくなっちゃうしね」
「あっ……あぐっ……」
可奈子は恐怖に大粒の涙を流しながら、コクコクと首を縦に振る。
「だったらさ、私の言うこと聞いてもらえる?ハダカの写真が欲しいんだけど」
裕香の突然の要求を、可奈子に断れる権利などなかった。
6
追々に知ったことだが、裕香もまた部活の後輩や他校の女子と性的関係を持つレズビアンだったらしい。
人の居ない放課後のトイレの個室で、携帯カメラのシャッター音だけが断片的に鳴り響く。
全裸に剥かれた可奈子は恐怖に怯え、直立不動でたださめざめと落涙し、顔面蒼白のまま床のタイルを見つめていた。
「チンコあるんだね、ふたなりってやつ?あはは!キモッ!」
恐怖で極限にまで縮こまったペニスを指先で雑に弾かれ、カメラに収められながら嘲笑を受ける。
「ほら、後ろ向いてお尻広げてよ」
男性器だけでなく、陰嚢裏の女性器、果ては肛門まで余すところなく撮影される可奈子の恥部。
「じゃ、また明日の放課後ね。来なかったり誰かに言ったら……アンタのやってた事みんなにバラしてあげる」
散々撮影した後、裕香は満足したようにその場を去った。
可奈子は暫時茫然と、全裸のまま立ち尽くしていた。
7
可奈子にとってその後半年間の学校生活は〝彼女の玩具〟としての日々だった。
あの日の出来事がいつ露見するかという恐怖に常に怯え、放課後には裕香の〝性的な遊び〟に翻弄された。
ある日には教室の教卓の上での手淫を命ぜられた。
またある日には、全裸のまま廊下の端から端までの往復を命ぜられた。
さらにある日には、下校途中にある児童公園の砂場で、排泄行為を命ぜられた。
そして、それらはすべて裕香の携帯カメラによって写真及び動画に収められていた。
己が招いた事態といえど、可奈子の精神状態はもはや極限まで追い詰められ、「正常な羞恥心」というものが一体どのようなものであったのかさえ、当時の可奈子には判断できないまでになっていた。
卒業を間近に控えたある日、可奈子は裕香から〝肉体関係〟を求められた。
「ここまで耐えたご褒美にナマでヤラせてあげる。どうせアンタ童貞でしょ?」
好意を寄せていた裕香からのセックスの誘い。
本来ならば訪れるはずもないチャンスだが、可奈子にはそれすらも裕香の「性的ないたぶり」の一つに思えた。
裕香が可奈子のペニスを咥える。同学年の女子がどこで覚えたのか、巧みな舌使いのフェラチオだった事は覚えている。
「んんッ……あッ、あァッ……❤︎」
精神の不安定さとは裏腹に、与えられた快感に呼応し口の中で膨らむ正直な可奈子のペニス。
裕香は唾で自らの女性器を湿らせると、可奈子の勃起したペニスを握って挿入を誘導する。
「ほら、腰出してよ」
促されるままに腰を突き出すと、可奈子のペニスは驚くほど簡単に裕香の膣内にツルンと挿入された。
「ふァッ❤︎あ、コレ……気持ちい……❤︎」
初めて感じる膣内の感触。
視界の下に見える、裕香の端正な顔と細身の肉体。
童貞の喪失。
(セックスしてる。私、セックスしてるんだ)
アダルトビデオで見たように、裕香の膝を抱えて腰を振る可奈子。
だが生挿入の刺激は、可奈子の〝貧弱なペニス〟には強すぎた。
「あッ❤︎あぁッ❤︎イキそッ❤︎もう……出る……❤︎」
ピュッ❤︎ピュルッ❤︎
挿入して30秒ほど、可奈子は呆気なく射精を迎えた。
「えっ?もうイッたの?あっはっは!ウケんだけど!」
射精の余韻にプルプルと震える可奈子の身体の下で、裕香は手を叩いて笑う。
〝ご褒美〟と名付けたこのセックスは、決して可奈子のためではない。
この半年間、可奈子を性玩具として散々に扱ってきた裕香自身が、最後に罪の意識から逃れるために、可奈子に対して無理矢理握らせた〝手切れ金〟であった。
そしてその贖罪は可奈子の射精と同時に完了され、すべては元に戻るはずだった。
「……たい」
「は?」
「まだ……イキたい……❤︎」
8
可奈子のペニスはまだ膣内で確かな硬度を保ってヒクヒクと脈打っている。
「ダメ、もう終わりだから。ちゃんとイッたんでしょ?」
裕香は可奈子の腕を掴んで離れようとするが、体格に勝る可奈子の身体を退ける事は適わない。
クチュッ❤︎クチュッ❤︎クチュッ❤︎
「あッ!?勝手に動かないで……あァッ❤︎」
「あうッ❤︎くゥゥッ❤︎うゥゥッ❤︎」
裕香の言葉を聞かず、不器用に腰を動かし始める可奈子。乱暴に裕香の小ぶりな胸を揉みしだき、無理矢理に唇を重ねた。
「んむッ!?んッ❤︎ん"ンッ❤︎」
「んッ❤︎んむッ❤︎裕香……❤︎好きぃ……❤︎」
ピュルッ❤︎ピュッ❤︎ピュッ❤︎
「んくゥッ❤︎」
ペニスを挿入したまま、2回目の射精。
それでも膣内のペニスは萎える気配を全く見せず、裕香はいよいよ恐怖を抱き始める。
「ホントに!ホントにダメッ!もうっ……離してよッ!」
裕香の本気の拒否を無視して再び腰を振り始める可奈子。先程よりもさらに強く、激しくピストンする。
パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎
「うぐッ、もう……ゴメンッ!謝るからッ!写真も消すからッ!ホントにやめッ……あぐッ❤︎」
執拗なまでの可奈子の責めに、裕香の身体も反応を始める。
可奈子のペニスは膣内の浅い箇所を何度も擦り、裕香の〝弱いトコロ〟を掻き乱していた。
