勇者の中の魔王と私

白玉しらす

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後日談

ニナの逆襲 ☆

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「ふわあ、あ……」
 団長室で、届いた手紙や書類の仕分けをしていたら、眠気に耐えられずあくびが出てしまった。
「眠そうだね、ニナ君」
 珍しく真面目に仕事をしていた団長の手を止めてしまった。
「さては、誕生日プレゼントに香油を贈られて、そのまま朝まで泣かされたのかな。香油でぬらめくニナ君の身体は最高だったろうね」
 今朝出した施設使用申請書をひらひらと振りながら団長が笑う。
 そこに書かれた私の誕生日に気づいたんだろう。本当に目聡い。
 私は無視して仕分けを続けた。
『私は今、ゼーンに頂いた張型を挿れて、下のお口からはしたなくよだれを垂らしながら、この手紙を書いています』
 はい、これは団長宛の私信。
『今日もいつもの場所で裸になって待っています。ゼーンより先に誰かが来てしまったらと思うと、私の手は自然と……』
 はい、これも団長宛の私信。
『姉様となさるゼーン様は、とても素敵だったわ。早く私も混ぜて欲しい。もう見るだけでは我慢できないの。早く大人に……』
 危ない!これも団長宛の私信。

 急に増えた怪しい私信は、絶対団長が書かせている。
 なぜなら仕分けする私を、期待に満ちた眼差しで見ているからだ。
 反応したら負けだ。
「誕生日ならそう言ってくれれば良かったのに。私にも是非プレゼントさせて欲しい」
 無視と無表情を貫く私を気にする事なく、団長は続ける。
「オスカー君では味わえないような、めくるめく快感をニナ君にあげよう」
 ようやく怪しい私信ゾーンを抜けて、普通の書類が出てきた。
「ニナ君がどうしてもと言うなら、私を攻めたててもらっても構わない。手足を縛られ射精管理をされて、今みたいな無表情でひいひい泣かされるのも、たまにはいいかもしれない」
 急ぎの物と、そうでない物を分けて、トントンと書類を揃える。
「ニナ君は泣かされるのと泣かせるの、どちらがいい?」
 私はダンっと音がなるように、書類を机に叩きつけた。
「私信はご自宅に送るよう、差出人にお伝えください」
 愉快そうに笑う団長を残して、私は団長室を後にした。


「ニナ……」
 そんな事があってしばらく経った頃。
 私はオスカーとベッドの上に並んで腰掛けていた。
 オスカーの顔が私に近づくと、私は手でそれを制した。
「待って、今日は私が……」
 私はベッドに隠していた、柔らかい布で作ったロープを取り出した。
「オスカーをひいひい泣かします」
「は?」
 パシッと紐を引っ張る私を、オスカーが眉間にシワを寄せて見ている。
「オスカーにも限界まで泣かされる大変さを分かって貰おうかなって」
 団長の言葉は無視しつつも、しっかりと耳に入っていた。
 いつもひいひい泣かされているので、たまにはオスカーを泣かせてみるのもいいような気がした。
 そして少しは自重して欲しい。
「その紐は何だ?」
「普通にしてたら、絶対オスカーに泣かされちゃうでしょ。身動きできない様にして、私がオスカーを泣かせます」
「相変わらず、ニナがバカだ」

 それでもオスカーは、素直に縛られてくれた。
 後ろ手に縛ったら、そんな緩いとすぐ外れると言って、縛り方の指定もしてくれた。
 上に向けた手を膝に乗せて、手首をそれぞれの足に縛り付ける。
 ちなみに縛られる前に自ら全裸になっている。
 余りに協力的で、ちょっとひく。
「さあ、思う存分やってくれ」
 どこか期待に満ちた眼差しに、私は更に怯む。
 私の予定では、嫌がるオスカーの服に手を差し込んで、焦らすように身体を弄り、服の上からも分かるぐらい大きくなった物を冷ややかに見つめながら『まだ触ってもいないのにこんなに大きくして、オスカーの身体は本当にいやらしい』とか耳元で囁くつもりだった。いつもの仕返しだ。
 それなのに、既に全裸のうえガッチガチに勃っている。
「ええと、見られただけでこんなに大きくして、オスカーの身体は本当にいやらしい」
「そうだな」
 食い気味に答えられた。恥じらいも戸惑いも一切ない。
 だめだ、オスカーが泣く程ひいひい言わせる自信が無い。

