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7話 試験って言葉は気が重くなるよね
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「冒険者ギルドへようこそ!」
私に出来る仕事。消去法の結果、選ばれたのは冒険者でした。
「あの、登録をしたいんですけど」
「かしこました! では、お名前を教えていただけますか?」
カウンターへ座っていたお姉さんへ声をかける。受付の登録ここであってますか。
「アリシア=ストルレートです」
「アリシア様……、はい。ありがとうございます。では、試験がございますので、試験場へと向かいましょう」
「え」
冒険者ってなるのにテストがあるの? 知らなかった……。
そのまま私はお姉さんに連れられて屋外の試験場へとやって来た。
「まずは魔法試験です。あの的へ向かって、何でもいいので魔法を放ってください」
試験場はだだっ広い場所だった。四方は壁で覆われているが空からは太陽の日が眩しい。そして、そこには壁際にいくつかの黒い箱の様な物が置かれていた。あれがお姉さんの言う的らしい。
あれに魔法を当てれば、魔力の質や魔法としての精度など色々分かるようになっているらしい。
でも、問題はそこじゃなかった。
「すみません、放てる魔法がありません」
「え? あっ、距離が遠いのでしたら近づいていただいて構いませんので……」
「……距離の問題じゃなくて、私、魔法使えません」
私はほとんど魔法が使えない。基本とされるファイアボールやウォーターボールなど、小さな子どもでも出来る魔法すら使えない。ファイアボールなんて、煙が出るだけだし、ウォーターボールなら、手汗でしっとりするだけ。悲しいぐらい魔法の才能がなかった。
「え、そ、そうなんですね……。じゃあ、魔法試験は無し? 無しってどうすればいいんだろう……」
お姉さんが困っている。今まで免除とかじゃなく、試験不可なんていなかったんだろうな。
しかし、これで不合格なんてなったら困る。こっちは明日の飯がかかってるんだから。
「でも、私、殴るのは得意です」
「え? あっ、はい」
なんとかアピールしようと言ってみたが、むしろ逆効果じゃないだろうか。なんかやばい奴みたいになってしまった。
「で、では、実技試験の方をしましょう。これからあの人形と戦っていただきます」
次に出て来たのは人形。普通の人ぐらいのサイズで木で出来ていて、手には木製の剣と盾を持っていた。すごい、人形が勝手に歩いている。
「まずは、人形が攻撃してきますので、三十秒間、防御をしてください。防御は攻撃を受けても構いませんし、避けても大丈夫です。しかし、その間こちらから攻撃はしないでください」
まずは防御の試験らしい。受けても、避けてもいいのか。それなら、大丈夫そう。
「では、始めますよ。準備はよろしいですか?」
「はい」
「では、始め!」
お姉さんの合図と共に人形が動き出した。
人形は持っている木刀で私へと斬りかかる。こんな人形を動かす魔法もあるんだ。歩くだけじゃなくて、剣で斬りかかるようなこともできるんだ。ちゃんと動いた私を捕捉して、斬りかかってくる。あっ、なんか攻撃変わった。こっちの動きを予測しつつ、攻撃してくる感じかな。こんなことも出来るんだすごい。
「……あっ! すみません! 終わり、終わりです! 三十秒経ってました!」
すごいなぁと関心して、人形を観察していると、お姉さんから終わりの合図が。もうちょっと動いているところ見たかったな。
「すごい身のこなし……。あっ、えっと、次は人形へ攻撃してみてください。魔法でも武器でも何でも大丈夫です。でも、人形も反撃してくるのでお気をつけて」
次は攻撃か。あ、今武器何も無いんだった。せっかく買った棍棒は爆発四散したし。素手で殴るしかないか。
でも、素手で殴るのってこっちも痛いんだよね。そうだ、拳を魔力で覆って、グローブみたいにしよう。
「では、始めてください」
合図と共に駆け出す。両手にグローブ準備よし。間合いももう届く範囲に。よし、パンチいきまー……、
パンチをしようとした時、ふと昨日の惨状が蘇った。爆発四散した棍棒。根っこごと吹っ飛んだ木。木のまま殴れば、今ここで同じ事が起こるのでは?