「ふゥッ❤︎あァンッ❤︎イクッ❤︎またイクッ❤︎」
「もうやめてッ❤︎やめてよッ❤︎あゥッ❤︎あダメッ、イクッ❤︎イクイクイクッ❤︎」
交わるはずのなかった2人が、初めてのセックスで同時に果てた。
9
その後、裕香が可奈子に声を掛ける事は無くなった。
クラスの女子のリーダー的存在だった裕香はあの日以来、まるで人が変わってしまったかのように大人しくなり、人目を憚るように学校生活を終え、卒業してから可奈子とは2度と会ってはいない。
あの時、裕香に撮られた写真や動画がその後どうなったのか、そして何より裕香の可奈子に対する本心がどのようなものだったのか、卒業して15年以上経った今となっては、もはや知る由もない。
だが、あの経験が可奈子自身に与えた、自らの性衝動とそれに抗えない自分に対する自己嫌悪は、胸に刺さった刺のように強烈なコンプレックスとなって未だに痛みを帯びている。
可奈子が三十路を過ぎる今に至るまで恋愛関係をもつ特定のパートナーを作ったことが無いのは、自分の性欲が大切な誰かを壊してしまうことを恐れているからに他ならない。
養護教諭として〝学校〟というコンプレックスの根源のような場を職場に選んだのも、無意識に可奈子自身が〝あの日の記憶〟を、新たな風景によって糊塗しようとした結果なのかもしれない。
可奈子は週末になると都心に赴き、レズウリ専の若い女を買い、消える事のない〝劣情の業火〟に、慰め程度の水を掛けては、また悶々とした日々を繰り返していた。
10
夜も更けた下り電車の最後尾車両。
日頃の仕事と、ハードなセックスによる計7度の射精により、可奈子は心地の良い疲労感の微睡みの中にあった。
自らの背負った異常性欲という業のため、人並みの恋愛という〝当たり前の幸せ〟はとっくに諦めているつもりだ。
抗えぬ劣情を自ら慰め、たまの余暇に女を買って人肌の温もりを知る──。
そういう人生を続けていくと、覚悟していた。
ふと、スマホのバイブレーションが夢見心地の可奈子を現実へと呼び覚ます。
(……ん、Healing Angel)
〝Healing Angel〟とは、都内有数のレズビアン専門高級ソープである。
可奈子はそのソープの会員であったが、職場の異動とそれに付随する業務多忙によりここ最近は来店していなかった。
(営業メール……?1年以上行ってないけど)
メールを開封すると、文頭のワードに可奈子は目を留めた。
(え……「El Doradoへのお誘い」……?)
メール本文には、続けてこう書いてある。
《来月より当グループ主催イベント〝El Dorado〟を開催する運びとなりました。会員である可奈子様もご存知かと存じ上げますが、会員有志参加フリーの大会であります。つきましては、当店オーナーである史織より、是非とも可奈子様にご参加を頂きたい旨をお伝えしたく、今回メールを送らせて頂きました》
可奈子も、その存在だけは聞いたことがある。
「最上級ランカーになれば1シーズンの参加報酬で都心にマンションを購入できる」という、破格のギャランティを売り文句にしたセックス・バトル──。
過去に指名したソープ嬢がEl Doradoの参加経験者であり、彼女は最下級ランクで1シーズンのみの出場でありながら、それでも「ソープの稼ぎの3倍貰えた」と豪語していた。
(こんないきなり!?それに……なんで私なんかに……)
突如として舞い込んできた一攫千金のチャンスに、可奈子は喜びよりも戸惑いを感じていた。
(いくらお金がいいからって……大勢の人が見てる前で……セックスだなんて……)
羞恥心や道徳心もあるが、何より養護教諭として世間的には「先生」と呼ばれる立場……。
こんな破廉恥で倒錯的な催しに参加している事が露呈すれば、免職は愚か社会的な制裁さえも免れないだろう。
性欲の暴走により歪んでしまった青春、そしてその後の女としての人生。
(ダメ……繰り返すわけには……)
頭から雑念を振り払おうとする可奈子。
だがそんな理性とは裏腹に、分厚い包皮を纏った卑しい肉茎が俄かに熱い血の廻りを伴ってトクンと疼くのを、可奈子は確かに感じ取っていた。
11
「愛理、ホントにEl Doradoに出るの?」
「ええ、史織に推されてね」
「へぇー、だからこの前来てたんだ。ビックリしたよ」
「それはこっちのセリフ。恭子が出るだなんて聞かされてなかったもの」
愛理がパプニングバーにてEl Doradoへの参戦表明をした翌日、恭子から電話が入る。
恭子は幾分、弾んだような声色で興味津々といった感じに矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「グループは最下級からなんでしょ?対戦相手ってもう決まってるの?ルールはスタンダードかな?」
「もう、いっぺんに色々聞かれても分からないわ。全部未定よ。史織からの連絡はナシ」
愛理は呆れたように、溜め息交じりに恭子を窘める。
しかし実際、愛理の知り得る情報はほとんど無いに等しかった。
「ゴメンゴメン、愛理が参戦するっていうから嬉しくてさ」
「嬉しい?どうして?」
「意地っ張りで負けず嫌いな愛理には最高の舞台じゃん?絶対向いてると思うけどね」
「それって褒めてる?まぁ、でもやるからには負けたくないわ。恭子にもね」
「あははっ、まずはこっちのランクまで上がってきてもらわないとね」
