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その名誉男性、女衒につき(7)
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「時代じゃなく、自分のせいじゃないですか?その歌の通り」
香菜さんは真顔で玉希さんに言った。
「もう、何なのよ!さっきから!ひどいじゃない!この店は客をいじめる訳?これこそ、
女将ハラスメントよ!」
玉希さんは耐えきれず立ち上がって大声で叫んだ。
「私だってね、これでも世の中が平和であればいいって願ってるわよ!
世界平和を祈ってお遍路に行ったり、
これからの若い世代の為に地球環境がよりよくなる為にゴミを出さないようにしたりね、
社会貢献してるわよ!」
香菜さんは失笑しながらこう返した。
「世界平和とか環境とかでっかい事を言う前に、
身近な人間を売るのをやめた方がよっぽど社会貢献なんじゃないでしょうか」
「人を売る?」
「だって玉希さんがやってる事って、若い女の子を飲み会に呼んで仕事を取る女衒業だけ
じゃない。頼んでもないのに人を美人女将にくくって本にしようとしたり、
地方の助成金もらう為に若い子をおいてコワーキングスペース事業やってるふりをしようと
したり。全部、人を売ったりダシにして利益を得ようとしている訳じゃないですか。
それがいかにゲスいことか、自覚した方がいいですよ」
玉希さんは打ちのめされたようで脱力したのか、パタッと椅子に座り込んでしまった。
「…確かにそうかも」
「え?」
「この年まで自分に『これだ』っていう専門の分野がなくて自信がなかったは事実よ」
俯く玉希さんの手元を遼介は横目で見る。ボトックスを打っているのか顔の皺はないが、
手の甲には血管が浮き立ち深い皺があった。老年の人間の手であった。
その手の甲に玉希さんが生きてきた長い年月と苦労を遼介は感じた。
「はい、これ食べて帰って下さい。今回は言い過ぎました」
香菜さんは玉希さんの前に小さな丼茶碗を置いた。
玉希さんが蓋を開けると黒い小さな粒々と蒸しあげたばかりのシラスが陰陽のマークのように配置され、
真ん中に糸のように刻んだシソが盛られている。
玉希さんはレンゲを使って一口、すくって口の中に入れる。
「この小さな粒々って」
「キャビアではございません。トンブリでございます」
「ああ、なんちゃってキャビアね」
「名付けて『没落貴族丼』です」
「言うわねえ、本当に」
玉希さんは脱力しながら一口、また一口とご飯を口の中へ運ぶ。
プチプチと口の中で弾けるとんぶりは、叩いた梅干しと和えてあり酸味が効いて
玉希さんの酔いを覚ましていく。
香菜さんは真顔で玉希さんに言った。
「もう、何なのよ!さっきから!ひどいじゃない!この店は客をいじめる訳?これこそ、
女将ハラスメントよ!」
玉希さんは耐えきれず立ち上がって大声で叫んだ。
「私だってね、これでも世の中が平和であればいいって願ってるわよ!
世界平和を祈ってお遍路に行ったり、
これからの若い世代の為に地球環境がよりよくなる為にゴミを出さないようにしたりね、
社会貢献してるわよ!」
香菜さんは失笑しながらこう返した。
「世界平和とか環境とかでっかい事を言う前に、
身近な人間を売るのをやめた方がよっぽど社会貢献なんじゃないでしょうか」
「人を売る?」
「だって玉希さんがやってる事って、若い女の子を飲み会に呼んで仕事を取る女衒業だけ
じゃない。頼んでもないのに人を美人女将にくくって本にしようとしたり、
地方の助成金もらう為に若い子をおいてコワーキングスペース事業やってるふりをしようと
したり。全部、人を売ったりダシにして利益を得ようとしている訳じゃないですか。
それがいかにゲスいことか、自覚した方がいいですよ」
玉希さんは打ちのめされたようで脱力したのか、パタッと椅子に座り込んでしまった。
「…確かにそうかも」
「え?」
「この年まで自分に『これだ』っていう専門の分野がなくて自信がなかったは事実よ」
俯く玉希さんの手元を遼介は横目で見る。ボトックスを打っているのか顔の皺はないが、
手の甲には血管が浮き立ち深い皺があった。老年の人間の手であった。
その手の甲に玉希さんが生きてきた長い年月と苦労を遼介は感じた。
「はい、これ食べて帰って下さい。今回は言い過ぎました」
香菜さんは玉希さんの前に小さな丼茶碗を置いた。
玉希さんが蓋を開けると黒い小さな粒々と蒸しあげたばかりのシラスが陰陽のマークのように配置され、
真ん中に糸のように刻んだシソが盛られている。
玉希さんはレンゲを使って一口、すくって口の中に入れる。
「この小さな粒々って」
「キャビアではございません。トンブリでございます」
「ああ、なんちゃってキャビアね」
「名付けて『没落貴族丼』です」
「言うわねえ、本当に」
玉希さんは脱力しながら一口、また一口とご飯を口の中へ運ぶ。
プチプチと口の中で弾けるとんぶりは、叩いた梅干しと和えてあり酸味が効いて
玉希さんの酔いを覚ましていく。
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