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大神くん編
ここまではまだミニゲーム
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気がつけばレストランのような所で、円卓に三人座っていた。
大神くんは剣士のような、勇者のような格好。宇佐美くんは魔法使いのような格好をしている。
ハッとして私の服装を確認すると、ビキニアーマーだった……
なんだこの防御力の低そうな装備は。
裸よりはましと自分に言い聞かせて、先程までの行為の跡が何もないことに気がつく。
「くそっ、俺の順番がっ!」
宇佐美くんが悔しそうに拳をテーブルに打ち付けているけど、元々そんな順番はない。
気不味くて大神くんの顔が見られないけど、チラリと様子をうかがうと、赤い顔をして私を見ていた。
その赤い顔は先程の行為のせいなのか、ビキニアーマーのせいなのかどちらだ。
「なんで二人はあんなことになってたんだ?」
「……気がついたらその、江崎さんとつながっていて……それを見たら、ガマンが、できなくて……」
顔を真っ赤にして最後の方は聞き取れないぐらい小さな声で大神くんが答えた。
私はレストラン内を眺めて現実逃避している。
「俺だってガマンできないのをガマンしてやったのに……江崎、今からでもいい、やろう」
私は聞こえないフリをした。
「くそっ。後で絶対やらせてもらうからな!……それで江崎はどうなんだ?なんであんなことになってたか分かるか」
「大神くんの身体を借りたと言う魔王が……えーっと覆いかぶさって、きて。宇佐美くんは呼んでも起きないし……」
「まて、その格好でその喋り方は反則だ」
私が下を向いてモジモジ喋っていると、宇佐美くんに止められた。
大神くんも何かに耐えるような顔をしてあらぬ方向を向いている。
私だって好きでこんな格好をしているわけではない。
「大神くん、マントを脱ごうか」
大神くんのマントを奪い身体に巻きつけると、宇佐美くんが余計なことを言うんじゃなかったと悔しがっていた。
「つまり、中二病を発症した大神に襲われたってことだな」
「いやー……色々とおかしな点はあったから、魔王なんだと思うよ」
私は口ごもりながら宇佐美くんのセリフを否定する。
「まあ、そうじゃなきゃ隣で俺が寝てるわけないか。色々って、他は?」
「うぅ……色々は色々デス」
魔王に囁かれて力が抜けただとか、初めてなのにイキまくってしまっただとか、私の元々の資質なんじゃないかと言われたら反論できないし、多分泣く。
「あれか、大神にしてはうますぎたとか?」
宇佐美くんによる取り調べは、まだ終わらないらしい。
「そんなの私には分かんないよ」
「俺が気がついた時にやってたのは大神とだろ?比べてどうだった?」
もう許してくれないかな。
「そこは別に重要じゃないだろ」
私が半泣きで無言を貫いていると、大神くんが宇佐美くんを止めてくれた。
「くそがっ。……まあいい、じゃあなんで大神が魔王に身体を乗っとられたのか、分かるか?」
次があればぜひ俺のとこに来て欲しいと言う宇佐美くんには答えたくない。
それに、劣情に身を焦がしたと言って押し付けられたものを思い出してしまい、顔が赤くなってしまった。
「え、ちょっと。何で二人して顔を赤らめて黙ってるわけ?」
宇佐美くんの声に、大神くんの顔を見上げると、赤い顔をして俯いていた。
大神くんも、魔王に乗っ取られる直前の状態に自覚があったんだな。
「くっそ。次は俺も混ぜろよ」
口を割らない私達に痺れを切らし、宇佐美くんが不穏な言葉を発した。次は無いと信じたい。
「とりあえず、あっちに行くか」
宇佐美くんが指し示した先はレストラン内のカウンターで、その中ではマスターっぽい見た目のドット絵と、その頭上に『困った、困った……』のテキストが表示されていた。
「ゲームだったら話しかけたら何か始まりそうだけど、どうやって話しかければいいのかな、これ」
大神くんが不思議そうにドット絵を見つめている。
「マスター、何か困りごとか?」
さすが切り込み隊長宇佐美くん。ドット絵に向かって普通に話しかけた。
