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第1章 ギル
5.隣国の皇女
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翌日から私達新人は、国立劇場で歌劇の前座を務めた。
私達三人の前座はとても評判が良く、毎日拍手喝采を浴びた。午前中は歌の練習に励み、午後は舞台で歌う。そんな生活だった。
時々、竜警報が出る。ケルサの街には物見櫓があって、そこには一日竜を見張っている兵士がいる。竜の姿を見つけると、鐘を叩いて警告するのだ。この警報が出ると、皆、建物の中に避難する。竜は夜は飛ばないと言われている。夜飛んでいるのを見た人がいないからだ。しかし、見た人がいないだけで、実際は夜も飛んでいるという人もいる。
レオンとはお祭りの日以来会っていない。奥様のお屋敷には出入り禁止だし、こちらから会いに行こうにも、どこにいったら会えるかわからない。
そのうち、現れるわ。私の歌が好きだと言っていたもの。きっと聞きにきてくれるわ。
私はレオンの驚いた顔を思い出して、一人にやにやとした。
或る日、劇場に行くとミルトが興奮して私に言った。
「聞いて聞いて、ここに来る途中、王宮前の広場を通って来たの。そしたら、張り紙があって、隣の国、サルワナ帝国の皇女様がうちの王宮に表敬訪問されるんですって! 来週、来るのよ! ねえ、王子様とのお見合いじゃないかしら?」
「王子様って?」
「まあ、あなた知らないの。そりゃあ、素敵な方なのよ。こう、背がスラッと高くて、髪は夜の闇のような漆黒、エメラルドのような緑の瞳。この国一の剣の使い手で、戦になると、先陣を切って敵方に切り込んで行くのですって。炎の剣ヴァルサヴァルダを掲げたお姿は戦神マルスのようだって言われているわ。敵に対しては冷酷だけど、決して卑怯な真似はされないの」
黒い髪にエメラルドのような緑の瞳ですって?
私はミルトの話を聞きながら、なんとなく嫌な予感を覚えた。
「それでね、皇女様はミレーヌ=ゾフィー・ボージェ様ってお名前なんですって! 素敵なお名前よね。サルワナ帝国の姫君とうちの王子様が結婚されたら、この国は安泰だわ!」
「そうね、もう二度と戦は起こってほしくないわ」
「そうよね。レオニード様にはがんばって、姫君のお気持ちを掴んでもらいたいわ!」
「レオニード様?」
「王子様のお名前よ。御年二十二歳のレオニード・フォン・ブルメンタール様。第一王位継承者にして次期国王、レオニード様よ。お親しい方達の間ではレオンとよばれているわ」
「レオン? レオンですって?」
私は目の前が真っ暗になった。
まさか、まさか、まさか、そうよ、まさか、あのレオンが王子様なわけない。
黒髪で、緑の瞳の若い男なんてたくさんいる。
王子様っていうのはもっとこう、美々しくあるべきよ。
あんな、いつも薄汚れた着物をきて、女の子をからかってばかりの人が王子なわけない。
きっと同じ名前なのよ。だって、だって、そうでしょ。
神様、お願い、そうだと言って。
私の脳裏に王が親しく話しかけていたレオンの姿がいきなり蘇った。
あの時の衣装。くすんだ灰色の衣装だった。
遠目にいつもの貧しい衣装なのだと勝手に思っていたけど……。
今、思い出した。
何か、煌めいていた。あれは、銀糸。銀糸で見事な刺繍がしてあったんだわ。
あんな衣装、王侯貴族でないと揃えられない。
私は、深いため息をついた。
六月の終り、サルワナ帝国からミレーヌ=ゾフィー・ボージェ様がいらっしゃった。
皆でパレードを見に行ったが、それは素晴らしかった。
皇女様の乗った六馬建ての馬車は、銀と白い羽飾りで装飾されていてまばゆいばかりだ。馬車の前と後ろには制服姿の騎兵が四列の隊列を組んでいる。その後ろに侍女達の馬車、貢ぎ物の馬車と続いて行く。私たちは皆で旗を振った。王宮前の広場では、国王陛下、王妃様、王子様が皇女様を出迎えていた。私は遠くにこの国の王子様を見た。レオンだ。胸がずきずきと痛い。
レオンったら、あんなに着飾って……。
その日のレオンは豪華だった。白い毛皮があしらわれた青いビロードのマントを羽織り、やはり白い羽飾りのついた青い帽子をかぶっている。
