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三十一話 強さ
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「はぁっ!」
私は勢いよく手を突き出す。手に持つは槍。そして、その切っ先は深くゴブリンの体を穿つ。
一体のゴブリンを仕留めた後、すぐに槍を引き抜き構えを整える。ゴブリンはまだいる。残りは二体。対複数戦闘の基本は止まらず走り続けること。でも、槍のような長いものを持ちながらこの森の中を走るのは良くない。
それに相手はゴブリン。これぐらいなら複数が相手でもそこまで動かずとも相手にできる。残り二体のうち先に突っ込んできた方を槍で穿つ。そして、その槍から手を離し遅れて突っ込んできたゴブリンへはナイフに持ち替え応戦する。
槍は長くリーチがある分有利だが、一度突いた後は戻すまで隙だらけになる。だから、こんな時は無理に戻して構えを整えるより槍は捨ててナイフに持ち替える方がいい。
「グギャッ…………」
持ち替えたナイフでゴブリンを倒した。これで今のところ周りには魔物はいないかな。はあ、疲れた。
「ミッちゃんお疲れー。剥ぎ取り手伝うよ」
「リンさんありがとうございます」
クエストを受けて、魔物を狩ったりした時にはそれの証明となるものが必要となる。死体をまるごと持って帰ってもいいし、この様に証となる部分を剥ぎ取り持って帰ってもいい。
大抵は耳を持って帰る。爪とかだと狩れてなくても戦闘中に欠けたりすれば持って帰れるから認められないことが多いから。耳なんて戦闘中にあんまり切り取れることないし。
「それにしても槍の使い方上手になったねー。ちょっと前まで突くのも下手だったのに」
「そりゃこんなにやってたら上手くもなりますよ」
リザードマンとの対複数戦闘を経験したあの日から二ヶ月が過ぎていた。この二ヶ月私はひたすら戦闘に明け暮れた。対複数、対単体、対強者、対弱者。色々な戦闘を経験した。
それと同時にリンさんからは三の太刀「雷《いかずち》」の修得、シオンさんからは色んな武器の扱い方の修得を命じられた。
「槍は上手になったけど雷の方は全然だけどね」
「うっ……」
この二ヶ月で私はナイフ、剣、刀、弓、槍の使い方を学んだ。この五つの武器は何とか使えるようになったけど三の太刀「雷」については全然使えそうにもなかった。
「まあ、無理に頑張らなくてもいいよ。ゆっくりやっていこうよ」
「リンさん……!」
ああ天使。これは天使だよ。見た目が天使とかだけじゃなくて中身まで天使だよ。出来なくてもゆっくり頑張って出来るようになっていけばいい。そうこれが正しいんだよ。
「何言ってんだ。無理に頑張らせるからいいんだろ。急ぎでやってけよ」
「悪魔が出た……」
人に頑張らせるだけ頑張らせといて自分はゆったりとその様を見て笑う。悪魔だ。悪魔が出たぞー。
「俺が悪魔って。こんな優しいのに悪魔な訳ねえだろ。はい、休憩終わり。一分休めば十分だろ」
「優しいって一体……」
優しいってなんだろう。最近もう分からなくなってきたなあ。
「槍も一応は出来るようになったから次これな」
そう言うと、シオンさんは私の持っていた槍を小さな盾へと作り変えた。この二ヶ月使っていた武器は全てシオンさんが影で作った物で、意外と使いやすい。
「盾ですか?」
「そうだ。今回の締めはやっぱり最強の武器にしようと思ってな」
「最強の武器……」
盾が最強? ……盾が?
「攻撃を防ぐことはもちろん殴れば鈍器、投げれば投擲武器。形状や素材によっては斬ることや突くことも出来る万能の最強武器だ!」
「……へえー」
なんだろう。確かにその通りなんだろうけど、なんか信じられない。ああ、言ってるのがシオンさんだからか。
「と言うことで次は盾だ。それとさっき槍のときナイフとか使ってたけど今度は使うなよ。使えるのは盾だけな」
「え!?」
「さらに不意討ち禁止。走り回るの禁止。敵からの攻撃を最低五回は盾で受けること」
「ええ!?」
不意討ちも走り回るのも禁止!? それに最低五回は攻撃を受ける!? そんな無茶な……。
「ほら行くぞ。向こうに魔物集めてきたから」
「え、集めてきたって……?」
魔物を集めてきたからってどういうこと? シオンさん魔物を操ったり出来るの?
