【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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18. それぞれの気持ち



  それから数日後。

  ダグラス様は、急に忙しそうになってしまった。
  どうやら様子を見ていると、何度か王都にも足を運んでいるみたい。
  同じ屋敷に住んでいるはずなのに、あまり会えないすれ違いの日々が続いていた。




「ティティさん、私、すっごく寂しいみたいなの」
「にゃ?」

  今日も元気いっぱいに駆け回っているティティについつい語りかけてしまう。

「最近、ダグラス様がお忙しそうであまり会えないし、話も出来ないの」
「にゃん?」
「会いたいし、話したいなんて一使用人としてはただの我儘だと分かっているけれど……でも、ダグラス様は前に“家族”だと言ってくれたから……」

  (会えないのは……顔が見れないのはとっても寂しい)

  まるで胸にポッカリ穴が開いてしまったみたいな気分だった。

「にゃー」
「ティティさんがいなかったから、もっともっと寂しかったと思うわ」
「にゃー……」

  独りでいる事なんて、慣れっこだったはずなのに。

  (優しくて温かい温もりを私は知ってしまった)

「にゃん!」
「もしかして!慰めてくれているの?  ティティさんありがとう」
「にゃ?  にゃーん!  にゃ!」

  必死で何かを訴えてくるティティさんがとっても可愛い。
  何を言っているかは、ダグラス様ではないので分からないけれど、きっと必死に慰めてくれているのだと思う。

「ティティさん、大好きよ」
「にゃーーーーん!!」
「きゃっ!?  モッフモフ……!」

  ティティさんが飛び付いてきたので抱きとめると、破壊力満点のモフモフだった。

「……そう言えば、どうしてティティさんはダグラス様と会話が出来るの?」

  今更ながら気になった。
  あと、本当に今更だけど、会話……噛み合っているのよね?

「にゃ!  にゃにゃ!」
「ふふ、ダメだわ。私にはティティさんの言葉は分からないみたい」
「にゃー……」

  落ち込むティティも可愛いくて頬が緩んでしまう。
 
  (ティティはとても変わった猫さんだと思うのよね)

  てっきり、ただの食いしん坊だと思っていた二度の強奪が、もし、本当に私の為だったのなら……

  (まるで私の騎士みたいよ、ティティ)

「……でも、何故、引き合わせてくれたのが、ダグラス様だったのかしら?」
「にゃん!」
  
  何であれ、私とダグラス様を出会わせてくれたのはティティに間違いないわ。
  あんなに素敵な人の元に連れて来てくれて、私はとってもとっても感謝しているの。

「ありがとう、ティティさん!」
「にゃーーん!」

  ダグラス様に会えない寂しさをティティのモッフモフで、たくさん癒してもらった。




◆◇◆◇◆



「────グォンドラ王国の王女がこんな非常事態なのに我が国にやって来る!?  それは本当なのですか、陛下」
「ああ。婚約者と共にやって来るそうだ……だが、大々的に王女を迎える形は取らないでくれと向こうの国王からの手紙に書いてある」

  ここ数日、屋敷と王都の往復ばかりを繰り返しているダグラスは今日も国王からの呼び出しがあり、王都にて国王陛下と面会をしていた。

  (畜生!  リディエンヌの顔をここ数日まともに見ていない!  屋敷に帰りたい!)

  そんな気持ちをどうにか抑えて陛下に訊ねる。
  
「……陛下、念の為にお伺いしますが、そのグォンドラの王女とは……」
「第二王女のマリアーナ殿下だ。ほら、グォンドラの“聖女”になったという」
「第二王女……」

  (だろうな……だって第一王女は……)

「国がだから、王女殿下はお忍びでやって来る……と?」
「そういう事だろう。聖女とは随分、お気楽な存在なのだなーははは」
「……」

  (笑っているけど目が笑ってない……)

「とにかく、お前が今、住んでる街を通って入国するらしい。まだ、グォンドラ王国を敵に回したくはないから失礼のないように注意しておいてくれ」
「……それは、領主に言ってください。私は領主ではありませんので」

  自分は王都にも領地にも住むのがうんざりして、あの街に住んでいるだけだ。
  領主でもなんでもない俺は特に権限は持っていない。

  (しかし、グォンドラ王国の第二王女……か、つまり、リディエンヌの……)

