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One phrase.*・゚ .゚・*.
2nd
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「おっ・・・、かぁさ・・・? どうしたの?」
表情があまりに違うもので、アタシも怖くなって声が震えてしまった。
母は包丁でも突き刺してきそうな気を発している。
「煽姫」
「はっ、はい」
不意に呼ばれた自分の名に、「はい」と普通の返事を返してしまう。これも怖さからなのか。
カラオケ、焼肉と2つの店を回って疲れきった足に、この時間の直立はキツいものだ。
アタシはまだ家に入れていない。母の表情に驚いて玄関で突っ立っている。これじゃ、あの囲い共みたいじゃねぇかよ。
溜息が出そうだった。
「貴女、また暴力事件起こしたの?」
その話か。
分かったように目を伏せると、母は察した様で、大きな声を上げ始めた。
「何度言ったら分かるのよ! 貴女には普通の女の子になって欲しいの!」
“普通の女の子”というワードに反応して、伏せていた目をキッと、母を睨む目に変える。
「普通の女の子ってなに。お母さんの普通ってなに? 個性ってもんが誰でもあるんじゃない?」
まだ冷静に、見下した様に告げた。
親との喧嘩は、大体いい方向に行かないと分かっていたから。
「そういう風に考えるのね・・・、貴女は」
母親はアタシを軽蔑した目で見てきた。アタシの全てを批判するように、暗く冷たい目で、アタシの心を突き刺した。
「そんな目で見ること無いでしょ!」
心の傷を埋める様に、つい大きな声が出る。これは仕方ないと、自制心も諦めていた。
「ふぅん、まぁいいわ。もう決めた事だし」
ードクッ
古傷が開く感覚。夥しい血が溢れる、溢れる。でもそれは決して現実ではなくて、あくまでも感覚の話。
この母親、また何を勝手に決めたって言うの?
焦りを隠せない様子を母親は楽しげに見ていた。
「貴女には、転校してもらいます」
え?
一瞬頭が真っ白になった。アタシを天国から引き剥がそうと言うのか。アタシで居られる唯一の場所を奪うのか。
疲れて、その場で立っているのも精一杯の足に、一気に力が入った。ギリギリと、地面を踏み付ける。
怒りは止まらない。だと言うのに、母は。
「さて、次行く学校はここよ? ゆっくりリビングで資料でも眺めましょう」
うふふという妖麗な笑い声が先にリビングへ歩いて行く母親に付きまとった。その笑い声が、母親から発されてるとは思えなかった。
「・・・ふざけんなよ」
スクールバッグをその場にどすっと降ろすと、一気に肩が軽くなった。でも、雰囲気と心だけは、重いままだった。
「ここよ」
先にリビングに着いていた母は、電気も付けず、中央の椅子に足を組んで座っていた。
その机には、大きく資料が広げられている。
「なんて言う学校なの」
リビングの入口に立ったまんまで、問い掛けた。まだ、警戒心を発して。
「貴女のお婆ちゃんが理事を務めている学校よ」
ぺらぺらと資料を開きながら、無気力に答える母。
仕方無く、母とは反対側の席に着くと、母はんふっと笑って資料をこちらに向けてきた。
薄いピンクの表紙に金色の筆記体で書かれた学園の名前を見て、アタシは唖然とする。
「聖・・・、シフルス学園・・・。って」
「そう」
「あの超お嬢様校の?」
「そうよ」
聖シフルス学園とは、女子校ナンバー1と言われた超天才お嬢様学校だった。名門私立で(まぁ今通ってる密流学園も私立なんだけど)、かかるお金は莫大。学園内には、噴水や螺旋階段があるとか・・・。
「・・・嘘でしょ」
頭を抱えてその場に伏せてしまった。
だって単純に考えてみても、こんな喧嘩一筋で生きてきた不良少女がそんな礼儀も細かいお嬢様校行くなんて。
「無理にも程がある」
「まぁ」
母親は驚いた様な喜んだ様な曖昧な表情で、告げた。
「もう明日行ったら夏休みじゃない。夏休みの間に、お婆ちゃんの家に行って、礼儀作法とか全て学んで来なさい? あと、高くてとても寮は入れないから、近くのシェアハウス住んでもらうからね」
ーピシャーン
背後に雷が降ったよ。降るんだね、本当に。
お婆ちゃんがお嬢様校の理事を務めているのは知らなかった。でも、どんな人なのかは知ってる。
常に自分を着飾り、金持ちの如く格好を光らせている。品はあり過ぎ。まだ若くてお婆ちゃんとは言えない年齢だが、その姿から醸し出す雰囲気は魔女に似ていた、事を覚えている。
何せ最後に会ったのが幼少期だったもので。
しかも、寮じゃなくシェアハウスってなに?
