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第2部

第5話

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「お兄ちゃーーーん!!!!」
勢いよく部屋の扉が開き、愛佳が入ってきた。
奏多は着替え中だった為、女の子みたいに悲鳴を上げてしまい母親から怒られてしまった。
リビングで説教が終わると、2人は何故かソファーの上で正座の状態で向かい合わせになった。
「それで愛佳は一体どうしたんだ?」
「そうそう、あのね!お、お兄ちゃん!お、おお!落ち着いてね!!何があっても、慌てちゃだ、だめだからね!?」
「うん、愛佳が落ち着こうな?」
深呼吸をさせて何とか落ち着かせると愛佳はゆっくりスマホの画面を見せてきた。そこには…

『Receive Insanelove』のコラボカフェ決定の文字が…

「う、嘘だろーーー!!??」
奏多が叫んでしまい、母親がまた飛んできてたっぷり説教されてしまった。
奏多の部屋に移動をして2人はベッドに座ると詳細を見た。
「メインは王子様6人だけど…従者も含めて12人の新規イラストが含まれるのか…すごいな、やばいな…」
「絶対当選難しいよー!お兄ちゃん、平日休みとか使って行ってきてー!!お金渡すからラッキー君とリリィちゃんとレイ先輩とルクウェル先輩と…とにかく従者のが欲しいのー!!」
手を合わせてお願いポーズをして頭を下げてきた愛佳に、奏多はすぐに顔を上げさせると「分かった」と言って愛佳の表情がパァァと明るくなった。
愛佳を部屋に戻すとベッドに寝転がりコラボカフェの詳細を見ていた。
席は抽選になっており、まずそこに当選しないと参加する事が出来ない。
どうしようか悩んでいると、いきなり携帯が鳴り響き顔に落としそうになったが何とか耐えて画面を見るとまさかの琉斗からの電話で、ドキッと来てしまい、何とか落ち着かせてからゆっくり応答ボタンを押した。
『こんばんは、奏多さん』
「こ、こんばんは…琉斗さん。どうしました?」
『いえ…あの見ました?コラボカフェ』
「見ました!新規イラストかっこよくて、行こうと思っているんですが…当選出来るかどうか不安で…」

『もし当選したら一緒に行きませんか?』

まさかのお誘いに驚いてしまい、どうしようと悩んでいたが…すぐに答えは出て「はい、是非」と返した。
すると琉斗の嬉しそうな声が耳に伝わりキュンとしてしまった。
とりあえず詳しいことは後日決めようという話で、通話は切れて暫く放心してから奏多は嬉しさでベッドの上でゴロゴロ転がった。
「琉斗さんと一緒にコラボカフェとか…嬉しいな…ってうわ!?」
またスマホが震え出し、画面を見るとはじめからの連絡だった。
『もし良ければコラボカフェ一緒に行きませんか?』というお誘いで、奏多はうーん…と悩んでしまい、せっかくのお誘いを断るのも申し訳ないと思い、行くことにした。

その結果…

「うん、今日は良いコラボカフェ日和ですね!」
ゆい、奏多、琉斗、はじめの4人でコラボカフェに参戦することになった。
無事当選をしたがやはり土日は難しく、平日になってしまいこの4人での参戦になった。
「奏多さん、マルス王子のコースターが来たらお渡ししますね!」
「あ、ありがとう、はじめさん!俺の手元にレオンが来たら交換にしようね」
「はい!」
きゃっきゃと楽しそうにするはじめと奏多に、琉斗の機嫌はだんだん悪くなっていき、それに気づいたゆいが琉斗の脇腹を肘でついた。しかもかなり強く。
「うぐっ!」
「?りゅ、琉斗さん?大丈夫ですか?」
脇腹を押さえてその場に崩れる琉斗に奏多がアワアワしながら近寄ると、琉斗は「大丈夫です」と答えて奏多の手を掴んで立ち上がった。
そんな事をしていると開店し、奏多達は入店をした。
店の中は何処を向いても狂恋のイラストに溢れていて、王子達の等身大パネルがお出迎えしていて奏多とゆいはスマホを構えてパシャパシャと何枚も撮りだした。
席に案内されると、周りは見事に女性だらけでジロジロと見られてしまい奏多は緊張していたが、他の3人は平然としていた。
とりあえずそれぞれ料理とドリンクを頼み、他愛ない話をして待っているとドリンクが運ばれてきて裏返しにコースターを置いてきた。
「そ、それじゃあ…見ましょうか…」
奏多の声掛けに全員頷くと同時にコースターを裏返した。
そして奏多は声にならない悲鳴をあげてしまった。
手元に来たのは最推しのマルスだったからだ。その様子を見ていたはじめがすぐに「おめでとうございます!」と言ってきてくれて奏多はお礼を言った。
はじめとゆいは推しではない違う王子で、琉斗の手元にはレオンが来ていた。
「あ、琉斗さん、レオン王子ですね!」
「う、羨ましいです…ちょっと交換に行ってきます!」
はじめは席を立ち、他に交換を望んでいる人の元へ行くと奏多は琉斗に問いかけた。
「琉斗さんってレオン最推しでしたっけ?」
「…いや、最推しは…違う」
まさかの発言に奏多は驚いてしまった。
ならどうしてはじめと交換をしないのか、と聞くと琉斗は奏多をジーッと見つめてきて奏多は首を傾げた。
奏多が声を掛けようとした前に琉斗が口を開いた。
「俺、レオンは同担拒否なんです」
「え!?そうなの!?」
「そうですよ、奏多さんを好きになったの俺が先なのに…」
そう言って頬を撫でられてしまい奏多は耳まで真っ赤にすると、すぐに首を横に振って否定をした。
「好きって、はじめさんは俺のことそういう風に見ていないよ!」
「分かりませんよ?奏多さん、可愛いですから…」
「ちょ、琉斗さ…「戻りましたー、交換出来ました!」
嬉しそうにレオンのコースターを見せながら戻ってきたはじめの声で戻されると、奏多は琉斗からはじめに視線を移して「おめでとう!」と声をかけた。
そんな様子を見て琉斗はムスッとしていると、ゆいが顔を近付けてコソッと小声で言った。
「相手が悪いな、琉斗。奏多さんは鈍感みたいで」
「ああ…本当にな…」

こうして楽しかったコラボカフェを終えて、外に出るとゆいと琉斗は用事があるからそこで別れることに。
はじめと一緒に駅に向かって狂恋やコラボカフェについて話しながら歩いていると、いきなりピタリと止まってしまい奏多は不思議そうに見つめてくる。
「どうしたの?はじめさん…」

「あ、あの…俺…奏多さんのこと好きになってしまいました!レオンのコスしているからとかではなく、貴方が好きなんです!」
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