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第1部
第2話
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「お兄ちゃん!チャンスだよ!!」
愛佳の言葉にハッと我に帰ったが奏多には何がチャンスなのか分からなく、首を傾げていると愛佳がベシッと力強く叩いてきた。しかしそこまで痛くはなかった。
「もう!あんなマルス主従コンビやばいよ!会えるか分からないよ!撮らないと!」
「え!?あ、え、でも…!」
ベンチを立ち上がり近寄ろうとする愛佳の腕を掴んで止める奏多。
いきなり止められて愛佳は奏多を睨むと、前に立ち手を腰に当てながら怒鳴った。
「お兄ちゃん!!」
「だってぇ…あんなイケメンマルスは無理ぃ…周りのマルスでもひぇ…ってなっているのに、あのマルスは無理だってぇ…!!」
「でも、次はないかもしれないんだよ!後悔しちゃうって!!」
愛佳の言葉に確かに…と思ったが、チラリと見てみるとマルス達は色んな人に囲まれていて近寄るのは難しいだろうな…と考えてしまった。
それは愛佳も分かったらしくベンチに座り直すとスマホを弄り出した。
素早くSNSを弄る愛佳を奏多は隣から覗き込んでいると、そこには今日のコスイベの速報を上げている人達の写真がズラッと並んでいた。
「ま、愛佳?何してんだ?」
「あの2人のアカウント探して、次移動した場所で撮影をお願いしようかと…」
「ええ!?それってストーカーじゃない!?」
「だって!お兄ちゃんのレオンとあの人のマルスのツーショット収めたいもん!」
必死に探す愛佳に対して何も言えなくなってしまい、奏多はお茶を飲んでいると先程までいたイケメンマルス達がいなくなっており、少し残念そうに落ち込むと…ふと、目の前に誰かが来たのが分かった。
レイヤーさんかと思い顔を上げると、奏多は目を見開いて驚いた。
「すみません、もし大丈夫でしたら一緒に何枚か撮影よろしいですか?」
「え、あ、ま、愛佳!愛佳!!」
「もうどうしたの、お兄ちゃ…ええっ!?」
スマホ画面を見ていた愛佳が顔を上げて声をかけてきた人を確認した瞬間驚いてしまった。
それもそのはず、目の前にいたのはあのイケメンマルスとリリィだったからだ。
自分達以外かと思い奏多は周りをキョロキョロ見回していたが、周りにはそんな人はいなくマルスの目が自分を見ているのが分かると奏多が声を発する前に愛佳が答えた。
「はいはい!是非!マルスとレオンで!!」
「おお!私も是非、マルスとレオンでお願いしたいと思っていたので是非是非!ほらほら!」
リリィがマルスの腕を引っ張り動かすと、奏多の隣に立ってきて心臓の音が聞こえるくらいドキドキしてしまい奏多の頭はパニクっていた。
愛佳とリリィがスマホでゲーム画面を見ながら相談をしているとマルスが声をかけてきた。
「緊張してますか?」
「え!?」
声をかけられて驚いたのもあったが、奏多はそれ以上に驚いてしまった。
まさかのマルスは男性レイヤーであった。
「マルス…男性の方だったんですね…」
「ええ、そうですよ。なので同じゲームで男性レイヤーがいて、ゆい…あ、リリィやってる友達が声をかけようって…」
「へぇ…そうなんですか…」
心地よい声とニコニコ笑う素敵な笑顔に奏多は照れてしまい、どうしようか悩んでいると愛佳が「お兄ちゃん!」と声をかけてきて、見せてきたのは狂恋のキャラカードだった。
「これと同じポーズをとって!レオンとマルスって言ったらこのポーズでしょう!」
「あ、ああ…じゃあいいですか?」
「ええ、いいですよ」
愛佳とリリィに指示をされながら奏多達はポーズや表情を作って撮影をした。
