モノクロ殺人乙女 ~A murder diary of 10 years old~

楪 伊緒

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第1夜

2nd day

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 「ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・、ハアッ!」
 持ち上げたナイフを振り下ろせずに居る。夜中の路地裏、こんな所にいた方が悪いと自己暗示をかけているのに、私の手は、石の様に動かない。
 それと同様、相手も動かない。もう、瀕死まで来ているはず。きっと、意識も朦朧としているだろう。相手は、大量のゴミが積み重なった所で、哀れに横たわっていた。
 「早くしないと人が来るよ?」
 自問自答。
 「分かってるってばぁぁぁぁあ!!!」
 狂気の沙汰で、振り下ろしたナイフの行方はー

・.━━━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━━.・

 この家で過ごし始めてから、はや3日が経つ。
 3日の間、兄弟とも何も行動出来ずにいた。
 早く殺して元の家に帰らねばならないのに。そういった想いに責められているのは、どうやら兄だけの様だった。
 「お兄ちゃん!鬼ごっこしよっ!」
 この家は楽しい。自分の家より広いし、ベットはふかふか。テレビも大きかった。
 リビングでは鬼ごっこしたい放題。これ程、最高な家は無かった。
 それなのに昨日当たりから兄は頭を悩ませてばかりで詰まらなかった。だから、今日は自分から声を掛けた。兄と遊びたくって。
 だが、兄は恐ろしい目を私に向けるだけだった。氷の刃を向けられた様な気分で、1歩去った。
 「お、お兄ちゃん?」
 泣きそうになるのをぐっと我慢して、兄に問う。私にとっては、100人殺す事より、兄に嫌われる事の方が嫌だった。正確に言えば、兄に嫌われない為なら何でもする。
 そう、親でも殺す。
 私は、そういう子だった。
 「ノア、覚えているか。元の世界に戻る方法を」
 思わず鼻で笑ってしまう。何を当たり前の事を。
 「覚えてるに決まってるじゃん!」
 兄が普通に話してくれた事が嬉しくて、満面の笑みで答えた。ワンピースの裾も、ふわりと揺れる。
 さっき、怒らせてしまったかと思ったけど、そうでは無いようだ。
 「じゃあ、明日。殺すぞ」
 「え?」
 背中に棒が入ったように動けなくなった。足の裏は、すぐに汗でびちょびちょになって気持ちが悪い。まさか、兄の口から、殺すぞ、なんて言葉が出てくるなんて。
 「分かってる、分かってるけど。もう・・・なの?」
 まだ、清くこの世界で生きたい。そう思うのは間違っているのだろうか?それとも、私は、殺すのが怖い?
 「制限時間とかは無いんだし、まだゆっくりじゃダメなの?」
 「こんな世界にいたら俺達おかしくなるぞ」
 ピリッと空気が硬直する感覚。少し、痛く感じた。
 兄の声は酷く暗い。俯いているので、表情が分からなかった。
 「おかしくなんてないよ!ほら、私普通!」
 兄は、今の私の発言を否定するかのように顔を上げた。
 「でも、ノア。お前人を殺す事、何とも思ってないんだろ?」
 え、それのなにがイケナイっていうの?
 「当たり前でしょ。殺したくないとか駄々を捏ねて、お兄ちゃんの面倒にはならないよ!」
 安心して、と付け足して笑って見せた。
 「それがおかしいんだよ!」
 兄は急に声を上げた。怖くて先程までは可愛らしく揺れていたワンピースの裾をぐしゃぐしゃに掴んだ。
 「人殺す事の重大さを知るんだ」
 兄ははっきり、そう告げた。そして、リビングの奥にある本棚から、1冊の本を持ってくる。それを私に手渡した。
 「これを明日までに読んでおいて。よく考えて」
 その時の兄の顔はなんとも可哀想で、寂しそうだった。
 本の内容は、とある連続殺人事件の書記。私にもこうなれっていってる世界で、まさか殺人鬼を否定しようっていうの?
 私はこくりと頷いてその場を離れた。兄のいる場所から唯一見えない場所、ベットに飛び込んで、その本を部屋の角に投げ捨てた。
 「なんで、私がこんなにも尽くそうとしてるのに。人殺しも覚悟してたのに!」
 兄からあの冷たい視線を向けられた時、我慢した涙が今更流れ出す。
 私だって人殺しを平気とか思ってる訳ないじゃん。
 嗚咽が兄に聞こえてしまわない様に、布団を抱きしめ泣いた。
 そのまま、眠りについてしまうのだけれど、今思えば、もっとしっかり決意を決めていた方が良かったのだと、思う。



 「ノア、愛しのノア。私の大切な家族、そして××。守ってあげる、助けてあげる。ノアの周りに蔓延る悪魔から。ずっと、ずっと。永遠に」
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