  失礼のないようにだと?  
    ───ボッコボコにしてやりたいのですが?
  そう口にしたら陛下はどんな顔をするだろうな。国際問題になるからと止めるのだろうか。

  (リディエンヌ……)

  頭の中に浮かぶのは楽しそうにティティと遊んでいる彼女の姿。
  最近は笑顔を見せてくれる事も増えた。俺はそれを見ているだけで幸せな気持ちになる。

  最初は変な女だと思った。
  これまで俺の妻の座が欲しくて屋敷に忍び込んで来た他の女達と同じだろう……そう思っていた。

  ────ち、違います!  私はモフ……じゃない、ね、猫を追いかけて来ただけなのです! 

  ────ね、猫に……だ、大事な私のパンを取られてしまって……取り返そうと追いかけて来ただけなの……です。

  初めて会った日、リディエンヌはティティを抱きながらそう必死に訴えてきた。

  (あのティティ相手とはいえ、まさかそこまで必死に追いかけてくる猛者が現れるとは……しかも女性の身で。本当に驚いた)

  あれから、リディエンヌの事は何故だか放っておけない。
  それだけだったのに。
  最近はその中に違う感情が混ざっている。

  (だって、リディエンヌはすごく可愛いんだ!  可愛くて仕方がない)

  今頃ティティと走り回って、あのキラキラな笑顔で遊んでいるのだろうか?
  リディエンヌのそんな顔を思い浮かべていたら、思わず頬が緩んでしまう。
  そして陛下はそれを見逃さなかった。

「……ほぅ?  お前が表情を崩すのは珍しいな。どうした?  氷の貴公子?」
「その名前で呼ばないでください」
「ははは、普段、老若男女問わず、どんな人間にも冷気を放つことで有名だったお前がなぁ……頬を緩ませる……か」
「……」
「で、可愛いのか?」
「は?」

  ダグラスは目を丸くして聞き返す。
  まだ、リディエンヌの事は報告していないのに?

「お前がそんな顔をするんだ。とても可愛いのだろう?」
「……」
「まさか、氷が溶けるとは……すごいな。さすがー……」
「────はい。とっても可愛いと思っています」

  (リディエンヌ……)

  ダグラスがリディエンヌの事を思い浮かべながら、答えると陛下は嬉しそうに笑った。

「そうか……、そんなにも可愛いのか!  知らなかったぞ!」
「え!」
「だから、猫だ。お前が拾ったという猫の事だ」
「……」

  ────にゃーーーーん!

  脳内にあの呑気な顔でモッフリした猫の姿が浮かんだ。

  (……なっ!  ティティの話だったのか!!   俺はてっきり……!  くっ!  恥ずかしい!)

  余計な事を言わないで良かった……
  しかし、ティティは不思議な猫だ。
  何故かは分からないが出会った時から、ティティの考えている事が頭の中に流れてくる。

  (最近は、リディエンヌ、リディエンヌ、リディエンヌ、餌、おもちゃ、リディエンヌ……)

  どれだけリディエンヌを気に入ってるんだ!  全く!
  だが、ティティの気持ちはすごくよく分かる。

「まぁ、いい。その愛猫の事は後に紹介してもらおう。今はグォンドラの王女の事だ。よろしく頼むぞ、ダグラス!」

  リディエンヌの事を考えていたら、陛下がどう考えても面倒な事を押し付けてきた。
  よろしくなんてしたくない。

「……」

  マリアーナ・グォンドラ第二王女。そして。その婚約者……
  
  こいつらは、リディエンヌに何をした?  何故、リディエンヌ本物がいるのに妹が聖女を騙っている?  何故、リディエンヌはラッシェル国に来た?

  (リディエンヌは自分の首の印に気付いていなかった……つまり、自分が聖女だとは知らないのだろう……)

  リディエンヌが言いたくないのなら無理には聞かない。だが……

  この妹王女が乗っ取ったのか?  そしてリディエンヌを追い出した?
  事と次第によっては、俺とティティが許さない。


  陛下の前では静かに頭を下げながら、ダグラスは内心でずっとそんな事を考えていた。

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