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好奇心はフラグを建築する
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アンナがオズ王国に移住してから二年の月日が流れていた。
この一年の間に特に変わったことはない。主人公が生活している気配もなければ、冒険者ギルドに主人公の名前もない。
(もしかしたら私が転生したことで物語が変わっているのかも)
それを切に願う。
アンナはハーレムを回避するために、原作のアンナが登録するはずだった冒険者ギルドへの加入をしなかった。
元々戦闘の才能はなかったのだし、戦わなくて良い選択肢があるのなら、余程の戦闘狂でない限り平穏を選ぶだろう。
ハーブ店の店主としてアンナが作る薬の効果は、白魔法士が少ないためパーティに回復要員がいない冒険者たちには好評だ。
「うんうん。やっぱりこの森の薬草が一番成長が早いわね」
鬱蒼と茂る森は太陽の日差しを遮って薄暗くさせるが、木々の間から零れる光をアンナは嫌いじゃなかった。
「妖精でも出そうよね。さすがファンタジーの世界」
コンクリートジャングルで育った加隈杏奈には、自然豊かな光景は絵画の中に入り込んだような不思議な気持ちにさせて、いつでも新鮮に感じる。
「さて、お仕事開始!」
アンナはまた薬草が群生する場所に膝をついて採取を始めた。この世界での薬草は前世と大きな違いはなく、名前から効能まで同じだ。それでも素人だったアンナには大変な勉強量ではあった。
「このくらいでいいかな」
持ってきたバスケットがいっぱいになるまで採取し終えたアンナは、屈んでいた体を天に向けて伸ばす。
「あ~~、意外と重労働~~!」
これから薬草を家庭魔法で洗って乾燥させる。新しい薬が出来るのに必要な日数はそうかからない。魔力を使うので疲労に襲われるが、これが労働。生きるためには必要な働きだ。
「貴族に転生できてたらぐうたら生活するのに~!」
(綺麗なドレスを着て舞踏会や、王子様との運命的な出会い……)
意外とロマンスが好きなアンナは、前世でも今世でも叶わない夢物語を妄想してしまう。
「そんなことあるわけないもの。現実に戻ろうっと」
アンナにはロマンスよりも回避しなければならない未来がある。誰とも進展せずに維持され続けるハーレム要員なんて死んでもゴメンなのだ。
(私は幸せになりたいのよ! 愛し愛されたいのよ!)
その決意に拍車をかけるのは登場キャラクターたちにあった。
戦闘に不向きなミニスカートや、意味もなく強調された谷間や、犯罪スレスレのロリっ子キャラ。
(今考えれば男性向けの異世界ストーリーって、大体がハーレムなのよね……パーティ組むのも大体女キャラだし……。みんな主人公を好きになっちゃうし……。まあ女性向けもイケメンキャラばかりで同じようなものなんだけど。みんな謎に背が高くてムキムキだし)
読者層を考えられて書かれたものなので当たり前なのだが、自分がまさにその一人となると話は別だ。
だからアンナは主人公から魅力がないように思われる格好に変えた。スカートを捨てて、長かった髪はうなじが見えるくらいの短さに切りそろえた。
今の格好は生成り色のシャツに革のベストを羽織って、麻のズボンにブーツを履いている。胸元が見えることもなく、ミニスカートが風で翻ることもない。我ながら完璧な服装だと満足気に鼻を鳴らした。
「さて帰ろう」
今のところ順調な異世界転生だ。
王都の人達は気の良い者ばかりで、生活も一人で暮らしていくには余裕がある。なにより早朝出勤もサービス残業もないスローライフはアンナの憧れた生活だ。
(このまま何事もなく天寿を全う出来ますように)
るんるん、と鼻歌でも歌いだしてしまいそうな軽快さに、家へ帰ってからの昼食を考える余裕まである。
(メアリーさんからもらった新鮮な卵があるからオムレツでも作ろうかな)
森を抜けるため草木をかき分けて出口までの獣道を歩いていると、突然前方から雷が落ちたような光が放たれた。
「え、え、なに!?」
魔物か、それとも恐れられている東の魔女か……。
しかし不思議なことに背筋を凍らせるような嫌な雰囲気は感じない。
(行ってみようか……、もしかしたら虹の精霊かも……)
時たま空にある虹の国から精霊が落ちてくることがあると聞いている。見たことはないが、冒険者の間ではよくある話らしい。なんでも、とんでもないおっちょこちょいな精霊なのだそうだ。
光が輝いた場所まで走り、近くまで来るとこっそりと様子を伺った。そこには地べたに尻もちをついて、頭をさすっている人影がある。
(やっぱり虹の精霊……?)
転生して十七年、魔物を遠くから見たことはあるが、精霊に遭遇するのは初めてだ。
アンナは高鳴る胸を押さえて近づく。
「虹の精霊さん……?」
背格好は男だ。
(もしかして虹の精霊との恋が始まったり)
そんな乙女心がほのかに浮かびながら、いまだ腰を下ろしたままである男に手を伸ばした。
「アンタは……?」
(ん……?)
太陽の光が降り、浮かんでいた影が薄くなっていく。
濡れたカラスのような髪に、黒曜石のような双瞳。トータルコーディネートか? と問いたくなる黒い服……というか既視感のある懐かしい制服。
(まさか……!!!)
差し出した手に重なる肌の色を、アンナは前世で同じように持っていた。
「ここはどこだ?」
(コイツやっぱり主人公だーー!!!!)
