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入学式に倒れる……とか、ヒロイン設定によくある展開じゃない?
しおりを挟む「……心ここにあらずだったね。壇上での僕の話、ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
「えっ!」
入学式を終え、授業の開始は明日からなので、今日はそのまま帰宅となっている。
私は屋敷に戻る前にいつものように王宮へ寄り、シュナイダー殿下とお茶の時間を過ごしていた。
そんな中、投下された殿下の言葉に私はピシッと固まった。
「あ、その反応。やっぱり、図星だね」
「ど、ど、どうしてそう思われたのですか!?」
殿下の言うように、確かに入学式中の私は心ここにあらずだった。
だって、存在しているかも分からない“ヒロイン”を意識していたから。
だけど殿下は壇上に居て挨拶していたのに何故、私の様子が伝わってしまったのだろうか?
そんな疑問が顔に出ていたのか、殿下は飲みかけていた紅茶のカップをソーサーに戻し、あっけらかんとした顔で言った。
「僕は今日、壇上からずっとキャロラインを見ていたからね」
「え?」
「僕の可愛い婚約者の入学式という記念日だよ? しっかり目に焼き付けておきたいじゃないか」
「えっと……殿下? それって……」
「何かな?」
「い、いえ」
ニコリと笑う殿下には有無を言わさない迫力があったので、反論はしない方が良いと思いそのまま口を噤む事にした。
この7年間、殿下は事ある事に、婚約者である私を「可愛い」などと言って褒め称えてくれるのだ。初めこそ、その度に「そんな事ありません」「冗談はおやめ下さい」などと否定を繰り返していたけど、結局いつも言いくるめられてしまうので、いつしか反論は止めた。
しかし、これは仲睦まじい婚約者アピールの1つなのだろうか?
「それで? キャロラインは何に気を取られていたの? まさか、他の男に目移りしたわけじゃないよね?」
「へっ!?」
「駄目だよ、君は僕の婚約者なんだから。他の男を見るなんて許さない」
「も、もちろんです……!」
何でここに他の男とやらが出てきたのかよく分からないけれど、殿下はたまにこういった事も口にされる。
まぁ、仮にも王子の婚約者が他の男性に目移りなんて、間違いなく醜聞となってしまうので、その辺りを色々気にしての発言なのだろう。
私は殿下に恋をしているから、そんな事は絶対に有り得ないのにね。
「そ、そう言えば! 入学式の最中に倒れた方がいましたよね?」
「え? あぁ、そうだね」
私はとにかく話題を変えたくて、慌てて思い出した入学式の出来事の話を引っ張り出した。入学式に関して他に覚えている事が無さすぎた為、話題はこれしか出なかった。
「大丈夫だったのでしょうか?」
「うん、僕も後で聞いたけど貧血だったそうだ。少し休んだら良くなったと聞いているよ」
「そうなんですね」
「確か、最近養子になったという、ヒーロバル男爵家の令嬢だったかな?」
「養子? ……男爵令嬢……?」
──ちょっと待って?
入学式に倒れる……とか、ヒロイン設定によくある展開じゃない?
しかも、その方は最近養子になった男爵家のご令嬢! ばっちりヒロインの素質を兼ね揃えてるじゃないの!!
これで、髪の色がピンク色だったりしたらーー……
「うん。僕は今日まで知らなかったけど、彼女は有名だったみたいだよ」
「有名ですか?」
「ピンク色の髪が珍しいって」
「ーーっっ!!」
まさかのピンクの髪!!
もしかして、これって、これってもしかするのではないの!?
ピンク色の髪の男爵令嬢……入学式で倒れた事で殿下の目にも止まった……
これは、“ヒロイン”に違いない!
その、ヒーロバル男爵令嬢が間違いなくこの世界のヒロインなのだわ!
チクリッ
そう思うと同時に胸が痛んだ。
“ヒロイン”が現れたなら、きっと私はいつか殿下とは別れる時が来る。
ヒーローとヒロインは結ばれる運命なのだから。
邪魔者の私は……不要だ。
分かっていたけど辛い。
殿下に恋をしてしまったからとても辛い。
「……まぁ、僕はキャロラインの髪の方が好きなんだけどね。日に透けるとキラキラしてて、いつでも触りたくなるんだ」
──この時、ぐるぐるとヒロインの事ばかり考えていた私は、殿下が口にした発言を何一つ聞いていなかった。
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