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三話 ある日森の中で ③
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「た、食べられてるぅ!!?」
目を開けて見た光景。それは人がドラゴンに食べられ、足だけが口から見えている光景だった。
「え? マジで? 食われてる? しまった。すまんな、押し飛ばす距離足りなかったか」
「喋ってる!!?」
ドラゴンに食べられ、足だけ見えている状況なのにその食べられてる人物は私へ話しかけてきた。まるで何事でもないかのように。叫び声でも、助けを求め泣き喚く声でもなく平常時の声で。
「いや、そりゃ喋るだろ。俺だって人間だし」
「た、食べられてるのに喋ってる……? 生きて、食べられてる? しゃ、喋ってる? 生きてる?」
私の頭の中はパニック状態と化した。視覚から得る情報と聴覚から得る情報とが余りにも乖離していたからだ。ドラゴンに誰かが食べれている。これは間違いない。そして、私に話しかけているのはその食べれている人。これも間違いない。どっちも間違いないはずなのにどっちかは間違いでしょ!?
あれ食べられてるよね!? 結構ガッツリ食べられてるよね!? 何回も咀嚼されてるよね!? でも、すごく軽い感じで話しかけてくるし、あっ。もしかして、あの咀嚼に見えてるのは実は甘噛みで全然何ともないのかも? なーんだ。ドラゴンとのスキンシップかぁ。アハハハ。
「ん? 声が外から聞こえるってことはあんたは食われてないのか。いやー、よかった。よかった。俺のせいで死んだなんて祟られたらかなわねえしな」
その人物はあっはっはと食べられながら笑う。うん。やっぱりスキンシップだよね。そうじゃないとあんな軽く笑えないもん。
「えー、えーと、あの、大丈夫なんですか?」
でも、一応確認をしておこう。見るからに大丈夫そうじゃないけど、声は大丈夫そうだし、多分大丈夫なんだろう。
「ああ、大丈夫大丈夫。俺不死だし」
「ふ、不死?」
ふし。不死? 不死ってなに? 不死だから大丈夫? 不死って言うことは死なないから大丈夫ってこと? それとも大丈夫だから死なないということ? うん、分からない。でも、なんだかその人が言う「大丈夫」って本当に大丈夫な気がするのは不思議。
「そうそう。俺不死だからこの程度じゃ死なねえ……、って、そろそろ鬱陶しいな。おら、出せ」
「!? ギャオオォオ!!」
突然、ドラゴンの口の中からべキッという鈍い音が響く。その音が響いた後、ドラゴンは大きく口を開け、呻き、悶だした。
そして、開かれた口の中から先程からの声の主が現れる。
「チッ、唾液でベチャベチャじゃねえか。最悪」
「ひぃ! ち、血だらけー!!」
出てきた人は全身真っ赤で血だらけだった。あっ……、ちょっとくらっと来た。ふっと意識が消えそうだった。危ない危ない。
「ん? ああ、そう言えば血も出てんのか。ちょっと待てよ。はい。綺麗綺麗。元通り」
……え、あれ? 赤色が、血が消えた。ついさっきまで赤と透明の粘液に包まれていたはずなのに、その人がパッパッと服についたゴミを払うような仕草をすれば一瞬で綺麗さっぱり消えてなくなった。何かの魔法? それとも私意識飛んでた? いや、もういいや。そんなの考えないで。考えたところで何も分からないだろうし。それにこれでどんな人か見えてきたしいいや。
きれいになり遂に声の主とご対面。その人物は黒い髪に黒い瞳で纏う衣も黒一色の男性だった。整った顔立ちでまだ若い十七、八ぐらいかな? でも、なんだろう。すごく落ち着きというか、風格や気品が漂うような気がする。
「えー、それでなんだっけ? ああ、俺の不死の話だな。俺は不死だからドラゴンに噛まれたぐらいじゃ死なねえし、何されても死なねえというより死ねねえ訳だ。だから、大丈夫。分かったか? 分かったな?」
「…………」
落ち着き? 風格? 気品? え? なんだっけそれ? そんなの知らない。この人はすごく軽くてテキトーな感じだよ。うん、それよりあの白いのなんだろう? 大きな歯みたいな、まるでドラゴンの歯みたいなやつ。ドラゴンの歯って折れるんだー。
「あれ? おーい。聞いてる?」
「はっ! え、はい! 大丈夫です!」
「多分大丈夫じゃねえな」
大丈夫? はい、大丈夫です。何が大丈夫じゃないのか分かってませんから。
「す、すいません。ちょっと混乱していて……」
「混乱?」
「その、今までの状況というか、今の状況というか」
スライムから逃げたらドラゴンに遭遇してそのドラゴンに食べられてるのに平然としている人が不死だなんて言ったり。状況が変わりすぎて訳がわからない。不死って何? そう言えばあのスライムの核はどこにあったんだろ?
