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四話 ある日森の中で ④
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太陽の陽は優しく降り注ぎ、森に、魔物に、人に影を作らせた。木の形をしたもの、竜の形をしたもの、人の形をしたもの。それぞれの影を作り、竜の影が彼を包み、彼の影は私を。
「せっかく、この牙だけで見逃してやろうと思ったのに何歯向かって来てるんだか。あっ、歯向かいたいからその歯返せってか?」
怒りに燃えるドラゴン。ものすごく怖い。なのに、彼はヘラヘラとドラゴンを茶化す。止めて。心臓止まる。
「オオォォオォォ!!」
彼のせいで怒り狂うドラゴンは咆哮をする。鼓膜が破れそうな程の大きな咆哮。とっさに耳を塞ぐも全然意味がない。聞こえる。自分よりも圧倒的に強き者の咆哮が。耳を塞いで音を遮断しても聞こえる。本能が恐怖を。
咆哮の後、ドラゴンは大きく息を吸い込み、そして、燃え盛る炎を放った。
ああ、これはダメだ。この炎は私を焼き尽くすどころか森全部焼き尽くすぐらいの勢いがあるし、もうおしまいだ。全部燃えてしまう。と思っていた。
「おいおい、こんな火の粉が俺に効くとでも思ってんのか?」
でも、全てを焼き尽くすはずの炎は森はおろか私にすら届かなかった。私の目の前、黒くはためく衣の彼が炎を全て受け止めていたからだ。
「こんなとろ火以下の火力じゃレアにすら出来ねえぞ。もっと火力上げてみろよ」
燃え盛る赤い炎は黒いによって受け止められる。いや、正確には彼ではない。彼の前に壁のように存在する黒い物体によって。あの炎を受け止めてる。すごい。けど、挑発は止めて。
「おお、ちょっとだけ上がったな。やれば出来るじゃねえか」
彼の挑発のお陰か、ドラゴンの吐く炎はさらに火力を強める。でも、それでも届かない。必死に炎を吐くドラゴンと余裕綽々の彼。対照的な二人の態度が私でも分かるぐらい明確にその実力差を示していた。
「上がったのはいいが、結局この程度か。もう飽きてきたし、そろそろ終わりにするか」
彼がそう言うと、炎を受け止めていた黒い物体が大きく広がり炎を包み込み始める。黒い物体は赤い炎を飲み込んでいき、炎の放出源であるドラゴンへと迫る。
それに対し危険を感じたのかドラゴンは炎の放出を止め、その大きな翼を羽ばたかせ空へと脱出を図る。一度羽ばたかすだけで空高くへと舞い上がることの出来るドラゴンの翼。が、そんな翼を持つドラゴンの脱出は失敗に終わった。翼を羽ばたかせ、上昇を開始したドラゴンが急に停止したのだ。丁度森の木々ぐらいの高さで。
「ギャオオォ!! オオオォオォ!?」
空中で停止し、ドラゴンは困惑をしている。でも、それ以上に困惑しているのは何を隠そう私だった。
ドラゴンが空中で停止している!? 一体何を狙ってるの!? 空からの火炎放射だったらどうしよう! でも、あのドラゴン自分で空中停止しているくせになんで驚いてるの?
先程のように目の前のからの攻撃なら彼が防いでくれるはず。でも、上からなら果たして彼は防いでくれるのか。そんな攻撃に対する恐怖心や不安。そして、自分で停止しているはずのドラゴンが何故か驚いてることに対する疑問。それによりドラゴン以上に困惑する私。
「おーい、大丈夫か? また何か考え事してのか?」
声が聞こえた。多分彼から私への声。でも、何だか変。彼は今も私に背を向けて立っている。けど、聞こえてきた声は前からじゃなかったような。声が聞こえたのは、下?
