最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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三十話 対複数戦闘 ②

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 リンさんが現れるとリザードマン達は全員リンさんの方へと向いた。そして、すぐさま戦闘態勢を取り、リンさんを威嚇する。私の時は二体しか私に来なかったのに。本能とかで分かるのかな。

 残るリザードマンはまだ十体。その内一体は私の一撃で脇腹を負傷していて少し動きが鈍い。それでも九体は元気で負傷している一体も十分動くことは出来る。これらを一人で相手する。

「よーく見ててね。ゆっくりやるから! お手本だからねっ!」

 そう言うと、リンさんは走り出した。木々や草むらにリザードマン。様々な障害物を利用しながらの走り。その走りは先程の言葉通りゆっくりだった。普段のリンさんに比べればだが。

「ミッちゃんー見えてるー?」
「な、なんとか!」

 ゆっくりやるという宣言通り本人はゆっくりやってるつもりなんだろうけど十分速い。リザードマンはリンさんを追えていないし、私はギリギリでしか追えていない。

 リンさんの走りは私と全然違った。幽歩は使っていないはずなのに、リンさんを感じられない。姿はなんとか追えて見えている。でも、なんだかリンさんがいるように感じられない。

「いち」

 走るだけだったリンさんが刀を振るった。それは負傷していたリザードマンへ背後からの一撃。その一撃でリザードマンの首と胴体は分断され絶命する。

 そして、一撃の後またすぐ走り出す。止まることなく一撃を入れ、また走り出す。これが対複数戦闘の基本。走り回り、敵に自分の姿を確認させず、一撃を入れたらすぐにまた走り出す。

 私とやっていることは同じなのに全然違う。私はただ走り回るだけだったけどリンさんは常に敵の死角に入るように走っている。それに横だけじゃなく縦も使っている。木を蹴って空を移動したりしてる。

 攻撃を仕掛けるのも敵の死角からしている。最初の一匹を皮切りに次々と敵を倒していくリンさん。その攻撃は全て敵の死角から行われていた。そして、一撃で敵を絶命させる。あの速さで走りながら的確に急所へ一撃を入れる。走るのも攻撃を仕掛けるのも私と全然違う。

「シャア! シャア!」

 リンさんが一体のリザードマンに見つかる。その見つけたリザードマンが見つけたことを仲間に伝えるためか声を上げる。その声によってリザードマン全員がリンさんの方へと向く。

 するとリンさんは一気にスピードアップ。そして、一番奥にいたリザードマンの背後に回り込み一撃。

 こんなこと本当によくするなあ。リンさんは常に走り回っているが時々こんな風に敵に見つかる。わざとスピードを緩めてるからだ。スピードを緩めて敵に見つかって敵全員の視線を一点に集める。そして、その後スピードアップし、死角に回り込む。

 複数敵がいるとその数だけ目があることになり、その分死角が狭く、なくなっていく。だから、敵の死角を作るためにわざと見つかり一点に集める。そうすれば、敵の目を複数から一つに出来る。敵に見つからないことが基本なのに、わざと敵に見つかる。基本が出来ているからこそ出来る応用、すごいなぁ。

「きゅーう」

 そうこうしているうちに気づけば残るリザードマンは一体となっていた。

「残り一体になっちゃったし、もう走らなくていいや。あー疲れた」

 リザードマンが一体になったことで対複数戦闘も終わりを迎え、リンさんは悠々と歩きリザードマンの前に姿を現す。

「あっそうだ。ミッちゃん頑張ってたからね、ご褒美をあげるよ」
「え、ご褒美?」
「うん。一つ技を教えてあげる。これからやるからよーく見ててね」

 リンさんがくれる私へのご褒美。それは技の伝授だった。

 リンさんは片手だけに刀を握り、リザードマンに近づいていく。そして、間合いに入ったのか握った刀を上に上げ、振り下ろした。

 それに対し、リザードマンは防御の姿勢を取る。持っていた剣でリンさんの刀を防ごうとする。剣を横にし、振り下ろされる刀を防ごうとするリザードマン。でも、

「じゅーう!」

 リザードマンはリンさんの刀を防げなかった。

「ミッちゃんどう? 分かった? 今のが三の太刀『いかずち』だよ」
「三の太刀『雷』……」

 今のが三の太刀「雷」。リンさんが私にくれたご褒美……。


 …………分からなかった……。

「分かりませんでした……」
「そっか~。ゆっくりやったのにね」

 ううっ……。ご褒美を貰うはずだったのに。何故かえぐられてる。はっ! まさかこれが真なるご褒美!?

「じゃあ、どんなふうに見えた?」

 どんなふうに? 確かさっき見えたのはリンさんが刀を上げてそれを振り下ろして、リザードマンがそれを剣で防ごうとしたけど防げず斬られて。こんな感じ。

「それだけ?」

 え? うーん。あっ、そういえば、少し変だったかな。リンさんの振り下ろした刀の軌道的にそれを防ごうとリザードマンの剣に当たるはずなのに、当たらなかった。あの始めの軌道でリザードマンを斬ろうとするならリザードマンの剣ごと斬らないといけなかったはず。

 それに斬られたリザードマンの死体を見てみるとリザードマンが斬られていたのは腰より下だった。リンさんが振り下ろした時のなら胸、腰よりは上を斬ることになったはず。始めより低い位置を斬ることになったって言う事は、

「……ずらした?」
「おお! よく気づいたね!」

 おお……。リンさんに褒められた。可愛い……。これがご褒美か。

「そうだよ。三の太刀『雷』は高速で斬る軌道を途中で変える太刀だよ。まるで雷みたいに速くジグザグにね!」

 高速で斬る軌道を変える太刀。それが三の太刀「雷」。

「始めは上段を狙いつつ、振り下ろしてる途中でずらして中段、下段を狙う技だよ。だから、ガードされにくいよ!」

 なるほど。だから、リザードマンの剣に当たることなかったのか。胸あたりに構えて防ごうとしていたけど、本当はそれより下を狙われていたと。

「じゃあ、はい」
「え?」

 あれ? リンさんなんで自分の刀を私に渡したんですか。まさかこれもご褒美ですか。自分の大事な武器を私にくれるって言うんですか!?

「素振り百回」
「え」
「何してるの? 早く? さっき見せたでしょ。忘れないうちに早く素振りしないと」
「え、え、」
「はい、いーち」  

 ……この刀はご褒美で私にくれる訳じゃないんですね。技の修得のために貸してくれただけなんですね。……はい、素振りします。リン師匠。

 こうして私は対複数戦闘とともに、三の太刀「雷」を修得するための修行も始めた。

 ……いーち。
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