カードや決めポーズ再現に、本当にマルスが目の前にいる気がして奏多はずっとドキドキしながら撮影に挑んだ。
そして撮影が終わると、愛佳はリリィと色々話し出して奏多は勢いよく頭を下げてマルスに声をかけた。
「あ、あの、ありがとうございました!」
「いえ、こちらこそ。お兄さんのやるレオン凄くかっこいいです、お似合いですよ」
「え、いや、マルスの方がイケメンで綺麗で画面から出てきたみたいで、凄く素敵です」
頬を赤らめてだんだん声を小さくしながら褒めるとマルスはフッと笑みを浮かべて、ポンポンと頭を撫でられてしまい…奏多は耳まで赤くしてしまった。
すぐに離れて顔を俯かせて隠していると、愛佳が「お兄ちゃん?」と不思議そうに問い掛けてきてすぐに顔を上げた。
「大丈夫?お兄ちゃん?疲れちゃった?休む?」
「え、いや、だ、大丈夫!!それよりどうした?」
「あ、そうそう!ゆいさん…あ、リリィの人ね!どうやらSNSやってなくて、だから良かったら連絡先交換しませんか?って」
「ほら、これも何かの縁ですし!」
リリィが綺麗にウィンクをしながら言ってきた言葉に、奏多は頷くと連絡先を交換した。
「改めて、私は夏川ゆいです。こっちが友達の…」
「橘琉斗です。よろしくお願いします。奏多さん、愛佳さん」
「はーい、よろしくお願いしまーす!!」
「それじゃあ私達はこれで、また!」
手をブンブン振ってゆい達は去っていき、奏多は琉斗の背中をじっと見つめてしまった。
じーっと視線を感じてハッと我に帰り視線の方を見ると愛佳がニヤニヤ笑って顔を覗き込んできていた。
「お兄ちゃん、琉斗さんのマルスに惚れちゃったなー?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
「良いのかなー?私が撮ったマルス写真渡さないよー?」
先程撮っていたマルスの写真一覧を見せられて奏多はすぐに頭を下げて「送ってください…」と言ったのであった。
こうして初めてのコスイベは楽しく終わりを告げたのであった。
愛佳の言葉にハッと我に帰ったが奏多には何がチャンスなのか分からなく、首を傾げていると愛佳がベシッと力強く叩いてきた。しかしそこまで痛くはなかった。
「もう!あんなマルス主従コンビやばいよ!会えるか分からないよ!撮らないと!」
「え!?あ、え、でも…!」
ベンチを立ち上がり近寄ろうとする愛佳の腕を掴んで止める奏多。
いきなり止められて愛佳は奏多を睨むと、前に立ち手を腰に当てながら怒鳴った。
「お兄ちゃん!!」
「だってぇ…あんなイケメンマルスは無理ぃ…周りのマルスでもひぇ…ってなっているのに、あのマルスは無理だってぇ…!!」
「でも、次はないかもしれないんだよ!後悔しちゃうって!!」
愛佳の言葉に確かに…と思ったが、チラリと見てみるとマルス達は色んな人に囲まれていて近寄るのは難しいだろうな…と考えてしまった。
それは愛佳も分かったらしくベンチに座り直すとスマホを弄り出した。
素早くSNSを弄る愛佳を奏多は隣から覗き込んでいると、そこには今日のコスイベの速報を上げている人達の写真がズラッと並んでいた。
「ま、愛佳?何してんだ?」
「あの2人のアカウント探して、次移動した場所で撮影をお願いしようかと…」
「ええ!?それってストーカーじゃない!?」
「だって!お兄ちゃんのレオンとあの人のマルスのツーショット収めたいもん!」
必死に探す愛佳に対して何も言えなくなってしまい、奏多はお茶を飲んでいると先程までいたイケメンマルス達がいなくなっており、少し残念そうに落ち込むと…ふと、目の前に誰かが来たのが分かった。
レイヤーさんかと思い顔を上げると、奏多は目を見開いて驚いた。
「すみません、もし大丈夫でしたら一緒に何枚か撮影よろしいですか?」
「え、あ、ま、愛佳!愛佳!!」
「もうどうしたの、お兄ちゃ…ええっ!?」
