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大神くん編

プロローグ

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「やあ、気がついたかい?」

 どこまでも白い、何もない世界に声だけが響いている。
「急なトラブルとはいえ、君たちを巻き込んでしまってすまない」

 『君たち』と言う言葉に辺りを見回してみると、すぐ隣にクラスメイトが二人いた。
 大神くんと宇佐美くんだ。
 そう言えば、道を歩いていたら偶然二人に会って、挨拶をしたような気がする。

「私は惑星探査機インターフェイスHL-800。機械の故障を修理するため、君たちの情報処理器官に接続させてもらった。本来であれば瞬時に問題は解決され、君たちが気づくことはないはずだったのだが、どうやらかなり深刻な故障だったようだ。故障が直らないだけでなく、君たちとの接続の解除もできなくなってしまった」
 突然の出来事に理解が追いつかない。

「つまり、どう言うことだ?」
 宇佐美くんがキョロキョロしながら質問をした。
 声しかしないからどこを見ればいいのか分からないんだろう。
「君たちは今気絶した状態だ。惑星探査機の故障を直さなければ、ずっと目覚めない。申し訳ないが修理を手伝って欲しい」
「路上で気絶って、僕達の体は大丈夫なの?」
 大神くんがもっともな心配を問いただす。

「正確な表現ではないが、君たちに分かりやすく言うと、ここは精神世界だ。現実世界の時間の流れとは違う。すぐさま問題が解決されれば、体が崩れ落ちるよりも先に意識を取り戻すことができるだろう」
「修理を手伝うって、何をすればいいんですか?」
 私の質問と同時に、真っ白だった世界に徐々に景色が生み出されてゆく。

「君たちの情報処理器官内データから、問題解決のためのユーティリティを構築した。一つずつ問題をクリアすることにより、実際の問題も解決されるはずだ。私には理解不能なため、おかしな部分もあるかもしれないが、なんとか頑張って欲しい」
 
 こうして、私達の冒険は始まった。 
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