【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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28. 激怒するモッフモフ



「ふにゃーー!」
「ティティさん?」

  私の胸の中でティティが、荒ぶりだした。
  何だか今すぐに駆け出して、マリアーナの元に向かって猫パンチを喰らわせそうな勢いを感じる。

「ティティさん、落ち着いて、ね?」
「にゃーー!!」

  マリアーナはまるで私に会いにこの国に来たという口振りだった。
  どうして私を探しているのかの理由までは分からないけれど、まさか、国を超えて追いかけてくるなんて夢にも思わなかった……

「……チッ!  強行突破しそうな勢いだな」
「あ……」

  ダグラス様の言う通りだった。
  マリアーナはとうとう身分を明かし、自分は隣国の王女で聖女として王太子殿下にお祝いの言葉を述べたいだけなのよ、と口にした。
  そこまで言われてしまうと陛下も静観していられず、仕方なくマリアーナを中に招き入れる事になってしまった。




「───グォンドラ王国の聖女とは暇なのか?」
「まさか!  私は国のため、民のため、毎日身を削って過ごしていますわ!」

  マリアーナは国王の前でにっこり笑いながら堂々とそう言い切った。
  陛下も凄い質問の仕方をするわね、と思ったけれどマリアーナの答えも、また何とも言えない気持ちにさせられる言葉だった。

「では、静かに入国させて欲しいとグォンドラの王は言っていたにも関わらず、この派手な登場はいったいどういうつもりだ?」
「それは……今、えっと、国が色々大変な事態になっているので、あまり騒がれたくなくて」
「では……何故、国がそんな状態なのに我が国へ訪問する事にしたのだ?」
「……そ、それは……」

  (──あ!)

  陛下のその質問にマリアーナは目を潤ませた。
  あれは、マリアーナが昔から私を陥れる時に最も得意とする表情……

「……お姉様を探しに来ました」
「姉だと?  そう言えばさっきもそのような事を言っていたな」
「はい。お姉様は、訳あってグォンドラ王国を出て、現在はラッシェル国にいるのです。私はそんなお姉様をこっそりグォンドラ王国に連れ戻したかったんです。でも、なかなかお姉様は見つからず……そんな時に今日のパーティーを知りました。気分転換がしたかったのと、もしかしたらお姉様が……」
「つまり、その姉が今日にいるかもしれないとそなたは言いたいのか?」
「……はい」

  やっぱり私を連れ戻す気なのね……でも、何故……?  しかも、こっそり。
  その疑問は陛下が訊ねてくれた。

「……何故、姉を連れ戻す必要があるのだ?」
「それは……えっと……その」

  マリアーナが言い淀み、何度か声を発するのを躊躇った後、ようやく決心したように口を開いた。
 
「───現在、我が国で起きている天変地異と呼ばれる災害の原因が……そのお姉様だからですわ」

  (────え?)

「……ほう?」
「“神様”が聖女である私に言ったのです!  全ての原因であるお姉様を国に連れ戻すように、と!」
「つまり、姉である王女がそなたの言う“神”に何かして怒らせた。だから天変地異が起きた、と?」
「……そういう事になりますわ。あれは神の怒りなんです。ですが私にとっては大事な大事なたった一人のお姉様ですもの。おおごとにしたくなくて。だから、お姉様に会って事情を話してこっそり連れ帰ろうとこの国にやって来たのです!」

  マリアーナは涙ながらにそう語る。

  (神様の怒り?  私のせい?  ……どういう事?  マリアーナは何を言っているの?)

