最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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六十三話 扉

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「よーし、それじゃあ敵のお城に向かって出っ発ー!! ……ミッちゃん大丈夫? やっぱり今日は止めとく?」
「いえ……。大丈夫です。行けます……」

 黒の世界から帰ってきたと思ったらすぐにまた向こうの世界に行ってきてまた帰ってきました。もうどっちの世界がどうだったのか分からなくなりそう。それに、しんどい。
 
「ほんの十分ぐらいでそんな疲れるなんて、何してたの?」
「え、十分?」

 あれが十分!? いやいや、そんな訳ない。だって、一時間、二時間いやそれ以上に向こうに居て、ひたすらシオンさんにしごかれてたのに。あれが十分な訳、ああ私の体内時計は破壊されてしまったのか。シオンさんついに弟子を壊しましたね。

「向こうとこっちじゃ時の流れが違うからな。向こうで十分でも、こっちじゃ数時間ってこともあるし逆もある」

 向こうとこっちじゃ時間の流れが違うって、いや、もう何も気にしなくていいや。シオンさんが言うんだしそうなんだろう。そんなことを気にするのも疲れる。

「ふーん。まあ、元気ならいいや。それじゃあ改めて出発ーー!! おー!」
「………………」
「…………誰か何か言ってよぉ……」

 一人元気よく手を突き上げ声を上げるリンさん。でも、誰も返事してくれなくてしょぼんとする。すいませんリンさん。私元気とは一言も言ってなくて返事する気力も無いんですよ。身体は別に元気だけど心が疲れた。

 元気のない四人と元気過ぎる一人は目的地に向け、動き出した。




 

「ねえねえ、そのお城ってどんなのかな? でっかいかな? 豪華かな!?」
「さあな。でも、城って言ったらでっかいもんだろ。あいつが言ってたの屋敷だけど」
「城……。屋敷……。……メイドには屋敷の方が似合うと思わないか? いや、だが城にもメイドは居るはずだから似合わない訳がない。……なんという難問なのだ……」
「……………………」

 冒険者の街を出て数分。見晴らしの良い草原をのんきに歩く。いや、それにしてものんき過ぎでしょ。これからマルク達と戦いに行くってのになんでこんなのんきなんだこの人達は。ドンさんだけだよ。無言で怖い顔で歩いてるの。あっ、顔はこれが普通? あの、すいませんでした。

「あっ、そうだ。ねえねえ。敵も五人でこっちも五人だよね。誰が誰の相手をするの?」

 ふとリンさんが発した疑問。

 確かに敵は五人でこっちも五人。マルク、神父、メイド、ドラゴン女、ジャスティス・ロウ。こっちは私、シオンさん、リンさん、コウジさん、ドンさん。誰が誰の相手をすることになっても間違いないのはこの中で私が一番弱いってことかな。

「俺はあの神父様に懺悔しに行かないといけねえから神父様だな。それ以外はまあどうでもいい」
「私はもちろんメ……、いや、あのドラゴン娘も捨てがたいな。…………なんだと。私は究極の二択を迫られているのか」
「やっすい究極だね」
「……ふっ。何を迷っていたのだ私よ。答えは簡単だ。どちらも私が相手をすればいい。そうだ、どうせなら全員私が相手をしようじゃないか。何故なら私は紳士なのだから! 紳士たる者、老若男女全ての人間へと愛を与えなければならないのだから!」
「あっ、あれかなー。お城」

 何だかんだ言っているうちについに指定された屋敷へとたどり着いた。

「……なんか想像してたのと違う」

 そりゃまあお城じゃなくてお屋敷ですし。でも、お屋敷って言ってもすごい大っきい。見た目も高そうだし。……金持ってるなぁ。

「まあいいや。おっじゃましまーす!!」

 大きな屋敷の大きな扉を小さなリンさんが元気よく開けた。

「おー、すごーいきれーい」

 開かれた屋敷の扉をくぐりその中へと入る。その中はリンさんの言うとおりすごく綺麗だった。塵一つ無さそうなぐらい掃除が行き届いてて高そうな調度品がより美しく見える。しかし、