望んでもいない運命が目の前に現れ、アンナは泡を吹いて倒れそうになった。
この一年の間に特に変わったことはない。主人公が生活している気配もなければ、冒険者ギルドに主人公の名前もない。
(もしかしたら私が転生したことで物語が変わっているのかも)
それを切に願う。
アンナはハーレムを回避するために、原作のアンナが登録するはずだった冒険者ギルドへの加入をしなかった。
元々戦闘の才能はなかったのだし、戦わなくて良い選択肢があるのなら、余程の戦闘狂でない限り平穏を選ぶだろう。
ハーブ店の店主としてアンナが作る薬の効果は、白魔法士が少ないためパーティに回復要員がいない冒険者たちには好評だ。
「うんうん。やっぱりこの森の薬草が一番成長が早いわね」
鬱蒼と茂る森は太陽の日差しを遮って薄暗くさせるが、木々の間から零れる光をアンナは嫌いじゃなかった。
「妖精でも出そうよね。さすがファンタジーの世界」
コンクリートジャングルで育った加隈杏奈には、自然豊かな光景は絵画の中に入り込んだような不思議な気持ちにさせて、いつでも新鮮に感じる。
「さて、お仕事開始!」
アンナはまた薬草が群生する場所に膝をついて採取を始めた。この世界での薬草は前世と大きな違いはなく、名前から効能まで同じだ。それでも素人だったアンナには大変な勉強量ではあった。
「このくらいでいいかな」
持ってきたバスケットがいっぱいになるまで採取し終えたアンナは、屈んでいた体を天に向けて伸ばす。
「あ~~、意外と重労働~~!」
これから薬草を家庭魔法で洗って乾燥させる。新しい薬が出来るのに必要な日数はそうかからない。魔力を使うので疲労に襲われるが、これが労働。生きるためには必要な働きだ。
「貴族に転生できてたらぐうたら生活するのに~!」
(綺麗なドレスを着て舞踏会や、王子様との運命的な出会い……)
意外とロマンスが好きなアンナは、前世でも今世でも叶わない夢物語を妄想してしまう。
「そんなことあるわけないもの。現実に戻ろうっと」
アンナにはロマンスよりも回避しなければならない未来がある。誰とも進展せずに維持され続けるハーレム要員なんて死んでもゴメンなのだ。
(私は幸せになりたいのよ! 愛し愛されたいのよ!)
その決意に拍車をかけるのは登場キャラクターたちにあった。
戦闘に不向きなミニスカートや、意味もなく強調された谷間や、犯罪スレスレのロリっ子キャラ。
(今考えれば男性向けの異世界ストーリーって、大体がハーレムなのよね……パーティ組むのも大体女キャラだし……。みんな主人公を好きになっちゃうし……。まあ女性向けもイケメンキャラばかりで同じようなものなんだけど。みんな謎に背が高くてムキムキだし)
読者層を考えられて書かれたものなので当たり前なのだが、自分がまさにその一人となると話は別だ。
だからアンナは主人公から魅力がないように思われる格好に変えた。スカートを捨てて、長かった髪はうなじが見えるくらいの短さに切りそろえた。
今の格好は生成り色のシャツに革のベストを羽織って、麻のズボンにブーツを履いている。胸元が見えることもなく、ミニスカートが風で翻ることもない。我ながら完璧な服装だと満足気に鼻を鳴らした。
「さて帰ろう」
今のところ順調な異世界転生だ。
王都の人達は気の良い者ばかりで、生活も一人で暮らしていくには余裕がある。なにより早朝出勤もサービス残業もないスローライフはアンナの憧れた生活だ。
(このまま何事もなく天寿を全う出来ますように)
るんるん、と鼻歌でも歌いだしてしまいそうな軽快さに、家へ帰ってからの昼食を考える余裕まである。
(メアリーさんからもらった新鮮な卵があるからオムレツでも作ろうかな)
森を抜けるため草木をかき分けて出口までの獣道を歩いていると、突然前方から雷が落ちたような光が放たれた。
「え、え、なに!?」
魔物か、それとも恐れられている東の魔女か……。
しかし不思議なことに背筋を凍らせるような嫌な雰囲気は感じない。
(行ってみようか……、もしかしたら虹の精霊かも……)
時たま空にある虹の国から精霊が落ちてくることがあると聞いている。見たことはないが、冒険者の間ではよくある話らしい。なんでも、とんでもないおっちょこちょいな精霊なのだそうだ。
光が輝いた場所まで走り、近くまで来るとこっそりと様子を伺った。そこには地べたに尻もちをついて、頭をさすっている人影がある。
(やっぱり虹の精霊……?)
転生して十七年、魔物を遠くから見たことはあるが、精霊に遭遇するのは初めてだ。
アンナは高鳴る胸を押さえて近づく。
「虹の精霊さん……?」
背格好は男だ。
(もしかして虹の精霊との恋が始まったり)
そんな乙女心がほのかに浮かびながら、いまだ腰を下ろしたままである男に手を伸ばした。
「アンタは……?」
(ん……?)
太陽の光が降り、浮かんでいた影が薄くなっていく。
濡れたカラスのような髪に、黒曜石のような双瞳。トータルコーディネートか? と問いたくなる黒い服……というか既視感のある懐かしい制服。
(まさか……!!!)
差し出した手に重なる肌の色を、アンナは前世で同じように持っていた。
「ここはどこだ?」
(コイツやっぱり主人公だーー!!!!)
望んでもいない運命が目の前に現れ、アンナは泡を吹いて倒れそうになった。
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