1 / 13
恋する乙女は好きな人の言葉で一喜一憂するものなんだから!
しおりを挟む私、キャロラインと婚約者である王太子のシュナイダー様は、転生者である私の、
“私は悪役令嬢だわ!”
という強い思い込みの元、ちょっとした誤解とすれ違いと勘違いを経て、長いこと拗らせていた互いの想いを通わせ幸せを手に入れた。
先日、そんな愛するシュナイダー様が学園を卒業されてしまったので私達が会えるのは私が王宮を訪ねる時くらいになってしまった。
なんだかんだで寂しいわ……
そう思っていた頃、その話を聞かされた。
「……聖女様、ですか?」
「そうなんだ。キャロラインも知ってるかもしれないけど、隣国には神に仕える役目を担う聖女と呼ばれる女性がいてね」
私の目の前で優雅に紅茶を啜りながらシュナイダー様は、淡々とそう話す。
(私の座ってる位置が膝の上じゃないのは他にも人が居るからよ!)
それは知っているわ。
聖女と言うだけあってやはり“特別な力”があるとかで、更には王家と神殿のパイプ役もしているのよね。
確か、今の聖女様は平民出身の女性だけど立場としては王族に次ぐくらい偉い立場になるのだと王妃教育で習ったわ。
「その聖女様がどうされたのですか?」
「うん……それが」
そこでシュナイダー様は、少し困った顔をした。
何かあったのかしら?
「その隣国の聖女は、自国の王子と婚約していたらしいんだけどね」
聖女が自国の王子と婚約……あるあるね!
「……」
ん? あれ? 嫌だわ。ちょっと待って……?
なんだかその続き聞きたくないのだけど? だって、嫌な予感しかしないわ。
聖女……王子の婚約者……
ねぇ、ほら……それって……
「その王子が『真実の愛に目覚めた!』とか言い出して、聖女との婚約破棄を言い出して追放しちゃったらしいんだ」
────やっぱり!! 聖女が追放されてるじゃないの!!
その瞬間、何故か私の脳内では、
~婚約者に真実の愛に目覚めたと言って追放された元聖女ですが、隣国の王子に拾われて溺愛されています~
というフレーズが頭の中を駆け巡った。
あぁ、いっぱい読んだわ。追放された聖女……この手の話はたくさん読んだわ……
「キャロライン? どうかしたの? 顔色が……」
「い、いえ、大丈夫……ですわ」
明らかに顔色が悪くなっている自覚はあったけれど、私は必死に誤魔化した。
「そ、それで、その聖女様は……」
「とりあえず一旦、我が国に来るらしいんだ」
「!」
あぁぁ、ほら、ほら、やっぱりそうなる!
追放された聖女は、隣国で新しい出会いを果たす。
そう、その時に大抵現れる真ヒーローと言えば……その隣国の王子様!
そして、新しい幸せを手に入れた聖女は自分を捨てた王子達にざまぁするのよ。
(キャロライン調べ・改 Ver.2)
──ねぇ? もしかしなくても、この場合の隣国の王子って……
シュナイダー様の事になるんじゃないの!?
目の前がくらくらした。
しかし、とりあえず話を聞かなくては!
「く、国としてその追放されてしまった聖女様をお迎えする、という事でしょうか?」
「……そういう事なんだ」
シュナイダー様がちょっと苦々しい顔をしながら答えた。
(……? シュナイダー様のその表情はいったい……?)
何だか一気に不安になってしまう。
「な、何かお迎えするのに問題でもあるのですか?」
私はおそるおそる聞き返した。
だって、聖女よ? 特別な力があるのよ??
私、太刀打ち出来るかしら? 無理じゃない?
「え? あ、いや、問題と言うか……」
シュナイダー様はちょっと言いにくそうだった。
それでも私がじっと見つめていたら観念したのか、ようやくその重そうな口を開いてくれた。
「……そ、の、キャロラインと過ごせる時間が減っちゃうな、って残念に思っただけだよ!」
「!!」
ボンッ!
その言葉に私は一瞬で顔が真っ赤になった。
や、やだもう……
シュナイダー様ったら……!!
でも、良かった。シュナイダー様はやっぱりシュナイダー様だったわ。
さっきまで色々と不安になっていたのに、この言葉だけで安心しちゃう私は……やっぱりチョロいのかしらね?
でも、仕方ないのよ!
恋する乙女は好きな人の言葉で一喜一憂するものなんだから! (キャロライン調べ・改 Ver.2)
「キャロライン……」
「?」
そんな脳内で恋する乙女の事を考えていたら、いつのまにかシュナイダー様の麗しい顔が近くにあった。
……あ!
待って、今この場には他にも人が……
「シュ、シュナイダー様!」
そう思って止めようとしたのだけど、何故かシュナイダー様は止まらない。
どんどん麗しのお顔が近付いて来る。
「キャロラインが、そんな顔をするからだよ」
「……っ!」
ちなみに、キスを終えた後、慌てて部屋を見回したらすでに誰もいなかった。
とっくに退出していたらしい。
──いつの間に!?
私が内心で慌てていたらシュナイダー様は可笑しそうに笑いながら言った。
「そんな心配していたの? 相変わらず可愛いなぁ。僕が人前でキャロラインのそんな顔を他の人に見せるわけないでしょ?」
「うぅ……」
「よし! キャロライン」
そうして誰もいなくなったのをいい事に、いそいそと私をいつもの定位置(膝の上!)に誘導するシュナイダー様。さすがだわ。
そんな良くも悪くもいつも通りのシュナイダー様を見ていたら、“聖女”に関するさっきまで私の感じていた不安はキレイさっぱり遥か彼方に吹き飛んでいた。
123
あなたにおすすめの小説
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる