人妻嬲り

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成熟

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 大学の講堂を抜けると、青や紫、ピンクの花びらをつけたあじさいの花が一面に咲いている。小ぶりな手まり咲きの花に、さっきまで降っていた雨の雫が、にわかに顔を出した日の光に照らされて、宝石のように装飾している。

 天気雨が上がり、急速に青空を取り戻していき、これまでの鬱憤を晴らすように、清々しい晴天へと変わっていった。じとじとした長い梅雨の季節が終わりを告げているようである。

 優花は、大学の講義が終わり、仲良くしている友達4人と一緒に歩いていた。

「優花、合コンあるんだけど行かないかな」

「ごめん。今からアルバイトなんだ~」

 優花は、すまなさそうにして友人の誘いを断った。

「無理無理。優花は、大好きな彼氏のために忙しいもんね。アルバイトって言っても、会社のオーナーの秘書でしょう?そんな大変な仕事、優花じゃなければ勤まらないよ」

「そんなことはないけど……。わたしがミスをすれば、将紀さんに迷惑がかかるし……」

「ねぇ、ねぇ将紀さんって誰?優花の彼氏?」

「知らないの?結構大きな病院とか会社の経営をしている結構有名な人よ」

「あっ、おじさんなのね」

「何言ってるの。まだ、26歳の美男子なんだから。ねぇ、優花」

「あははっ」

 誰もが認める美しい顔立ちだが、だからと言ってさすがに自慢する気にはならない。こういう時には曖昧な返事をするか、話をかえるか、逃げるに限る。

「じゃぁ、わたし、迎えがきているからここで」

 優花は、将紀から合格祝いにプレゼントされたトートバックを肩にかけ、友人達に手を振りながら、走って行った。

 走った先は……さきほど話題に上がった美男子の人。車の外に出て、背中を車に預けながら、優花が来るのを待っている。スマホから顔を上げ、優花を遠目で見る眼差しは、どこまでも甘く、優花を歓びに満たしてくれる。

 ハァ、ハァと息を切らしながら、将紀の前に辿り着くと、

「そんなに急いで来なくてもいいのに」

と、おかしそうに微笑む。だって早く会いたかったから、とはさすがに恥ずかしくて言えない。

「待たせたら悪いと思って。これでも気をつかったんです」

 思いとは別の言葉が、口からスラスラと出る。付き合って四年。年々素直な口が欠けていっているような気がする。目指すは、彼氏の前では素直で可愛い女性なのに。

「それはありがとう。ふふっ」

「なんです?」

「いやぁ、可愛いなっと思って」

 優花の顔がみるみる真っ赤になる。そんな優しい笑みで、その言葉は反則だと思う。この人は付き合ったときから変わらない。いや、知り合ったときから変わらない。

 油断すると、ドキドキするようなセリフを吐き、夢中にさせる。好きで好きでたまらなくて、いつでもそばにいたいと思ってしまう。

「可愛くないです」

 車に乗り込みながら、そんな可愛くない言葉しか出せない自分に呆れる。隣でサングラスをつけ、運転を始める将紀にちらっと視線を移し、優花は至福を感じるのだった。

 


 昨年地域の医療を担っていた病院が赤字経営から抜け出せず、ある病院と統合され、抜本的改革が行われた。その改革がうまくいき、今では高い利益率を誇りながら、地域の医療の信頼を強固のものになろうとしている。

「分析の結果、病院経営はすこぶる順調です。導入を始めたIT化についてもコスト削減にずいぶん役立っているようで何よりです。オーナーも病院長と理事長の手腕を高く評価していますので、今後必要なら、私どもとしても、投資を積極的に行うつもりです。気軽にご相談ください」

 優花の言葉に、緊張の面持ちで座っていた病院長と事務長が、ほっと胸をなで下ろしていた。この病院では、月に一回、事業報告と今後の経営についての会議を開いている。始めの方こそ、将紀が会議を仕切っていたが、最近では、優花がその代わりをすることも多い。そんな優花を将紀は、愛おしそうに見つめていた。

 優花の勢いは止まらず、帰りの車の中でも、スケジュールの確認や他社の進捗状況やトラブル報告、今後の対応など、流れるように話しを続けている。

 優花は、仕事をする際、意識して距離をとるようにしていた。口調も事務的で、常に感情を排して接するように心がけている。それは、将紀の彼女ということで、甘えを見せることは社内秩序上よくないと考えたことと、もし甘えれば、自分自身がまともな仕事はできないと考えたからだ。それでは、将紀の足を引っ張る存在でしかない。

