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七十四話 ミイナ ③
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金属と金属がぶつかり合う音が響く。突き出した刃は防がれ、迫る刃をいなす。
こちらの拙い攻撃は防がれるが、向こうの攻撃も完璧に防げている。さっきまでの差はもう無い。むしろ、私の方が優勢だ。
「……驚いた。これが君の本気か。すごいじゃないか。よくここまでの力をつけたものだ。それなら、こちらもそろそろ本気を出すとしようか」
「……っ!」
目の前のマルクが一瞬消えたかと錯覚する程のスピードで私へ迫り、一撃を放つ。それを防いだが、すぐに次の一撃が。
マルクのスピードが急激上がる。さっきまで手を抜いていたというのは間違いではない。
マルクが振るう剣を躱す。マルクの剣は細くて鋭い尖った尖端を持つ短めの刺突用の剣。これで突き刺されたら簡単に私の身体など貫くであろう。その剣が猛スピードで私へと幾度なく迫る。
突き出された剣をナイフで受け止める。私の右手にはシオンさんから借りた銀に輝くナイフ。どんな衝撃を受けようとも、刃が欠けることすらないナイフだが、ナイフだからリーチが短い。マルクの剣より短いナイフに、男のマルクと女の私。武器だけでなく体格でも差が出てくる。
だが、まだ私の方が速い。ナイフがリーチで負けていたとしても手数はこちらの方が勝る。素早く手数で攻める。マルクが一の攻撃をする間に私はニの攻撃を。
「くっ、なるほど。速さで攻めて来るか。やるね。僕が少し押されそうだよ」
素早さが上がり、手数で勝っているとは言え押し切れているわけではない。私が少し優勢程度で気を抜けないし、手を緩める事もできない。
影纏いで武神の影を纒っていると言っても、私が纒っているのは影の記憶。以前シオンさんに本物の武神の影を纏わしてもらったときの記憶。それを今纏っているに過ぎない。
そして、それは所詮は記憶。本物の影ではない。だから、武神の経験も知識も何も今の私が纏えていない。身体能力の向上ぐらいしか効果は発揮しておらず、一気に制圧してしまえる程の力は無かった。
「でも、君の攻撃は弱いね」
マルクが距離を取ろうと後ろへ跳ねる。もちろんリーチで劣る私が距離を取られるのはまずいので距離を詰めようと動かなければいけない。だが、私は足を止めた。止めないといけないと頭が告げられた。
「ホーリーレイ」
「っ!」
距離を取ったマルクから放たれたのは眩き光線。向けれた細い剣から放たれた圧倒的熱量の光線。空気を焼き消し、地面を焦がし、私を灰すら残さんと迫る。
「……やっぱりすごいねその黒いの。いったいそれは何なんだい?」
「……教えませんっ!」
それに対し影を前へ展開し受け止める。シオンさんに教えてもらった影魔法。今のは自分の影を操り、ただ前へ展開しただけだが、シオンさん曰く影を影魔法で操ると絶対防御の盾となるらしい。なんでも影魔法で操られた影は時が止まり不変のものとなるとか。よく分からないが。
「ふふっ。まあ、いいよ。今のを見て検討はついてるから。当ててあげようか。今の影でしょ?」
マルクは私の足元を見てニヤリと笑う。
「影を使う魔法なんて聞いたこともないけど、今の見ればそうじゃないかと推理は出来る。君の足元から黒いものが現れ、僕の魔法を受け止めた後、また君の足元へと消えていった。足元にある黒いものなんて影しかないからね。どう当たってる?」
わずかな時間で起こったことなのに当たってる。よく見ている。うざいがその実力は嘘じゃない。
「沈黙は正解だったと思っていいのかな。あ、そう言えば、君の師匠なのかな? あの黒い人に前会った時、君が黒い何かに口を塞がれていたこともあったよね。あれも同じ魔法なのかな? だとしたら、それは師匠から教えてもらったんだね。じゃあ、僕も師匠から教わったものを披露しようかな」
今度はこちらの番とでも言うかのように誇らしげに魔法を発動するマルク。現れたのは二枚の鏡だった。
「ふふふ。どうだい? 面白いでしょ? この魔法は師匠から教えてもらった魔法を改良してできた魔法なんだ。その名も『映し映し出すだけの鏡』」
ふわふわと浮かぶ二枚の鏡。その鏡は今どちらもこちらを向いていて私の姿を映している。
「師匠の魔法は『二枚の二重の両開き扉』って言うんだけど、二つの扉が繋がっているんだよね。片方の扉に入ったものがもう片方の扉から出てくる。そんな魔法なんだけど、それを少し改良してね。僕は扉から鏡にしたんだ」
得意気にマルクが話す。得意気な顔がむかつくが今はそんなこと気にしてられない。相手のことを少しでも知らないといけないから。
「扉から鏡に変わったから何なんだって顔してるね。何が変わったんだって。でも……、教えてませんっ!」