まるで本物の王子様みたいじゃない……。
私は泣きそうになった。息を吐き出して、想いを沈める。
あんな素敵な人、最初から夢だったんだ。
私達は皇女様一行が宮殿に入るまで見ていた。
「美しい方ね」
ミルトがため息をつきながら言った。
「ええ、そうね」
私は目をしばたたきながら相槌をうった。
「でも、お気の毒だわ。人質なんて……」
「え? 人質って?」
「……うちのお父様が言っていたんだけどね。今回の皇女様の訪問は表向きは表敬訪問って事になってるけど、本当は違うんじゃないかって。
サルワナ帝国は、北方の蛮族に手を焼いているの。それで、今年の夏は絶対、徹底的に、蛮族を滅ぼしたいんですって。冬に北方の蛮族を攻める訳にはいかないでしょ、ほら、雪で進軍出来なくなるから。だから、この夏が勝負なのよ。
それで、我が国に人質を差し出して、我が国が戦争を仕掛けないようにしたんじゃないかって。ほら、うちの王様って戦が好きでしょ。
一年前、ベルハを滅ぼしたじゃない。その時に無くした兵力も、元に戻って来ている頃だし、サルワナ帝国としては、北方を攻めている間に背後からブルムランドに攻め込まれたら大変でしょ。だから、その脅威を無くす為に皇女様を使わされたんじゃないかって……。
私はてっきりお見合いだと思ってたけど、お父様に言わせると、王族間でお見合いなんておかしいっていうの。政略結婚するなら、もう、とっくの昔に国家間で婚約してるって……」
私は、ミルトの話を黙って聞いていた。ミルトの話は筋が通っている。だけど、侯爵夫人がレオンに「あなたには、もうじき大事なお見合いが……」と言っていた。
レオンがレオニード殿下なら、これはお見合いだ。国同士の政略の結果、婚約ではなくお見合いになったんじゃないだろうか?
何か国同士の駆け引きがあるのかもしれない。でも、今回の表敬訪問が見合いだろうとなかろうと、あんなに美しい皇女様なのだもの。レオンが恋をしてもちっともおかしくない。ううん、きっと、きっとレオンは皇女様を好きになるわ。
私は何度目かのため息をついた。
翌朝、皇女様の祝賀パーティに出席していた侯爵夫人が私に昨夜の皇女様の様子を話してくれた。
「ミレーヌ=ゾフィー様は素晴らしく美しい方だったわ。見事な赤毛で、それを高く結い上げて宝冠をしてらしてね、皇女様のドレスは髪の色に合わせた赤のドレスなの。真珠がちりばめてあって、あんまり美しくてため息がでたわ。背が高くて、殿下と並ぶとよくお似合いで、二人が踊る所は夢のようだったわ。それに、とっても優しそうな方なのよ」
私は、侯爵夫人の話を顔を引きつらせながら聞いていた。
「ギル、どうしたの? 浮かない顔をして」
「あの、あの、私、なんでもないです。もっと、話して下さい。あの、殿下はどんなご様子だったのですか?」
夫人が話そうとして、あっという顔をした。
「ギル、あなた、殿下を見たの?」
「は、はい。王宮前の広場で、あの、レオンにそっくりでした。レオンは、レオンは、その、レオニード殿下なのでしょうか?」
私は一気に吐き出した。私の問いは朝食のテーブルの上に影を落とした。
「レオンからは何も?」
「はい……」
「だったら、本人に聞きなさい」
「でも……」
「本人が言わないなら、そのまま、騎士レオンとして振る舞ってあげて。私に言えるのはこれだけよ」
「はい、奥様」
私は国立劇場に行く馬車の中から通り過ぎる景色を眺めた。
奥様は暗に、レオンはレオニード殿下だと言っている。私は切なかった。
一体、何故、レオンは最初から王子だと私に名乗らなかったのだろう。
どうして、侯爵夫人のお見舞いに来るのにあんなみすぼらしい格好をしていたのだろう。
レオンの馬鹿!
おかげで、私は身分違いの恋をしちゃったじゃない。
最初から王子だって言ってくれてたら。
私はきっと畏れ多くて恋なんてしてなかった。
だってまともに顔を見られなかったに違いないもの。
それとも、やっぱり恋をしたかしら?
一体私はどうしてレオンに恋しちゃったんだろう?
口は悪いし、意地悪だし。
でも、命がけで竜から私を助けてくれた。
私の歌を好きだといってくれた。
レオン。あなたが好き!