惨状を思い出し、ブレーキをかけた。この繰り出した拳を止めなければ。クリーンヒットすれば大惨事になるかもしれない。必死にブレーキをかけ、なんとか私の拳は人形の頬へ当たる寸での所で止まった。
よし、止まった。人形に拳は当たってない。だから、やり直せ……、
私は忘れていた。拳が寸での所で止まっても、遅いということを。グローブと称し、魔力で拳を覆っていたことを。
「あっ……」
グローブは当たり、人形は吹っ飛んで壁へと激突する。その後、ピクリとも動かなくなった。
「………………」
「………………」
私は固まる。やっちまったと。お姉さんも固まる。何やってくれたんだと。
「…………失格ですか?」
魔法試験は試験不可。実技試験では人形破壊。なんて奴なんだろう私は。こんな奴を合格にしようとするだろうか。
「とんでもない! 合格ですよ!」
「え?」
なんで? あっ、人形破壊の弁償分は働いて返せということか。
「実技試験でのあの防御と攻撃。今でも見た冒険者の中でもトップクラスです! 人形の攻撃を最高レベルにしたのに、かすりもしない。たった一発であの頑丈な人形を破壊するその力! 素晴らしいです! それに、相当場数を踏まれて来たように見えました!」
なんかセーフだったらしい。途中で攻撃変わったと思ったのは、人形の攻撃レベルが上がっていたのか。そんな設定までできるなんてすご。……それ壊しちゃったけど。
「じゃあ……」
「はい! もちろん合格ですよ!」
やった。これでご飯の心配がなくなる。
「よかった。じゃあ、あの人形も弁償しなくていいですよね?」
「……それは要確認です」
「あっはい」
思わぬ出費が出そうだけど、それでも仕事が見つかった。よーし、これから頑張るぞ。
でも、あの人形っていくらぐらいするんだろう。人の大きさで勝手に動く人形とかすごく高いんじゃ……、とか考えながら、受付へと戻っていくと、
「さあ、出発だ! 楽しい冒険にしようじゃないか!」
あの嵐の様な男性が居た。
私に出来る仕事。消去法の結果、選ばれたのは冒険者でした。
「あの、登録をしたいんですけど」
「かしこました! では、お名前を教えていただけますか?」
カウンターへ座っていたお姉さんへ声をかける。受付の登録ここであってますか。
「アリシア=ストルレートです」
「アリシア様……、はい。ありがとうございます。では、試験がございますので、試験場へと向かいましょう」
「え」
冒険者ってなるのにテストがあるの? 知らなかった……。
そのまま私はお姉さんに連れられて屋外の試験場へとやって来た。
「まずは魔法試験です。あの的へ向かって、何でもいいので魔法を放ってください」
試験場はだだっ広い場所だった。四方は壁で覆われているが空からは太陽の日が眩しい。そして、そこには壁際にいくつかの黒い箱の様な物が置かれていた。あれがお姉さんの言う的らしい。
あれに魔法を当てれば、魔力の質や魔法としての精度など色々分かるようになっているらしい。
でも、問題はそこじゃなかった。
「すみません、放てる魔法がありません」
「え? あっ、距離が遠いのでしたら近づいていただいて構いませんので……」
「……距離の問題じゃなくて、私、魔法使えません」
私はほとんど魔法が使えない。基本とされるファイアボールやウォーターボールなど、小さな子どもでも出来る魔法すら使えない。ファイアボールなんて、煙が出るだけだし、ウォーターボールなら、手汗でしっとりするだけ。悲しいぐらい魔法の才能がなかった。
「え、そ、そうなんですね……。じゃあ、魔法試験は無し? 無しってどうすればいいんだろう……」
お姉さんが困っている。今まで免除とかじゃなく、試験不可なんていなかったんだろうな。
しかし、これで不合格なんてなったら困る。こっちは明日の飯がかかってるんだから。
「でも、私、殴るのは得意です」
「え? あっ、はい」
なんとかアピールしようと言ってみたが、むしろ逆効果じゃないだろうか。なんかやばい奴みたいになってしまった。
