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十話 成功の影に ⑤
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………………………………。
……………………。
…………。
……私は目を覚ました。
意識が目覚めたあと、目を開ける。でも、よく見えない。全体的に霞んでいて、それに右の目は何も見えていない。
「っう、おあうぅ……」
身体を動かして確認しようとすると、至るところに激痛が走り呻き声が出る。痛い、首を動かそうとするだけで痛い。
痛い、痛い。身体中全て痛い。ひたすら痛くて何も分からない。分かるのは痛いってことだけ。
「おっ! ようやくお目覚めですか」
声が聞こえた。私の左側から。この声は
「シオ、ンさん……?」
声の方へと顔を向ける。激痛が走るがそんなことは気にも留めない。ただ、見たかった。シオンさんの顔を。
「ああそうだ。ご機嫌いかが? ミイナさん?」
霞がかった視界の中、確かにシオンさんがそこにいた。
「あ、ああ゛、うう゛ぁ、ジ、ジオンざんっ……」
「もう泣くな泣くな。ただでさえひっでぇ顔なんだから」
シオンさんの顔を見た途端、涙が止めどなく溢れた。
「わ゛だしっ……、わだし、」
「はいはい。とりあえず泣き止めよ。話はその後だ」
その後も私は泣気続けた。泣き止もうとしても止まらない。安心、後悔、謝罪、様々な気持ちが涙となって溢れ出ていく。そして、一頻り泣いた後、ようやく泣き止んだ。
「もう大丈夫だな」
「……ありがとう、ございます」
涙は止まり、ようやく泣き止んだ私。私の両手は痛くて動かすことも出来なくて、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた顔をシオンさんが拭ってくれる。
「さて。泣き止んだことだし少し話でもするか」
泣き止み落ち着いてきた頃、シオンさんはそう言って事の顛末を話してくれた。クエスト中、シオンさんはずっと私を見ていてくれたこと。私がゴブリン達に殺されそうになっていたのを助けてくれたこと。そして、ここへ運んでくれたこと。
「で、今に至ると言うわけだ。中々悲惨な状態だなミイナ」
「……はい」
事の顛末も分かり、落ち着き余裕が出来てきた私は自分の状態を理解し始める。
「全部ボロボロで骨はボキボキ、肉はぐちゃぐちゃ。あー痛そ。そうだ。詳細に怪我の具合を説明してやろうか?」
「……いいです」
シオンさんの言う通り、私の身体は悲惨なものだった。全身激痛に襲われ、立つことはおろか起き上がることさえ出来ない。右手は感覚が無く、右目も何も見えない。左目も常に霞がかっている。口も血の味がするし、歯も折れたり欠けたりしている。とてもひどい有様だ。
「ま、今回は良い経験になったろ。これからも頑張れよ」
ハッハッハとシオンさんは笑う。
「これからも、指導してくれるんですか……?」
「そうだけど?」
「……私はシオンさんの言うことを聞かずに、…………楽をしたいと思って勝手なことしたのに……」
今回、こんなことになったのは全て自分のせいだ。シオンさんの指導から逃げたくて勝手なこと言って勝手なことした。だから、こんなことになってしまった。それなのに、まだ私を指導してくれるの……?
「ミイナは強くなりたいんだろ。そして、この方法が自分には合っていると考え、実行した。これに何の問題がある?」
「え?」
「指導って言うのは全て強制させてやらせるもんじゃない。むしろ、何もしないのが一番の指導だ」
何もしないのが一番の指導……?
「弟子が自分で考え、行動する。そして、師匠はそれを見守りちょっとだけ手助けしてやるのが正しい指導だ。だから、今回のミイナには何の問題もない。自分で考え、行動したんだから」
「でも、私、こんなことになって……」
「前に言っただろ。怪我なんてすぐに治してやるし、死んだら連れ戻してやるって。だから、怪我した死んだなんて何も問題じゃない。問題なのは、やって何も学ばなかった時だ」
学ぶ……。実行し、学ぶ。
「今回で分かったろ? どうして、実戦で強くなっていく成功譚ばかりあるのか」
そうだ。私が今回のことをしようと思ったきっかけ。初心者が実戦を経験しながら強くなっていくお話。ちまたでよく聞く、と言うよりこれしか聞かないというお話。
「失敗したら語られないからだ。特に冒険者なんて語られない。いや、語れない。失敗したらほぼ死ぬからな」
成功譚はよく聞くけど、逆に失敗したという話はほとんど聞かない。これは違った。聞きたくても聞けなかったんだ。死人に口は無いのだから。
「成功譚ばかり出るからみんな成功してるんだ、なんて錯覚に陥る。しかし、実際は違う。一つの成功の影に万、億の失敗がある。全て影に隠れて見えないからそう思うだけだ」
初心者が実戦を積みながら強なっていく。そんな話をする人はいる。しかし、実際はそんな話通りにはいかない。今回の私のように死にかけたり、死んでしまう人がほとんどなのだろう。
一つの成功の影に万、億の失敗が……。
「それが今回学べたろ。だから、良し。今回学んだことを忘れないでこれからに活かし励むべし」
「…………はい」
「よし。そういう訳だから、今日はゆっくり休め。その痛みと共に。今日は、な」
にやっと笑った後、シオンさんは部屋から出て行った。
これから。この経験を活かし、励む。私は未熟さや愚かさに再び涙し、その後眠りについた。