「すぐにいってやるわ。ふふっ、カリ首洗って待ってなさいね?」
電話口で笑い合う2人。
この1ヶ月余り、様々な事があったその節目には常に恭子がいた。
恭子と出会いサークルに参加し、恭子との関係の中で苦境を乗り越えるパワーを貰えた気がする。
愛理にとって、恭子が明確に〝特別な存在〟になり始めていた。
「とりあえず知ってるのは、初試合が来月の18日にあるってコトだけよ」
「そっか。愛理の勇姿、見に行かないとね。それと……」
突然、恭子が口ごもる。
先程までの饒舌とは一転、声色は真剣なトーンで、入念に言葉を選んでいるように窺えた。
「恭子?どうしたのよ」
「愛理……何かあったら、いつでも私に相談して」
「え?どういうこと?」
意味深長な恭子の言葉に、思わず聞き返す愛理。
だが、恭子は多くを語らず、また元の調子の声色に戻っていた。
「んーん、そのまま言葉どおり!あんまり深く考えないで」
「……ふふっ、何よそれ。言われなくても、恭子のことは信頼しているわ」
「よかった。試合、楽しみにしてるから。頑張ってね」
「うん、また色々決まったら教えるわ。ありがとう」
愛理の健闘を祈り、通話を切る恭子。通話の切れたスマホ画面を見つめながら、溜め息をつく。
「はぁ……愛理の方はまだ動きは無いみたいだけど?ケイの思い過ごしじゃない?」
「……史織は何だか急いでる、ARISAの意向なんて今やガン無視って感じ」
サークル事務所が入るマンションの一室、恭子の部屋に、ケイの姿があった。
12
「ARISAは今回のEl Doradoに愛理が参戦するって知らなかった。すべては史織の独断で動いてる。史織は、あの愛理って娘を自分の〝駒〟にしておきたいんでしょう。でもそれはARISAも同じこと。だから、そんな史織の勝手な動きにARISAも今回ばかりはご立腹ってワケ」
ケイは窓際に立ち、都心の繁華街に行き交う人波を眼下に見ながら、自らの見解を語る。
恭子はベッドの縁に腰掛け、ぼんやりとケイの言葉に耳を傾ける。
「史織がARISAの運営方針に不満を抱いているのは前々から分かってた。でも、あの〝愛理〟って娘がサークルに入会してから、随分と動きが露骨みたい」
「あのさ、そもそも私、単なるスカウトだからさぁ、ARISAさんと史織さんがそんな仲だってことすら知らなかったんだけど」
恭子は頭を掻きながら、ケイをジトっとした眼付きで睨む。
厄介ごとを持ち掛けられ、やや不機嫌な様子であったが、愛理に関わる重要事項と聞かされケイを部屋に迎え入れたのだ。
しかし、恭子にはいまいち話の全容が掴めなかった。
ARISAと史織の軋轢はともかく、なぜそこに愛理のEl Doradoへの参戦の問題が絡んでくるのか。
「史織さんは教育係の立場として、愛理のEl Dorado参戦を決定したワケでしょ?ARISAさんだって、普段は現場の運営には口出さない。史織さんに任せてるじゃん。どうして愛理だけ急に……」
恭子の率直な疑問に、ケイは我が意を得たりとばかりに振り向き恭子に近付く。
「そう、問題はそこ。確かに愛理って娘、ARISAは随分と入れ込んでいたみたい。聞いた話だと、愛理が実際に入会する日にも直接会いに行ったんだって?」
「うん。私がスカウトして愛理の担当になったから、ARISAが入会の時には紹介してくれ、って……」
もっと言えば、一番初めに愛理と接触した夜の一部始終を収めたビデオを観せた時から、ARISAは愛理に特別なモノを見出していたように感じる。
「あっ……」
恭子はふと、その時ARISAが言った愛理を評する言葉を思い出した。
そう、ARISA曰く──
「愛理は……〝セックスの天才〟……って」
恭子がポツリと呟く。
その言葉に、ケイが目を見開く。
「それ、ARISAが言ったの?愛理のことを……天才って?」
ケイは心底驚いた様子で恭子に問いただす。
「ARISAが誰かをそうやって評すること、他に聞いた事がない……あの人はいつでも、〝自分最強〟の人だから」
「……愛理はね、ネットの出会い系で有名になった〝伝説のウリ専レズ〟だったから、確かに鳴り物入りでサークルに来たのは分かるよ。私自身も愛理とセックスをして、そのポテンシャルの高さは知ってるつもり。でも、ARISAさんは恐らく〝それ以上の何か〟を愛理に感じているみたいなんだよ。天才でもあり、〝究極のマゾ〟でもある愛理の……」
「……!!」
恭子の話を聞いていたケイは突然、何かに気付いたように口元を抑えて唸った。
「恭子……さ、これはあくまで私の憶測なんだけど」
部屋の空気がピンと張り詰める。普段は冷静で、感情を表に出すことの少ないケイの見せた焦りの表情に、恭子は妙な胸騒ぎを覚えた。
「愛理がこのままEl Doradoに参戦したら、最悪ブッ壊されるかもしれない……」
「はっ……?」
13
年が開けて、愛理は事務所に呼び出されていた。理由はもちろんEl Dorado参戦の件についてである。
応接室のソファに深く座った愛理は、無表情のまま目の前に座る史織の顔を見据えていた。
そんな愛理の様子を、史織は書類に目を通しながらチラリと横目で見て微笑む。
「うふっ、覚悟は決まった……って顔してるわね、愛理ちゃん♪」
「初めから決まってるわよ、そんなの」
あくまでいつも通りに人懐っこく接する史織に対し、愛理は絶対的な一線を画して応じる。