スマホ画面を見ていた愛佳が顔を上げて声をかけてきた人を確認した瞬間驚いてしまった。
それもそのはず、目の前にいたのはあのイケメンマルスとリリィだったからだ。
自分達以外かと思い奏多は周りをキョロキョロ見回していたが、周りにはそんな人はいなくマルスの目が自分を見ているのが分かると奏多が声を発する前に愛佳が答えた。
「はいはい!是非!マルスとレオンで!!」
「おお!私も是非、マルスとレオンでお願いしたいと思っていたので是非是非!ほらほら!」
リリィがマルスの腕を引っ張り動かすと、奏多の隣に立ってきて心臓の音が聞こえるくらいドキドキしてしまい奏多の頭はパニクっていた。
愛佳とリリィがスマホでゲーム画面を見ながら相談をしているとマルスが声をかけてきた。
「緊張してますか?」
「え!?」
声をかけられて驚いたのもあったが、奏多はそれ以上に驚いてしまった。
まさかのマルスは男性レイヤーであった。
「マルス…男性の方だったんですね…」
「ええ、そうですよ。なので同じゲームで男性レイヤーがいて、ゆい…あ、リリィやってる友達が声をかけようって…」
「へぇ…そうなんですか…」
心地よい声とニコニコ笑う素敵な笑顔に奏多は照れてしまい、どうしようか悩んでいると愛佳が「お兄ちゃん!」と声をかけてきて、見せてきたのは狂恋のキャラカードだった。
「これと同じポーズをとって!レオンとマルスって言ったらこのポーズでしょう!」
「あ、ああ…じゃあいいですか?」
「ええ、いいですよ」
愛佳とリリィに指示をされながら奏多達はポーズや表情を作って撮影をした。
カードや決めポーズ再現に、本当にマルスが目の前にいる気がして奏多はずっとドキドキしながら撮影に挑んだ。
そして撮影が終わると、愛佳はリリィと色々話し出して奏多は勢いよく頭を下げてマルスに声をかけた。
「あ、あの、ありがとうございました!」
「いえ、こちらこそ。お兄さんのやるレオン凄くかっこいいです、お似合いですよ」
「え、いや、マルスの方がイケメンで綺麗で画面から出てきたみたいで、凄く素敵です」
頬を赤らめてだんだん声を小さくしながら褒めるとマルスはフッと笑みを浮かべて、ポンポンと頭を撫でられてしまい…奏多は耳まで赤くしてしまった。
すぐに離れて顔を俯かせて隠していると、愛佳が「お兄ちゃん?」と不思議そうに問い掛けてきてすぐに顔を上げた。
「大丈夫?お兄ちゃん?疲れちゃった?休む?」
「え、いや、だ、大丈夫!!それよりどうした?」
「あ、そうそう!ゆいさん…あ、リリィの人ね!どうやらSNSやってなくて、だから良かったら連絡先交換しませんか?って」
「ほら、これも何かの縁ですし!」
リリィが綺麗にウィンクをしながら言ってきた言葉に、奏多は頷くと連絡先を交換した。
「改めて、私は夏川ゆいです。こっちが友達の…」
「橘琉斗です。よろしくお願いします。奏多さん、愛佳さん」
「はーい、よろしくお願いしまーす!!」
「それじゃあ私達はこれで、また!」
手をブンブン振ってゆい達は去っていき、奏多は琉斗の背中をじっと見つめてしまった。
じーっと視線を感じてハッと我に帰り視線の方を見ると愛佳がニヤニヤ笑って顔を覗き込んできていた。
「お兄ちゃん、琉斗さんのマルスに惚れちゃったなー?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
「良いのかなー?私が撮ったマルス写真渡さないよー?」
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こうして初めてのコスイベは楽しく終わりを告げたのであった。
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