「シェアハウスって・・・、どんな所?」
聞くのも恐ろしくて、ビクビクしていた。答えを聞きたく無くて、耳を塞ぎたい気分だ。
「知らない。なんか女性格安って書いてあったから、家事手探してんのかなって思ってさ」
資料を団扇の様に使って顔を扇ぎながら、答えた。
いやいやいや、それ行ったら絶対雑用やらされんじゃん。そんな所に娘入れ込むとは愛が無いのか。
「怪しいじゃんか! そんなの」
「怪しくなんてないわよ~、だって学園に1番近いのよ?」
あ、選んだ理由はそれもあるのか。
「お婆ちゃん家からの登校は駄目なの?」
ここまで来るともう転校する前提の話になってしまっている。
「お婆ちゃんの家10キロ以上離れてるの」
なんで!?
理事長の家ってそんなに離れてるもんなの!?
「お婆ちゃん、今は別荘住みなのよ。しかも本当の家は学園内だし。貴女、学園にずっと住むなんて嫌でしょ?」
それは嫌だ。素直にこくんと頷く。
「じゃ、決まりね」
母は楽しそうだった。娘の更生を願っての笑顔なのかあれは。アタシには鬼畜悪魔にしか見えなかったよ、お母さん。
スキップ気味で自分の部屋に戻ってく母親の鼻歌が段々と遠のいて行く中、明日どうやって転校を告げるか、リビングに1人残り、頭を悩ませていた。
◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◇◆
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙! 重大発表がありますなんて言わなきゃ良かった!
アタシは今日、学校に着いてから、凪絆にこそっと耳打ちした。
ー「ちょっと、重大発表があるんだけど」
ー「ん? OK」
ただそれだけの会話。なのに全校を集めちゃって、軽く全校集会みたいになってる。全校で集まるのなんて多分入学してから1度も無かったのに。
その全校の前に立たされた私は動揺を隠せず、あたふたしていた。
凪絆を見ると、めっちゃ奥で笑いを堪えている。ふざけんなよアイツ。
まぁ、言わなきゃいけない事。と区切りを付けて、大きく深呼吸した。
「アタシ・・・」
全校の目が爛々と光っている。あ、これいい発表だと思われてるな。
「アタシ! 転校する事になった!」
聞こえない人が居ないように、大きな声で叫んだ。なのに、全校は静かで、何も話そうとはしない。
「嘘っ・・・」
その沈黙を破ったのは凪絆だった。
嘘じゃないんだ、ごめん。という思いを込めて、目線を送る。
その一言に合わせて、全校が嘆き出した。
中には本当に泣いてる子もいた。
「そんな、アタシの為に泣かれちゃ。アタシも泣けちゃうじゃんかよぉ・・・!」
凪絆はこちらに走って向かって来ていた。大泣きして顔をぐちゃぐちゃにしてさ。
ったく、情けないの。なんて思えないほど、私も涙が溢れていた。
「凪絆」
もう少しでアタシの所へ辿り着きそうなので、そう呟くと、凪絆はぎゅっと私に飛び付いた。
固く固く抱き締めて、離さない。
耳元では、凪絆の子供らしい泣き声が聞こえた。
「煽姫! アンタ勝手すぎ!」
そう大声を上げると、またわんわんと泣き出す。
「ごめん・・・、ゴメンね」
2人で全校の前で抱きしめ合い、大泣きしたさ。全校の皆も、本当に、本当に、・・・ごめん。
◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◇◆