 私は計画を修正すると、するすると服を脱ぎだした。
「私の身体も、オスカーにいやらしく変えられちゃったの。見て……」
 私はオスカーの前に座ると、思い切り足を広げた。
「ほら私も、見られただけで、こんなに濡れちゃった……」
 オスカーを悩ましげに見つめると、オスカーは苦しそうに呻いた。
 ちょうど縛っている事だし、オスカーには出したいのに出せない辛さに、ひいひい言って貰う事にした。
「オスカー……ああん……」
 私は甘えた声を出しながら、割れ目をなぞる。
「ニナ……」
 呼びかけにオスカーを見ると、指をクイクイと動かしている。
 なるほど、手を上向きに縛らせたのはこのためか。
 私はオスカーの膝に跨がるように立つと、クイクイと動かされた指に割れ目を押し当てた。
「あっ、やだっ……んんっ……」
 縛られているからか、オスカーの指の動きはいつもと違って単調だ。
 私は快感を求めて、自ら指を咥え込むと、腰を揺らした。
「そのままだと危ない。腕を肩に回すんだ」
 不安定な姿勢でぐらつく私に、オスカーが声をかけた。
 もたれかかるようにオスカーに抱きつくと、そのままキスをした。
「んっ、ふっ……んっ、んっ……オスカー……ああっ……」
 舌を入れて深いキスをしていると、オスカーが親指を使ってクリトリスを押しつぶした。
 ビクビクと腰を振りながら、あっけなくイッてしまう。

「はあ、はあ……」
 オスカーの膝の上から退いて、オスカーの物を確認する。
 赤黒く充血していて、ギンギンとしか言いようがない。
 辛いかと思って顔を見ると、恍惚の表情で私を見つめていた。
 まだ、元気そうだ。
 どうしようか考えていると、オスカーは身体を倒し、顔を上に向けた。
 手を足に縛られているから、身体は少し浮いている。腹筋が心配になってしまう。
「ニナ……」
 オスカーは私の名を呼ぶと、舌を突き出してきた。
 なるほど、次は顔の上に跨がるわけか。
 でも、さっきからオスカー主体で事が運んでいる様な気がして、これではいけないと思った。
「……オスカー、舐めたい?」
 少しずれた位置で跨がって、オスカーに尋ねる。
「ああ、快感に力が抜けて、俺の顔を押しつぶすまで舐めまくりたい。舌を押し入れ、クリトリスに噛り付き、啜るように愛液を舐め取りたい。なんなら今すぐ押しつぶしてくれてかまわ……」
 思わず割れ目を押し付けて口を封じてしまった。
「ひあっ、あっ……やあっ……」
 すぐに舌が入ってきて、快感に身をよじる。
 強過ぎる快感に、オスカーの髪を掴んでしまう。
「あああっ、ああんっ……ああっ……」
 クリトリスを甘く噛まれ、腰がガクガクと揺れる。
 ピチャピチャとかジュルッとか、耳を覆いたくなるような音が聞こえる。
「やっ、あっ……気持ち、いいっ……ああんっ……」
 クリトリスに強く吸い付かれ、私は身体を反らせてイッてしまった。