「でも、人の気配がしないね」

 屋敷の中からは物音一つ聞こえない。しんと静まり返っていて不気味な感じ。

「全員別のとこにいるんだろ。わざわざご丁寧にあんな扉まで用意してくれてんだ。あそこから来てくださいって言ってんだろ」

 シオンさんの指差す先には横一列に並んだ扉。同じ扉が五つ並んでいた。

「でも、あれだと中狭くない?」
「魔法がかけてあるんだよ。あの扉の先はどこか別のとこに繋がってんだろ。開けた先が水の中なんてこともあるかもな」
「ふーん、そっかー。まあなんでもいいやー」

 シオンさんの話を聞いてるのか聞いてないのか生返事で扉へ近づくリンさん。すると、

「待てリン!」

 コウジさんが叫ぶように呼び止めた。

「え、なに? びっくりした」
「よく考えまたえ。扉は五つ。敵は五人。その扉一つにつき一人居ると考えていいだろう。だがそれならば当たりを引ける確率は五分の二となる。メイドとドラゴン娘。この当たりを引くためにはこの賭けに勝たなければいけない! 考えろ! いや、感じろ!! 感じるだ彼女達を!!」

 扉に向かってクワッと目を見開き何かを感じ取ろうとするコウジさん。そんなことの為にあんな叫んで呼び止めたんだ……。

「はいはい。勝手に感じててね。ボクこの扉にしよーっと」
「なっ……! 何を勝手に……!」
「じゃあ、俺はこれ」
「シオンボーイまで!?」
「………………」
「せめて何か言いたまえ! ビックボーイ!」
「…………あの、どっちにします?」
「そこは自分で選びたまえよ」
「ええ……」

 感じ取ろうとしていたコウジさんを尻目にみんな好き勝手に扉を選ぶ。って言うか、コウジさんドンさんのことをビックボーイって……。確かにデカイけど。

「よーし! それじゃあいっくよー!! 誰でもかかってこーい!」
「レディ来いレディ来いレディ来いレディ来いレディ来いレディ来い」
「……………………」

 ふんすふんすと意気込むリンさんに一心不乱に祈るコウジさん、静かに扉を見つめるドンさん。まさに三人三様と言ったところ。みんな違うけど、みんな同じ様に扉の先で何が起こるのか全く臆することなく扉へと手を伸ばした。

「ミッチャン頑張って! じゃ、まったねー!」
「……ふう。ふっ、健闘を祈るぞミイナよ。そして、君は全力で私の幸運を祈りたまえ! 私の素敵な出会いの為に!!」
「…………気を付けてな」

 リンさん、コウジさん、ドンさんが扉を開けた。そして、その扉の先へと消えて行く。

「さてと。俺達も行くか。当たって砕けてこい、ミイナ」
「砕けたら駄目じゃないですか」
「いいっての。砕けてバラバラになっても俺が拾い集めて修復してやるよ。いつぞやのゴブリンの時みたいに」
「……これからって時に嫌な記憶思い出させないで下さいよ」
「悪い悪い。ヴォルフにケツ噛まれてたことぐらいすべきだったな」
「それも同じですから」

 こんな時に嫌な思い出ばかり思い出させて。酷い。酷すぎる。でも、嫌なことを思い出したらそれをまたしないようにしようと自然と気が引き締まった。

「帰ったら三人同時指導待ってるからな。あっ、ドンにも入ってもらうか」
「……帰って来たくなくなってきました」
「何言ってんだか。いつも言ってんだろ。弟子には拒否権も選択権もねえんだって。どんな状態で帰って来てもお前の未来はボロ雑巾だ」

 なんて嫌な未来。始まる前から後のことを考えて気が滅入るって。この鬼畜め。まあ、シオンさんらしいと言うかこれがシオンさんだった。酷すぎるのが私の師匠だ。

「じゃあな。勝って帰って来い。修行がまだまだ残ってるからな」
「……はい!」

 扉を開ける。そして、中から溢れ出る光へと私は進んで行った。光によって出来た私の小さな影と共に。

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