最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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五話 ある日森の中で ⑤

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「シオン……、スクートさん……」

 黒き彼はシオンと名乗る。影を操り、不死を自称する彼。シオン=スクート。

「そう。シオン=スクートさんだ。それで、君の名は?」
「私は……、ミイナ=ロジャースです」
「ふうん。ミイナね。じゃあ、ミイナ。元気でな」

 あっ、はい。お元気で。…………え。

「え……、ええ!? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

 ちょっと待って! あまりのあっさりさに私もさらっとお別れするところだった。危ない。まだ何も言えてない。

「あ? なんだよ? ああ、お礼なんていいぞ。気にしなくて。じゃ、そういうことで。バイバーイ」
「バイバイ……。じゃない! だから、待って下さいよ!」

 なんでこうもあっさり行こうとするの!? それになんでこうもあっさり流されるの!? 私!

「えー、もうなんだよ。忙しいんだよ俺は。日光浴させろよ」
「全然暇じゃないですか!」

 日光浴って! 絶対暇なやつでしょ! それより私の話を聞いて欲しいのに。

「少しだけでいいですから! 私の話を聞いてください!」
「えー、じゃあ、ちょっとだけな」

 ぐっ、あからさまにどうでもいい感を出してきてる。でも、一応許可を得たんだからめげずに話すのよ、ミイナ。

「まずは、助けて頂いてありがとうございます」
「どういたしまして」

 まずはお礼を。お礼は要らないなんて言われたけど、命を助けてもらったんだからお礼を言うだけじゃ足りないかもしれないけど、言わないと。

「……えーと、それで、あの……、」
「なんだよ?」

 言おうと思っていたことをいざ言おうとすると何か言いにくい。こんなこといきなり言うってどうなんだろ。

「えー、えーとですね……」
「じゃ、達者でな。ミイナ」
「あっ、シオンさんもお達者で、じゃない! 待って下さい! ごめんなさい、言いますから!」

 待って! 言います、言いますから! ふっーと深呼吸一つして、よし! いける!
 
「私、私を弟子にして下さい!」
「は? 弟子?」

 言った。言っちゃった。初対面の人にいきなり弟子にしてなんて言っちゃった。あ、やっぱり、予想通り驚いてる。だよね。いきなりこんなこと言われたたら驚くよね。驚くし、何か気味悪いような気もするよね。やっぱり断られるよね。

「いいけど?」
「ですよねー。いいですよねー。……え?」

 いいけど? イイケド? ……いいの?

「何を学びたいのか知らねえけど別にいいぞ。丁度一人だし」
「え、あの。こんなに簡単に決めていいんですか?」
「ん? なりたいんじゃねえの?」
「いや、それはそうですけど……」

 弟子なりたいけど、そんな簡単に決めていいの? なんかもっとこう、断られたけど雨の中でもずっと家の前で待ち続けて遂に許され弟子に、なんて感じになるかもなんて思ってたからこんなに簡単に許されるなんてこっちが驚いた。

「弟子の一人や二人ぐらい暇つぶしに丁度いいだろうしな。弟子入りしたいって言うならさせてやる」
「他にもお弟子さんがいるんですか?」
「いや? 居ねえし、弟子なんて持つの初めてだが」
「そ、そうですか」

 一人や二人なんて言うならもう弟子を持ってるのかと思ったのに。それにしても、暇つぶしって。私暇つぶしの道具になるんだ。

「それにこんな可愛い娘に『弟子入りさせてく~だ~さ~い~』なんて言われたら応じるに決まってんだろ」
「え! かわ……!」

 可愛い? 私可愛いって言われた? 

「透き通る美しいブラウンの瞳。そして、瞳と同じ色の肩に少しかかるぐらいのショートカットの髪。少し幼さも感じられるが整いはっきりとした顔立ち。まさにキュート! カ~ワ~イ~イ~」
「そ、そんなー……!」

 そんなにはっきり自分の容姿を説明され褒められるの初めてだし、何だか恥ずかしい。ちょくちょく変な言い方されるのが気にならないぐらい嬉しいし、恥ずかしい。

「そういう訳だ。可愛い娘に頼まれたから。そして、今俺はすごい暇でいい暇つぶしが出来るわけだから弟子入りを許す。やったね」

 わーい。やったー。弟子入り出来たー。……うーん。何だかあっさり過ぎて実感が無いなあ。

「それで? 俺に弟子入りして何を学びたいんだ?」

 シオンさんが私に尋ねる。何を学びたいのかと。弟子入りするのは師匠から何かを学びたいからする。そして、私は彼から一体何が学びたいのか。……決まっている。私が彼から学びたいもの。

 私が弟子入りして学びたいもの。それは

「……強さです」
「強さ?」
「強く。強くなりたいんです! 私は、強く! 強く!」

 学びたいのは強さ。私は強くなりたい。いや、ならないといけない。強く。私のために。

「さっきのシオンさんみたいに! 私も強くなりたいんです!」

 圧倒的だった。ドラゴンを一瞬で焼き尽くす魔法。ドラゴンを前にし余裕綽々の態度。そして、実力。圧倒的な強さを私は目の当たりにし、彼のように強くなりたいと思った。

「……俺は強くねえんだけどな」
「え?」
「まあ、いいか」
 
 なんだろう? 何かぼそっとシオンさんと呟いたような。でも、聞き取れなかった。

「分かった。強くしてやろう」
「……! お願いします!」

 シオンさんから了承を得た。これで、これで私も強くなれる。

「でも、俺の指導はスパルタだぞ。……その方が見てて楽しいし」
「? 頑張ります!」

 最後何をぼそっと言ったんだろう? とりあえず、スパルタでも頑張ろう。

 こうして私はシオンさんの弟子となり、彼と共に旅をすることとなった。
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