『実は従業員の女の子が急に休んじゃって、店が回らなくて困っているんだ』
ドット絵の頭上のテキストが切り替わった。
「ミニゲームでも始まりそうだね」
「注文聞いて届けるヤツな」
「じゃあ、私達がこのお店を手伝ったらまた場面が切り替わるかな」
今回は普通そうで安心した。
「俺達で良ければ手伝おうか」
宇佐美くんがマスターに提案すると、マスターは私だけをジロジロと眺めてきた、ような気がする。ドット絵なので細かい所は読み取れない。
『うーん……まあ、この子ならいいか。ちゃんとやってくれよ』
何だか上から目線な口振りが気になるけど、マスターの言葉と共に景色が切り替わった。
カウンターを中心に円卓2つが左右に置かれ、それぞれに大神くんと宇佐美くんが座っている。
私はカウンターの外に立っていて、服装はヒラヒラのメイド服に変わっていた。
一瞬めまいがしたけど、ビキニアーマーよりはましだと気を取り直す。
ピコンと言う音と共にカウンターにオムライスが出現して、マスターのテキストも『オムライスお待ち!』に変わっていた。
「それ多分俺のー」
宇佐美くんが頭上に現れたテキストを指差して叫んでいる。
ウエイトレスさんをやればいいんだなと、オムライスを宇佐美くんの所まで持っていった。
テーブルに置くと、ブッブーと言う音がして、カウンターのドット絵マスターがピョンピョン飛び跳ねた。
テキストも『ちゃんとやってくれなきゃ困るよ!』に変わり、どうやらプンスカ怒っているようだ。
ちゃんと持っていったのにと思い、宇佐美くんの頭上のテキストを読むと、そこには『オムライス(美味しくな~れ、萌え萌えキュン付き)』と書かれていた。
「何?俺じゃなかった?くそっ、椅子から立てねー」
宇佐美くんが頭上のテキストを読もうとするけど、真上過ぎて読めないようだ。
「萌え萌えキュン……」
大神くんからは読めるらしい。
でも、小さく呟くのは恥ずかしいからやめて欲しい。
「ねえ、大神くん。私、やらなきゃダメかな」
藁にもすがる思いで大神くんに助けを求める。
「……うん、僕達は椅子からも立てないみたいだし、江崎さんに頑張ってもらうしかないみたい。なんか、ごめん」
申し訳なさそうに謝る大神くんを見て心を決める。
再び宇佐美くんの前に立つと、しばらく目をつむってからカッと目を開く。
「おいしくなーれ、もえもえきゅん」
「うわー、超棒読み。全く萌えない」
ブッブーと言う音に、宇佐美くんのダメ出しが重なった。
ドット絵マスターのピョンピョンが更に激しくなり『やる気がないならクビだ!』と怒っている。
私としてはクビにしてもらいたいところなんだけど。
「江崎、萌え萌えキュンはこうだ」
宇佐美くんが手でハートを作り実演してくれている。
「泣きたい……」
「終わったらいくらでも胸を貸してやる。いいから、やれ」
宇佐美くんの胸は借りたくないけど、ここから出るにはやるしかない。
私はがんばった。超がんばった。萌え萌えキュンは追加で二回ダメ出しをもらった後、四回目にしてようやくドット絵マスターから『……これはこれで、アリか』とクリア判定を貰えた。
宇佐美くんからも、恥じらう姿はなかなかよかったと、全く嬉しくないコメントを貰った。
その次は大神くん注文の『アツアツエビドリア(フーフーあーん付き)』だったけど、年の離れた弟がいる私には余裕だった。
「ちょっと、お触りは禁止ですよ」
宇佐美くんの膝の上に乗る私は、サワサワと太ももを触られセクハラされている。
三つ目の注文は『いちごパフェ(膝の上でツーショット撮影付き)』だった。
写真って、この世界は何時代なんだろうか。
太ももを触る手を払い除けたら、あろうことか後ろから胸を揉んできた。
「おっぱいは揉んでいいって」
耳元で囁く宇佐美くんのセリフに驚愕していると、宇佐美くんは顎でカウンターの方を指し示した。
胸を揉むのを手で阻止しながらカウンターを見ると、そこには怒り顔のドット絵マスターと『何勝手なこと言っちゃってるの!?この店はおっぱいまではお触りオーケーだよ!』のテキストが見えた。
何の店なんだここは。
「お店はオーケーでも私は許してないよ」