「あらあら、愛理ちゃん、怒ってたら可愛い顔が台無しよ?ま、そんな愛理ちゃんも好きだけど❤︎」
史織は肩を竦めて、呆れたような笑みを浮かべる。
「今日はEl Doradoの大会説明で呼んだんでしょ?さっさと終わらせてよ」
史織の言葉に耳を傾けず、あくまでツンとした態度を崩さない愛理。その催促に、史織はテーブルの上に冊子を置く。
「はい♪これが大会規定と注意事項ね。大したことは書いてないけど、一応目を通しておいて?」
愛理は置かれた冊子を無言で手に取り、パラパラと捲る。3枚分のA4コピー紙に、大会概要やルール説明などが大まかに印刷されていた。
「愛理ちゃんは初参戦だから、1番最下級のEランクよ。このグループで総当たりして、1位になれたらランクアップね」
史織の説明を聞きながら、愛理は冊子の文面を目線で追う。
(試合のルールに……ランク制度と報酬の解説……今のところ、おかしな事は無さそう……)
「……この〝試合前5日間は性行為を禁止する〟っていうのは?」
「性欲の均等を保つためよ♪イカせ合いなんだから、一方がスッキリ、もう一方が悶々としてたら不公平でしょ?セックスもオナニーも禁止よ❤︎」
(試合よりもそっちの方が大変そうね……)
説明を聞き、愛理の顔がやや曇る。
「……まぁいいわ、あとは対戦相手のことね」
「そうっ!愛理ちゃんのお相手なんだけど!」
史織は大袈裟に手を叩き、思い出したように封筒を取り出す。
封筒には、1枚の写真。
「この娘が、私の対戦相手?」
「そっ♪〝可奈子〟ちゃん❤︎」
「……可奈子、ね」
愛理のデビュー戦まで、あと2週間。
21時の西口駅前広場は仕事を終えたサラリーマンやOLで溢れかえっていた。
彼らはまるで海中をただ脇目も振らずに直進する魚群のように、足早に黙々と家路を急ぐ。
そんな黒い人波が何度となく行き交う広場の入り口、アーチ状の車両止めに腰掛けてスマホ画面を操作する女がいた。
歳は20代中頃ほど。
《可奈子さんお疲れさま♬めぐです!今着きました(。・ω・。)ノ》
慌ただしく巡るこの夜の街で、彼女だけが1人、まるで時間が止まったようにスマホの画面に目線を落としたまま、じっとその場を動かずにいた。
彼女は週末にこの界隈で、小遣い稼ぎにウリをするフリーターだ。
時折、都心のビル風の寒さに首を竦めながら、悴む指に白い息を吐きつける。
やがて、もう1人の女が彼女の前に立ち止まる。
こちらは歳の数、30代前半くらい。
眼鏡を掛けた、化粧気のない、野暮ったい女。
2人の女は軽くお辞儀をし合い、一言二言、言葉少なに会話を終えると、手を握り合ってラブホテル街へと歩き出した。
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円形のベッドの上で縺れ合う裸の女たちは、その艶やかな肌を汗に輝かせながら肉体の快楽を貪り合う。
「はッ❤︎はッ❤︎はッ❤︎あぁ❤︎ゴメンなさいイキそッ❤︎またイクッ❤︎すぐイクぅぅ❤︎」
「あンッ❤︎あンッ❤︎いいよッ❤︎きッ、きてッ❤︎どんどんイッて❤︎いっぱい射精してェェェ❤︎」
「くぅぅッ❤︎あゥッ❤︎❤︎❤︎」
ビュッ❤︎ドプッ❤︎ドクッ……ドクッ……❤︎
女は激しい腰のピストンの末、今宵3度目の絶頂に達した。
「おォ……❤︎すご……❤︎可奈子さん、まだまだ濃ゆゥい……❤︎」
膣から引き抜かれたペニスには、黄ばみがかったような特濃精液がたっぷりとコンドームに注がれて、水風船のようにブラブラと揺れている。
それを指先でプニプニと弄びながら、目を丸くして感嘆の声をあげる。
3度目の射精を終えても女のペニスは未だ硬度を保ち、絶頂の余韻を楽しむような微かな痙攣でヒクヒクと裏スジが脈打つ度に、亀頭の鈴口からは尿道に残った濁り汁が輝いて垂れ落ちる。
「はぁ……❤︎はぁ……❤︎可奈子さん……〝絶倫〟ってヤツ?何発イッても全然萎えないからヤバイ……❤︎」
「ご、ごめんなさい……❤︎めぐさんの膣内すごい気持ちよくて……すぐ出ちゃうんだけど……何度も射精したくなっちゃう……ごめんね、キモチわるいよね、こんなオバさんが……」
彼女は申し訳なさと恥ずかしさで顔を伏せながら、自らの〝抑えられない性欲〟を年下の女に詫びる。
「ううん!全然!ふたなりの人ってみんな性欲強いけどさ、可奈子さんくらい射精の量も、ザーメンの濃さも変わらない人って初めてかも❤︎それってスゴくない?」
そう言うと、「めぐ」と呼ばれたウリ女は射精したばかりのペニスを咥え込み、音を立ててバキュームし始めた。
ジュルッ❤︎ズルルッ❤︎ジュポッ❤︎
「やッ……はァァンッ❤︎めぐさんッ❤︎そ、それダメッ❤︎い、今ッ、イッたばっかだからッ❤︎あゥッ……またイッ……イクッ❤︎❤︎❤︎」
ビュルッ❤︎ドクッ❤︎ドクッ❤︎ドクッ❤︎
「んッ!?うゥン……❤︎まだまだすっごい量……❤︎」
ペニスを咥えて、ものの数秒。お掃除フェラで4度目の射精。
彼女には、その〝絶倫〟がコンプレックスだった。
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可奈子、34歳。
普段は都立高校の養護教諭、いわば「保健室の先生」と呼ばれる仕事に務めている。
可奈子が〝性欲〟に目覚めたのは小学4年の頃。