「今度からはスカート履こうな。短パンじゃ中が見えねえだろ」
「え……? ええええぇえぇー!? な、なにこれ、なにこれ!?」
私が下へと目線を移し見たものは彼の影だった。でも、その影は普通ではなかった。動いて喋っていた。影が一人で。
「すごいだろ。覗き放題なんだぜ」
「はあ!? いや、あの、はい!?」
影が動き、影が話しかけてくる。影の持ち主である彼は全く動いても喋ってもいないのに。
「これはな影魔法って言って、影を使ってする魔法なんだ。この今話しているのもだし、ドラゴンを空中に止めているのも影魔法の一つ、影踏みによるものだ。面白いだろ?」
影は身振り手振り楽しそうに動き、話す。真っ黒なので表情は分からないけど、さも愉快そうに。
「か、影魔法……?」
「そうそう。影魔法はな、ああ、やっぱりこいつ始末してからゆっくり話すか。影踏みずっとやってるの疲れるし」
影魔法について説明しだすのかと思いきや、影は私からドラゴンの方へと向いてしまう。
影がドラゴンの方に向き、彼が本気で対峙したその時、森へ一迅の風が吹き抜けた。風は木を揺らし、木の影も揺らす。ゆらゆらと揺らめく木の影達。それはまるで嗤っているようだった。実力差も分からず無謀にも闘いを選んだ者を。木が、森が哀れなドラゴンを嗤う。そして、青年の影ももちろん笑っていた。腹を抱え指を指し、馬鹿笑いをしていた。
「さて、お別れの時間だ。短い時間だったが楽しかったぜ。そのお礼としてはなんだが、お前達ドラゴンの王による一撃で終わらせてやろう。光栄に思えよ?」
影ではなく彼が言う。ドラゴンへの別れの言葉を。そして、彼の影は蠢き出す。
「纏え、影よ。竜の王たる者の影を! 影纏い『竜王バハムート』!」
それはまさに王たる者の影。竜の王にして最強の者の影。その影が今ここに現れた。森を、大地を、空気を震わせ、圧倒的威圧感を放つ影が彼の影となり現れた。人の形をしていた彼の影は竜王の影へと変化し、その力を彼に宿す。
「じゃあな。次は力の差ぐらい分かるようになれよ」
彼はドラゴンへと手をかざす。その手にはとてつもない力が集まり、そして、放たれる。
「竜王の劫火」
放たれたのは一瞬。でも、その一瞬で全てが燃えた。木が、空が、ドラゴンが。それはまるでこの世の全てを焼き尽くさんとするかのような豪炎。さっきのドラゴンの炎とは比べ物にもならない。
そして、炎は放たれた一瞬で全てを燃やし尽くし消えた。炎もドラゴンも何もかも。一瞬で焼き尽くしドラゴンに断末魔さえ上げることを許さなかった。
「おお。快晴、快晴」
ケラケラと笑う声が聞こえる。……はっ! 完全に呆気に取られてた。ちゃんとしないと。見つけたんだから。私の求めてた人を。
「あ、あなたは一体……?」
「俺? 俺はシオン。シオン=スクートだ」
これが私とシオンさんとの出会いだった。
「せっかく、この牙だけで見逃してやろうと思ったのに何歯向かって来てるんだか。あっ、歯向かいたいからその歯返せってか?」
怒りに燃えるドラゴン。ものすごく怖い。なのに、彼はヘラヘラとドラゴンを茶化す。止めて。心臓止まる。
「オオォォオォォ!!」
彼のせいで怒り狂うドラゴンは咆哮をする。鼓膜が破れそうな程の大きな咆哮。とっさに耳を塞ぐも全然意味がない。聞こえる。自分よりも圧倒的に強き者の咆哮が。耳を塞いで音を遮断しても聞こえる。本能が恐怖を。
咆哮の後、ドラゴンは大きく息を吸い込み、そして、燃え盛る炎を放った。
ああ、これはダメだ。この炎は私を焼き尽くすどころか森全部焼き尽くすぐらいの勢いがあるし、もうおしまいだ。全部燃えてしまう。と思っていた。
「おいおい、こんな火の粉が俺に効くとでも思ってんのか?」
でも、全てを焼き尽くすはずの炎は森はおろか私にすら届かなかった。私の目の前、黒くはためく衣の彼が炎を全て受け止めていたからだ。
「こんなとろ火以下の火力じゃレアにすら出来ねえぞ。もっと火力上げてみろよ」
燃え盛る赤い炎は黒いによって受け止められる。いや、正確には彼ではない。彼の前に壁のように存在する黒い物体によって。あの炎を受け止めてる。すごい。けど、挑発は止めて。
「おお、ちょっとだけ上がったな。やれば出来るじゃねえか」
彼の挑発のお陰か、ドラゴンの吐く炎はさらに火力を強める。でも、それでも届かない。必死に炎を吐くドラゴンと余裕綽々の彼。対照的な二人の態度が私でも分かるぐらい明確にその実力差を示していた。
「上がったのはいいが、結局この程度か。もう飽きてきたし、そろそろ終わりにするか」
彼がそう言うと、炎を受け止めていた黒い物体が大きく広がり炎を包み込み始める。黒い物体は赤い炎を飲み込んでいき、炎の放出源であるドラゴンへと迫る。
それに対し危険を感じたのかドラゴンは炎の放出を止め、その大きな翼を羽ばたかせ空へと脱出を図る。一度羽ばたかすだけで空高くへと舞い上がることの出来るドラゴンの翼。が、そんな翼を持つドラゴンの脱出は失敗に終わった。翼を羽ばたかせ、上昇を開始したドラゴンが急に停止したのだ。丁度森の木々ぐらいの高さで。
「ギャオオォ!! オオオォオォ!?」
空中で停止し、ドラゴンは困惑をしている。でも、それ以上に困惑しているのは何を隠そう私だった。
ドラゴンが空中で停止している!? 一体何を狙ってるの!? 空からの火炎放射だったらどうしよう! でも、あのドラゴン自分で空中停止しているくせになんで驚いてるの?