レオンと一緒に笑った数々の冗談。
遠乗りに行って二人で見上げた青い空。
一緒に踊ったお祭りの夜。
気が付くと頬が涙で冷たい。慌ててハンカチで拭いた。
馬車は劇場に着いていた。降りて改めて劇場を見上げる。
恋は忘れよう。所詮叶わぬ恋だもの。私には歌がある。
私は劇場への階段を登った。
私達三人の前座はとても評判が良く、毎日拍手喝采を浴びた。午前中は歌の練習に励み、午後は舞台で歌う。そんな生活だった。
時々、竜警報が出る。ケルサの街には物見櫓があって、そこには一日竜を見張っている兵士がいる。竜の姿を見つけると、鐘を叩いて警告するのだ。この警報が出ると、皆、建物の中に避難する。竜は夜は飛ばないと言われている。夜飛んでいるのを見た人がいないからだ。しかし、見た人がいないだけで、実際は夜も飛んでいるという人もいる。
レオンとはお祭りの日以来会っていない。奥様のお屋敷には出入り禁止だし、こちらから会いに行こうにも、どこにいったら会えるかわからない。
そのうち、現れるわ。私の歌が好きだと言っていたもの。きっと聞きにきてくれるわ。
私はレオンの驚いた顔を思い出して、一人にやにやとした。
或る日、劇場に行くとミルトが興奮して私に言った。
「聞いて聞いて、ここに来る途中、王宮前の広場を通って来たの。そしたら、張り紙があって、隣の国、サルワナ帝国の皇女様がうちの王宮に表敬訪問されるんですって! 来週、来るのよ! ねえ、王子様とのお見合いじゃないかしら?」
「王子様って?」
「まあ、あなた知らないの。そりゃあ、素敵な方なのよ。こう、背がスラッと高くて、髪は夜の闇のような漆黒、エメラルドのような緑の瞳。この国一の剣の使い手で、戦になると、先陣を切って敵方に切り込んで行くのですって。炎の剣ヴァルサヴァルダを掲げたお姿は戦神マルスのようだって言われているわ。敵に対しては冷酷だけど、決して卑怯な真似はされないの」
黒い髪にエメラルドのような緑の瞳ですって?
私はミルトの話を聞きながら、なんとなく嫌な予感を覚えた。
「それでね、皇女様はミレーヌ=ゾフィー・ボージェ様ってお名前なんですって! 素敵なお名前よね。サルワナ帝国の姫君とうちの王子様が結婚されたら、この国は安泰だわ!」
「そうね、もう二度と戦は起こってほしくないわ」
「そうよね。レオニード様にはがんばって、姫君のお気持ちを掴んでもらいたいわ!」
「レオニード様?」
「王子様のお名前よ。御年二十二歳のレオニード・フォン・ブルメンタール様。第一王位継承者にして次期国王、レオニード様よ。お親しい方達の間ではレオンとよばれているわ」
「レオン? レオンですって?」
私は目の前が真っ暗になった。
まさか、まさか、まさか、そうよ、まさか、あのレオンが王子様なわけない。
黒髪で、緑の瞳の若い男なんてたくさんいる。
王子様っていうのはもっとこう、美々しくあるべきよ。
あんな、いつも薄汚れた着物をきて、女の子をからかってばかりの人が王子なわけない。
きっと同じ名前なのよ。だって、だって、そうでしょ。
神様、お願い、そうだと言って。
私の脳裏に王が親しく話しかけていたレオンの姿がいきなり蘇った。
あの時の衣装。くすんだ灰色の衣装だった。
遠目にいつもの貧しい衣装なのだと勝手に思っていたけど……。
今、思い出した。
何か、煌めいていた。あれは、銀糸。銀糸で見事な刺繍がしてあったんだわ。
あんな衣装、王侯貴族でないと揃えられない。
私は、深いため息をついた。
六月の終り、サルワナ帝国からミレーヌ=ゾフィー・ボージェ様がいらっしゃった。
皆でパレードを見に行ったが、それは素晴らしかった。
皇女様の乗った六馬建ての馬車は、銀と白い羽飾りで装飾されていてまばゆいばかりだ。馬車の前と後ろには制服姿の騎兵が四列の隊列を組んでいる。その後ろに侍女達の馬車、貢ぎ物の馬車と続いて行く。私たちは皆で旗を振った。王宮前の広場では、国王陛下、王妃様、王子様が皇女様を出迎えていた。私は遠くにこの国の王子様を見た。レオンだ。胸がずきずきと痛い。
レオンったら、あんなに着飾って……。
その日のレオンは豪華だった。白い毛皮があしらわれた青いビロードのマントを羽織り、やはり白い羽飾りのついた青い帽子をかぶっている。
まるで本物の王子様みたいじゃない……。
私は泣きそうになった。息を吐き出して、想いを沈める。
あんな素敵な人、最初から夢だったんだ。
私達は皇女様一行が宮殿に入るまで見ていた。