その日の帰りはしっかり母が迎えに来た。また昨日の様に夜遅くにならないように、挙句の果てに帰ってこない可能性も考えたのだろう。
アタシが玄関から出た時、全校の皆も玄関に集合していた。まだ、皆泣いている。
車の中では、その柄の悪さに顔を顰める母がいた。車の扉の前に立つと、今1度、後ろを振り返って。
「皆! また絶対! 返ってくるから!」
振り返る時に飛び散った涙は、宝石の様に輝き、地面に降り注いだ。
そう叫んだ後に、ウオオオオオという歓声が響く。女子達は、皆手を振ってくれていた。
やっぱり離れたくないなぁ。
最高の天国だよ、此処は。
「・・・私の天国、守り続けてよね」
誰にも届かないその呟きは、歓声と母の言葉によってかき消された。
車の窓がウィーンと開くと、機嫌の悪そうな母親が口を開く。
「いい加減早く乗りなさいよ」
相変わらずの様子に溜息が出る。
「はいはい」
まあ確かにいつまでもこんな別れの言葉続けてたら切りがない。
アタシは、最後は何も言わず、車に乗り込んだ。車の中には、アタシの衣服やらなんやらが詰め込まれている。
「ねぇ、まさか直行なの?」
「・・・そうよ。当然」
そう言ってから、すぐ車は猛スピードで走り出した。後ろを振り向くと、凪絆が地面に座り込んで泣いている。
「お母さん、いい友達でしょ?」
母は、ふんっと鼻を鳴らすと、バックミラー越しに私を見詰めて。
「柄以外はね」
と、認めてくれた。
それだけで嬉しかった。アタシは最後の涙を静かに流した。
これから始まる生活の何1つを知らない。ただ、“最悪”でないことを願うのみ。
ポジティブに行こう。
お嬢様が喧嘩強いってのも面白いものだよ。
私は知らなかった。
吸血妃と呼ばれたアタシが、まさか本物の・・・・・・。
表情があまりに違うもので、アタシも怖くなって声が震えてしまった。
母は包丁でも突き刺してきそうな気を発している。
「煽姫」
「はっ、はい」
不意に呼ばれた自分の名に、「はい」と普通の返事を返してしまう。これも怖さからなのか。
カラオケ、焼肉と2つの店を回って疲れきった足に、この時間の直立はキツいものだ。
アタシはまだ家に入れていない。母の表情に驚いて玄関で突っ立っている。これじゃ、あの囲い共みたいじゃねぇかよ。
溜息が出そうだった。
「貴女、また暴力事件起こしたの?」
その話か。
分かったように目を伏せると、母は察した様で、大きな声を上げ始めた。
「何度言ったら分かるのよ! 貴女には普通の女の子になって欲しいの!」
“普通の女の子”というワードに反応して、伏せていた目をキッと、母を睨む目に変える。
「普通の女の子ってなに。お母さんの普通ってなに? 個性ってもんが誰でもあるんじゃない?」
まだ冷静に、見下した様に告げた。
親との喧嘩は、大体いい方向に行かないと分かっていたから。
「そういう風に考えるのね・・・、貴女は」
母親はアタシを軽蔑した目で見てきた。アタシの全てを批判するように、暗く冷たい目で、アタシの心を突き刺した。
「そんな目で見ること無いでしょ!」
心の傷を埋める様に、つい大きな声が出る。これは仕方ないと、自制心も諦めていた。
「ふぅん、まぁいいわ。もう決めた事だし」
ードクッ
古傷が開く感覚。夥しい血が溢れる、溢れる。でもそれは決して現実ではなくて、あくまでも感覚の話。
この母親、また何を勝手に決めたって言うの?
焦りを隠せない様子を母親は楽しげに見ていた。
「貴女には、転校してもらいます」
え?
