最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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四十七話 武闘会 ②

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「ミッちゃんの予選突破を祝ってかんぱーい!」
「「かんぱーい」」

 カツンとグラスがぶつかり合う。ゴクッゴクッ。はぁーおいしい。これが勝利の美酒ってやつかな。飲んでるのただのジュースだけど。

 武闘会の予選はあっさり終わった。説明してた時間も含めて一時間ぐらいで本当にあっさり終わった。それは他の予選会場もそうみたいで開始して二時間も経たない内に決勝進出者が出揃い、明日から始まる決勝トーナメントに備えて解散となった。そして、その後の今は昼食兼祝勝会。リンさんのおごりで酒場へ。

「随分上機嫌だな。まだ予選突破しただけだってのに」

 嫌味ったらしくシオンさんが言う。いいじゃないですか予選突破したんですよ。五十人の内の五人に入ったんです。もうこれはここで終わってしまってもいいぐらいだと思う。明日はぐっすり寝てようかな。

「別にいいじゃんねー? 予選突破したんだもんねー? 誇っていいんだよ! ミッちゃんはこのまま優勝まで行くもんね!」
「いやいや、それは無理だろ」
「そうですよ。何言ってるんですかリンさん」
「味方してあげたのに……」

 予選は適当に空気になっておじいちゃんの相手してたらなんか残れただけなんですよ。次の決勝トーナメントなんて一対一で更に予選を突破した強い人しかいないのに私なんかが勝てる訳ないじゃないですか。ちゃんと現実を見てくださいね。私は不戦敗が正しい現実だと思います。

「でも、ミッちゃんホントにいつになく上機嫌だよね。どうしたの? 予選突破がそんな嬉しい訳じゃないでしょ?」

 いやいや、予選突破出来たのは嬉しいことですよ。まあ、確かに上機嫌なのは予選突破より別のことのお陰だけど。

「ふっふっふっ。リンさん、私この予選で分かったことが二つあるんですよ」
「うん?」

 そう、私が上機嫌なのはこの予選で私は二つ知ってしまったことがあるからだ。

「一つ目は、私って意外と強いんですよ。あのおじいちゃんも圧倒できたし、あの地獄かと思った最初の乱戦でも一つたりとも傷を負わなかった。それに多分、他の会場からの決勝進出者も私の会場と同じぐらいの力量なら私勝てると思うんです!」
 
 これが知ってしまったことその一。私って意外と強い。私の周りの人間が強すぎるからあたかも私が人類最弱みたいに思われるし思ってしまうけどそれは間違いだった。私意外と強い。避けることしか出来ないけど。

「そして、知ってしまったことのもう一つは強いと優しくなれるってことです。相手より自分の力量が高ければ相手に対して優しくなれる。私がおじいちゃんに対して強い攻撃をしなかったように」

 相手より自分が強いと余裕ができるからか優しくなれる。これも今回で知った。実力が互角だったならきっと私は必死にナイフを振り回してただろう。でも、そんなことはせず押すだけで終わった。かわいそうだし怪我しないようにしてあげようって思えた。強いと優しくなれる。心の中では煽っていて優しくなかったけど。これはシオンさんが悪い。

「そして、決勝トーナメントで当たるドンさんとかは私よりももっと強い! すなわち、優しくしてくれる! 怪我しない! 恐れることはない! もう安心です!」
「ええ……。上機嫌の理由それ……?」

 ドンさんとか私よりも遥かに強いから私と相手することになったらきっと優しくしてくれるはず。ルールで殺すのは禁止ってされてるんだから、必要以上に攻撃してこないだろうし、猫をつまみ出すぐらいの感じで終わるはず。契約書にサインした時は死ぬかもなんてビビってたけどそんなことはないはず! 
 
「ふーん。お前が強いかはともかく、格下相手に必死こいてやる気は起きねえし、優しくなるってのは間違いじゃねえかもな」
「でしょう!」

 シオンさんが賛成してくれた! これはもう勝った! 明日は負けて勝ちだ!!

「ああ。俺ならおもちゃにして遊ぶな。これなら身体は大きな怪我はしねえだろうな。心の方は知らねえが」
「………………シ、シオンさんが悪魔みたいな性格なだけでそんなこと考える人は、……居ないですよ……」

 おもちゃにして遊ぶ。遊ばれる。いやいや、そんなこと考えるのは性格最悪のシオンさんぐらいで他の参加者には居ないはず……。……居ないよね?

「別に俺の性格は関係ねえけどな。俺の性格天使だし。なあ、リン。格下相手なら遊ぶよな?」
「いやいや、本物の天使なリンさんはそんなことしないですよね?」
「……まあ、遊びはしないよ」
「でしょう!」

 ほら! 性格最悪のシオンさんとは違うんですよ! そんなことするのはシオンさんだけ……

「でも、練習台って言うか、試したいことやってみたり、新しい太刀筋の試し斬りしてみたりはするかな」
「……え?」

 天使が悪魔と同じことを? ……ああ、やっぱり私の命はここまでか。明日私は誰かの練習台となり試し斬りにより死ぬ。死ななくてもおもちゃにされて心が再起不能になる。リンさんが言うんだから間違いない。

「まあまあ。まだ強い人と当たるかは分からないでしょ。組み合わせ決まってないんだし」
「……それはそうですけど……」

 予選は終わったけどまだ次の決勝トーナメントの組み合わせは発表されていない。決勝は六つの予選会場から勝ち上がった三十人と予選免除の二人を合わせた三十ニ名で行われる。予選免除はドンさんと最速でなんとかの人。この二人はもう決まってるらしくてトーナメント表の左上と右下らしい。

「一戦目からドンとでも当たって砕けたらいいんじゃねえの」
「そんな物騒なこと言わないで下さいよ……。それにドンさんは見た目と違って心は優しいからそんなことしない。……はずです」

 ドンさんは見た目は怖いけどすんごい優しい人なんだから。多分。あっ、そうだもう一回戦からドンさんと当たってさっさと敗れるか。ドンさんなら優しくしてくれるはず! それにドンさんとかに負けるならシオンさんも例外にしてくれるって言ってたしこれが一番かもしれない。抽選で組み合わせは決まるけど立候補しようかな。みんなドンさんと当たるの嫌だろうしいけるかも。

「でも、早いうちに当たった方がいいのかもね。変な人も居るかもしれないし」
「やっぱりそうですよね。……本当にドンさんとの組み合わせに立候補しようかな」
「いいんじゃない? 変人とか変態とか居るだろうしそんなと当たるよりマシだと思うよ。……絶対参加してるだろうし」

 絶対に参加? いったい誰のことだろう? え、リンさんの知り合いに変態がいるの? 
 
「まあ、ともかく明日は頑張ってね! ボクも観客席から応援してるから!」
「……はい!」

 リンさんが応援してくれるのならやっぱり頑張ってみようかな。明日から始まる決勝トーナメントは全力を出して行けるところまで行こう。まあ、組み合わせ次第では一回戦で終わるかもしれないけど。
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