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21. 光の力 VS 闇の力
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まさか、王宮がそんな騒ぎになっているなんて知らなかったその頃の私は、ヴィンス様の腕の中にいた。
(……温かい)
異常気象による謎の寒さの影響で宿の中も温かいとは言えない。
なのにこんなに気持ちがポカポカしているのはヴィンス様がこうしてくれているから。
そう思ったらこの気持ちをきちんと伝えなくては、と思った私はモゾモゾ顔を上げる。
「ヴィンス様、ありがとうございます。それと……大好きです」
「っ!? コホッ……んんっ……ミ、ミリアがまた可愛いことを言い出した」
ヴィンス様がむせた。
「……え?」
「ミリアらしいけどね」
互いに見つめ合ってふふっと、笑い合った。
そしてお互いの顔がそっと近付いて、再び、唇が重なろうとしたその瞬間────
……ゾクッ!
(─────ま、またっ!?)
またしてもあの気持ち悪い感覚が私の身体の中を駆け巡った。
「……」
「ミリア? どうかした? ……また?」
突然、身体を震わせて固まった私の様子にヴィンス様が怪訝そうな表情を向ける。
でも、ヴィンス様の事だから察しているんだと思う。
(何これ? ……この間、倒れた時よりも禍々しい気配を感じるわ)
「ヴィンス様……黒い気配、が凄いです……レベッカ様が何かした、いえ、している……のかもしれません」
「なに!? 」
この感覚……なんて言葉にしたらいいのかしら?
まるで、王国全土……いえ、この世界そのものを呪ってやる! そんな気配にすら感じる。それくらい禍々しい。
(駄目……これは……このまま放置の様子見は良くない気がする!)
「ミリア、大丈夫?」
「……ヴィンス様、このまま私を抱きしめていてくれませんか?」
「え? わ、分かった!」
ヴィンス様がギュッと私を抱きしめてくれる。
───うん、大丈夫。
この温もりがあるから今回の私は倒れたりしない。
「……」
私はヴィンス様の腕の中でそっと瞳を閉じて願う。
───お願い。
本当に私に力があるのなら……今すぐ、この世界全体を呪いそうな程の禍々しい力を止めて!
そして───
私は強く強くそう願った。
❋
「───どいつもこいつもミリア、ミリアって! あんな使えない女呼び出してどうするつもりよ!」
ハァハァと息を切らしながら私は怒鳴った。
あの女には戻って来てもらいたいけど、それは聖女としてじゃない!
私の幸せのために悪役として戻って来てもらわなくちゃ意味がないのよ!
「そもそも夢見の聖女? 未来を夢に視る? そんな事起こるわけないじゃない! どうせ適当なことを口にしたらたまたまそのうちのどれかが当たってただけに決まってるわ!」
私はさらに声を荒らげながらそう言ってやる。
何だか国王陛下も王太子殿下も大臣たちもギョッとした顔を私に向けたけど、それがなんだと言うの?
だって、悪役のミリアはあくまでも私の代わりに過ぎなかったんだから!
まともな力なんてあるはずないのよ!
「偽者は私じゃなくてあっち! ミリアなの! 本物の聖女は私でこの国の平和を願えるのも私!」
「おい、レベッカ……! 君は今、自分が何を口走っ」
王太子殿下が、声をかけて来たけど私は無視をした。
「今すぐここで祈ってあげるわよ! そうすればこんな雪もすぐに止むんだから!」
ふんっ! 見てなさいよ、分からずや共!
この私を偽者聖女扱いした事を後悔させてやるわ────!
私は手をかざした。
その瞬間、眩しい輝きの光を放つはずだった私の周囲からは、ドロっとした闇のように黒い何かが現れた。
それを見た私はまた苛立つ。
(もう! なんでこんな時でも黒いものが出てくるわけ? 輝きを放つ眩しい光はどうしたのよ!)
───まぁ、いいわ!
これだって聖女の力に変わりはないんだから!
聖女の私から生まれる力は全て聖女の力……癒しの力に決まってる!