「ふーん。混乱ねえ。まあ、そうだな。今はこれだけ理解していたらいい。俺は……」
「グルオオォォオオォオオォ!!」
彼の言葉を遮るようにドラゴンが再び咆哮をする。どうやら、彼にやられたダメージから回復したようだ。その炎のような双眸をさらに赤く、燃え盛らせ、彼へと向ける。
そして、未だ私に向き合い、ドラゴンへと背を向けていた彼は少し呆れた様なため息を一つついたあと、ようやくドラゴンへと対峙する。ドラゴンへ対峙し、私へと背を向ける青年。
その背を、その影を見ただけで分かった。先程ドラゴンに遮られた彼の言葉の続きが。
「俺はこのドラゴンより圧倒的に強いってことを」
彼の言葉に呼応するように影が蠢き出す。
目を開けて見た光景。それは人がドラゴンに食べられ、足だけが口から見えている光景だった。
「え? マジで? 食われてる? しまった。すまんな、押し飛ばす距離足りなかったか」
「喋ってる!!?」
ドラゴンに食べられ、足だけ見えている状況なのにその食べられてる人物は私へ話しかけてきた。まるで何事でもないかのように。叫び声でも、助けを求め泣き喚く声でもなく平常時の声で。
「いや、そりゃ喋るだろ。俺だって人間だし」
「た、食べられてるのに喋ってる……? 生きて、食べられてる? しゃ、喋ってる? 生きてる?」
私の頭の中はパニック状態と化した。視覚から得る情報と聴覚から得る情報とが余りにも乖離していたからだ。ドラゴンに誰かが食べれている。これは間違いない。そして、私に話しかけているのはその食べれている人。これも間違いない。どっちも間違いないはずなのにどっちかは間違いでしょ!?
あれ食べられてるよね!? 結構ガッツリ食べられてるよね!? 何回も咀嚼されてるよね!? でも、すごく軽い感じで話しかけてくるし、あっ。もしかして、あの咀嚼に見えてるのは実は甘噛みで全然何ともないのかも? なーんだ。ドラゴンとのスキンシップかぁ。アハハハ。
「ん? 声が外から聞こえるってことはあんたは食われてないのか。いやー、よかった。よかった。俺のせいで死んだなんて祟られたらかなわねえしな」
その人物はあっはっはと食べられながら笑う。うん。やっぱりスキンシップだよね。そうじゃないとあんな軽く笑えないもん。
「えー、えーと、あの、大丈夫なんですか?」
でも、一応確認をしておこう。見るからに大丈夫そうじゃないけど、声は大丈夫そうだし、多分大丈夫なんだろう。
「ああ、大丈夫大丈夫。俺不死だし」
「ふ、不死?」
ふし。不死? 不死ってなに? 不死だから大丈夫? 不死って言うことは死なないから大丈夫ってこと? それとも大丈夫だから死なないということ? うん、分からない。でも、なんだかその人が言う「大丈夫」って本当に大丈夫な気がするのは不思議。
「そうそう。俺不死だからこの程度じゃ死なねえ……、って、そろそろ鬱陶しいな。おら、出せ」
「!? ギャオオォオ!!」
突然、ドラゴンの口の中からべキッという鈍い音が響く。その音が響いた後、ドラゴンは大きく口を開け、呻き、悶だした。
そして、開かれた口の中から先程からの声の主が現れる。
「チッ、唾液でベチャベチャじゃねえか。最悪」
「ひぃ! ち、血だらけー!!」
出てきた人は全身真っ赤で血だらけだった。あっ……、ちょっとくらっと来た。ふっと意識が消えそうだった。危ない危ない。
「ん? ああ、そう言えば血も出てんのか。ちょっと待てよ。はい。綺麗綺麗。元通り」
……え、あれ? 赤色が、血が消えた。ついさっきまで赤と透明の粘液に包まれていたはずなのに、その人がパッパッと服についたゴミを払うような仕草をすれば一瞬で綺麗さっぱり消えてなくなった。何かの魔法? それとも私意識飛んでた? いや、もういいや。そんなの考えないで。考えたところで何も分からないだろうし。それにこれでどんな人か見えてきたしいいや。
きれいになり遂に声の主とご対面。その人物は黒い髪に黒い瞳で纏う衣も黒一色の男性だった。整った顔立ちでまだ若い十七、八ぐらいかな? でも、なんだろう。すごく落ち着きというか、風格や気品が漂うような気がする。
「えー、それでなんだっけ? ああ、俺の不死の話だな。俺は不死だからドラゴンに噛まれたぐらいじゃ死なねえし、何されても死なねえというより死ねねえ訳だ。だから、大丈夫。分かったか? 分かったな?」
「…………」
落ち着き? 風格? 気品? え? なんだっけそれ? そんなの知らない。この人はすごく軽くてテキトーな感じだよ。うん、それよりあの白いのなんだろう? 大きな歯みたいな、まるでドラゴンの歯みたいなやつ。ドラゴンの歯って折れるんだー。
「あれ? おーい。聞いてる?」
「はっ! え、はい! 大丈夫です!」
「多分大丈夫じゃねえな」
大丈夫? はい、大丈夫です。何が大丈夫じゃないのか分かってませんから。
「す、すいません。ちょっと混乱していて……」
「混乱?」
「その、今までの状況というか、今の状況というか」
スライムから逃げたらドラゴンに遭遇してそのドラゴンに食べられてるのに平然としている人が不死だなんて言ったり。状況が変わりすぎて訳がわからない。不死って何? そう言えばあのスライムの核はどこにあったんだろ?
「ふーん。混乱ねえ。まあ、そうだな。今はこれだけ理解していたらいい。俺は……」
「グルオオォォオオォオオォ!!」
彼の言葉を遮るようにドラゴンが再び咆哮をする。どうやら、彼にやられたダメージから回復したようだ。その炎のような双眸をさらに赤く、燃え盛らせ、彼へと向ける。
そして、未だ私に向き合い、ドラゴンへと背を向けていた彼は少し呆れた様なため息を一つついたあと、ようやくドラゴンへと対峙する。ドラゴンへ対峙し、私へと背を向ける青年。
その背を、その影を見ただけで分かった。先程ドラゴンに遮られた彼の言葉の続きが。
「俺はこのドラゴンより圧倒的に強いってことを」
彼の言葉に呼応するように影が蠢き出す。
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