手早く写真撮影を終えて膝の上から飛び退く。
同時にピンポーンとクリア音が聞こえた。
「あー。終わっちゃった」
残念そうな宇佐美くんを睨みつけると、次の順番が楽しみだと、ギラつく視線で返されてしまった。
私がカウンターまで戻ると、ピコンと言う音と共に飲み物らしきものが出現した。
このゲームはまだ続くのか。
でも、テキストは大神くんの上に出てるから、さっきみたいな事は起こらないだろう。
安心して大神くんのテーブルに届けに行き、頭上のテキストを見て、膝から崩れ落ちそうになった。
「レモンスカッシュ(口移しで飲ませてあ・げ・る♪)だと?」
宇佐美くんは読まなくていい。
「……もう、やめていいかな?」
涙目で大神くんに聞くけど、頬を赤らめながら困った顔をしただけだった。
やらないと終わらないのは分かるけど、段々内容が怪しくなってきている。
「うう……」
お盆で顔を隠してしばらく葛藤する。
「お前らさっきまでもっと凄いことやってただろ?サッサと終わらせて俺の番に回せよ」
宇佐美くんは余計なことを言わないで欲しい。
「江崎さん……」
心配そうに私を見てくる大神くんの顔はやっぱり赤い。
結局やらなきゃいけないなら、サッサと終わらせよう。
私はグイッとレモンスカッシュを口に含み、大神くんの顔に手を添えて上に向けた。
狙いを定め、顔を近づける。
唇と唇が触れそうになった瞬間。
ゴクリ。
緊張のあまり飲んでしまった。
『何お客様のもの、飲んじゃってるのー』と、ドット絵マスターに怒られた。
「ごめん。飲んじゃった……」
「う、うん」
ギクシャクとした会話の後で最初からやり直す。
今度はちゃんと口に含んだまま、唇を合わせることができた。
唇の感触に色々と思い出しそうになったけど、強制的に心を無にしてゆっくりと口を開く。
こぼさないように慎重に大神くんの口に注ぐ。
最後まで注ぎきると、大神くんがゴクリと飲み込んだのが分かった。
そっと唇を話すと、無情にもブッブーと言う音が聞こえてきた。
「なんで?がんばったのに!」
ドット絵マスターを見ると、やはり怒り顔でピョンピョン飛び跳ね『口移しと言ったら馬乗りに決まってるでしょ!』と言っていた。
そんな決まり知らないよ!
大神くんは剣士のような、勇者のような格好。宇佐美くんは魔法使いのような格好をしている。
ハッとして私の服装を確認すると、ビキニアーマーだった……
なんだこの防御力の低そうな装備は。
裸よりはましと自分に言い聞かせて、先程までの行為の跡が何もないことに気がつく。
「くそっ、俺の順番がっ!」
宇佐美くんが悔しそうに拳をテーブルに打ち付けているけど、元々そんな順番はない。
気不味くて大神くんの顔が見られないけど、チラリと様子をうかがうと、赤い顔をして私を見ていた。
その赤い顔は先程の行為のせいなのか、ビキニアーマーのせいなのかどちらだ。
「なんで二人はあんなことになってたんだ?」
「……気がついたらその、江崎さんとつながっていて……それを見たら、ガマンが、できなくて……」
顔を真っ赤にして最後の方は聞き取れないぐらい小さな声で大神くんが答えた。
私はレストラン内を眺めて現実逃避している。
「俺だってガマンできないのをガマンしてやったのに……江崎、今からでもいい、やろう」
私は聞こえないフリをした。
「くそっ。後で絶対やらせてもらうからな!……それで江崎はどうなんだ?なんであんなことになってたか分かるか」
「大神くんの身体を借りたと言う魔王が……えーっと覆いかぶさって、きて。宇佐美くんは呼んでも起きないし……」
「まて、その格好でその喋り方は反則だ」
私が下を向いてモジモジ喋っていると、宇佐美くんに止められた。
大神くんも何かに耐えるような顔をしてあらぬ方向を向いている。
私だって好きでこんな格好をしているわけではない。
「大神くん、マントを脱ごうか」
大神くんのマントを奪い身体に巻きつけると、宇佐美くんが余計なことを言うんじゃなかったと悔しがっていた。
「つまり、中二病を発症した大神に襲われたってことだな」
「いやー……色々とおかしな点はあったから、魔王なんだと思うよ」
私は口ごもりながら宇佐美くんのセリフを否定する。