そんな私の気持ちに反応したように黒い闇が部屋全体を覆い始める。
「───ま、待て! 聖女レベッカ! そなたから出ているのはどう見ても闇の力ではないか! ま、禍々しい気配を感じるぞ!」
「?」
国王陛下が私を見て何か騒いでいる。
闇の力? 禍々しい気配? やだわ、国王陛下は何を言っているのかしらね?
これは世界を幸せにするための力なんだか───
その時だった。
突然、ピカッと眩しい光が現れて私の出した黒いものを一瞬で消し去ってしまった。
(───は? な、何、今の……)
私は呆然とする。
国王陛下だけでなく、王太子殿下、大臣たちも同じように呆然とその場に突っ立っていて誰も動かない。いや、動けない。
私はハッとしてキョロキョロ辺りを見回すも、私たち以外は誰もいなかった。
「何だ今のは? 黒いものが消えた」
「一瞬、眩しい光が……」
「……何だかすごく温かかった」
大臣たちがそうボヤいているけどそれ所じゃない!
(ちょっと、ちょっと! 私の力はどこへ行ったのよ!? 消えちゃったの?)
冗談じゃないわよ! そう思った私はもう一度……力を放とうと祈りを込める。
───今度こそ、奴等に見せつけてやるんだから! さぁ、私の力よ──
しんっ……
(え? あ、れ?)
私の力がうんともすんとも言わない。眩しい輝きを放つ光も出なけりゃ、ずっと出ていた黒いものすらも出やしない。
「え? なん、で……?」
私は必死に手をかざす。えいっと何度も力を込める。
だけど、何も出ない。
「どうして……?」
「────それは、我々が聞きたい。聖女レベッカ……いや、偽聖女と呼ぶべきか?」
すごく冷たい目の国王陛下が私に近付いてきた。
「偽……聖女?」
「はて? 他になんと言う呼び方が?」
不思議そうに首を傾げた国王陛下の顔は全く笑っていなかった。
❋❋❋❋
「───っ」
「ミリア!」
力を集中させていた私は、祈りを終えるとそのままヴィンス様の腕の中に倒れ込んだ。
「ミリア……大丈夫!?」
「大丈夫です……ちょっとクラクラしますけど……」
身体が慣れてなくて気持ちについてきてくれていない気がする。
(やっぱり黒い力を押さえ込みたいとまで願ったのは欲張りすぎた?)
それでも……
「ミリア……黒い気配は?」
「消えた……と、思います」
黒い力を光の力が飲み込んだ……そんな気配がした。
そのせいか、あの感じていた不快な気持ちが消えている。
「ミリア……」
ヴィンス様が優しく私を抱きしめてくれる。
「どうせなら、この異常気象までどうにかしたかったんですけど……」
黒い力を消し去り、他にも欲張ったせいで、残念ながらそっちまでは力が及ばなかった。
私がそう口にしながら、力無く笑うとヴィンス様がちょっとムッとした顔になった。
「ミリアはまず自分を大事にするべきだ!」
「ヴィンス様……」
「新しい力に目覚めてそんなに日がたってないんだ! もし、無理してミリアに何かあったら……」
(そうよね……まだこの力は未知数。どんなものなのかよく分かっていない……)
今だって私はヘロヘロになっている。
ヴィンス様が心配になるのも当然だ。
私はそっとヴィンス様に向かって手を伸ばして、そっと頬に触れた。
「ごめんなさい……もう無茶はしません」
「……約束だよ」
「はい」
私が頷いたのを見たヴィンス様はそっと顔を近づけると、額に優しいキスをくれた。
(あの黒い力……とりあえず一旦は押さえ込んだけれど、完全に封印する必要があるわ……)
その為にも……レベッカ様に会わなくちゃ。
こればっかりはきちんと対峙しないと“封印”出来る気がしない。
だから──
「ヴィンス様……」
「どうした、ミリア?」
私は真剣な目でヴィンス様を見つめて言った。
「───王都に……行きましょう」
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