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第二章 安土上洛編
魔王降臨
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「幸村さん、どうか『真田丸』を退去してくれませんか?」
石田三成は真剣なまなざしで頭を下げた。
そこは鬼ノ城跡に築かれた難攻不落『真田丸』の一室にある茶室であった。
「石田殿、あなたが謝ることでもないし、俺の決心は変わりません」
真田幸村は静かに言い切った。
畳の上に茶器を滑らせて三成に抹茶を勧めた。
「真田、三成がこれほど頼んでもダメか?」
幸村は無言で首を振り、島左近にも抹茶をふるまった。
神沢優は三成たちにすべてを任せて輸送ヘリで待機している。
「幸村さん、僕たちがこの現代に転生してきたのは何か意味があると思います。ここで篭城すれば自衛隊の通常兵器では持ちこたえられますが、秘密結社<天鴉>は必ず衛星兵器の<天照>を使ってきます。それを防ぐ術はありません。無駄死になります」
三成はその戦略眼で今後の展開を読み切っていた。
もちろん、幸村もそれを予測しているはずである。
「三成、お前は関ヶ原の戦いを何故、起こした? 勝てぬかもしれなくても戦わなくてはいけないと思ったからではないか?」
幸村は痛いところをついてくる。
「そうですね。私も人のことは言えなかったですね」
三成はそう言って破顔した。
静かに立ち上がると、島左近もそれに従った。
「ダメだったようね」
輸送ヘリに戻った時の神沢優の言葉は不思議と優しかった。
三成は晴れやかな表情でそれに答えた。
三人は『真田丸』を退去した。
†
「織田信長である。真田幸村、そなたの命貰い受けにきた」
幸村が茶室で感傷に浸っている間に、物騒ぎな男が訪問してきた。
黒いマントに裏地は真紅、洒落た皮のブーツで畳にすっと立っている。
細面の顔にどじょうひげ、ちょん曲げ姿は相変わらずだ。
「―――お会いするのは初めてですね。信長様」
幸村は再び茶を立てて信長にすすめた。
「近々、大戦がある。そなたの力がいる」
信長は胡坐をかきながら言った。
「それはどのような戦ですか?」
「イエズス会の魔女ベアトリスが復活する」
幸村の表情が変わった。
「―――参りましょう」
魔女ベアトリス、大阪城の戦いもその者のために引き起こされた。
真紅の鎧に身を包んだ幸村はすっくと立ち上がった。
幸村は本当の死に場所を見つけた。
石田三成は真剣なまなざしで頭を下げた。
そこは鬼ノ城跡に築かれた難攻不落『真田丸』の一室にある茶室であった。
「石田殿、あなたが謝ることでもないし、俺の決心は変わりません」
真田幸村は静かに言い切った。
畳の上に茶器を滑らせて三成に抹茶を勧めた。
「真田、三成がこれほど頼んでもダメか?」
幸村は無言で首を振り、島左近にも抹茶をふるまった。
神沢優は三成たちにすべてを任せて輸送ヘリで待機している。
「幸村さん、僕たちがこの現代に転生してきたのは何か意味があると思います。ここで篭城すれば自衛隊の通常兵器では持ちこたえられますが、秘密結社<天鴉>は必ず衛星兵器の<天照>を使ってきます。それを防ぐ術はありません。無駄死になります」
三成はその戦略眼で今後の展開を読み切っていた。
もちろん、幸村もそれを予測しているはずである。
「三成、お前は関ヶ原の戦いを何故、起こした? 勝てぬかもしれなくても戦わなくてはいけないと思ったからではないか?」
幸村は痛いところをついてくる。
「そうですね。私も人のことは言えなかったですね」
三成はそう言って破顔した。
静かに立ち上がると、島左近もそれに従った。
「ダメだったようね」
輸送ヘリに戻った時の神沢優の言葉は不思議と優しかった。
三成は晴れやかな表情でそれに答えた。
三人は『真田丸』を退去した。
†
「織田信長である。真田幸村、そなたの命貰い受けにきた」
幸村が茶室で感傷に浸っている間に、物騒ぎな男が訪問してきた。
黒いマントに裏地は真紅、洒落た皮のブーツで畳にすっと立っている。
細面の顔にどじょうひげ、ちょん曲げ姿は相変わらずだ。
「―――お会いするのは初めてですね。信長様」
幸村は再び茶を立てて信長にすすめた。
「近々、大戦がある。そなたの力がいる」
信長は胡坐をかきながら言った。
「それはどのような戦ですか?」
「イエズス会の魔女ベアトリスが復活する」
幸村の表情が変わった。
「―――参りましょう」
魔女ベアトリス、大阪城の戦いもその者のために引き起こされた。
真紅の鎧に身を包んだ幸村はすっくと立ち上がった。
幸村は本当の死に場所を見つけた。
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