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25. モテモテな一人と一匹
次の日。
約束通り私達は、指輪(+首輪)を買いに行く事になった。
「にゃっにゃー!」
「さっさと行くにゃ……って、ティティ! 何でお前が仕切ろうとするんだ!」
「にゃ~」
ダグラス様とティティも相変わらず。
そんなティティは私に抱かれて大人しく運ばれている。
「ティティさんはお出かけが嬉しいのよね?」
「にゃーん」
よっぽど嬉しいのかとってもご機嫌なお返事だった。
「……ご飯食べに行くんじゃないんだぞ? 本当に分かっているのか」
「にゃ!」
「ついでに言っておくが、リディエンヌとデートするのは俺だ!」
「にゃ?」
「お前はおまけだ! お・ま・け!」
「にゃ~……」
ダグラス様とティティはまたしてもバッチバチの火花を散らし始めた。
(ティティが絡むとダグラス様って面白いのよね)
そんな事を思いながら、ダグラス様をじっと見る。
私の視線に気付いたダグラス様が甘く蕩けそうな顔で私に微笑んだ。
「どうした? リディエンヌ」
「……!!」
(そ、その甘い微笑みは反則よーー!)
あまりの眩しさに呼吸困難に陥るかと思った。
「……っ」
私が言葉を失ったままダグラス様を見つめていると、何故か彼の頬が赤く染まっていく。
どうして? と私が内心で驚いていると、ダグラス様は照れくさそうに片手で顔を覆いながら言った。
「ダメだ……リディエンヌが可愛いすぎて直視出来ない」
「え!」
「ずっと前から可愛いとは思っていたが、なぜだか今日は一段とキラキラしていて眩しい……うぅ……」
「ダグラス様……」
そんな事を言われたら、私だって照れてしまう。
知らなかったわ。こんなにも私、想われていたのね?
……何で気付かなかったの。
あまりの恥ずかしさに耐えられなくなり、抱っこしているティティさんのモフモフの背中に顔を埋めた。
「にゃ!?」
(幸せだわ……好きな人の隣にいられて、モフモフも最高に気持ちよくて……)
国を追われた時はあんなにぐちゃぐちゃな気持ちだったのに。
今はすごく幸せ!
「リディエンヌ……」
「?」
「にゃぅ……」
そんな幸せを噛み締めていたら、ダグラス様の腕が私の肩に回されて、ティティごと抱き寄せられる。
「好きだよ」
「あ……う……」
不意打ちは狡い。
格好良い人は声までもが素敵だから。
「はは、俺はリディエンヌがそうやって照れたり狼狽えたりする姿も好きみたいだ」
「なっ!」
ギュッ
抱き寄せる腕に力が込められた。
「リディエンヌには、いつだって俺の事だけで頭がいっぱいになって欲し……」
「にゃーー!」
「…………かった が、どうやらティティが許さないらしい」
「にゃ!」
「……ふっ」
そんな様子がおかしくて私は笑みが溢れた。
────
「……指輪はだいたいペアで揃えるらしい……が」
「にゃー」
「首輪はどうしたらいいんだろうな?」
「にゃーー」
装飾品店で真剣に悩むダグラス様。
そんな悩む彼の姿もかっこいい。にゃーにゃー鳴いて色々訴えるティティも可愛い。
(だけど。私はどうして忘れていたの……)
ダグラス様とティティといると、注目を集めてしまうという事をすっかり忘れていたわ。
───あれ、氷の貴公子様じゃない?
───相変わらず、素敵! だけど、横にいる人……あれ誰?
───まさか、氷の貴公子様の……いえ、嘘でしょ?
ダグラス様のファン……
───モッフモフの猫……気持ちよさそう
───めちゃくちゃ可愛いぞ!
───モフモフしたいわ……
───あの、抱っこしている女性は何者なのよ!
ティティの可愛さに心奪われる人達……
(でも、負けない!)
私は、ダグラス様のこ、こ、恋人! で、ティティのお世話係なんだから!
「……ティティ」
「んにゃ!」
私が内心で意気込んでいると、突然、ダグラス様とティティが鋭い目つきになって頷きあっていた。
(悪い顔、とも言う)
「───あの一角にいる男共だ」
「にゃ!」
(──ん? 男共?)
「さっきから、リディエンヌにポーっと見惚れている」
「にゃ!」
「俺は、この可愛いリディエンヌをそいつらに“俺のもの”だと見せつけたい! 許可をくれ」
「にゃー……」
「そこは渋るのか! 可愛いリディエンヌが攫われたらどうする!」
「にゃ~……」
(──? えっと?)
ダグラス様とティティは何の話をしているの?
気にすべきは、黄色い声と熱い視線を送っている人達ではないの?
(あ、そっか!)
この一人と一匹は、じろじろ見られてキャーキャー騒がれる事にはすっかり慣れてしまっているんだわ。だからあまり気にしていない……
まぁ、私も昔からじろじろ見られる事は慣れたものだけど……
「…………リディエンヌ、やったぞ!」
「ダグラス様?」
「交渉の末、やっと、ティティが一つだけ解禁してくれた!」
「かいきん?」
考え事に没頭していたら、ダグラス様が嬉しそうな顔を見せる。
「───リディエンヌ」
「っっ!」
熱っぽい瞳で私を見つめていたダグラス様の美形な顔が近付いてきた!? と思ったら、
───チュッ
ダグラス様が私の額にそっと、キスをした。
その瞬間、それまでの黄色い声が一転して悲鳴のようなものに変わった。
「ダッ」
「……ティティが額にチューまでなら許すにゃ、と言ってくれた!」
「にゃー……」
「牽制も大事だにゃ、だそうだ!」
「!?」
(ティティさぁーーん?)
「……リディエンヌ」
「う!」
ダグラス様の熱っぽい瞳がもう一度したいと言っている。
「ティティ、もう一度だ。邪魔するなよ」
「にゃ……」
そうして、再び額に柔らかい感触が触れる。
私の心臓はドキドキし過ぎて破裂するかと思った。
◆◆◆◆◆
その頃、ゴミ共扱いされていた二人は……
「お姉様はどこにいるのよっ! 何でこんなに探しているのに見つからないの!」
「……殿下」
「リード様、あなた本当に探してくれているの? あなたの探し方が下手なんじゃないかしら?」
「なっ!」
リディエンヌが見つからない苛立ちから、日に日にマリアーナの態度も言葉も傲慢なものになっていた。
連日、こんなではさすがのリードも苛立ちが募ってくる。
しかも、グォンドラ王国からは、未だに雨が止む気配も無く、国内の様々な所に被害が起きている、このままでは再び暴動が起きかねん、早くリディエンヌを連れ戻して聖女としての役目を果たさせろ、と催促の手紙が来ている。
「──あぁ、もう! やってられないわ。何か気分転換に……ってあら?」
「どうしましたか? マリアーナ殿下」
マリアーナが貼り紙を指さした。
「これ! ねぇ、リード様、王都で王太子殿下の誕生日を祝う祭典とパーティーがあるんですって」
「はぁ……(それが何だ?)」
「…………隣国の王女でもあり聖女と呼ばれる可愛い私が、お祝いに顔を出したら盛り上がると思わない?」
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