 車が、海沿いにある公園の駐車場に止まる。目の前には、今にも沈みそうな夕日に照らされた海がキラキラと眩い光を浴びながら、波打っていた。目の前をゆったりと走る船が、仕事の疲れを癒やしてくれる。

「まっすぐ会社に戻るのではないのですか?」

 仕事モードそのまま、優花はきょとんと不思議そうにしている。

「せっかく綺麗な夕日が見られそうなんだからちょっと見ていこうよ。ちょっと休憩」

 そう言って微笑む。

 将紀は、車から降りると、自販機に向かい、コーラを二本買うと、優花と一緒にベンチに座った。海風がそよぐと、初夏を思わせるような暑さが和らぎ、気持ちがいい。視線の先から聞こえる船のコトコトという音と、口に入れたコーラの味にほっと心が休まる。

「優花ちゃん、もう立派な秘書だね」

「そんなこと……ないです」

 恋人どうしが仕事のパートナーだと、オンとオフの切り替えが難しい。最近仕事が中心だったこともあり、仕事の時の顔がなかなか抜けない。

「いや、本当にそう思うよ。彼女じゃなくても、絶対秘書としてスカウトしてたよ。こんな優秀な秘書はいない」

「褒めすぎです」

 将紀は、こう見えて仕事には厳しい。その将紀が、褒めるということは、少しは成長したのかなと、嬉しさが込み上げてくる。コーラをゴクッと飲むと、口の中でシュワシュワっと踊っている。

「仕事も大学も慣れて落ち着いてきたし……」

 夕日を背にした将紀の綺麗な顔が、妙にトキメいてしまう。もう何年も一緒にいるのに、時々そう感じさせるときがある。

「そろそろいいかなって……」

 夕日で空全体が真っ赤だからだろうか。将紀の言葉が熱っぽい。将紀の瞳が、優花の瞳をとらえて離さない。

「な、何が……」

 つい口ごもってしまう。コーラを飲んだはずなのに、口の中に乾きを感じる。

「優花ちゃん、ぼくたち婚約しよう。優花ちゃんが、大学を卒業したら結婚しようよ」

「結婚……?」

「あぁ~、結婚だ」

 真っ白になった頭が次第にはっきりしてくると、胸に熱いものがこみ上げてきた。

(あれ……?)

 目の前が滲み、視界がぼやける。

 浮気をしたものは許されないのは許されないのかな……愛される資格はないのかな……。

 ずっと不安だった。美味しい食事を一緒に食べていたときも、バカな話でも笑っていたときも。

 本当は……本当は愛想を尽かされていたのではないか、いつか捨てられるのではないかと心の奥でいつもびくついていた。仕事を夢中で頑張ったのも、その不安をぬぐい、将紀に認められたい一心からだった。

 優花の目から溢れた大粒の涙がツゥーーっと流れ落ちる。

 返事のない優花への慈愛のこもった眼差しに、うるっと涙が溢れてしまう。

「返事は、『はい』か、それとも……

 愛してますって言って『はい』の代わりにするかどっちがいい?」

 手で涙をぬぐい、笑みを浮かべる。

「それ以外の選択の余地は……?」

「ないね」

「愛してます」

 優花を将紀に身を投げ出し、口づけを交わすのだった。








 南川邸の日本庭園は、若葉のみずみずしい緑色が繁り、これから訪れる夏への期待を思わせる。長年仕えている庭師の腕前によって、整然とした美しさに侘びさびといった古来の趣を備えていた。

 庭園に植えられている柘榴や胡桃、黄檗の木は、新緑の可憐な美しい色からより色濃くなった葉に雫が残り、その滴るような美しいさまに目がとまる。

 夜には、燈篭にライトが灯され、幻想的なまでのイルミネーションが、見るものを魅了する。普段は、静かな闇を愛する南川だが、気分やクリスマスなどの行事、秋の紅葉などに合わせて、イルミネーションを灯した。

 久しぶりに雨が上がり、夏を思わせるような日、庭園にライトアップをするよう命じた。人工的な明かりが新緑を照らし、闇が若草色の葉を見事に映えさせ、初夏の装いを美しいものにしていた。

