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遥かなる道の途中
しおりを挟む拳、刀、足、肘に膝に石、それに影。様々なものが色んな角度、速度で襲い掛かる。
「くっ、うっ、はっ右!?」
「残念逆だ」
「ぐえっ!?」
マルクとの戦いの二日後、修行という名のいじめは再開していた。
「ぐ、うううう、病み上がりなんだからもう少し手加減してくれても……」
「あん? お前が駄々こねるから昨日一日休みやっただろうが」
「み、短すぎます……」
マルク達との戦いのあと私とコウジさんは重傷を負ったがそれもシオンさんにすぐに治された。だから、正直体はすっごい元気。でも、もう少し休みがほしい。あの激闘のあとなんだから心を少し休ませてほしい。なんていうのは許されなかった。
「いや、俺だって可哀想だとは思ってるぜ? 命を懸けた激戦の二日後には命を落とすかもしれない修行の再開。ああ、なんて可哀想なんだ」
言葉と表情とまったく合っていない。その顔は可哀想と言う顔ではない。ニヤニヤニヤニヤしやがって。こっちは命を落とすかもしれない修行をやって……え、命を落とすかもしれないの?
「でも、しょうがねえよなぁ。これも全てミイナが弱えから。ああ! ああ、ミイナに溢れんばかりの才能があれば! マルクぐらいは圧倒して、無傷で完勝する力があれば! ミイナが(才)能無しでなければ!」
「言葉でえぐるのやめてください!」
言葉はずるい! どう頑張っても避けれない! それなのに一番ダメージを与えてくる! あれ? 目から汗が……。
「なんか毎回それ言われてない? ミッちゃんはそんなにダメじゃないと思うよ?」
リンさん……! ああ、天使はここにいたんだっ……!
「いやいやこいつはダメダメだろ。マルクごときに死にかけてんだぜ?」
「うーん、そっかぁ。じゃ、しかたないね」
「リンさん……」
天使が悪魔に負けた。そそのかされて堕天した。堕天使からの追撃が痛い。っていうか諦めが早い。少しは抵抗して下さい。
「ご、ごときって言いますけど私からすれば格上の相手だったんですよっ!それなのに勝ったんです!すごいじゃないですかっ!」
リンさんの諦めが早かったので、代わりに私が抵抗してみる。自画自賛になったけど自分でもよく頑張ったと思う。マルクは強かった。クズみたいなやつだったけどその実力は本物だった。それに私は勝った。だから、私はすごいっ!
「なに言ってんだ。勝つのなんて当たり前だろうが。あのお坊ちゃん攻撃のことしか頭になくて防御はからっきしだっただろ。お前が色気出さず防御に徹して、カウンター一撃入れるだけで楽に勝てたものを。バカみてえに自分からナイフ振り回しやがって」
「ぐっ……」
た、確かにマルクは防御はうまくなかった。でも、それ以上に攻撃が強かったし、それに分身までされたから……。
「分身? それこそチャンスだろうが。それなのにカカシみてえに突っ立てやがって。リンに教わっただろ。なあ、リン?」
「え? あー、うん、そうだよ? ちゃんと?教えた?でしょ?」
「なんで疑問系なんだよ」
リンさん絶対何のことか分かってないじゃないですか。「?」だらけじゃないですか。
「えー、だってシオン意味わかんないことしか言わないんだもん。シオンが悪い!」
「いや、意味分かるだろ。お前はもうちょっと勉強すべきだな。いったいどんな教育を受けてきたんだか。なあ、お義父さん?」
「誰がお義父さんだ馬鹿者」
一人優雅にお茶を楽しんでいたコウジさんをシオンさんが茶化す。めんどくさい人がめんどくさい人に触れてしまった。ああもうめんどくさい。
「だが、そこの馬鹿者の言う通りだ。リン、お前はもっと勉強しなさい。おバカな娘も可愛いがそれ許されるのは若いうちだけだ」
「師匠と違って年寄でもおバカでもないし大丈夫ですぅー」
あっかんべーとコウジさんに向けて舌を出すリンさん。かわいい。
「はぁ、まったく。それにミイナもだ。相手が分身してきたのに案山子の様に突っ立てるなどあり得ない。対複数戦闘の基本は動き回ることだ。姿を捉えられず、死角から一撃を入れ敵の数を減らす。優雅に待ち構えていいのは私ぐらいだ」
「うっ、は、はい……」
まさかこっちに飛び火してくるとは。リンさんがあっかんべーなんてするから。リンさんのおバカ。
「さて、そろそろ私も動くとしようか。稽古の続きだミイナ」
「え」
「休憩は終わりだな。じゃ、避けるのレベル五再開だ」
「え、いやもうちょっと休憩を……」
「師匠が加わるならレベル六になるんじゃない?」
「お、よかったなミイナ憧れの飛び級だぜ?」
「よくないです!」
そもそもレベル五でも十分飛び級……、あ、ちょっとなんで刀抜いてるんですか。なんでみんなこっちを見るんですか。なんでみんなそんな笑ってるんですか。
「え、あ、ちょ、あ、あの、優しくして下さいね……?」
「「「なんで?」」」
「なんで!? な、なんでって、なんでハモるんですか!?」
「そっちツッコむのミッちゃん」
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