「で、では、実技試験の方をしましょう。これからあの人形と戦っていただきます」
次に出て来たのは人形。普通の人ぐらいのサイズで木で出来ていて、手には木製の剣と盾を持っていた。すごい、人形が勝手に歩いている。
「まずは、人形が攻撃してきますので、三十秒間、防御をしてください。防御は攻撃を受けても構いませんし、避けても大丈夫です。しかし、その間こちらから攻撃はしないでください」
まずは防御の試験らしい。受けても、避けてもいいのか。それなら、大丈夫そう。
「では、始めますよ。準備はよろしいですか?」
「はい」
「では、始め!」
お姉さんの合図と共に人形が動き出した。
人形は持っている木刀で私へと斬りかかる。こんな人形を動かす魔法もあるんだ。歩くだけじゃなくて、剣で斬りかかるようなこともできるんだ。ちゃんと動いた私を捕捉して、斬りかかってくる。あっ、なんか攻撃変わった。こっちの動きを予測しつつ、攻撃してくる感じかな。こんなことも出来るんだすごい。
「……あっ! すみません! 終わり、終わりです! 三十秒経ってました!」
すごいなぁと関心して、人形を観察していると、お姉さんから終わりの合図が。もうちょっと動いているところ見たかったな。
「すごい身のこなし……。あっ、えっと、次は人形へ攻撃してみてください。魔法でも武器でも何でも大丈夫です。でも、人形も反撃してくるのでお気をつけて」
次は攻撃か。あ、今武器何も無いんだった。せっかく買った棍棒は爆発四散したし。素手で殴るしかないか。
でも、素手で殴るのってこっちも痛いんだよね。そうだ、拳を魔力で覆って、グローブみたいにしよう。
「では、始めてください」
合図と共に駆け出す。両手にグローブ準備よし。間合いももう届く範囲に。よし、パンチいきまー……、
パンチをしようとした時、ふと昨日の惨状が蘇った。爆発四散した棍棒。根っこごと吹っ飛んだ木。木のまま殴れば、今ここで同じ事が起こるのでは?
惨状を思い出し、ブレーキをかけた。この繰り出した拳を止めなければ。クリーンヒットすれば大惨事になるかもしれない。必死にブレーキをかけ、なんとか私の拳は人形の頬へ当たる寸での所で止まった。
よし、止まった。人形に拳は当たってない。だから、やり直せ……、
私は忘れていた。拳が寸での所で止まっても、遅いということを。グローブと称し、魔力で拳を覆っていたことを。
「あっ……」
グローブは当たり、人形は吹っ飛んで壁へと激突する。その後、ピクリとも動かなくなった。
「………………」
「………………」
私は固まる。やっちまったと。お姉さんも固まる。何やってくれたんだと。
「…………失格ですか?」
魔法試験は試験不可。実技試験では人形破壊。なんて奴なんだろう私は。こんな奴を合格にしようとするだろうか。
「とんでもない! 合格ですよ!」
「え?」
なんで? あっ、人形破壊の弁償分は働いて返せということか。
「実技試験でのあの防御と攻撃。今でも見た冒険者の中でもトップクラスです! 人形の攻撃を最高レベルにしたのに、かすりもしない。たった一発であの頑丈な人形を破壊するその力! 素晴らしいです! それに、相当場数を踏まれて来たように見えました!」
なんかセーフだったらしい。途中で攻撃変わったと思ったのは、人形の攻撃レベルが上がっていたのか。そんな設定までできるなんてすご。……それ壊しちゃったけど。
「じゃあ……」
「はい! もちろん合格ですよ!」
やった。これでご飯の心配がなくなる。
「よかった。じゃあ、あの人形も弁償しなくていいですよね?」
「……それは要確認です」
「あっはい」
思わぬ出費が出そうだけど、それでも仕事が見つかった。よーし、これから頑張るぞ。
でも、あの人形っていくらぐらいするんだろう。人の大きさで勝手に動く人形とかすごく高いんじゃ……、とか考えながら、受付へと戻っていくと、
「さあ、出発だ! 楽しい冒険にしようじゃないか!」
あの嵐の様な男性が居た。
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