「まあ、そうじゃなきゃ隣で俺が寝てるわけないか。色々って、他は?」
「うぅ……色々は色々デス」
魔王に囁かれて力が抜けただとか、初めてなのにイキまくってしまっただとか、私の元々の資質なんじゃないかと言われたら反論できないし、多分泣く。
「あれか、大神にしてはうますぎたとか?」
宇佐美くんによる取り調べは、まだ終わらないらしい。
「そんなの私には分かんないよ」
「俺が気がついた時にやってたのは大神とだろ?比べてどうだった?」
もう許してくれないかな。
「そこは別に重要じゃないだろ」
私が半泣きで無言を貫いていると、大神くんが宇佐美くんを止めてくれた。
「くそがっ。……まあいい、じゃあなんで大神が魔王に身体を乗っとられたのか、分かるか?」
次があればぜひ俺のとこに来て欲しいと言う宇佐美くんには答えたくない。
それに、劣情に身を焦がしたと言って押し付けられたものを思い出してしまい、顔が赤くなってしまった。
「え、ちょっと。何で二人して顔を赤らめて黙ってるわけ?」
宇佐美くんの声に、大神くんの顔を見上げると、赤い顔をして俯いていた。
大神くんも、魔王に乗っ取られる直前の状態に自覚があったんだな。
「くっそ。次は俺も混ぜろよ」
口を割らない私達に痺れを切らし、宇佐美くんが不穏な言葉を発した。次は無いと信じたい。
「とりあえず、あっちに行くか」
宇佐美くんが指し示した先はレストラン内のカウンターで、その中ではマスターっぽい見た目のドット絵と、その頭上に『困った、困った……』のテキストが表示されていた。
「ゲームだったら話しかけたら何か始まりそうだけど、どうやって話しかければいいのかな、これ」
大神くんが不思議そうにドット絵を見つめている。
「マスター、何か困りごとか?」
さすが切り込み隊長宇佐美くん。ドット絵に向かって普通に話しかけた。
『実は従業員の女の子が急に休んじゃって、店が回らなくて困っているんだ』
ドット絵の頭上のテキストが切り替わった。
「ミニゲームでも始まりそうだね」
「注文聞いて届けるヤツな」
「じゃあ、私達がこのお店を手伝ったらまた場面が切り替わるかな」
今回は普通そうで安心した。
「俺達で良ければ手伝おうか」
宇佐美くんがマスターに提案すると、マスターは私だけをジロジロと眺めてきた、ような気がする。ドット絵なので細かい所は読み取れない。
『うーん……まあ、この子ならいいか。ちゃんとやってくれよ』
何だか上から目線な口振りが気になるけど、マスターの言葉と共に景色が切り替わった。
カウンターを中心に円卓2つが左右に置かれ、それぞれに大神くんと宇佐美くんが座っている。
私はカウンターの外に立っていて、服装はヒラヒラのメイド服に変わっていた。
一瞬めまいがしたけど、ビキニアーマーよりはましだと気を取り直す。
ピコンと言う音と共にカウンターにオムライスが出現して、マスターのテキストも『オムライスお待ち!』に変わっていた。
「それ多分俺のー」
宇佐美くんが頭上に現れたテキストを指差して叫んでいる。
ウエイトレスさんをやればいいんだなと、オムライスを宇佐美くんの所まで持っていった。
テーブルに置くと、ブッブーと言う音がして、カウンターのドット絵マスターがピョンピョン飛び跳ねた。
テキストも『ちゃんとやってくれなきゃ困るよ!』に変わり、どうやらプンスカ怒っているようだ。
ちゃんと持っていったのにと思い、宇佐美くんの頭上のテキストを読むと、そこには『オムライス(美味しくな~れ、萌え萌えキュン付き)』と書かれていた。
「何?俺じゃなかった?くそっ、椅子から立てねー」
宇佐美くんが頭上のテキストを読もうとするけど、真上過ぎて読めないようだ。
「萌え萌えキュン……」
大神くんからは読めるらしい。
でも、小さく呟くのは恥ずかしいからやめて欲しい。
「ねえ、大神くん。私、やらなきゃダメかな」
藁にもすがる思いで大神くんに助けを求める。
「……うん、僕達は椅子からも立てないみたいだし、江崎さんに頑張ってもらうしかないみたい。なんか、ごめん」
申し訳なさそうに謝る大神くんを見て心を決める。
再び宇佐美くんの前に立つと、しばらく目をつむってからカッと目を開く。