「はあ、はあ……」
 おかしい。結局私がひいひい言っている。
 不満気にオスカーを見ると、うっとりと私を見つめていた。
 だめだ、勝てる気がしない。どうしたら……
『手っ取り早く主導権を握りたいなら、視覚を奪っちゃえばいいのよ。目隠しプレイはどんな男も、従順な下僕にしてくれるわ』
 フローラさんの言葉が蘇る。これだ。
「オスカー……」
 私は手近な布を手に取ると、オスカーににじり寄った。
「何だ?」
「大丈夫、私に任せて」
 不審がるオスカーに声をかけながら、布で目隠しをした。
 何の抵抗もないうえに、心なしかオスカーの足の間の物がヒクヒクと動いた気がした。
「ニナ……」
 別にそうする様に言った訳でもないのに、オスカーは足を大きく広げている。
 私はオスカーの足の間に入り込むと、何も言わず血管が浮かぶそれを、下から上へ舐め上げた。
「くっ……」
 先っぽだけ咥えて舌でチロチロと舐めていると、オスカーが腰を浮かせて奥まで入れようとしてきた。
「オスカーは、動いちゃだめ……」
 私は口からオスカーの物を外すと、暫く待ってから、吸い付きながら根本まで咥えた。
「うっ、くっ、ニナっ……」
 オスカーの腰に抱きつき、ゆっくりと顔を上下させると、オスカーが呻いた。
「だめだ、もう、で、る……」
 オスカーの言葉に私は再び口からオスカーの物を外した。
「ニナっ……」
 辛そうなオスカーの声に、私は満足感を覚える。
 いい具合に、ひいひい言わせている気がする。

「オスカー、今日は私のナカでしか出しちゃだめ」
 私の唾液とオスカーの先走りでぬらめくそれに、ふうっと息を吹きかける。
「もう少し、我慢して」
 そう言いながら、浮き出た血管をなぞる様に舌を這わせた。
「ぐっ、うっ……」
 オスカーの声は、もはやうめき声の様になっている。
「私のナカ以外で出したら、おしまいだからね」
 我ながら残酷な事を告げてから口に含むと、搾り取る様に顔を上下させた。
「ふっ、んんっ……んんっ……」
「ぐっ、うっ……くっ……」
 獣の様な二人の声と、いやらしい水音だけが、小さな部屋に広がる。
 オスカーの腰のビクつきが大きくなってきたので、私は音を立ててオスカーの物を口から外した。
「ニナ……ニナ……ニ、ナ……」
 オスカーがうわ言の様に私の名前を呼ぶ。
「ここにいるよ」
 私はオスカーに跨がると、胸を押し付けるように抱きついた。
「ニナっ!」
 まだ入っていないのに、腰を振り出したオスカーにちょっと不安になる。
 ひょっとして、やり過ぎてしまってないだろうか。
 これって、私は無傷で終われるんだろうか。
「だめ、腰を振るのは、挿れてから」
 取り敢えず嗜めると、オスカーは大人しくなった。
 もう止めてしまいたくなってきたけど、行き着くところまで行くしかない。
「私が挿れるから、動かないで待ってて……」
 腰を動かして性器を擦りつけ合いながら、甘く囁く。
「ああっ、んっ……やっぱり、オスカーの……気持ち、いいっ……」
 オスカーの物を手に取り、クリトリスや割れ目に押し付ける。
「ああっ……いいっ……あっ、んっ……」
「ニナ、はや、く……」
 オスカーの苦しげな声を無視して、私は身勝手な快感に浸る。
「あ、んっ……おっきぃ……かた、いっ……」
 私は身体を仰け反らせて、オスカーの物を太ももで挟み込むようにして互いの性器を擦り合わせた。
「ニ、ナっ……」
 その瞬間、オスカーの物は大きく脈打ち、盛大に白濁を飛ばした。


「ふっ、あっ……出しちゃったね、オスカー」
 顔どころか頭にまでかかってしまった。
「今日は、もうおしま……」
 私が言い終わる前に、ブチブチと布が引き千切れる音がした。
「ニナ……」
 無理やり縛めを解いたオスカーが、目隠しを外した。
 白濁まみれの私を目を細めて見つめている。
 大変、満足そうだ。
「すまない、ナカ以外で出してしまったから、もうおしまいだな」
 なんで、そんなに嬉しそうなんだろう。
「今度は、俺の番だ」
 オスカーは私の胸についた精子を、塗り込める様に揉んでいる。
「あの、オスカー?……怒ってる?」
「怒る訳ないだろ。気が狂いそうな程、最高だった……もう、狂ってるかもしれない……」
 怖い!
「ニナも、一緒に狂おう……」
 怖い!怖い!
「大丈夫だ、気持ちいい事しか、しない……」
 
 もう二度と、オスカーを泣かせようなんて思わないでおこう。
 いつも以上に激しく泣かされた私は、薄れゆく意識の中で心に誓った。
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