最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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四十九話 武闘会 ④

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「それでは続きまして第二試合を始めます! 出場選手は舞台へ上がって下さい」

 ああ、来た。私の番だ。決勝トーナメント第二試合。やって来てしまった私の試合。第一試合ドンさんが瞬殺したせいでまだ心の準備も出来てないのに。それに、相手が……

「さあ、行こうではないか! 私と君、二人だけの愛の舞台へ!」

 これだし。





「決勝トーナメント第二試合、ミイナ=ロジャース選手対コウジ=ウォーカー選手。準備はよろしいですか?」
「ああ、問題ない」
「……はい」

 ついに上がってしまった舞台の上。全然準備はよろしくないんだけど、待ってくれる訳もないし返事するしかない。それにしても、これはヤバい。

 決勝トーナメントとだけあって舞台の周りには大勢の観客が。大勢の人間の視線が全て私に集まる。それで緊張しちゃってる。変な汗も出てきたし。シオンさんとリンさんもどこかで見てると思うと尚更。

 そして、対戦相手であるコウジさん。控え室では変なナルシストだなぁとしか思わなかったけど、対峙して分かった。この人、強い。すごい余裕たっぷりで立っているけど一切の隙も無い。
 
「二人共よろしいようなので、それでははじめ!」

 試合開始の声が響く。始まってしまった試合。私はそれと同時に身を構える。開始後すぐに攻撃されても対応出来るように。

 しかし、試合開始を告げられた後、コウジさんはすぐに動き出すことはなかった。悠々とした感じで突っ立って何か仕掛けてくる様子はない。

「ふふ。そう構えなくていいさ。私は紳士だからな。レディにファーストを譲るのは当然だろう? さあ、そちらからかかってきたまえ」

 紳士かどうかは知らないけど、コウジさんは私に先手を譲ると宣言してきた。前の試合のドンさんみたいに開始直後に一撃いれて終了みたいな感じになるかと予想してたけど違った。うーん、瞬殺されなくて良かったと思う反面、それはそれで困るな。だって、私真正面からの攻撃の仕方知らない。

 今まで私が戦ってきた方法と言えばカウンターと不意打ち。避けてドン、死角からドンとか相手を真正面に捉えての戦いをしてこなかった。だって、シオンさんそれ以外教えてくれないんだもん。避けろ守れ筋トレしとけばっかだし。

 それでも私はナイフを構える。シオンさんは攻撃の仕方なんて教えてくれなかった。でも、私の師匠は一人じゃないから。リンさんの教えを思い出せ。

 私はゆっくりと動き出し、そして、急加速をする。ただ緩急をつけて真っ直ぐ突っ込むのではなく左右にジグザグに走る。一応リンさんに教えてもらった技。幽歩。これで一気に距離を詰める。

 相手の予想外を歩き続けることで幽霊のごとく消えたように錯覚させる幽歩。でも、駄目だ。完全に捉えられてる。ぐっ、一応基礎だけは出来て魔物相手に有効だったりしたのに全然駄目だ。
常に目が合う。なんかもう強いとか以前にキモいとか怖いとか思えるぐらいに。

 それでも近づくことは出来た。真っ直ぐ走って行くのと結果が変わらない気もするけどナイフの間合いまで近づけた。ナイフの間合いということは相手の間合いにも当然重なるはずだけど、コウジさんは宣言通り攻撃をしてくる様子はない。あくまでレディファーストか。

 それなら思いっ切り打ち込ませてもらうまで。どうせ殺す気でいったって殺すなんて出来るはずない。この人はナルシストの変人だけど強さは本物なんだから。思いっ切りやってやる。

 私は腕を上げ、ナイフを上に構える。そうだこの技は見られてた方が好都合だ。リンさんに教えてもらったもう一つの技。三の太刀「雷」。

 狙うは上段。相手は私よりかなり背が高いから相手の胸の少し下辺りを狙うようにナイフを振り下ろす。

 が、本当の狙いはここじゃない。「雷」は振り下ろす途中で太刀の軌道を変える技。始めは上段で振り下ろし、途中で腕をずらすことで軌道を変える。だから、本当の狙いは腰辺り。腰から足にかけてを斬り裂く――