一瞬頭が真っ白になった。アタシを天国から引き剥がそうと言うのか。アタシで居られる唯一の場所を奪うのか。
疲れて、その場で立っているのも精一杯の足に、一気に力が入った。ギリギリと、地面を踏み付ける。
怒りは止まらない。だと言うのに、母は。
「さて、次行く学校はここよ? ゆっくりリビングで資料でも眺めましょう」
うふふという妖麗な笑い声が先にリビングへ歩いて行く母親に付きまとった。その笑い声が、母親から発されてるとは思えなかった。
「・・・ふざけんなよ」
スクールバッグをその場にどすっと降ろすと、一気に肩が軽くなった。でも、雰囲気と心だけは、重いままだった。
「ここよ」
先にリビングに着いていた母は、電気も付けず、中央の椅子に足を組んで座っていた。
その机には、大きく資料が広げられている。
「なんて言う学校なの」
リビングの入口に立ったまんまで、問い掛けた。まだ、警戒心を発して。
「貴女のお婆ちゃんが理事を務めている学校よ」
ぺらぺらと資料を開きながら、無気力に答える母。
仕方無く、母とは反対側の席に着くと、母はんふっと笑って資料をこちらに向けてきた。
薄いピンクの表紙に金色の筆記体で書かれた学園の名前を見て、アタシは唖然とする。
「聖・・・、シフルス学園・・・。って」
「そう」
「あの超お嬢様校の?」
「そうよ」
聖シフルス学園とは、女子校ナンバー1と言われた超天才お嬢様学校だった。名門私立で(まぁ今通ってる密流学園も私立なんだけど)、かかるお金は莫大。学園内には、噴水や螺旋階段があるとか・・・。
「・・・嘘でしょ」
頭を抱えてその場に伏せてしまった。
だって単純に考えてみても、こんな喧嘩一筋で生きてきた不良少女がそんな礼儀も細かいお嬢様校行くなんて。
「無理にも程がある」
「まぁ」
母親は驚いた様な喜んだ様な曖昧な表情で、告げた。
「もう明日行ったら夏休みじゃない。夏休みの間に、お婆ちゃんの家に行って、礼儀作法とか全て学んで来なさい? あと、高くてとても寮は入れないから、近くのシェアハウス住んでもらうからね」
ーピシャーン
背後に雷が降ったよ。降るんだね、本当に。
お婆ちゃんがお嬢様校の理事を務めているのは知らなかった。でも、どんな人なのかは知ってる。
常に自分を着飾り、金持ちの如く格好を光らせている。品はあり過ぎ。まだ若くてお婆ちゃんとは言えない年齢だが、その姿から醸し出す雰囲気は魔女に似ていた、事を覚えている。
何せ最後に会ったのが幼少期だったもので。
しかも、寮じゃなくシェアハウスってなに?
「シェアハウスって・・・、どんな所?」
聞くのも恐ろしくて、ビクビクしていた。答えを聞きたく無くて、耳を塞ぎたい気分だ。
「知らない。なんか女性格安って書いてあったから、家事手探してんのかなって思ってさ」
資料を団扇の様に使って顔を扇ぎながら、答えた。
いやいやいや、それ行ったら絶対雑用やらされんじゃん。そんな所に娘入れ込むとは愛が無いのか。
「怪しいじゃんか! そんなの」
「怪しくなんてないわよ~、だって学園に1番近いのよ?」
あ、選んだ理由はそれもあるのか。
「お婆ちゃん家からの登校は駄目なの?」
ここまで来るともう転校する前提の話になってしまっている。
「お婆ちゃんの家10キロ以上離れてるの」
なんで!?
理事長の家ってそんなに離れてるもんなの!?
「お婆ちゃん、今は別荘住みなのよ。しかも本当の家は学園内だし。貴女、学園にずっと住むなんて嫌でしょ?」
それは嫌だ。素直にこくんと頷く。
「じゃ、決まりね」
母は楽しそうだった。娘の更生を願っての笑顔なのかあれは。アタシには鬼畜悪魔にしか見えなかったよ、お母さん。
スキップ気味で自分の部屋に戻ってく母親の鼻歌が段々と遠のいて行く中、明日どうやって転校を告げるか、リビングに1人残り、頭を悩ませていた。
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ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙! 重大発表がありますなんて言わなきゃ良かった!