「ちょっかい出して場所まで誘導して影踏みで止めてきた。三十は集めたな。ちょっと怒ってるけど」
「怒ってるのが三十……。行きたくない……」
「そうか。なら、連れてくる」
「そうじゃない!」
……私は盾を片手に魔物の群れへと突っ込まされた。
「たっだいまー!」
「………………」
ようやく今日も帰ってこれた。疲れた。死ぬかと思った。体中痛いしダルい。ギルドから朝出ていって、日中ひたすら外でしごかれ、夕暮れにギルドに帰ってくる。こんな毎日嫌だ。
「いっただきますー!」
ああ可愛いなぁ。お菓子を頬張るリンさんとこのお菓子の甘みだけが私の癒やし。ひたすらしごかれてヘトヘトになって帰ってきたギルドで受ける癒やし。ああこれで明日も頑張りたくないけど頑張れる。
冒険者ギルドから貰えるお菓子をちびちび食べながらリンさんを眺める。そして、それは私だけじゃなく他の冒険者達も。思えばこの冒険者ギルドも随分雰囲気が変わった。初めて来たときはまだギスギスして喧嘩が至るところで起こっていたのに今はほとんどない。
それに街自体も変わったような。ギスギスから少しまったりしたような。本当にリンさん様々だね。可愛いだけじゃなくて強いから誰も敵わなくて逆らう人もいないし。みんな諦めてまったりしてる。
まあ、シオンさんもこれに貢献してるかもしれないけど。リンさんとずっと一緒にいるから妬まれて絡まれてたことあったけど、その時絡んだ人が可哀想になるぐらい遊ばれて、それ以来誰も絡まなくなった。シオンさんが弱かったらリンさんをめぐっての争いが起きてたかもしれないけど強過ぎるし。
圧倒的に強い二人がいるから争うのも馬鹿馬鹿しくなって起こらなくなった。それで街もギルドも雰囲気が良くなった。本当すごい。
こんな二人に囲まれてるから私に絡んで来る人は誰もいない。それどころかあの二人が強いんだから一緒にいる私も強いなんて噂されてる。本当に止めて欲しい。真実がバレると何されるか分からないから。
……でも、私だってかなり強くなったよね? この二ヶ月ひたすらしごかれたお陰で私はかなり強くなったはず。色んな武器の使い方覚えたし、リザードマンぐらいの中級魔物なら複数が相手でも勝てるようになった。冒険者ランクだって今やBランクにまでなった。
私だって十分強いはず。実際ここにいる冒険者達と闘っても負ける気がしない。一発も攻撃を貰わずに勝てる自信がある。この二人が異次元なだけで私だって強い。そう、私は強くなって強いんだ。
強いんだー。私も強いんだーなんてお菓子を食べながらそんなことを考えている時、
「なんだぁ? 随分と変わったもんだな。この掃き溜めも」
ギルドの扉が開かれて一人の男が入って来た。
私は勢いよく手を突き出す。手に持つは槍。そして、その切っ先は深くゴブリンの体を穿つ。
一体のゴブリンを仕留めた後、すぐに槍を引き抜き構えを整える。ゴブリンはまだいる。残りは二体。対複数戦闘の基本は止まらず走り続けること。でも、槍のような長いものを持ちながらこの森の中を走るのは良くない。
それに相手はゴブリン。これぐらいなら複数が相手でもそこまで動かずとも相手にできる。残り二体のうち先に突っ込んできた方を槍で穿つ。そして、その槍から手を離し遅れて突っ込んできたゴブリンへはナイフに持ち替え応戦する。
槍は長くリーチがある分有利だが、一度突いた後は戻すまで隙だらけになる。だから、こんな時は無理に戻して構えを整えるより槍は捨ててナイフに持ち替える方がいい。
「グギャッ…………」
持ち替えたナイフでゴブリンを倒した。これで今のところ周りには魔物はいないかな。はあ、疲れた。
「ミッちゃんお疲れー。剥ぎ取り手伝うよ」
「リンさんありがとうございます」
クエストを受けて、魔物を狩ったりした時にはそれの証明となるものが必要となる。死体をまるごと持って帰ってもいいし、この様に証となる部分を剥ぎ取り持って帰ってもいい。
大抵は耳を持って帰る。爪とかだと狩れてなくても戦闘中に欠けたりすれば持って帰れるから認められないことが多いから。耳なんて戦闘中にあんまり切り取れることないし。
「それにしても槍の使い方上手になったねー。ちょっと前まで突くのも下手だったのに」
「そりゃこんなにやってたら上手くもなりますよ」
リザードマンとの対複数戦闘を経験したあの日から二ヶ月が過ぎていた。この二ヶ月私はひたすら戦闘に明け暮れた。対複数、対単体、対強者、対弱者。色々な戦闘を経験した。
それと同時にリンさんからは三の太刀「雷《いかずち》」の修得、シオンさんからは色んな武器の扱い方の修得を命じられた。
「槍は上手になったけど雷の方は全然だけどね」
「うっ……」
この二ヶ月で私はナイフ、剣、刀、弓、槍の使い方を学んだ。この五つの武器は何とか使えるようになったけど三の太刀「雷」については全然使えそうにもなかった。
「まあ、無理に頑張らなくてもいいよ。ゆっくりやっていこうよ」
「リンさん……!」
ああ天使。これは天使だよ。見た目が天使とかだけじゃなくて中身まで天使だよ。出来なくてもゆっくり頑張って出来るようになっていけばいい。そうこれが正しいんだよ。
「何言ってんだ。無理に頑張らせるからいいんだろ。急ぎでやってけよ」
「悪魔が出た……」
人に頑張らせるだけ頑張らせといて自分はゆったりとその様を見て笑う。悪魔だ。悪魔が出たぞー。
「俺が悪魔って。こんな優しいのに悪魔な訳ねえだろ。はい、休憩終わり。一分休めば十分だろ」
「優しいって一体……」
優しいってなんだろう。最近もう分からなくなってきたなあ。
「槍も一応は出来るようになったから次これな」
そう言うと、シオンさんは私の持っていた槍を小さな盾へと作り変えた。この二ヶ月使っていた武器は全てシオンさんが影で作った物で、意外と使いやすい。
「盾ですか?」
「そうだ。今回の締めはやっぱり最強の武器にしようと思ってな」
「最強の武器……」
盾が最強? ……盾が?