マルクは先程の私の口調を真似し茶化すように言う。似てないし、ただうざい。
「なんてね。そんな怖い顔しないでよ。ちゃんと教えてあげるからさ。この鏡はね、片方が映したものをもう片方の鏡が映し出すんだ。こんなふうにね」
片方の鏡がマルクの方を向き、マルクはその鏡へ向けて魔法を放つ。そして、その魔法を受けた鏡は割れた。
いったい何をしてるのか。頭で考えをまとめる前に身体が動いていた。
「きゃああ!?」
「ああ、避けられちゃったか。でも、これで分かっただろう。説明した通り片方の鏡が映したものなら何でももう片方の鏡で映し出す。それが『映し映し出すだけの鏡』」
地面を抉る魔力の塊。身体が勝手に反応し避けたが、なるほどそう言うことか。マルクの言う通り、片方の鏡が映したものをもう片方の鏡が映し出す。マルクが放った魔法を片方の鏡は映す。そして、そのまま放たれた魔法に当たり割れた。もう一枚の鏡はその映された魔法を全く同じ威力で映し出し、私を襲った。
二枚で一組の鏡。片方が映したものをもう片方が映し出す。厄介と言えば厄介だが、これぐらいなら対処は出来る。
「それで師匠の『二枚の二重の両開き扉』と何が違うんだってかい? ふふ、そんなに焦らないでよ。確かにこれだけならそう変わらないよね」
そもそもお前の師匠の魔法を知らないし興味も無い。だから、そんなこと思ってない。今はそれよりあの鏡の対処だ。マルクの魔法を避けた場合、避けた先にあの鏡を展開されると背後からまた魔法に襲われることになる。それなら魔法は影で防ぐようにしないと。でも、それをすると……、バレなきゃいいんだけど……。
「でも、師匠のは二つの扉が繋がってるだけなんだよ。入ったものを出す。でも、これは違う。これは映したものを映し出す。例えば、こんなふうにね」
こちらのことなどお構い無しにマルクの話は続く。だから、興味ないのに。師匠は入ったものを出して、マルクは映したものを映し出す。映したものなら何でも映し出すからって…………、何でも?
マルクの言葉に合わせ、割れて消えた片方の鏡が再び現れる。現れた鏡はマルクから少し離れていき、あるところで止まる。それに合わせ、もう一枚の鏡はマルクの空いた隣を映すように移動する。
元からあった鏡は何も無いただの地面を映している。現れたもう一枚の鏡はあるものを映す。
その二枚はまるでそれをそこへ映し出そうとしているようで。
片方の鏡に映ったその者を。
鏡が光る。
そして、
「「さあ、第二ラウンドだ」」
マルクがもう一人現れた。
こちらの拙い攻撃は防がれるが、向こうの攻撃も完璧に防げている。さっきまでの差はもう無い。むしろ、私の方が優勢だ。
「……驚いた。これが君の本気か。すごいじゃないか。よくここまでの力をつけたものだ。それなら、こちらもそろそろ本気を出すとしようか」
「……っ!」
目の前のマルクが一瞬消えたかと錯覚する程のスピードで私へ迫り、一撃を放つ。それを防いだが、すぐに次の一撃が。
マルクのスピードが急激上がる。さっきまで手を抜いていたというのは間違いではない。
マルクが振るう剣を躱す。マルクの剣は細くて鋭い尖った尖端を持つ短めの刺突用の剣。これで突き刺されたら簡単に私の身体など貫くであろう。その剣が猛スピードで私へと幾度なく迫る。
突き出された剣をナイフで受け止める。私の右手にはシオンさんから借りた銀に輝くナイフ。どんな衝撃を受けようとも、刃が欠けることすらないナイフだが、ナイフだからリーチが短い。マルクの剣より短いナイフに、男のマルクと女の私。武器だけでなく体格でも差が出てくる。
だが、まだ私の方が速い。ナイフがリーチで負けていたとしても手数はこちらの方が勝る。素早く手数で攻める。マルクが一の攻撃をする間に私はニの攻撃を。
「くっ、なるほど。速さで攻めて来るか。やるね。僕が少し押されそうだよ」
素早さが上がり、手数で勝っているとは言え押し切れているわけではない。私が少し優勢程度で気を抜けないし、手を緩める事もできない。
影纏いで武神の影を纒っていると言っても、私が纒っているのは影の記憶。以前シオンさんに本物の武神の影を纏わしてもらったときの記憶。それを今纏っているに過ぎない。
そして、それは所詮は記憶。本物の影ではない。だから、武神の経験も知識も何も今の私が纏えていない。身体能力の向上ぐらいしか効果は発揮しておらず、一気に制圧してしまえる程の力は無かった。
「でも、君の攻撃は弱いね」
マルクが距離を取ろうと後ろへ跳ねる。もちろんリーチで劣る私が距離を取られるのはまずいので距離を詰めようと動かなければいけない。だが、私は足を止めた。止めないといけないと頭が告げられた。
「ホーリーレイ」
「っ!」
距離を取ったマルクから放たれたのは眩き光線。向けれた細い剣から放たれた圧倒的熱量の光線。空気を焼き消し、地面を焦がし、私を灰すら残さんと迫る。