「美しい方ね」
ミルトがため息をつきながら言った。
「ええ、そうね」
私は目をしばたたきながら相槌をうった。
「でも、お気の毒だわ。人質なんて……」
「え? 人質って?」
「……うちのお父様が言っていたんだけどね。今回の皇女様の訪問は表向きは表敬訪問って事になってるけど、本当は違うんじゃないかって。
サルワナ帝国は、北方の蛮族に手を焼いているの。それで、今年の夏は絶対、徹底的に、蛮族を滅ぼしたいんですって。冬に北方の蛮族を攻める訳にはいかないでしょ、ほら、雪で進軍出来なくなるから。だから、この夏が勝負なのよ。
それで、我が国に人質を差し出して、我が国が戦争を仕掛けないようにしたんじゃないかって。ほら、うちの王様って戦が好きでしょ。
一年前、ベルハを滅ぼしたじゃない。その時に無くした兵力も、元に戻って来ている頃だし、サルワナ帝国としては、北方を攻めている間に背後からブルムランドに攻め込まれたら大変でしょ。だから、その脅威を無くす為に皇女様を使わされたんじゃないかって……。
私はてっきりお見合いだと思ってたけど、お父様に言わせると、王族間でお見合いなんておかしいっていうの。政略結婚するなら、もう、とっくの昔に国家間で婚約してるって……」
私は、ミルトの話を黙って聞いていた。ミルトの話は筋が通っている。だけど、侯爵夫人がレオンに「あなたには、もうじき大事なお見合いが……」と言っていた。
レオンがレオニード殿下なら、これはお見合いだ。国同士の政略の結果、婚約ではなくお見合いになったんじゃないだろうか?
何か国同士の駆け引きがあるのかもしれない。でも、今回の表敬訪問が見合いだろうとなかろうと、あんなに美しい皇女様なのだもの。レオンが恋をしてもちっともおかしくない。ううん、きっと、きっとレオンは皇女様を好きになるわ。
私は何度目かのため息をついた。
翌朝、皇女様の祝賀パーティに出席していた侯爵夫人が私に昨夜の皇女様の様子を話してくれた。
「ミレーヌ=ゾフィー様は素晴らしく美しい方だったわ。見事な赤毛で、それを高く結い上げて宝冠をしてらしてね、皇女様のドレスは髪の色に合わせた赤のドレスなの。真珠がちりばめてあって、あんまり美しくてため息がでたわ。背が高くて、殿下と並ぶとよくお似合いで、二人が踊る所は夢のようだったわ。それに、とっても優しそうな方なのよ」
私は、侯爵夫人の話を顔を引きつらせながら聞いていた。
「ギル、どうしたの? 浮かない顔をして」
「あの、あの、私、なんでもないです。もっと、話して下さい。あの、殿下はどんなご様子だったのですか?」
夫人が話そうとして、あっという顔をした。
「ギル、あなた、殿下を見たの?」
「は、はい。王宮前の広場で、あの、レオンにそっくりでした。レオンは、レオンは、その、レオニード殿下なのでしょうか?」
私は一気に吐き出した。私の問いは朝食のテーブルの上に影を落とした。
「レオンからは何も?」
「はい……」
「だったら、本人に聞きなさい」
「でも……」
「本人が言わないなら、そのまま、騎士レオンとして振る舞ってあげて。私に言えるのはこれだけよ」
「はい、奥様」
私は国立劇場に行く馬車の中から通り過ぎる景色を眺めた。
奥様は暗に、レオンはレオニード殿下だと言っている。私は切なかった。
一体、何故、レオンは最初から王子だと私に名乗らなかったのだろう。
どうして、侯爵夫人のお見舞いに来るのにあんなみすぼらしい格好をしていたのだろう。
レオンの馬鹿!
おかげで、私は身分違いの恋をしちゃったじゃない。
最初から王子だって言ってくれてたら。
私はきっと畏れ多くて恋なんてしてなかった。
だってまともに顔を見られなかったに違いないもの。
それとも、やっぱり恋をしたかしら?
一体私はどうしてレオンに恋しちゃったんだろう?
口は悪いし、意地悪だし。
でも、命がけで竜から私を助けてくれた。
私の歌を好きだといってくれた。
レオン。あなたが好き!
レオンと一緒に笑った数々の冗談。
遠乗りに行って二人で見上げた青い空。
一緒に踊ったお祭りの夜。
気が付くと頬が涙で冷たい。慌ててハンカチで拭いた。
馬車は劇場に着いていた。降りて改めて劇場を見上げる。
恋は忘れよう。所詮叶わぬ恋だもの。私には歌がある。
私は劇場への階段を登った。
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