2次性徴が訪れ、男女の性に興味を抱き始めたクラスメイトの男子児童らが教室に持ち込んだ、成人雑誌のグラビア写真を見た時だった。
全裸に白いスクールソックスのみを履いたポニーテールの女性は、檻の中で正座をしたまま犬のように鎖に繋がれ、真っ赤な首輪と口枷で肉体の自由を奪われ、涎の糸を床まで垂らしながらこちら側に許しを乞うような潤んだ瞳を向けていた。
そのグラビア写真を見た時、幼い身体が未だかつて経験したことのないような〝強烈な疼き〟を覚えたのを、可奈子は記憶していた。
「いやらしく、汚いもの」という嫌悪ではない、「見てはいけないものを見てしまった」という背徳でもない。
心の奥底からマグマのようにドロドロと沸き上がる、あの時の感情をあえて言うならば、そう……。
〝羨望〟
脳裏にこびりついた、あのグラビアの女性の倒錯的な姿と、媚びるような目線──。
その日の夜、可奈子は生まれて初めて、手淫による射精をおこなった。
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その後の可奈子はまるで淫魔に取り憑かれたように、暇さえ見つけては手淫に耽った。
皮被りの矮小なペニスを指先でコリコリと揉みしごいてやると、1分も満たずに射精に達した。
可奈子の手淫は場所を選ばず、時には放課後、クラスメイトの体操着や靴下、給食当番用のマスク、リコーダーなどの私物を無断で借用しては、トイレの個室で手淫することもあった。
身近なクラスメイトを妄想の慰みとする優越と背徳、学び舎で手淫に及ぶという非日常的なスリルに、可奈子の性欲は暴走していった。
5
そんな非日常がもはや日常となり、倒錯的な自慰行為に麻痺しきっていた中学3年の夏。
可奈子が普段のように放課後の教室で目当ての女子生徒の私物を物色していた時、その本人と運悪く鉢合わせになってしまった。
部活中であるはずのその女子生徒〝裕香〟は、偶然にも忘れ物を取りに教室へ戻ってきていたのだった。
「何やってんの、アンタ」
「あ……あ……」
可奈子と裕香は特別親しい関係ではなく、普段は必要以外の会話などしたこともない。
可奈子はクラスでも目立たない地味な存在、一方で裕香は交友関係も広く、クラスの中心にあり、バレー部のキャプテンでもあった。
交わることのない仲でただ一方的に、可奈子が彼女に好意を寄せていた。
裕香の、強い嫌悪感と侮蔑を孕んだ視線に、可奈子はその場から一歩も動けず、言葉すらも出てこなかった。
手足が震え、血の気が引き、目眩のように教室の風景がグラグラと揺れ動くのを感じた。
(終わった。もう生きていけない)
自らの〝異常性欲〟が招いた、平穏な生活の終わり。
もう2度と、学校に来られない──。
だが、裕香は笑みを浮かべると、可奈子に近づきその腕を掴んで予想外の提案をしてきた。
「このこと、バラされたくないでしょ?レズの変態ってバレたら、学校来れなくなっちゃうしね」
「あっ……あぐっ……」
可奈子は恐怖に大粒の涙を流しながら、コクコクと首を縦に振る。
「だったらさ、私の言うこと聞いてもらえる?ハダカの写真が欲しいんだけど」
裕香の突然の要求を、可奈子に断れる権利などなかった。
6
追々に知ったことだが、裕香もまた部活の後輩や他校の女子と性的関係を持つレズビアンだったらしい。
人の居ない放課後のトイレの個室で、携帯カメラのシャッター音だけが断片的に鳴り響く。
全裸に剥かれた可奈子は恐怖に怯え、直立不動でたださめざめと落涙し、顔面蒼白のまま床のタイルを見つめていた。
「チンコあるんだね、ふたなりってやつ?あはは!キモッ!」
恐怖で極限にまで縮こまったペニスを指先で雑に弾かれ、カメラに収められながら嘲笑を受ける。
「ほら、後ろ向いてお尻広げてよ」
男性器だけでなく、陰嚢裏の女性器、果ては肛門まで余すところなく撮影される可奈子の恥部。
「じゃ、また明日の放課後ね。来なかったり誰かに言ったら……アンタのやってた事みんなにバラしてあげる」
散々撮影した後、裕香は満足したようにその場を去った。
可奈子は暫時茫然と、全裸のまま立ち尽くしていた。
7
可奈子にとってその後半年間の学校生活は〝彼女の玩具〟としての日々だった。
あの日の出来事がいつ露見するかという恐怖に常に怯え、放課後には裕香の〝性的な遊び〟に翻弄された。
ある日には教室の教卓の上での手淫を命ぜられた。
またある日には、全裸のまま廊下の端から端までの往復を命ぜられた。
さらにある日には、下校途中にある児童公園の砂場で、排泄行為を命ぜられた。
そして、それらはすべて裕香の携帯カメラによって写真及び動画に収められていた。
己が招いた事態といえど、可奈子の精神状態はもはや極限まで追い詰められ、「正常な羞恥心」というものが一体どのようなものであったのかさえ、当時の可奈子には判断できないまでになっていた。
卒業を間近に控えたある日、可奈子は裕香から〝肉体関係〟を求められた。
「ここまで耐えたご褒美にナマでヤラせてあげる。どうせアンタ童貞でしょ?」
好意を寄せていた裕香からのセックスの誘い。
本来ならば訪れるはずもないチャンスだが、可奈子にはそれすらも裕香の「性的ないたぶり」の一つに思えた。
裕香が可奈子のペニスを咥える。同学年の女子がどこで覚えたのか、巧みな舌使いのフェラチオだった事は覚えている。
「んんッ……あッ、あァッ……❤︎」