アタシは今日、学校に着いてから、凪絆にこそっと耳打ちした。
ー「ちょっと、重大発表があるんだけど」
ー「ん? OK」
ただそれだけの会話。なのに全校を集めちゃって、軽く全校集会みたいになってる。全校で集まるのなんて多分入学してから1度も無かったのに。
その全校の前に立たされた私は動揺を隠せず、あたふたしていた。
凪絆を見ると、めっちゃ奥で笑いを堪えている。ふざけんなよアイツ。
まぁ、言わなきゃいけない事。と区切りを付けて、大きく深呼吸した。
「アタシ・・・」
全校の目が爛々と光っている。あ、これいい発表だと思われてるな。
「アタシ! 転校する事になった!」
聞こえない人が居ないように、大きな声で叫んだ。なのに、全校は静かで、何も話そうとはしない。
「嘘っ・・・」
その沈黙を破ったのは凪絆だった。
嘘じゃないんだ、ごめん。という思いを込めて、目線を送る。
その一言に合わせて、全校が嘆き出した。
中には本当に泣いてる子もいた。
「そんな、アタシの為に泣かれちゃ。アタシも泣けちゃうじゃんかよぉ・・・!」
凪絆はこちらに走って向かって来ていた。大泣きして顔をぐちゃぐちゃにしてさ。
ったく、情けないの。なんて思えないほど、私も涙が溢れていた。
「凪絆」
もう少しでアタシの所へ辿り着きそうなので、そう呟くと、凪絆はぎゅっと私に飛び付いた。
固く固く抱き締めて、離さない。
耳元では、凪絆の子供らしい泣き声が聞こえた。
「煽姫! アンタ勝手すぎ!」
そう大声を上げると、またわんわんと泣き出す。
「ごめん・・・、ゴメンね」
2人で全校の前で抱きしめ合い、大泣きしたさ。全校の皆も、本当に、本当に、・・・ごめん。
◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◇◆
その日の帰りはしっかり母が迎えに来た。また昨日の様に夜遅くにならないように、挙句の果てに帰ってこない可能性も考えたのだろう。
アタシが玄関から出た時、全校の皆も玄関に集合していた。まだ、皆泣いている。
車の中では、その柄の悪さに顔を顰める母がいた。車の扉の前に立つと、今1度、後ろを振り返って。
「皆! また絶対! 返ってくるから!」
振り返る時に飛び散った涙は、宝石の様に輝き、地面に降り注いだ。
そう叫んだ後に、ウオオオオオという歓声が響く。女子達は、皆手を振ってくれていた。
やっぱり離れたくないなぁ。
最高の天国だよ、此処は。
「・・・私の天国、守り続けてよね」
誰にも届かないその呟きは、歓声と母の言葉によってかき消された。
車の窓がウィーンと開くと、機嫌の悪そうな母親が口を開く。
「いい加減早く乗りなさいよ」
相変わらずの様子に溜息が出る。
「はいはい」
まあ確かにいつまでもこんな別れの言葉続けてたら切りがない。
アタシは、最後は何も言わず、車に乗り込んだ。車の中には、アタシの衣服やらなんやらが詰め込まれている。
「ねぇ、まさか直行なの?」
「・・・そうよ。当然」
そう言ってから、すぐ車は猛スピードで走り出した。後ろを振り向くと、凪絆が地面に座り込んで泣いている。
「お母さん、いい友達でしょ?」
母は、ふんっと鼻を鳴らすと、バックミラー越しに私を見詰めて。
「柄以外はね」
と、認めてくれた。
それだけで嬉しかった。アタシは最後の涙を静かに流した。
これから始まる生活の何1つを知らない。ただ、“最悪”でないことを願うのみ。
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私は知らなかった。
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