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本編
day -86
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転換の治験に参加するに至った動機。
そんな決まりきった質問をよこしてきたのは鳴海先生ではなく、補助らしき研究員だった。鳴海先生は俺の動機なんか一度も気にもしなかった。
「好きな相手がΩだから」
「君の出身は日本だろ? みんな第二の性は隠してるんじゃないか? 大抵の国はそうだけど」
「どうせ親しくなったらバレるってわかってるでしょ」
「ま、それはそうだ! 特に付き合うときは明かすもんだ。避妊するにしろ子作りするにしろな!」
下卑た笑い声が耳にこびりついて不快だった。
どれだけ隠そうが偽ろうが、Ωは本能的にαに惹かれてαはΩに惹かれる。男女という繁殖システムが破綻した後、運命のつがいは人類に現れた究極の人口回復メカニズム。
高い妊娠率に、最適化された遺伝子の掛け合わせ。それらを本能が果たしてくれるようになったのに、どうしても抗ってみせたくなる人間は後をたたない。かく言う俺もそのうちの1人だ。別に圭ちゃんがβになっても良かったのだが、そういう技術はまだないらしい。
βに運命は存在しないが、Ωにはする。つがいになってしまったら引き離すわけにもいかない。とにかく、圭ちゃんが誰かと結ばれる前にαにならなければならない。
酷い痛みを伴う注射を受けながら、幼馴染に思いを馳せた。
そんな決まりきった質問をよこしてきたのは鳴海先生ではなく、補助らしき研究員だった。鳴海先生は俺の動機なんか一度も気にもしなかった。
「好きな相手がΩだから」
「君の出身は日本だろ? みんな第二の性は隠してるんじゃないか? 大抵の国はそうだけど」
「どうせ親しくなったらバレるってわかってるでしょ」
「ま、それはそうだ! 特に付き合うときは明かすもんだ。避妊するにしろ子作りするにしろな!」
下卑た笑い声が耳にこびりついて不快だった。
どれだけ隠そうが偽ろうが、Ωは本能的にαに惹かれてαはΩに惹かれる。男女という繁殖システムが破綻した後、運命のつがいは人類に現れた究極の人口回復メカニズム。
高い妊娠率に、最適化された遺伝子の掛け合わせ。それらを本能が果たしてくれるようになったのに、どうしても抗ってみせたくなる人間は後をたたない。かく言う俺もそのうちの1人だ。別に圭ちゃんがβになっても良かったのだが、そういう技術はまだないらしい。
βに運命は存在しないが、Ωにはする。つがいになってしまったら引き離すわけにもいかない。とにかく、圭ちゃんが誰かと結ばれる前にαにならなければならない。
酷い痛みを伴う注射を受けながら、幼馴染に思いを馳せた。
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