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1話
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「――聖女の名を騙った罪として、お前をこの国から追放する。今すぐに出て行け」
ここは王城の王座の間。
そこによくわからないまま呼び出された私は、よくわからない罪でこの国を追放されることになった。
「一体、どういうことですか?」
一応、念のために聞いてみる。
私としては別にこの国から追放されても、構わない。
好きで聖女をやっていたわけじゃないし、本当はやめたいとさえ思っていた。
だって、24時間ずっと結界の維持で魔力を消費しているから、プライベートなんてまったくない。
私はもう20歳を超えた立派な大人で、恋の一つや二つしてみたいのだ。
だから、別になんと言われようが構わないのだが、私に追放を言い渡した王子の言葉に私は度肝を抜かれた。
「彼女に教えてもらったのだ。お前が聖女を騙って皆を騙し、魔物を呼び寄せているのだと。
彼女がいなければ、お前のような悪人に騙されるところだった。彼女には感謝してもしきれない」
「まさか、その確証もない言葉をいずれ一国の王になるあなたが信じたのですか?」
「信じるもなにも、彼女が本物の聖女だ。
本当はこの場に連れてきたかったが、どうやら彼女はお前と面識があるようで、姿を見せられないらしい。
私が偽物であると告げ口をしたのがバレれば、なにをされるかわからないと、震えながら言っていた」
「私の知り合い……?」
思い当たる人物は一人もいない。
そもそも、このようなことをされる筋合いなんてどこにもないはずだ。
その瞬間、妹の顔が浮かんだが、そんなはずはない。
たしかに先日、この国に訪れた妹に聖女であることを初めて明かした。
その際、王子はとてもカッコよく、妹好みの人であることも話した。
そして、聖女はつらいとも。
だが、そんな話をされても、普通はこのような暴挙には出ないだろう。
そう結論づけた私は、
「その知り合いというのに心当たりはありませんが、私はこの国から出て行きます」
と、この国を捨てることを決意した。
私はこの国の出身ではないので、滅んでも構わない。
しかも、この国の人たちが私を聖女であることを嗅ぎつけて、半ば強制的に連れてきたくせに、このような仕打ちをしてくる人たちを守ってあげる義理なんかない。
私はすぐにこの国を出て、維持していた結界を解除した。
さて、これからは聖女としてではなく、一人の女としての生活が始まる。
私はワクワクしながら、故郷への帰路に着くのだった。
~王子視点~
「これは一体どういうことだ!」
「なにが?」
「偽物を追い出したはずなのに、なんで国が襲われている!」
「さぁ~。私にも聖女としての力があるとは言ったけど、お姉ちゃんほどではないからね」
「騙したのか!」
「え? 騙してないけど。勝手にお前が勘違いしただけでしょ」
「チッ。もういい。今すぐお前の姉を連れ帰ってこい!」
「嫌だね。それに、散々お姉ちゃんをこき使ってきたくせに、すぐに捨てるような男は生きてる価値ないから。
ここで大人しく、死んでね?」
そう言って、あの忌々しい女は部屋から出て行った。
「誰が大人しく死んでやるものか! 絶対に連れ帰ってやるからな! ソフィア――――ッッッ!」
――そして、無事に故郷へと辿り着いた頃、あの国が滅んだことを知った。
滅んだ原因はもちろん、今まで私が食い止めていた魔物による侵攻。
魔物の対処を私に任せっきりだった彼らは、なすすべなくやられたことだろう。
ざまぁみろ。
ちなみに、私がいろいろと寄り道をしているときに、あの国の使者が私を連れ帰ろうとしていたみたい。
私には関係ないけどね。
「ねぇ、お姉ちゃん早く~!」
「はいはい。今行くから」
そう言って、私は妹に急かされるように家を出た。