精神の不安定さとは裏腹に、与えられた快感に呼応し口の中で膨らむ正直な可奈子のペニス。
裕香は唾で自らの女性器を湿らせると、可奈子の勃起したペニスを握って挿入を誘導する。
「ほら、腰出してよ」
促されるままに腰を突き出すと、可奈子のペニスは驚くほど簡単に裕香の膣内にツルンと挿入された。
「ふァッ❤︎あ、コレ……気持ちい……❤︎」
初めて感じる膣内の感触。
視界の下に見える、裕香の端正な顔と細身の肉体。
童貞の喪失。
(セックスしてる。私、セックスしてるんだ)
アダルトビデオで見たように、裕香の膝を抱えて腰を振る可奈子。
だが生挿入の刺激は、可奈子の〝貧弱なペニス〟には強すぎた。
「あッ❤︎あぁッ❤︎イキそッ❤︎もう……出る……❤︎」
ピュッ❤︎ピュルッ❤︎
挿入して30秒ほど、可奈子は呆気なく射精を迎えた。
「えっ?もうイッたの?あっはっは!ウケんだけど!」
射精の余韻にプルプルと震える可奈子の身体の下で、裕香は手を叩いて笑う。
〝ご褒美〟と名付けたこのセックスは、決して可奈子のためではない。
この半年間、可奈子を性玩具として散々に扱ってきた裕香自身が、最後に罪の意識から逃れるために、可奈子に対して無理矢理握らせた〝手切れ金〟であった。
そしてその贖罪は可奈子の射精と同時に完了され、すべては元に戻るはずだった。
「……たい」
「は?」
「まだ……イキたい……❤︎」
8
可奈子のペニスはまだ膣内で確かな硬度を保ってヒクヒクと脈打っている。
「ダメ、もう終わりだから。ちゃんとイッたんでしょ?」
裕香は可奈子の腕を掴んで離れようとするが、体格に勝る可奈子の身体を退ける事は適わない。
クチュッ❤︎クチュッ❤︎クチュッ❤︎
「あッ!?勝手に動かないで……あァッ❤︎」
「あうッ❤︎くゥゥッ❤︎うゥゥッ❤︎」
裕香の言葉を聞かず、不器用に腰を動かし始める可奈子。乱暴に裕香の小ぶりな胸を揉みしだき、無理矢理に唇を重ねた。
「んむッ!?んッ❤︎ん"ンッ❤︎」
「んッ❤︎んむッ❤︎裕香……❤︎好きぃ……❤︎」
ピュルッ❤︎ピュッ❤︎ピュッ❤︎
「んくゥッ❤︎」
ペニスを挿入したまま、2回目の射精。
それでも膣内のペニスは萎える気配を全く見せず、裕香はいよいよ恐怖を抱き始める。
「ホントに!ホントにダメッ!もうっ……離してよッ!」
裕香の本気の拒否を無視して再び腰を振り始める可奈子。先程よりもさらに強く、激しくピストンする。
パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎
「うぐッ、もう……ゴメンッ!謝るからッ!写真も消すからッ!ホントにやめッ……あぐッ❤︎」
執拗なまでの可奈子の責めに、裕香の身体も反応を始める。
可奈子のペニスは膣内の浅い箇所を何度も擦り、裕香の〝弱いトコロ〟を掻き乱していた。
「ふゥッ❤︎あァンッ❤︎イクッ❤︎またイクッ❤︎」
「もうやめてッ❤︎やめてよッ❤︎あゥッ❤︎あダメッ、イクッ❤︎イクイクイクッ❤︎」
交わるはずのなかった2人が、初めてのセックスで同時に果てた。
9
その後、裕香が可奈子に声を掛ける事は無くなった。
クラスの女子のリーダー的存在だった裕香はあの日以来、まるで人が変わってしまったかのように大人しくなり、人目を憚るように学校生活を終え、卒業してから可奈子とは2度と会ってはいない。
あの時、裕香に撮られた写真や動画がその後どうなったのか、そして何より裕香の可奈子に対する本心がどのようなものだったのか、卒業して15年以上経った今となっては、もはや知る由もない。
だが、あの経験が可奈子自身に与えた、自らの性衝動とそれに抗えない自分に対する自己嫌悪は、胸に刺さった刺のように強烈なコンプレックスとなって未だに痛みを帯びている。
可奈子が三十路を過ぎる今に至るまで恋愛関係をもつ特定のパートナーを作ったことが無いのは、自分の性欲が大切な誰かを壊してしまうことを恐れているからに他ならない。
養護教諭として〝学校〟というコンプレックスの根源のような場を職場に選んだのも、無意識に可奈子自身が〝あの日の記憶〟を、新たな風景によって糊塗しようとした結果なのかもしれない。
可奈子は週末になると都心に赴き、レズウリ専の若い女を買い、消える事のない〝劣情の業火〟に、慰め程度の水を掛けては、また悶々とした日々を繰り返していた。
10
夜も更けた下り電車の最後尾車両。
日頃の仕事と、ハードなセックスによる計7度の射精により、可奈子は心地の良い疲労感の微睡みの中にあった。
自らの背負った異常性欲という業のため、人並みの恋愛という〝当たり前の幸せ〟はとっくに諦めているつもりだ。
抗えぬ劣情を自ら慰め、たまの余暇に女を買って人肌の温もりを知る──。
そういう人生を続けていくと、覚悟していた。
ふと、スマホのバイブレーションが夢見心地の可奈子を現実へと呼び覚ます。
(……ん、Healing Angel)
〝Healing Angel〟とは、都内有数のレズビアン専門高級ソープである。
可奈子はそのソープの会員であったが、職場の異動とそれに付随する業務多忙によりここ最近は来店していなかった。
(営業メール……?1年以上行ってないけど)
メールを開封すると、文頭のワードに可奈子は目を留めた。
(え……「El Doradoへのお誘い」……?)