「攻撃を防ぐことはもちろん殴れば鈍器、投げれば投擲武器。形状や素材によっては斬ることや突くことも出来る万能の最強武器だ!」
「……へえー」
なんだろう。確かにその通りなんだろうけど、なんか信じられない。ああ、言ってるのがシオンさんだからか。
「と言うことで次は盾だ。それとさっき槍のときナイフとか使ってたけど今度は使うなよ。使えるのは盾だけな」
「え!?」
「さらに不意討ち禁止。走り回るの禁止。敵からの攻撃を最低五回は盾で受けること」
「ええ!?」
不意討ちも走り回るのも禁止!? それに最低五回は攻撃を受ける!? そんな無茶な……。
「ほら行くぞ。向こうに魔物集めてきたから」
「え、集めてきたって……?」
魔物を集めてきたからってどういうこと? シオンさん魔物を操ったり出来るの?
「ちょっかい出して場所まで誘導して影踏みで止めてきた。三十は集めたな。ちょっと怒ってるけど」
「怒ってるのが三十……。行きたくない……」
「そうか。なら、連れてくる」
「そうじゃない!」
……私は盾を片手に魔物の群れへと突っ込まされた。
「たっだいまー!」
「………………」
ようやく今日も帰ってこれた。疲れた。死ぬかと思った。体中痛いしダルい。ギルドから朝出ていって、日中ひたすら外でしごかれ、夕暮れにギルドに帰ってくる。こんな毎日嫌だ。
「いっただきますー!」
ああ可愛いなぁ。お菓子を頬張るリンさんとこのお菓子の甘みだけが私の癒やし。ひたすらしごかれてヘトヘトになって帰ってきたギルドで受ける癒やし。ああこれで明日も頑張りたくないけど頑張れる。
冒険者ギルドから貰えるお菓子をちびちび食べながらリンさんを眺める。そして、それは私だけじゃなく他の冒険者達も。思えばこの冒険者ギルドも随分雰囲気が変わった。初めて来たときはまだギスギスして喧嘩が至るところで起こっていたのに今はほとんどない。
それに街自体も変わったような。ギスギスから少しまったりしたような。本当にリンさん様々だね。可愛いだけじゃなくて強いから誰も敵わなくて逆らう人もいないし。みんな諦めてまったりしてる。
まあ、シオンさんもこれに貢献してるかもしれないけど。リンさんとずっと一緒にいるから妬まれて絡まれてたことあったけど、その時絡んだ人が可哀想になるぐらい遊ばれて、それ以来誰も絡まなくなった。シオンさんが弱かったらリンさんをめぐっての争いが起きてたかもしれないけど強過ぎるし。
圧倒的に強い二人がいるから争うのも馬鹿馬鹿しくなって起こらなくなった。それで街もギルドも雰囲気が良くなった。本当すごい。
こんな二人に囲まれてるから私に絡んで来る人は誰もいない。それどころかあの二人が強いんだから一緒にいる私も強いなんて噂されてる。本当に止めて欲しい。真実がバレると何されるか分からないから。
……でも、私だってかなり強くなったよね? この二ヶ月ひたすらしごかれたお陰で私はかなり強くなったはず。色んな武器の使い方覚えたし、リザードマンぐらいの中級魔物なら複数が相手でも勝てるようになった。冒険者ランクだって今やBランクにまでなった。
私だって十分強いはず。実際ここにいる冒険者達と闘っても負ける気がしない。一発も攻撃を貰わずに勝てる自信がある。この二人が異次元なだけで私だって強い。そう、私は強くなって強いんだ。
強いんだー。私も強いんだーなんてお菓子を食べながらそんなことを考えている時、
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