何も知らない妹が「お姉ちゃんの婚約者寝取っちゃった」とかわけのわからないことを言い出したのですが、私に婚約者はいないのですが?

無名 -ムメイ-

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1話

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「ごめんねお姉ちゃん。お姉ちゃんの婚約者、私――寝取っちゃった☆」

 キャピっ、とでも言いたげな表情で、私と瓜二つの妹――エリがそんなことを言ってきた。
 私はエリが大嫌いなので、その表情だけでムカつくのですが、まぁ何かされたわけでもない。
 わざわざ妹のためにイライラするのも面倒だし、そもそも私に婚約者なんていないし。

 一体、エリはどこの馬の骨を私の婚約者だと勘違いしたのかしら? 

 私の近くに男の人なんていないはずなんだけど……。

「あっ……」

 一人だけいたわ、そういう人。
 でも、その人はいわゆるストーカー。今のところ何の危害も加えられてないから放置しているけど。
 もしかして、エリはそいつを私の婚約者だと勘違いした? 私はそいつの名前も顔も知らないけど。

 ……いや、まあこれでストーカーされなくなるなら私としては嬉しい限り。
 だから、ここはあえて何も言わないでおこう。
 
「何その反応、超笑えるんですけど! もしかして、ショックすぎて声が出ない感じ? か・わ・い・そ・う~!」

「…………」

 今はせいぜい私を見下して気持ち良くなっているといい。いつかその報いは受けるだろうから。
 だって、私から寝取った? 相手は私のストーカー。ストーカーしている人がまともなわけがないんだから。

「それじゃあお姉ちゃんバイバーイ! 私は今から彼とデートなの! 邪魔しないでよね!」

 そう言って、エリはるんるん気分で私の視界から消え失せたのだった。

「えぇ、さようなら。無事に帰って来れるといいね」



 ――あれから一ヵ月が経過して、まだ一度もエリとは顔を合わせていない。
 というのも、デートに行ったっきり帰ってきていないのだ。ああ……怖い怖い。

 それで、両親が捜索願いを出したのだが、不思議なことにエリの目撃情報は0。
 つまり、エリは私をストーカーしていた人物に監禁されている恐れがあるってこと。

 というか、それ以外にあり得ないだろう。

「……エリには感謝ね」

 エリがいなければ、私がその目に遭っていたかもしれないのだから。
 今までエリと瓜二つの容姿には嫌気が差していたが、初めてこの顔でよかったと思えたわ。

 後、私よりコミュニケーション能力――いや、この場合はビッチでよかった。
 ……私よりっていうのはちょっと違うか。私はエリと違ってまだ処女だし。

 それにしても、ストーカー野郎もストーカー野郎よね。確かに私とエリは性格以外ほぼ似てる。
 だけど、普通間違えるかしら? ……それはない。ストーカー被害に遭っていたのは私だけだったし。

「……ヤレれば誰でもよかったのかしらね」

 まぁ、どうでもいいか。このまま見つからなくても平和に暮らせるし、見つかっても大人しくなってるだろう。
 ストーカー野郎も見つかったら逮捕されるのは確定だし。

 つまり、私の一人勝ちってこと。
 やっぱり最後は真面目に生きている人が得をするのよ。世界はそうやって回ってるんだから。

                  ~完~
 
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