【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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3. 出来損ないでお荷物な王女



  儀式を終えた後の私はいつしか周囲にこう呼ばれるようになった。

  ───聖女になれなかった出来損ないで、お荷物な王女、と。





「まぁ、最初から聖女に選ばれるのはマリアーナ様だろうとは思っていたけどねぇ」
「やっぱり神様はよく見てるわね」
「本当に。2年後の聖女様の誕生が楽しみ!」

  ヒソヒソ……

「聖女誕生まであと2年は待たないといけないのか~」
「でも、マリアーナ王女が聖女様になるのなら納得だろ」
「明るくて可愛らしいからな。聖女にピッタリさ」

  ヒソヒソヒソヒソ……

  儀式を終えてから、色々な場所で私をちらちら見ながらヒソヒソヒソヒソと陰口……いえ、正々堂々としているから悪口を言われるようになっていった。

  (……聖女になれない“王女”がこんなにも肩身が狭くなるものだったなんて知らなかったわ)

  儀式の時以来、お父様もお母様もお兄様もあからさまに私の事を避けている。
  顔を合わせてしまうと何と言葉をかけたら良いのか分からなくなるらしい。
  私の侍女達もまるで腫れ物を触るかのように接してくる。

  皆、口ではマリアーナが聖女になるだろう!  
  ずっとそんな事を言っていたくせに、変な所で気を使おうとする。

  (もう、放っておいて欲しいわ。そうでないと───……)

「皆、もうやめて?  お姉様の事をそんな風に言わないで?」
「マリアーナ様!」
「マリアーナ王女……」

  (───出た!)

「お姉様は神の声が聞こえなかったせいで、となってしまったのよ?  当然、お姉様だってショックを受けているはずなんだからそんな事は言わないであげて?」
「マリアーナ様はお優しい方だ……」
「姉思い……さすが」

  今の発言のどこをどう切り取ったら“姉思い”な“優しい妹”になるのか教えて欲しい所だけれど、そう口にした瞬間、非難されるのは間違いなく私。

「あ、ほらお姉様だわ!  お姉様~」

  マリアーナは無邪気な顔で私の元に駆け寄って来た。
  それまで私の悪口を堂々と口にしていた人達は、バツの悪そうな顔をして離れて行く。
 
「あら?  皆さんどうしちゃったのかしら、不思議ね、お姉様」
「そうね……」

  マリアーナは散り散りになって行く使用人を見ながら可愛らしく首を傾げていた。

「それより、マリアーナ。何か用なの?」
「酷いわ、お姉様!  用が無いとお姉様の元を訪ねてはいけないの?」
「そうは言ってないわ。ただ……」
「私はお姉様の事を心配してるだけなのに……!  酷い!」
「!」

  しまった……!  と思った。
  マリアーナが瞳を潤ませてしまうと、いつだってその矛先は全て───

「……見て!  リディエンヌ様がマリアーナ様を泣かせたわ」
「大方、聖女様になれなかったから嫉妬したんだろう?」
「最低……」

  こんな様子で私に向いてしまうのだから。



◇◆◇◆



「ようこそ、リード様。お久しぶりですわね」
「…………ご無沙汰しております、王女殿下」

  今日は婚約者のリード様とのお茶会の日。
  儀式を終えてから顔を合わせるのは初めて。現れた彼の顔は明らかに気まずそうだった。

  (あなたまでそんな顔をするのね)

  少し悲しい気持ちになりながら、お茶会は始まった。


  ───けれど。


「……」
「……」

  リード様とのお茶会は、カチャカチャと食器の音だけがとても良く響くお茶会と化していた。
  そう。会話が……ない!
  あまりにも話題が無いなので困っていたら、こういう時は天気の話から入るといい!  と、誰かが言っていたのを思い出した。
  だから、私は思い切って言ってみる事にした。

「──リード様!  き、今日はいい天気ですね?」
「…………ああ」
「……」
「……」

  (発展しない!)

  せっかくの会話は弾むどころか秒で終わってしまった。
  天気の話をと言った人を呼び出して小一時間お説教したいわ!

  ……結局、その後も盛り上がるような話題は見つからず、とにかく無言の時間だけが流れていた。

「……」
「……」

  すでにお腹もガブガブなのに、もはや何杯目になるのかも分からないお茶を飲み干した時、ようやくリード様が口を開いた。
  
「……そういえば。今日はマリアーナ王女はいないのかい?」
「え?」

  そう訊ねてきたリード様の頬がほんのり赤く染まっているように見えるのは多分気のせいではないと思う。
  これは……?  この表情の意味する所は?  出来れば考えたくない。

「マリアーナは今日はちょっと……あ、そういえば私があなたに会えない時、いつもマリアーナがリード様と過ごしていたと聞いたのですが……」
「あぁ、そうなんだ……って、あれ?  変だな、リディエンヌ殿下。君が忙しくて会う時間なんて作れないからとマリアーナ王女に代わりに応対するよう頼んでいたんだろう?  何を言っているんだい?」
「……え?」
「結局聖女にもなれなかったくせに、よくもまぁ、そんなに無駄な…………って、あ、すまない、言いすぎたね」
「……」

  ははは、と失言を笑って誤魔化そうとするリード様。

  (……あなたもそうやって私をバカにするのね)

  私の心はどんどん冷えていく。
  それよりも、気になるのが……私がマリアーナに頼んだ事ですって?  
  これはいったいどういう事なの?
  てっきり、(何故か)私にお茶会をすっぽかされたリード様を見つけたマリアーナが、自主的に相手をしていただけだとばかり……違ったの?

(まさか、マリアーナが?)

『素敵な人よね、リード様って。あんな方が婚約者だなんてお姉様が羨ましいわ~』
『リード様はお優しいのよ?  マリアーナ王女は可愛いねっていつも、言ってくれるんだから!』

「……っ」

  グイッと勢いよく飲み干したお茶は、何の味もしなかった。


◇◆◇◆



  それから1ヶ月、2ヶ月……半年と経っても、皆の私を見る目は変わらず、聖女になれなかった出来損ない、王家に何の貢献もできないお荷物王女……と、冷たくあしらわれる日々が続いた。

  家族も相変わらず。
  たまに顔を合わせても冷えきった目で見られる。
  マリアーナだけは私の元を訪ねてくるけれど、あれはあれで苦痛だった。
  また、王宮のメイド達の話によると、リード様も私と会った後は必ず、マリアーナの元にも顔を出していると言う。それも私といる時間より長く一緒に過ごしている、とか。

(これではどっちが婚約者なのか分からないわね……)

  マリアーナは今も婚約者はいないので、そんな奔放なマリアーナを咎める人はおらず、悪いのは婚約者の気持ちを繋ぎ止めておけない私の方らしい。
  これではまるで、私が惹かれ合う二人を引き裂く悪女みたいだわ、なんて思っていた。

 
  ────そんな日々に耐えながら、私が儀式を迎えてから約2年。
  遂に、マリアーナの儀式の日がやって来た。

  誰もが分かっている結果。だって聖女になるのはマリアーナしかいないから。
  なので集まっている人達は、数十年ぶりの聖女誕生の瞬間見るために集まっている。

「では!  行ってきますね!」

  マリアーナは笑顔で神殿の奥へと入って行った。

  
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