「……やっぱりすごいねその黒いの。いったいそれは何なんだい?」
「……教えませんっ!」
それに対し影を前へ展開し受け止める。シオンさんに教えてもらった影魔法。今のは自分の影を操り、ただ前へ展開しただけだが、シオンさん曰く影を影魔法で操ると絶対防御の盾となるらしい。なんでも影魔法で操られた影は時が止まり不変のものとなるとか。よく分からないが。
「ふふっ。まあ、いいよ。今のを見て検討はついてるから。当ててあげようか。今の影でしょ?」
マルクは私の足元を見てニヤリと笑う。
「影を使う魔法なんて聞いたこともないけど、今の見ればそうじゃないかと推理は出来る。君の足元から黒いものが現れ、僕の魔法を受け止めた後、また君の足元へと消えていった。足元にある黒いものなんて影しかないからね。どう当たってる?」
わずかな時間で起こったことなのに当たってる。よく見ている。うざいがその実力は嘘じゃない。
「沈黙は正解だったと思っていいのかな。あ、そう言えば、君の師匠なのかな? あの黒い人に前会った時、君が黒い何かに口を塞がれていたこともあったよね。あれも同じ魔法なのかな? だとしたら、それは師匠から教えてもらったんだね。じゃあ、僕も師匠から教わったものを披露しようかな」
今度はこちらの番とでも言うかのように誇らしげに魔法を発動するマルク。現れたのは二枚の鏡だった。
「ふふふ。どうだい? 面白いでしょ? この魔法は師匠から教えてもらった魔法を改良してできた魔法なんだ。その名も『映し映し出すだけの鏡』」
ふわふわと浮かぶ二枚の鏡。その鏡は今どちらもこちらを向いていて私の姿を映している。
「師匠の魔法は『二枚の二重の両開き扉』って言うんだけど、二つの扉が繋がっているんだよね。片方の扉に入ったものがもう片方の扉から出てくる。そんな魔法なんだけど、それを少し改良してね。僕は扉から鏡にしたんだ」
得意気にマルクが話す。得意気な顔がむかつくが今はそんなこと気にしてられない。相手のことを少しでも知らないといけないから。
「扉から鏡に変わったから何なんだって顔してるね。何が変わったんだって。でも……、教えてませんっ!」
マルクは先程の私の口調を真似し茶化すように言う。似てないし、ただうざい。
「なんてね。そんな怖い顔しないでよ。ちゃんと教えてあげるからさ。この鏡はね、片方が映したものをもう片方の鏡が映し出すんだ。こんなふうにね」
片方の鏡がマルクの方を向き、マルクはその鏡へ向けて魔法を放つ。そして、その魔法を受けた鏡は割れた。
いったい何をしてるのか。頭で考えをまとめる前に身体が動いていた。
「きゃああ!?」
「ああ、避けられちゃったか。でも、これで分かっただろう。説明した通り片方の鏡が映したものなら何でももう片方の鏡で映し出す。それが『映し映し出すだけの鏡』」
地面を抉る魔力の塊。身体が勝手に反応し避けたが、なるほどそう言うことか。マルクの言う通り、片方の鏡が映したものをもう片方の鏡が映し出す。マルクが放った魔法を片方の鏡は映す。そして、そのまま放たれた魔法に当たり割れた。もう一枚の鏡はその映された魔法を全く同じ威力で映し出し、私を襲った。
二枚で一組の鏡。片方が映したものをもう片方が映し出す。厄介と言えば厄介だが、これぐらいなら対処は出来る。
「それで師匠の『二枚の二重の両開き扉』と何が違うんだってかい? ふふ、そんなに焦らないでよ。確かにこれだけならそう変わらないよね」
そもそもお前の師匠の魔法を知らないし興味も無い。だから、そんなこと思ってない。今はそれよりあの鏡の対処だ。マルクの魔法を避けた場合、避けた先にあの鏡を展開されると背後からまた魔法に襲われることになる。それなら魔法は影で防ぐようにしないと。でも、それをすると……、バレなきゃいいんだけど……。
「でも、師匠のは二つの扉が繋がってるだけなんだよ。入ったものを出す。でも、これは違う。これは映したものを映し出す。例えば、こんなふうにね」
こちらのことなどお構い無しにマルクの話は続く。だから、興味ないのに。師匠は入ったものを出して、マルクは映したものを映し出す。映したものなら何でも映し出すからって…………、何でも?
マルクの言葉に合わせ、割れて消えた片方の鏡が再び現れる。現れた鏡はマルクから少し離れていき、あるところで止まる。それに合わせ、もう一枚の鏡はマルクの空いた隣を映すように移動する。
元からあった鏡は何も無いただの地面を映している。現れたもう一枚の鏡はあるものを映す。
その二枚はまるでそれをそこへ映し出そうとしているようで。
片方の鏡に映ったその者を。
鏡が光る。
そして、
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