本当は恋人探しをしたいところだけど、なぜか私は妹に助けられた、そんな気がして……。
今は姉妹水入らずで、楽しく遊ぶのだった。
~完~
ここは王城の王座の間。
そこによくわからないまま呼び出された私は、よくわからない罪でこの国を追放されることになった。
「一体、どういうことですか?」
一応、念のために聞いてみる。
私としては別にこの国から追放されても、構わない。
好きで聖女をやっていたわけじゃないし、本当はやめたいとさえ思っていた。
だって、24時間ずっと結界の維持で魔力を消費しているから、プライベートなんてまったくない。
私はもう20歳を超えた立派な大人で、恋の一つや二つしてみたいのだ。
だから、別になんと言われようが構わないのだが、私に追放を言い渡した王子の言葉に私は度肝を抜かれた。
「彼女に教えてもらったのだ。お前が聖女を騙って皆を騙し、魔物を呼び寄せているのだと。
彼女がいなければ、お前のような悪人に騙されるところだった。彼女には感謝してもしきれない」
「まさか、その確証もない言葉をいずれ一国の王になるあなたが信じたのですか?」
「信じるもなにも、彼女が本物の聖女だ。
本当はこの場に連れてきたかったが、どうやら彼女はお前と面識があるようで、姿を見せられないらしい。
私が偽物であると告げ口をしたのがバレれば、なにをされるかわからないと、震えながら言っていた」
「私の知り合い……?」
思い当たる人物は一人もいない。
そもそも、このようなことをされる筋合いなんてどこにもないはずだ。
その瞬間、妹の顔が浮かんだが、そんなはずはない。
たしかに先日、この国に訪れた妹に聖女であることを初めて明かした。
その際、王子はとてもカッコよく、妹好みの人であることも話した。
そして、聖女はつらいとも。
だが、そんな話をされても、普通はこのような暴挙には出ないだろう。
そう結論づけた私は、
「その知り合いというのに心当たりはありませんが、私はこの国から出て行きます」
と、この国を捨てることを決意した。
私はこの国の出身ではないので、滅んでも構わない。
しかも、この国の人たちが私を聖女であることを嗅ぎつけて、半ば強制的に連れてきたくせに、このような仕打ちをしてくる人たちを守ってあげる義理なんかない。
私はすぐにこの国を出て、維持していた結界を解除した。
さて、これからは聖女としてではなく、一人の女としての生活が始まる。
私はワクワクしながら、故郷への帰路に着くのだった。
~王子視点~
「これは一体どういうことだ!」
「なにが?」
「偽物を追い出したはずなのに、なんで国が襲われている!」
「さぁ~。私にも聖女としての力があるとは言ったけど、お姉ちゃんほどではないからね」
「騙したのか!」
「え? 騙してないけど。勝手にお前が勘違いしただけでしょ」
「チッ。もういい。今すぐお前の姉を連れ帰ってこい!」
「嫌だね。それに、散々お姉ちゃんをこき使ってきたくせに、すぐに捨てるような男は生きてる価値ないから。
ここで大人しく、死んでね?」
そう言って、あの忌々しい女は部屋から出て行った。
「誰が大人しく死んでやるものか! 絶対に連れ帰ってやるからな! ソフィア――――ッッッ!」
――そして、無事に故郷へと辿り着いた頃、あの国が滅んだことを知った。
滅んだ原因はもちろん、今まで私が食い止めていた魔物による侵攻。
魔物の対処を私に任せっきりだった彼らは、なすすべなくやられたことだろう。
ざまぁみろ。
ちなみに、私がいろいろと寄り道をしているときに、あの国の使者が私を連れ帰ろうとしていたみたい。
私には関係ないけどね。
「ねぇ、お姉ちゃん早く~!」
「はいはい。今行くから」
そう言って、私は妹に急かされるように家を出た。
本当は恋人探しをしたいところだけど、なぜか私は妹に助けられた、そんな気がして……。
今は姉妹水入らずで、楽しく遊ぶのだった。
~完~
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