最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

文字の大きさ
51 / 100

五十一話 心得

しおりを挟む
「よろしく頼むぞ。二人共」

 私の旅に新たにリンさんの師匠であるコウジさんが加わった。

「よし、それではさっさと移動しようか。こんなところとはおさらばだ」
「え、武闘会はいいんですか? コウジさんまだ二回戦とか残ってるんじゃ」

 私は負けたしもう終わりだけど、コウジさんはまだこれから二回戦と続きがあるのに。おさらばなんてしていいのかな? まあ、コウジさんの二回戦の相手ドンさんだけど。

「いいのだ。この子と出会ってしまったのだからもうこの大会に意味はない」

 そう言えば、コウジさんが大会に出たのって優勝して残してきた娘に生存報告とかなんとか言ってたな。その娘と出会っちゃったし意味はなくなったかもしれないけど出場していけばいいのに。もったいない。

「さあ、早く行こう。時は金なりだ。さっさと王都を去ろう。シオンボーイ、馬車を用意してくれたまえ」
「え。俺が?」

 シオンさんを自然とパシリに使うだと……? コウジさん、なんて恐ろしいことを……。

「まあ、いいけど」

 あ、いいんだ。

「それでは出発致しまーす。到着致しましたー」
「えええ!?」

 ええ!? さっきまで医務室にいたのにどこここ!? 一瞬で街中に移動した? ここはえっと、あっ! 冒険者の街だ!

「ミッちゃんなんで驚いてるの? 前も送ってもらったじゃん」
「え? ……あっ、そう言えばそうだ」

 そう言えば前凹んでる時にも瞬間移動してたっけ。あの時はそんなこと全然気にしてなかったし、あんまり思い出したくもなかったし……。

「……ふむ。錯覚やまやかしではないな。素晴らしい魔法を使うじゃないか。やるなシオンボーイ」
「そりゃどうも」

 コウジさんシオンさんに対して完全に上から目線なんだ。それに対してシオンさんも何も言わない。……いいなぁ。私も「シオンボーイお茶」とか言ってみたい。ぶん殴られそうだけど。

「さてと、じゃあビシバシ行くとするか」
「え」

 いや私何も言ってないですよ!? そんなシオンさんに対してボーイとかお茶なんて言える訳ないじゃないですか! あっ、喉かわいてます? 今すぐお茶用意しますね! へへっ。

「負けたんだからしょうがねえだろ。勝てないお前が悪い」
「負けた? ……あっ。あれ!? でも、免除してくれるんじゃないんですか!?」

 確かに武闘会前にベスト4以内に入れなかったら罰があるとか言ってたけど! でも、それってその道中でドンさんみたいな強い人に当たったら負けても免除されるとも言ってたはず。なのに何故!? コウジさんもめちゃくちゃ強いのに!

「いや、だって手加減して貰ったのに負けたしな。これはもう免除なんてありえねえだろ」
「ええ!? でも、手加減されても全く私が勝てる相手じゃなかったじゃないですか!」
「なんだ? 私を巡って二人は喧嘩しているのか? おいおい、止めたまえ。いくら私が強くて美して老若男女問わず全てを惹き付ける程魅力的な人物だとしても私を巡って争わないでくれ」
「ちょっと黙っててくれません!?」

 争いの原因の一つにコウジさんもありますけど! ちょっと黙ってて! めんどくさい! って言うか、こう言っちゃなんだけど私こんな人に負けたんだ!

「じゃあさ、師匠の教えを受けなよ。修行にもなるし罰ゲームにもなるよ」
「罰ゲームとはどういうことだね?」

 え、この人の指導を? いや、そりゃリンさんの師匠でとても強いのも分かってるけど、なんだか嫌だ。何されるか分からないし。

「技術も学べて、精神も強くなれるんじゃないかな!」
「何されるんですか私……」

 技術は分かるけど精神ってどういうこと。いったい、何をされるんだ私。

「じゃ、ミッちゃん頑張ってね。ボク遊びにいってこよー」
「俺も俺も」
「え゛!」

 え、ちょっと待って! リンさんもシオンさんもどこか行っちゃうの!? 指導は同時に行うんじゃないの!? ああ行かないで! リンさん! リンさん帰ってきて! シオンさんはそのまま行ってくれてもいややっぱり帰って来て!

「あっ、ああ……。行っちゃった……」
「ふっふっふ。二人きりになったところで始めようか。愛の熱血指導を!」
「帰って来てーー!!」

 イヤーー!! リンさーん! シオンさんー! 帰って来て!! 助けて! 襲われるー!!

「……そんなに身構えなくとも何もしないさ。言っただろう? 私は嫌がるレディを無理矢理なんてことはしないのさ」
「じゃあ、指導受けるの嫌なんで私も遊びに行って来ますね」
「それは駄目だ」
「ええ……」

 嫌って言ったらしないんじゃないの……? 私もレディだよ?

「レディに対してはそうなんだがな。君は私の弟子であるリンの弟子。と言うことは私の孫弟子だ」
「まあそうですね」
「そして、私は例えレディだろうとも一度弟子となればレディ扱いはしないと決めている。弟子は弟子として扱う。男性でもレディでも人間でもない。弟子だ」
「人間ですらない!?」

 弟子となれば人間扱いすらしてもらないなんて! 私はもう人間でもレディでもなくて弟子という種類になってしまったのか……。

「ふっ。だが、安心したまえ。私の指導は何も辛くはない。君はもう既に身体の基礎はある程度出来ているようだ。だから、私は心の指導を行おう」
「心?」

 心の指導? 滝に打たれて心を鍛えるんだー!……とか?

「私がこれから教えるのはたった二つの心得だ。たった二つだが、これらのもと行動が出来るようになれば君は今より遥かに強くなれる」

 たった二つの心得のもとに行動出来るようになれば遥かに強くなれる? たった二つだけで?

「では、言おう。心して聞きたまえ」

 ごくり。そんなすごいことならちゃんと聞いておかなきゃ。心しよう。心した。

「その二つの心得とは『明鏡止水』と『先手必奪』の心得だ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...