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1話
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「――アンジュ。俺のために死んでくれ」
そう言って、本当に私を殺した婚約者の名前はアーク。どうやら彼は私の姉が好きらしい。
しかし、姉はアークのことなど眼中にない。だから、気を引くために私を殺した。
本当に馬鹿だと思う。そんな理由で人を殺すなんて。
まあ、私はすでに死んでいるけどね。もう5年も前に死んでしまった。死因は流行り病だった。
でも、私はこうして生きている。というより、生かされていると言った方がいいか。
姉の死霊魔術によって。
どうして姉がこんなことをしているのか、というのは考えるまでもない。
姉は私が大好きなのだ。だから、自分の生命力を消費してでも私を現世に留め続けている。
そんな私を殺した婚約者を姉が好きになるわけがない。というか、浮ついた話を1度も聞いたことがないから、多分、男に興味がないんだと思う。
せっかく可愛いのにもったいないよね。
そんなことを埋められた穴の中で考える。
今の私は運びやすいように手足と首などを切断されていて、身動きも取れない。
そろそろ姉が助けに来る頃合いだと思う。
姉が言うには私との間に魔力的パス? が繋がっていて、どこにいるのかが分かるらしい。
早く助けにきてくれないかなぁ。
~アーク視点~
「何だッ。何なんだッ。ちゃんと殺したのに何でッ、アンジュが街を歩いているッ!」
俺はベッドに潜り込んで、頭がおかしくなりそうなのを必死に堪える。
しかし、頭の中はアンジュのことばかりで、それも難しい。アンジュは俺がいる場所に必ず現れやがるからだ。
しかも普通に人と話していて、意味が分からない。そのお陰で俺はまったく眠れなくなった。
アンジュが夢の中に出没しては、俺を殺そうとしてくるのだ。
それに、アンジュの姉であるアリシアにも全然会えないし、何のために殺したのか分からなくなった。
「クソッ。明日、教会に行って体を清めてもらおう。そうじゃないと、眠っていられない」
~アンジュ視点~
「――誰だ!」
ベッドでうずくまっていた男が私の存在に気づいたのか、大声を上げた。
だが、私の姿を見るなり、口をパクパクし始める。間抜けな顔をしていて面白いが、早く別れを済まなさいと。
非常に怒っている姉が今にも殺しかねない。
「久しぶりですね、アーク。よくも私を殺してくれましたね」
「そ、そうだっ! 俺はお前を殺して森に埋めた! なのに何で!」
「私はすでに死んでいたんですよ。5年前に」
「はっ?」
「意味が分からないって顔をしてますけど、本当です。しかも、私を生かしているのはあなたが好きな私の姉。これが、どういう意味か分かりますか?」
「分からないっ! お前は何を言って――」
「――脈なしってことですよ。それに、姉はとても怒っています。多分、もう長くは生きられないでしょう」
「それは一体、どういう――」
「――ざまぁないですね、アーク。さようなら」
私は優しいので、これから殺されることを教えてあげた。何も分からないまま死ぬよりはいいと思う。
さて、ここからは姉の番。というか、姉が従える死霊の番ですね。
私は今すぐここから退場することにしましょう。
――しばらくして、アークの部屋から何かが暴れているようない物音が聞こえ始めた。
多分、死霊がポルターガイストという現象を引き起こしているのだろう。
だから、
「――悪かったッ! 俺が悪かった! だから、助けてくれッ! アンジュッ! ひぃぃぃいいいいいぃぃぃぃぃ――ッッッ!」
という気持ちの悪い悲鳴が聞こえてくるのも仕方のないことかもしれません。
あれからしばらく時間が経過して、アークが命を落としたという噂が流れた。
死因は特定できなかったそうだが、面白い情報があった。
どうやらアークは糞尿を垂れ流し、部屋を汚した挙句、素っ裸で死んでいたそう。
そんな死因だから、アークは良い笑い者になっていた。私の姉も笑っていた。
