婚約破棄? いいですけど、なんで私の杖奪うのですか?

ノミ

文字の大きさ
7 / 21

7話 試験って言葉は気が重くなるよね

しおりを挟む
「冒険者ギルドへようこそ!」

 私に出来る仕事。消去法の結果、選ばれたのは冒険者でした。

「あの、登録をしたいんですけど」
「かしこました! では、お名前を教えていただけますか?」

 カウンターへ座っていたお姉さんへ声をかける。受付の登録ここであってますか。

「アリシア=ストルレートです」
「アリシア様……、はい。ありがとうございます。では、試験がございますので、試験場へと向かいましょう」
「え」

 冒険者ってなるのにテストがあるの? 知らなかった……。

 そのまま私はお姉さんに連れられて屋外の試験場へとやって来た。

「まずは魔法試験です。あの的へ向かって、何でもいいので魔法を放ってください」

 試験場はだだっ広い場所だった。四方は壁で覆われているが空からは太陽の日が眩しい。そして、そこには壁際にいくつかの黒い箱の様な物が置かれていた。あれがお姉さんの言う的らしい。
 あれに魔法を当てれば、魔力の質や魔法としての精度など色々分かるようになっているらしい。

 でも、問題はそこじゃなかった。

「すみません、放てる魔法がありません」
「え? あっ、距離が遠いのでしたら近づいていただいて構いませんので……」
「……距離の問題じゃなくて、私、魔法使えません」

 私はほとんど魔法が使えない。基本とされるファイアボールやウォーターボールなど、小さな子どもでも出来る魔法すら使えない。ファイアボールなんて、煙が出るだけだし、ウォーターボールなら、手汗でしっとりするだけ。悲しいぐらい魔法の才能がなかった。

「え、そ、そうなんですね……。じゃあ、魔法試験は無し? 無しってどうすればいいんだろう……」
 
 お姉さんが困っている。今まで免除とかじゃなく、試験不可なんていなかったんだろうな。
 しかし、これで不合格なんてなったら困る。こっちは明日の飯がかかってるんだから。

「でも、私、殴るのは得意です」
「え? あっ、はい」

 なんとかアピールしようと言ってみたが、むしろ逆効果じゃないだろうか。なんかやばい奴みたいになってしまった。

「で、では、実技試験の方をしましょう。これからあの人形と戦っていただきます」

 次に出て来たのは人形。普通の人ぐらいのサイズで木で出来ていて、手には木製の剣と盾を持っていた。すごい、人形が勝手に歩いている。

「まずは、人形が攻撃してきますので、三十秒間、防御をしてください。防御は攻撃を受けても構いませんし、避けても大丈夫です。しかし、その間こちらから攻撃はしないでください」

 まずは防御の試験らしい。受けても、避けてもいいのか。それなら、大丈夫そう。

「では、始めますよ。準備はよろしいですか?」
「はい」
「では、始め!」

 お姉さんの合図と共に人形が動き出した。

 人形は持っている木刀で私へと斬りかかる。こんな人形を動かす魔法もあるんだ。歩くだけじゃなくて、剣で斬りかかるようなこともできるんだ。ちゃんと動いた私を捕捉して、斬りかかってくる。あっ、なんか攻撃変わった。こっちの動きを予測しつつ、攻撃してくる感じかな。こんなことも出来るんだすごい。

「……あっ! すみません! 終わり、終わりです! 三十秒経ってました!」

 すごいなぁと関心して、人形を観察していると、お姉さんから終わりの合図が。もうちょっと動いているところ見たかったな。

「すごい身のこなし……。あっ、えっと、次は人形へ攻撃してみてください。魔法でも武器でも何でも大丈夫です。でも、人形も反撃してくるのでお気をつけて」

 次は攻撃か。あ、今武器何も無いんだった。せっかく買った棍棒は爆発四散したし。素手で殴るしかないか。

 でも、素手で殴るのってこっちも痛いんだよね。そうだ、拳を魔力で覆って、グローブみたいにしよう。

「では、始めてください」

 合図と共に駆け出す。両手にグローブ準備よし。間合いももう届く範囲に。よし、パンチいきまー……、

 パンチをしようとした時、ふと昨日の惨状が蘇った。爆発四散した棍棒。根っこごと吹っ飛んだ木。木のまま殴れば、今ここで同じ事が起こるのでは?

 惨状を思い出し、ブレーキをかけた。この繰り出した拳を止めなければ。クリーンヒットすれば大惨事になるかもしれない。必死にブレーキをかけ、なんとか私の拳は人形の頬へ当たる寸での所で止まった。

 よし、止まった。人形に拳は当たってない。だから、やり直せ……、

 私は忘れていた。拳が寸での所で止まっても、遅いということを。グローブと称し、魔力で拳を覆っていたことを。

「あっ……」

 グローブは当たり、人形は吹っ飛んで壁へと激突する。その後、ピクリとも動かなくなった。

「………………」
「………………」

 私は固まる。やっちまったと。お姉さんも固まる。何やってくれたんだと。

「…………失格ですか?」

 魔法試験は試験不可。実技試験では人形破壊。なんて奴なんだろう私は。こんな奴を合格にしようとするだろうか。

「とんでもない! 合格ですよ!」
「え?」

 なんで? あっ、人形破壊の弁償分は働いて返せということか。

「実技試験でのあの防御と攻撃。今でも見た冒険者の中でもトップクラスです! 人形の攻撃を最高レベルにしたのに、かすりもしない。たった一発であの頑丈な人形を破壊するその力! 素晴らしいです! それに、相当場数を踏まれて来たように見えました!」

 なんかセーフだったらしい。途中で攻撃変わったと思ったのは、人形の攻撃レベルが上がっていたのか。そんな設定までできるなんてすご。……それ壊しちゃったけど。

「じゃあ……」
「はい! もちろん合格ですよ!」

 やった。これでご飯の心配がなくなる。

「よかった。じゃあ、あの人形も弁償しなくていいですよね?」
「……それは要確認です」
「あっはい」

 思わぬ出費が出そうだけど、それでも仕事が見つかった。よーし、これから頑張るぞ。

 でも、あの人形っていくらぐらいするんだろう。人の大きさで勝手に動く人形とかすごく高いんじゃ……、とか考えながら、受付へと戻っていくと、

「さあ、出発だ! 楽しい冒険にしようじゃないか!」

 あの嵐の様な男性が居た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

処理中です...