イセカイ召命譚

すいせーむし

文字の大きさ
1 / 28
序章 異世界召喚

プロローグ 或ル魔女ノ最期

しおりを挟む
 一人の魔女は、絶望した。
 仲間は焼かれ、友に裏切られ、護ろうとしたものは悉く奪われた。
 世界は残酷で、信仰は牙を持ち、人々は無知ゆえに刃を振るう。

 もう、限界だった。
 私じゃ彼らを愛せない。私じゃ世界は救えない。私じゃ未来は変えられない。私じゃない。私じゃない。私じゃない。私じゃない。私じゃない。

 私じゃ、ダメだ。

 彼女は最後の力を振り絞って、魔法を行使する。
 使いたくて使えるようになった訳じゃない。忌むべき力と罵られ、私達をここまで追い込んだ元凶。
 恨みこそすれど感謝などしてやるものかと日々呪ってきた自身の異能に、今際の際にて初めて私は感謝した。

 その時、私は"光"を見たのだ。

 それはとある世界の片隅で誰にも知られず善意を貫くごく普通の人間だ。
 あぁ、このような人間がいたのかと死に瀕しているにも関わらず、自然と私の頬は緩む。

 彼ならば、あるいは……。

 霞む意識の中、私は直感的に手を伸ばす。そうして、無理やり引っ張り上げる。
 彼には愛する人がいたかもしれない。変わらない日々を大切にしていたかもしれない。それを私は、無理やり奪った。異世界という名の檻へと、彼を引きずり込んだのだ。
 自分の望みのためならば、手段を選ばない。私はこの世界で穢れて、私の大嫌いな存在となった。
 ごめんなさい。そんな嗚咽を最後に一人の魔女の一生は幕を下ろす。

















 そして、彼は召喚された。

 力もない。魔法も使えない。
 武機も魔具も持たぬ、ただ"心優しい"だけの青年。

 ——これは剣も魔法も振るえない者が優しさだけで世界に抗う物語。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

短い話

すいせーむし
ライト文芸
短編集。 特に繋がりもない、短い物語の群れです。 気が向いたらぜひ読んで頂けると嬉しいです。 まぁ、もしかしたら、他のお話と繋がりはあるのかもしれない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...