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6話 生徒会長
しおりを挟む1日の授業がおわった。
「あら、モルセット嬢よ」
「ああ、あの噂の……」
「可哀想よね……殿方に浮気されて……」
「新しいお相手は見つかってるのかしら」
「見つかってるんじゃない? あんなに綺麗なんだもの」
「あら、なら次の舞踏会と一緒に来るんじゃない?」
聞こえてくるのはそんな声である。今日は1日中、こんな噂話が聞こえた。1日中好奇の目に晒された。
小さくため息をつきながら、廊下を歩く。もう、帰路につこうとした。その時──
「オリヴィア嬢」
後ろから名前を呼ばれた。
くるりと振り返ると、そこに立ってたのは、私が受けている魔法の授業の先生、ライカ教授であった。
「今、少し時間いいかしら? 少し大切な話があって」
「はい」
なんの話だろうか。ライカ先生は生徒の生活指導を行う先生では無いので、私が何かをやらかしたという訳では無いだろう。例の婚約破棄の話ではないかと思う……ないと思いたい。
ちなみに前回、ライカ先生に呼び出されたのは進路調査の話だった。
ライカ先生に連れてこられたのは、学園長室であった。学園長室の重厚な扉の前に立たされ、息を飲む。
お叱りの話ではないと思っていたが、もしかしたらかなり重要な話かもしれない。
なんだ。本当になんの話だ?
脈が早くなるのを感じる。
コンコンと先生が扉をノックした。
「マルザール先生、失礼致します」
がちゃり。扉を開ける。
重厚感のある机に向かう一人の男性──ゲイチス・マルザール。マルザール家当主の弟であり、この学校の学園長である。何度かパーティーや学園のイベントごとの際に見たことある。かなり筋肉質な男性であり、体格も良い。
「オリヴィア・モルセット嬢を連れてまいりました」
「オリヴィア・モルセットです」
ライカ先生と共に一礼する。
「いきなり呼び出されて緊張してるかな」
学園長は軽く呼びかける。優しい声音に少し安堵する。
ゆっくりと顔をあげる。少し厳つい顔は、顔を穏やかな笑みを浮かべていた。
「まあ重い話じゃない。そこに座ってくれ」
学園長が、ソファを指さす。私は学園長の指示通りに座った。ふかふかとしたソファで、一級品であることがわかる。
ごほんと学園長が咳をひとつした。
「さて、君にお願いがあるんだ」
お願い。なんだろうか。私は話の続きをまつ。
学園長は机の引き出しをがさごそと漁り、1枚書類を出した。
「オリヴィア・モルセット嬢、生徒会長になってくれないか?」
「えっ?」
学園の生徒会長は、学園の顔ともいえる存在だ。代々、成績優秀かつ公爵以上の位の子息子女が務める。
「君の努力はいろんなところで聞いている。責任感も強く、成績も充分だ。君以外に適任者はいないと思っている」
学園長が話を進める。ライカ先生が私の前に書類を持ってきた。
「私もあなたが最適だと思うわ。ちょっと考えてみてちょうだい。
一応、承諾書をお渡ししとくわね」
私はそれを受け取る。質量は軽いものであるが、重く感じた。
「まあ、1ヶ月くらいは余裕あるからゆっくりと考えてくれ。もし、なって貰えるならまた私かライカ先生にその書類を渡してくれ」
その言葉を皮切りに、その場はお開きとなった。私は、先生方に一礼して部屋を出る。
どうしよう。頼られているのは嬉しいので前向きに考えているが、一応家族やフィオナに相談してみようか。
そんなことを思いながら、歩く。深く考え込む間もなく、曲がり角から現れたのは、エドワードとアリスであった。2人は腕を組みながら歩いている。彼らはすぐに私に気がついた。
「お、オリヴィアじゃないか」
ふっと鼻で笑う。アリスもこれ見よがしに、肩を竦めた。
「ごきげんよう、エドワード様。アリス様」
一礼する。
「あら、オリヴィア様。金魚のフンはいないのね」
「金魚のフン……?」
「あら、分からない? 」
「フィオナのこと?」
「そんな名前だったわね」
「今はいないわよ」
金魚のフン……酷い言葉だ。私は断じてフィオナのことは下に見てない。対等な友人として見ている。ふつふつと怒りが湧いてきた。
「あの子は婚約者とかいるのかしら? まあ、あの綺麗な顔だったら玉の輿にも乗れるわよね」
やはり、バカにするようにしてそんなことを言う。
「フィオナは、綺麗だし性格もいいから、とても幸せな結婚ができるわ」
少しイラッとしたので、言い方がきつくなる。アリスはそんな私を見て煽るかのように、口角をあげた。
「あら、そうなのね。ところであなた、どこに行ってたの? 学園長室から出てきたわよね?」
「ええ。学園長室にいたわ」
「あら、なんで? もしかして、お咎めでもあったのかしら?」
「まあ、そんなところね」
ちゃんと話をするのもめんどくさいのではぐらかす。アリスたちはそれを肯定と受け止めたのか、面白そうにしていた。
「じゃあね。私たちこれから忙しいから。エドワードが学園長室に呼ばれてるの」
「ふん、多分生徒会長の申し出だな。先代の生徒会長も、学園長室に呼び出されてお願いされたらしいし」
「さすがだわ。エドワード」
エドワードにうっとりとした瞳を向けるアリス。
生徒会長の申し出があったのは私の方であるが……まあいい。彼の呼び出しの件については私は関係の無い話だ。
げらげらと品のない笑いを廊下に轟かせながら、彼らは私の脇を通り過ぎていった。
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