メール本文には、続けてこう書いてある。
《来月より当グループ主催イベント〝El Dorado〟を開催する運びとなりました。会員である可奈子様もご存知かと存じ上げますが、会員有志参加フリーの大会であります。つきましては、当店オーナーである史織より、是非とも可奈子様にご参加を頂きたい旨をお伝えしたく、今回メールを送らせて頂きました》
可奈子も、その存在だけは聞いたことがある。
「最上級ランカーになれば1シーズンの参加報酬で都心にマンションを購入できる」という、破格のギャランティを売り文句にしたセックス・バトル──。
過去に指名したソープ嬢がEl Doradoの参加経験者であり、彼女は最下級ランクで1シーズンのみの出場でありながら、それでも「ソープの稼ぎの3倍貰えた」と豪語していた。
(こんないきなり!?それに……なんで私なんかに……)
突如として舞い込んできた一攫千金のチャンスに、可奈子は喜びよりも戸惑いを感じていた。
(いくらお金がいいからって……大勢の人が見てる前で……セックスだなんて……)
羞恥心や道徳心もあるが、何より養護教諭として世間的には「先生」と呼ばれる立場……。
こんな破廉恥で倒錯的な催しに参加している事が露呈すれば、免職は愚か社会的な制裁さえも免れないだろう。
性欲の暴走により歪んでしまった青春、そしてその後の女としての人生。
(ダメ……繰り返すわけには……)
頭から雑念を振り払おうとする可奈子。
だがそんな理性とは裏腹に、分厚い包皮を纏った卑しい肉茎が俄かに熱い血の廻りを伴ってトクンと疼くのを、可奈子は確かに感じ取っていた。
11
「愛理、ホントにEl Doradoに出るの?」
「ええ、史織に推されてね」
「へぇー、だからこの前来てたんだ。ビックリしたよ」
「それはこっちのセリフ。恭子が出るだなんて聞かされてなかったもの」
愛理がパプニングバーにてEl Doradoへの参戦表明をした翌日、恭子から電話が入る。
恭子は幾分、弾んだような声色で興味津々といった感じに矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「グループは最下級からなんでしょ?対戦相手ってもう決まってるの?ルールはスタンダードかな?」
「もう、いっぺんに色々聞かれても分からないわ。全部未定よ。史織からの連絡はナシ」
愛理は呆れたように、溜め息交じりに恭子を窘める。
しかし実際、愛理の知り得る情報はほとんど無いに等しかった。
「ゴメンゴメン、愛理が参戦するっていうから嬉しくてさ」
「嬉しい?どうして?」
「意地っ張りで負けず嫌いな愛理には最高の舞台じゃん?絶対向いてると思うけどね」
「それって褒めてる?まぁ、でもやるからには負けたくないわ。恭子にもね」
「あははっ、まずはこっちのランクまで上がってきてもらわないとね」
「すぐにいってやるわ。ふふっ、カリ首洗って待ってなさいね?」
電話口で笑い合う2人。
この1ヶ月余り、様々な事があったその節目には常に恭子がいた。
恭子と出会いサークルに参加し、恭子との関係の中で苦境を乗り越えるパワーを貰えた気がする。
愛理にとって、恭子が明確に〝特別な存在〟になり始めていた。
「とりあえず知ってるのは、初試合が来月の18日にあるってコトだけよ」
「そっか。愛理の勇姿、見に行かないとね。それと……」
突然、恭子が口ごもる。
先程までの饒舌とは一転、声色は真剣なトーンで、入念に言葉を選んでいるように窺えた。
「恭子?どうしたのよ」
「愛理……何かあったら、いつでも私に相談して」
「え?どういうこと?」
意味深長な恭子の言葉に、思わず聞き返す愛理。
だが、恭子は多くを語らず、また元の調子の声色に戻っていた。
「んーん、そのまま言葉どおり!あんまり深く考えないで」
「……ふふっ、何よそれ。言われなくても、恭子のことは信頼しているわ」
「よかった。試合、楽しみにしてるから。頑張ってね」
「うん、また色々決まったら教えるわ。ありがとう」
愛理の健闘を祈り、通話を切る恭子。通話の切れたスマホ画面を見つめながら、溜め息をつく。
「はぁ……愛理の方はまだ動きは無いみたいだけど?ケイの思い過ごしじゃない?」
「……史織は何だか急いでる、ARISAの意向なんて今やガン無視って感じ」
サークル事務所が入るマンションの一室、恭子の部屋に、ケイの姿があった。
12
「ARISAは今回のEl Doradoに愛理が参戦するって知らなかった。すべては史織の独断で動いてる。史織は、あの愛理って娘を自分の〝駒〟にしておきたいんでしょう。でもそれはARISAも同じこと。だから、そんな史織の勝手な動きにARISAも今回ばかりはご立腹ってワケ」
ケイは窓際に立ち、都心の繁華街に行き交う人波を眼下に見ながら、自らの見解を語る。
恭子はベッドの縁に腰掛け、ぼんやりとケイの言葉に耳を傾ける。
「史織がARISAの運営方針に不満を抱いているのは前々から分かってた。でも、あの〝愛理〟って娘がサークルに入会してから、随分と動きが露骨みたい」