「ほぉう。君は中々面白い技を使うのだな」
「――え、え!?」

 私は思いっ切り振り下ろした。出来てるのは形だけなんて言われもした私の「雷」だけど魔物相手に避けられたことなんてなかった。それなのに、私の振り下ろしたナイフは避けられ宙を斬るどころか親指と人差し指、このたった二本の指でつままれ動きを止められていた。

「な、うっ、あ、あれ!?」
「そんなに暴れないでくれたまえ。せっかくこうして二人が繋がれているんだ。もっと楽しもうではないか」
「ひいいいいぃ!」

 やだやだやだ! なんかゾワッと来た! もう事実だけど言い方がキモい! 離れたい! なのに全然動かない!! なんで!? 押しても引いてもビクともしない。左右だろうが上下だろうが全くもって! 二本の指でつままれただけなのに動かせない!

「ふぅ。そこまで言うなら仕方ない。私はずっとこのままでも良かったのだが、嫌がるなら辞めよう。私はレディに無理矢理なんて言うのはしない主義なんだ」
「え、うわわっ!」

 なんとか引き抜こうと力を込めていた時に急に離されよろめく私。後ろによろめきつつ、ついでに距離を取る。いや、距離を取ったところでどうにもならないんだけど。

「面白い技を見せて頂いた。今度はこちらの番だ。お返しに私からもお見せしよう」

 そう言うと彼はゆっくりと歩き出した。そして、その速度を変えることなくゆっくり私の方へと近づいてくる。

 だが、私はそんな彼の姿捉えられない。ゆっくりと歩いて来てるはずなのに捉えきれない。姿がぼやける。消えたかと思えば現れ、また消える。足しか見えない。足だけが見えない。彼が今どこに居るのかが分からない。

「いったいどこを見ているんだい? ちゃんと私を見ていてくれたまえ」
「なっ……!」

 声をかけられた時にはもう既に私の目の前に。そして、いつ抜いたのか、彼の右手には長く大きな刀が。

「では、行くぞ。まばたきしては駄目だぞ?」

 長き刀が上へと上げられる。元より私より背が高いのに更にその上へ上げられた刀。そして、私の上から右斜めに右肩目掛けて振り下ろされる。

 でも、刀は意外と遅い。これなら避けられ……え

「かっ……は………」

 あれ……? なんで……? 打たれたの左……?

「ほぉ! わずかでも反応するとは。頭ではなく身体が反応したのか。随分よく叩き込んでいるじゃないか。良い弟子を持ったようだな……」

 私は一撃を喰らい、意識を手放した。

 

 



「……きろー」
「…………」
「起きろー」
「ぐえっ! 痛ったあ!!」

 こめかみに感じた鈍い痛みで私は目を覚ました。

「痛った……。なんで殴るんですか!」
「起こす為」
「他に方法無いんですか!?」

 寝てる人を起こすのに殴るって! 起こす時は揺さぶるぐらいにしてくださいよ! あれって言うか私なんで寝てたんだっけ? ここどこ? こんなベッド知らない。

「ああミッちゃん! ごめんね、ごめんね! 痛かったでしょ!?」
「え、リンさん?」

 何故リンさんがそんなに謝るんだろう。悪いのはシオンさんなのに。それよりここどこですか?

「やあ。目覚めはいかがかな?」
「え? あれ!?」

 あれなんでコウジさんが。…………あっ、そうか。私負けたんだ。あの一撃くらってから何も覚えてないし気絶してたんだろう。それでここ医務室に運ばれてって感じなのかな。

「良いわけないでしょ! 誰のせいでこんなことになったと思ってんの!?」

 いや、これはコウジさんが悪いんじゃなくて負けた私が悪いんだけど。

「ほら! 早く謝って! アホ師匠!!」

 いやいや、そんな。謝ってなんておかしいですよ。それにアホ師匠って。コウジさんにリンさん何言って……。え? アホ師匠? リンさんがコウジさんに師匠? …………師匠!?

「すまない。私が強すぎるばかりに君へ敗北を送ってしまって」
「そうじゃないでしょうが!!」

 このナルシストの変人がリンさんの師匠……?
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