  私の身体がブルッと震える。

「……リディエンヌ」

  そんな私をダグラス様が優しく抱きしめてくれた。
  今、この胸の中にいるモフモフとダグラス様がいなかったら、私は倒れていたかもしれない。

  その後もマリアーナはどんどん語る。
  グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌの話を。
  だけど、その話はどれも私には身に覚えの無い話ばかりで、リディエンヌの印象が悪くなるような内容ばかりだった。

「───こうして、聖女となった私に嫉妬したお姉様が、私を虐めた事に神様はお怒りになりました。私は、お姉様は本当はそんな事をする人じゃないのと神様には伝えたのですが……」
  
  そんな嘘八百をマリアーナが語り出した時だった。
  
「……にゃぁ」
「ティティさん!?」

  私の胸の中にいたティティがこれまで聞いた事のないほどの低くて怖い声で鳴いたと思ったら、そのまま飛び出してマリアーナの方へと駆けていく。

  (えぇぇ!?)

「ダ、ダグラス様!  ティティさんが……」
「ティティ……」

  つい私もティティを追いかけたくなったけれど、そこはグッと我慢した。
  今、マリアーナの前に姿を見せてはダメだ。

「ですから、私はいつもお姉様に……」
「…………にゃぁぁーー!」

  ティティは、そのままポロポロと涙を零しながら嘘だらけのリディエンヌわたしの話をしているマリアーナに突撃した。

「え?  何……猫?」
「……!  そなたは、ダグラスのモフモフ……」

  陛下がティティに気付いたその瞬間……

「にゃーーーーーーーーーー!!!!」
「えっ!?」

  今まで聞いた事のないくらいの大きな声で唸ったティティは、そのままマリアーナに飛び付き、猫パンチを喰らわせた後……

「んにゃーーー!」

  と、鳴いて鋭い爪でマリアーナの顔を引っ掻いた。

  (え、えぇぇ!?  ティティが引っ掻く所、初めて見た!)

「きゃーーーー!」
「マリアーナ殿下!?  だ、大丈夫ですか!?」

  さすがにこれには、これまでずっとマリアーナの横で空気みたいになっていたリード様も驚く。

「な、何するのよ、この猫!  わ、私を、この誰もが見惚れる可愛い私の顔に……何するのよ!」
「にゃーーーー!!」

  ティティは、うるさい!  そんなの関係無い!  と言わんばかりにもう一度マリアーナの顔を引っ掻く。

「きゃぁ!  い、痛っ……だ、誰か止めなさいよ!  どこの猫なのよ!?   王女であり聖女の私に……!  こんな事して神様が許さないわよ!?」

  その言葉にティティがピクッと反応を示す。
「ぅにゃぁ……!」と再び鳴いて今度は猫パンチ、更にはキックもお見舞した後、今度は噛み付いた。

  (ティティ……)

  私もだったけど、誰もがこの光景に唖然とした。

「痛い、きゃぁぁーー、もう止めてぇ!  誰か!  何で誰も助けてくれないのよぉぉーー!」
「うにゃぁぁ!」

  マリアーナが泣き叫んでいるけれど、衝撃的すぎるこの光景に誰もその場から動けなかった。

「ティティが激怒しているな……」
「ダグラス様?」
「……リディエンヌをバカにするにゃ、ある事ないこと言いやがってこの嘘つき女!  偽聖女め!」
「え?」

  ……偽聖女?

「神の声なんて本当は聞けていないくせに、お前のような奴が聖女を語るにゃ!  ふざけるにゃ!  って、すごい派手に怒っている」
「偽聖女?  ……ど、どういう事ですか?」

  マリアーナは聖女でしょう?
  だって、儀式でちゃんと証明されて……

「……そのままの意味だよ。だって本当の聖女は別にいるんだから」
「え?  別に?」
「そうだよ」

  (……どういう事なの?)

  ティティやダグラス様がどうしてグォンドラ王国の聖女の事情を知っているの?
  それに、マリアーナは偽聖女で本当の聖女は別にいるだなんて……え?

  私の頭の中は大混乱だった。

  そんな混乱中、ダグラス様と私の目が合う。
  ダグラス様は静かに微笑んで優しく私の頭を撫でた。

「……本当はこんな形で知らせたくは無かった」
「?」
「───本当の聖女は君なんだ、リディエンヌ。いや、グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌ殿下」


  ダグラス様のその言葉に、私はひゅっと息を呑んだ。

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