よかったですね、アーク。お望み通り、姉の気を引けていますよ。
悪い意味で、だけど。
そう言って、本当に私を殺した婚約者の名前はアーク。どうやら彼は私の姉が好きらしい。
しかし、姉はアークのことなど眼中にない。だから、気を引くために私を殺した。
本当に馬鹿だと思う。そんな理由で人を殺すなんて。
まあ、私はすでに死んでいるけどね。もう5年も前に死んでしまった。死因は流行り病だった。
でも、私はこうして生きている。というより、生かされていると言った方がいいか。
姉の死霊魔術によって。
どうして姉がこんなことをしているのか、というのは考えるまでもない。
姉は私が大好きなのだ。だから、自分の生命力を消費してでも私を現世に留め続けている。
そんな私を殺した婚約者を姉が好きになるわけがない。というか、浮ついた話を1度も聞いたことがないから、多分、男に興味がないんだと思う。
せっかく可愛いのにもったいないよね。
そんなことを埋められた穴の中で考える。
今の私は運びやすいように手足と首などを切断されていて、身動きも取れない。
そろそろ姉が助けに来る頃合いだと思う。
姉が言うには私との間に魔力的パス? が繋がっていて、どこにいるのかが分かるらしい。
早く助けにきてくれないかなぁ。
~アーク視点~
「何だッ。何なんだッ。ちゃんと殺したのに何でッ、アンジュが街を歩いているッ!」
俺はベッドに潜り込んで、頭がおかしくなりそうなのを必死に堪える。
しかし、頭の中はアンジュのことばかりで、それも難しい。アンジュは俺がいる場所に必ず現れやがるからだ。
しかも普通に人と話していて、意味が分からない。そのお陰で俺はまったく眠れなくなった。
アンジュが夢の中に出没しては、俺を殺そうとしてくるのだ。
それに、アンジュの姉であるアリシアにも全然会えないし、何のために殺したのか分からなくなった。
「クソッ。明日、教会に行って体を清めてもらおう。そうじゃないと、眠っていられない」
~アンジュ視点~
「――誰だ!」
ベッドでうずくまっていた男が私の存在に気づいたのか、大声を上げた。
だが、私の姿を見るなり、口をパクパクし始める。間抜けな顔をしていて面白いが、早く別れを済まなさいと。
非常に怒っている姉が今にも殺しかねない。
「久しぶりですね、アーク。よくも私を殺してくれましたね」
「そ、そうだっ! 俺はお前を殺して森に埋めた! なのに何で!」
「私はすでに死んでいたんですよ。5年前に」
「はっ?」
「意味が分からないって顔をしてますけど、本当です。しかも、私を生かしているのはあなたが好きな私の姉。これが、どういう意味か分かりますか?」
「分からないっ! お前は何を言って――」
「――脈なしってことですよ。それに、姉はとても怒っています。多分、もう長くは生きられないでしょう」
「それは一体、どういう――」
「――ざまぁないですね、アーク。さようなら」
私は優しいので、これから殺されることを教えてあげた。何も分からないまま死ぬよりはいいと思う。
さて、ここからは姉の番。というか、姉が従える死霊の番ですね。
私は今すぐここから退場することにしましょう。
――しばらくして、アークの部屋から何かが暴れているようない物音が聞こえ始めた。
多分、死霊がポルターガイストという現象を引き起こしているのだろう。
だから、
「――悪かったッ! 俺が悪かった! だから、助けてくれッ! アンジュッ! ひぃぃぃいいいいいぃぃぃぃぃ――ッッッ!」
という気持ちの悪い悲鳴が聞こえてくるのも仕方のないことかもしれません。
あれからしばらく時間が経過して、アークが命を落としたという噂が流れた。
死因は特定できなかったそうだが、面白い情報があった。
どうやらアークは糞尿を垂れ流し、部屋を汚した挙句、素っ裸で死んでいたそう。
そんな死因だから、アークは良い笑い者になっていた。私の姉も笑っていた。
よかったですね、アーク。お望み通り、姉の気を引けていますよ。
悪い意味で、だけど。
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