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……私は目を覚ました。
意識が目覚めたあと、目を開ける。でも、よく見えない。全体的に霞んでいて、それに右の目は何も見えていない。
「っう、おあうぅ……」
身体を動かして確認しようとすると、至るところに激痛が走り呻き声が出る。痛い、首を動かそうとするだけで痛い。
痛い、痛い。身体中全て痛い。ひたすら痛くて何も分からない。分かるのは痛いってことだけ。
「おっ! ようやくお目覚めですか」
声が聞こえた。私の左側から。この声は
「シオ、ンさん……?」
声の方へと顔を向ける。激痛が走るがそんなことは気にも留めない。ただ、見たかった。シオンさんの顔を。
「ああそうだ。ご機嫌いかが? ミイナさん?」
霞がかった視界の中、確かにシオンさんがそこにいた。
「あ、ああ゛、うう゛ぁ、ジ、ジオンざんっ……」
「もう泣くな泣くな。ただでさえひっでぇ顔なんだから」
シオンさんの顔を見た途端、涙が止めどなく溢れた。
「わ゛だしっ……、わだし、」
「はいはい。とりあえず泣き止めよ。話はその後だ」
その後も私は泣気続けた。泣き止もうとしても止まらない。安心、後悔、謝罪、様々な気持ちが涙となって溢れ出ていく。そして、一頻り泣いた後、ようやく泣き止んだ。
「もう大丈夫だな」
「……ありがとう、ございます」
涙は止まり、ようやく泣き止んだ私。私の両手は痛くて動かすことも出来なくて、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた顔をシオンさんが拭ってくれる。
「さて。泣き止んだことだし少し話でもするか」
泣き止み落ち着いてきた頃、シオンさんはそう言って事の顛末を話してくれた。クエスト中、シオンさんはずっと私を見ていてくれたこと。私がゴブリン達に殺されそうになっていたのを助けてくれたこと。そして、ここへ運んでくれたこと。
「で、今に至ると言うわけだ。中々悲惨な状態だなミイナ」
「……はい」
事の顛末も分かり、落ち着き余裕が出来てきた私は自分の状態を理解し始める。
「全部ボロボロで骨はボキボキ、肉はぐちゃぐちゃ。あー痛そ。そうだ。詳細に怪我の具合を説明してやろうか?」
「……いいです」
シオンさんの言う通り、私の身体は悲惨なものだった。全身激痛に襲われ、立つことはおろか起き上がることさえ出来ない。右手は感覚が無く、右目も何も見えない。左目も常に霞がかっている。口も血の味がするし、歯も折れたり欠けたりしている。とてもひどい有様だ。
「ま、今回は良い経験になったろ。これからも頑張れよ」
ハッハッハとシオンさんは笑う。
「これからも、指導してくれるんですか……?」
「そうだけど?」
「……私はシオンさんの言うことを聞かずに、…………楽をしたいと思って勝手なことしたのに……」
今回、こんなことになったのは全て自分のせいだ。シオンさんの指導から逃げたくて勝手なこと言って勝手なことした。だから、こんなことになってしまった。それなのに、まだ私を指導してくれるの……?
「ミイナは強くなりたいんだろ。そして、この方法が自分には合っていると考え、実行した。これに何の問題がある?」
「え?」
「指導って言うのは全て強制させてやらせるもんじゃない。むしろ、何もしないのが一番の指導だ」
何もしないのが一番の指導……?
「弟子が自分で考え、行動する。そして、師匠はそれを見守りちょっとだけ手助けしてやるのが正しい指導だ。だから、今回のミイナには何の問題もない。自分で考え、行動したんだから」
「でも、私、こんなことになって……」
「前に言っただろ。怪我なんてすぐに治してやるし、死んだら連れ戻してやるって。だから、怪我した死んだなんて何も問題じゃない。問題なのは、やって何も学ばなかった時だ」
学ぶ……。実行し、学ぶ。
「今回で分かったろ? どうして、実戦で強くなっていく成功譚ばかりあるのか」
そうだ。私が今回のことをしようと思ったきっかけ。初心者が実戦を経験しながら強くなっていくお話。ちまたでよく聞く、と言うよりこれしか聞かないというお話。
「失敗したら語られないからだ。特に冒険者なんて語られない。いや、語れない。失敗したらほぼ死ぬからな」
成功譚はよく聞くけど、逆に失敗したという話はほとんど聞かない。これは違った。聞きたくても聞けなかったんだ。死人に口は無いのだから。
「成功譚ばかり出るからみんな成功してるんだ、なんて錯覚に陥る。しかし、実際は違う。一つの成功の影に万、億の失敗がある。全て影に隠れて見えないからそう思うだけだ」
初心者が実戦を積みながら強なっていく。そんな話をする人はいる。しかし、実際はそんな話通りにはいかない。今回の私のように死にかけたり、死んでしまう人がほとんどなのだろう。
一つの成功の影に万、億の失敗が……。
「それが今回学べたろ。だから、良し。今回学んだことを忘れないでこれからに活かし励むべし」
「…………はい」
「よし。そういう訳だから、今日はゆっくり休め。その痛みと共に。今日は、な」
にやっと笑った後、シオンさんは部屋から出て行った。
これから。この経験を活かし、励む。私は未熟さや愚かさに再び涙し、その後眠りについた。
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