「おいしくなーれ、もえもえきゅん」
「うわー、超棒読み。全く萌えない」
ブッブーと言う音に、宇佐美くんのダメ出しが重なった。
ドット絵マスターのピョンピョンが更に激しくなり『やる気がないならクビだ!』と怒っている。
私としてはクビにしてもらいたいところなんだけど。
「江崎、萌え萌えキュンはこうだ」
宇佐美くんが手でハートを作り実演してくれている。
「泣きたい……」
「終わったらいくらでも胸を貸してやる。いいから、やれ」
宇佐美くんの胸は借りたくないけど、ここから出るにはやるしかない。
私はがんばった。超がんばった。萌え萌えキュンは追加で二回ダメ出しをもらった後、四回目にしてようやくドット絵マスターから『……これはこれで、アリか』とクリア判定を貰えた。
宇佐美くんからも、恥じらう姿はなかなかよかったと、全く嬉しくないコメントを貰った。
その次は大神くん注文の『アツアツエビドリア(フーフーあーん付き)』だったけど、年の離れた弟がいる私には余裕だった。
「ちょっと、お触りは禁止ですよ」
宇佐美くんの膝の上に乗る私は、サワサワと太ももを触られセクハラされている。
三つ目の注文は『いちごパフェ(膝の上でツーショット撮影付き)』だった。
写真って、この世界は何時代なんだろうか。
太ももを触る手を払い除けたら、あろうことか後ろから胸を揉んできた。
「おっぱいは揉んでいいって」
耳元で囁く宇佐美くんのセリフに驚愕していると、宇佐美くんは顎でカウンターの方を指し示した。
胸を揉むのを手で阻止しながらカウンターを見ると、そこには怒り顔のドット絵マスターと『何勝手なこと言っちゃってるの!?この店はおっぱいまではお触りオーケーだよ!』のテキストが見えた。
何の店なんだここは。
「お店はオーケーでも私は許してないよ」
手早く写真撮影を終えて膝の上から飛び退く。
同時にピンポーンとクリア音が聞こえた。
「あー。終わっちゃった」
残念そうな宇佐美くんを睨みつけると、次の順番が楽しみだと、ギラつく視線で返されてしまった。
私がカウンターまで戻ると、ピコンと言う音と共に飲み物らしきものが出現した。
このゲームはまだ続くのか。
でも、テキストは大神くんの上に出てるから、さっきみたいな事は起こらないだろう。
安心して大神くんのテーブルに届けに行き、頭上のテキストを見て、膝から崩れ落ちそうになった。
「レモンスカッシュ(口移しで飲ませてあ・げ・る♪)だと?」
宇佐美くんは読まなくていい。
「……もう、やめていいかな?」
涙目で大神くんに聞くけど、頬を赤らめながら困った顔をしただけだった。
やらないと終わらないのは分かるけど、段々内容が怪しくなってきている。
「うう……」
お盆で顔を隠してしばらく葛藤する。
「お前らさっきまでもっと凄いことやってただろ?サッサと終わらせて俺の番に回せよ」
宇佐美くんは余計なことを言わないで欲しい。
「江崎さん……」
心配そうに私を見てくる大神くんの顔はやっぱり赤い。
結局やらなきゃいけないなら、サッサと終わらせよう。
私はグイッとレモンスカッシュを口に含み、大神くんの顔に手を添えて上に向けた。
狙いを定め、顔を近づける。
唇と唇が触れそうになった瞬間。
ゴクリ。
緊張のあまり飲んでしまった。
『何お客様のもの、飲んじゃってるのー』と、ドット絵マスターに怒られた。
「ごめん。飲んじゃった……」
「う、うん」
ギクシャクとした会話の後で最初からやり直す。
今度はちゃんと口に含んだまま、唇を合わせることができた。
唇の感触に色々と思い出しそうになったけど、強制的に心を無にしてゆっくりと口を開く。
こぼさないように慎重に大神くんの口に注ぐ。
最後まで注ぎきると、大神くんがゴクリと飲み込んだのが分かった。
そっと唇を話すと、無情にもブッブーと言う音が聞こえてきた。
「なんで?がんばったのに!」
ドット絵マスターを見ると、やはり怒り顔でピョンピョン飛び跳ね『口移しと言ったら馬乗りに決まってるでしょ!』と言っていた。
そんな決まり知らないよ!
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