「あのさ、そもそも私、単なるスカウトだからさぁ、ARISAさんと史織さんがそんな仲だってことすら知らなかったんだけど」
恭子は頭を掻きながら、ケイをジトっとした眼付きで睨む。
厄介ごとを持ち掛けられ、やや不機嫌な様子であったが、愛理に関わる重要事項と聞かされケイを部屋に迎え入れたのだ。
しかし、恭子にはいまいち話の全容が掴めなかった。
ARISAと史織の軋轢はともかく、なぜそこに愛理のEl Doradoへの参戦の問題が絡んでくるのか。
「史織さんは教育係の立場として、愛理のEl Dorado参戦を決定したワケでしょ?ARISAさんだって、普段は現場の運営には口出さない。史織さんに任せてるじゃん。どうして愛理だけ急に……」
恭子の率直な疑問に、ケイは我が意を得たりとばかりに振り向き恭子に近付く。
「そう、問題はそこ。確かに愛理って娘、ARISAは随分と入れ込んでいたみたい。聞いた話だと、愛理が実際に入会する日にも直接会いに行ったんだって?」
「うん。私がスカウトして愛理の担当になったから、ARISAが入会の時には紹介してくれ、って……」
もっと言えば、一番初めに愛理と接触した夜の一部始終を収めたビデオを観せた時から、ARISAは愛理に特別なモノを見出していたように感じる。
「あっ……」
恭子はふと、その時ARISAが言った愛理を評する言葉を思い出した。
そう、ARISA曰く──
「愛理は……〝セックスの天才〟……って」
恭子がポツリと呟く。
その言葉に、ケイが目を見開く。
「それ、ARISAが言ったの?愛理のことを……天才って?」
ケイは心底驚いた様子で恭子に問いただす。
「ARISAが誰かをそうやって評すること、他に聞いた事がない……あの人はいつでも、〝自分最強〟の人だから」
「……愛理はね、ネットの出会い系で有名になった〝伝説のウリ専レズ〟だったから、確かに鳴り物入りでサークルに来たのは分かるよ。私自身も愛理とセックスをして、そのポテンシャルの高さは知ってるつもり。でも、ARISAさんは恐らく〝それ以上の何か〟を愛理に感じているみたいなんだよ。天才でもあり、〝究極のマゾ〟でもある愛理の……」
「……!!」
恭子の話を聞いていたケイは突然、何かに気付いたように口元を抑えて唸った。
「恭子……さ、これはあくまで私の憶測なんだけど」
部屋の空気がピンと張り詰める。普段は冷静で、感情を表に出すことの少ないケイの見せた焦りの表情に、恭子は妙な胸騒ぎを覚えた。
「愛理がこのままEl Doradoに参戦したら、最悪ブッ壊されるかもしれない……」
「はっ……?」
13
年が開けて、愛理は事務所に呼び出されていた。理由はもちろんEl Dorado参戦の件についてである。
応接室のソファに深く座った愛理は、無表情のまま目の前に座る史織の顔を見据えていた。
そんな愛理の様子を、史織は書類に目を通しながらチラリと横目で見て微笑む。
「うふっ、覚悟は決まった……って顔してるわね、愛理ちゃん♪」
「初めから決まってるわよ、そんなの」
あくまでいつも通りに人懐っこく接する史織に対し、愛理は絶対的な一線を画して応じる。
「あらあら、愛理ちゃん、怒ってたら可愛い顔が台無しよ?ま、そんな愛理ちゃんも好きだけど❤︎」
史織は肩を竦めて、呆れたような笑みを浮かべる。
「今日はEl Doradoの大会説明で呼んだんでしょ?さっさと終わらせてよ」
史織の言葉に耳を傾けず、あくまでツンとした態度を崩さない愛理。その催促に、史織はテーブルの上に冊子を置く。
「はい♪これが大会規定と注意事項ね。大したことは書いてないけど、一応目を通しておいて?」
愛理は置かれた冊子を無言で手に取り、パラパラと捲る。3枚分のA4コピー紙に、大会概要やルール説明などが大まかに印刷されていた。
「愛理ちゃんは初参戦だから、1番最下級のEランクよ。このグループで総当たりして、1位になれたらランクアップね」
史織の説明を聞きながら、愛理は冊子の文面を目線で追う。
(試合のルールに……ランク制度と報酬の解説……今のところ、おかしな事は無さそう……)
「……この〝試合前5日間は性行為を禁止する〟っていうのは?」
「性欲の均等を保つためよ♪イカせ合いなんだから、一方がスッキリ、もう一方が悶々としてたら不公平でしょ?セックスもオナニーも禁止よ❤︎」
(試合よりもそっちの方が大変そうね……)
説明を聞き、愛理の顔がやや曇る。
「……まぁいいわ、あとは対戦相手のことね」
「そうっ!愛理ちゃんのお相手なんだけど!」
史織は大袈裟に手を叩き、思い出したように封筒を取り出す。
封筒には、1枚の写真。
「この娘が、私の対戦相手?」
「そっ♪〝可奈子〟ちゃん❤︎」
「……可奈子、ね」
愛理のデビュー戦まで、あと2週間。
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