 イルミネーションの光によって、ますます、鈴音の美貌に磨きがかかり、南川は、眩いものをみるようにじっと見つめていた。

 鈴音の透き通るような白い肌に、どす黒い縄が締め付けられ、妖艶ともいうべき裸体に、嗜虐の血が沸き立つのを抑えようがなかった。

 きめの細かい肌は、すでにしっとりと汗をまとい、鈴音は、瞳を潤ませながら喘いでいた。南川の手には、まがましいバラ鞭が握られている。

 南川は鈴音のうしろへまわった。悶えうねる白い尻をソロリと撫で上げた。

「そろそろこの淫らなお尻を叩いて欲しいと思っているだろう?」

「おゆるし……」

 言い終えるひまを与えず、小さく打ち据えた。

「ぁああっ……」

 鈴音は顔をそむけ、おどろに乱した髪で頭を隠した。

 ビシッ!

「ヒイーッ……」

 まるく重たげに脂肪を乗せた鈴音の尻は、鞭で打たれると淫らに揺れている。厚い脂肪層が衝撃を吸収し、熱い痺れだけを体の芯に伝わっている。

 鞭といっても、いろいろな鞭がある。世間のイメージでは、鞭といったら一本鞭だろうが、今南川が手にしているのは、音のわりに痛みの少ないバラ鞭だ。はたきのように割れた牛革が、鈴音のお尻を朱く染めていく。

「いい尻だ、鈴音。もっとみだらに悶えて見せるんだ」

 そんなことを言いながら、南川は充分間合いをとって、鞭打ちの刺戟を味あわせながら、打った。

 ビシッ!  ビシッ!  ビシッ!

「ヒィ、ヒィ、ヒィイイイイイ!]

 雪のように白い尻肌がポウと色づいて、ひとまわり大きくなったように見えた。うっすら浮き出た鞭痕の赤さが悶えにつれてうねるのがすごくエロチックだ。

「おゆるし……」

 鈴音は声を震わせて啼いた。

「ふふふ、感じてきたな」

 ピシッ、ピシッ。

 二度続けざまに打って、ゆるみ切った股の奥をまさぐった。灼けんばかりにたぎっていて、あふれたものが内股を濡らしていた。鞭打ちによって、マゾの鈴音にはたまらない快感を与えていた。

「どうだい、今日の鞭の味は?」

 髪を掴んで顔をガックリ仰向かせた。とろりと油を流したような眼が南川に向けられた。

「身体の奥が、灼けそう……」

 お尻と言わずに身体の奥と言ったのが、実感がこもっていた。

「子宮が燃えるんだろう?」

 鈴音は羞じらいを噴きごぼしつつ、小さくうなずいた。それは子宮を男のもので突きまくられ、熱い精をいっぱいに浴びせられたいというマゾとしての願望をあらわしていた。

(これで孕んだら……)

 最近特に湧き上がる思いが南川の胸をよぎった。自分の子を孕んで大きなお腹をかかえ、透きとおるような肌になった鈴音のしどけない姿を見れば、どれほど至福を感じられるのだろう。

 結婚もそろそろ潮時かもしれん。夫として愛するのも悪くない。

 竹林から爽やかな風が吹き抜け、風にそよぐ枝や若葉の音の涼やかさが、昂ぶる気持ちをほどよく冷ましてくれる。

「したいか」

 あからさまな言葉に羞じ入りつつも、鈴音は小さくうなずき返した。

「わたしの子を孕みたいんだな?」

 鈴音はますます羞じらいに顔を染めながら、ふたたびうなずいた。

「なんだ、そのウズウズしているような声は」

「うそ……」

 鈴音はああっと裸身をうねらせた。この燃え上がった体に鞭をほどこされたらどんなになってしまうか、鈴音はそれがおそろしい。

 南川は汗を吸った鈴音の髪を掻き上げてやりながら、首すじを愛撫し乳首をもてあそんだ。

「旦那さま、もう……」

「いつもより早いじゃないか。我慢がきかないのかね」

 鈴音は消え入りたげにうなずいて、腰を悩ましげにゆさぶった。指を這わせてみると、淫裂はたぎりたって、とめどなく熱湯を吐き出していた。

「昂ぶった鈴音の顔というのは、いつ見ても美しい」

「……おっしゃらないで……死ぬほど羞ずかしゅうございますのに……」

 南川はその首を抱え込んで唇を重ねた。熱い舌が待ち受けたよ絡み絡みついてきた。

 鈴音はもうろうとした瞳をもたげて、

「旦那さま、鈴音は、もう……」

 その声はほとんど恍惚に昇りつめようとして男に訴える声に等しかった。
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