先程のように目の前のからの攻撃なら彼が防いでくれるはず。でも、上からなら果たして彼は防いでくれるのか。そんな攻撃に対する恐怖心や不安。そして、自分で停止しているはずのドラゴンが何故か驚いてることに対する疑問。それによりドラゴン以上に困惑する私。
「おーい、大丈夫か? また何か考え事してのか?」
声が聞こえた。多分彼から私への声。でも、何だか変。彼は今も私に背を向けて立っている。けど、聞こえてきた声は前からじゃなかったような。声が聞こえたのは、下?
「今度からはスカート履こうな。短パンじゃ中が見えねえだろ」
「え……? ええええぇえぇー!? な、なにこれ、なにこれ!?」
私が下へと目線を移し見たものは彼の影だった。でも、その影は普通ではなかった。動いて喋っていた。影が一人で。
「すごいだろ。覗き放題なんだぜ」
「はあ!? いや、あの、はい!?」
影が動き、影が話しかけてくる。影の持ち主である彼は全く動いても喋ってもいないのに。
「これはな影魔法って言って、影を使ってする魔法なんだ。この今話しているのもだし、ドラゴンを空中に止めているのも影魔法の一つ、影踏みによるものだ。面白いだろ?」
影は身振り手振り楽しそうに動き、話す。真っ黒なので表情は分からないけど、さも愉快そうに。
「か、影魔法……?」
「そうそう。影魔法はな、ああ、やっぱりこいつ始末してからゆっくり話すか。影踏みずっとやってるの疲れるし」
影魔法について説明しだすのかと思いきや、影は私からドラゴンの方へと向いてしまう。
影がドラゴンの方に向き、彼が本気で対峙したその時、森へ一迅の風が吹き抜けた。風は木を揺らし、木の影も揺らす。ゆらゆらと揺らめく木の影達。それはまるで嗤っているようだった。実力差も分からず無謀にも闘いを選んだ者を。木が、森が哀れなドラゴンを嗤う。そして、青年の影ももちろん笑っていた。腹を抱え指を指し、馬鹿笑いをしていた。
「さて、お別れの時間だ。短い時間だったが楽しかったぜ。そのお礼としてはなんだが、お前達ドラゴンの王による一撃で終わらせてやろう。光栄に思えよ?」
影ではなく彼が言う。ドラゴンへの別れの言葉を。そして、彼の影は蠢き出す。
「纏え、影よ。竜の王たる者の影を! 影纏い『竜王バハムート』!」
それはまさに王たる者の影。竜の王にして最強の者の影。その影が今ここに現れた。森を、大地を、空気を震わせ、圧倒的威圧感を放つ影が彼の影となり現れた。人の形をしていた彼の影は竜王の影へと変化し、その力を彼に宿す。
「じゃあな。次は力の差ぐらい分かるようになれよ」
彼はドラゴンへと手をかざす。その手にはとてつもない力が集まり、そして、放たれる。
「竜王の劫火」
放たれたのは一瞬。でも、その一瞬で全てが燃えた。木が、空が、ドラゴンが。それはまるでこの世の全てを焼き尽くさんとするかのような豪炎。さっきのドラゴンの炎とは比べ物にもならない。
そして、炎は放たれた一瞬で全てを燃やし尽くし消えた。炎もドラゴンも何もかも。一瞬で焼き尽くしドラゴンに断末魔さえ上げることを許さなかった。
「おお。快晴、快晴」
ケラケラと笑う声が聞こえる。……はっ! 完全に呆気に取られてた。ちゃんとしないと。見つけたんだから。私の求めてた人を。
「あ、あなたは一体……?」
「俺? 俺はシオン。シオン=スクートだ」
これが私とシオンさんとの出会いだった。
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