【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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32. 自業自得



◆◆◆◆◆


  ドォーーーン!

  二度目の大きな雷。それが王宮の敷地内に落ちたのは明白だった。
  た、大変だ……と宮廷内はパニックに陥り始める。

「ひっ!」
「きゃぁ!」

  怯えた声を出す王子と王妃を見ながら自分も青ざめていた国王は気付く。

  (───今、雷が落ちた方向は、帰って来たリディエンヌを幽閉しようと思っていた塔ではないのか?)

「……ま、まさか本当に神の怒り……?」
「あなた!  何をブツブツ呟いているのよ!?  早く逃げるわよ!」
「そうですよ、父上!  また、雷が落ちるかもしれませんし、このまま、ここにいては火の手が……」

  王子がそう口にしたと同時に再び空が光り、ドォーンという音。

「ひいっ!」
「ま、またなの!?」
「……くっ!」

  火事だーー火の手が上がったぞーー
  逃げろーー
 
「あ、あなた!  私達も逃げるわよ!」
「ち、父上……!」

  国王はふと思った。  
  宮廷内がパニックに陥っているとはいえ、こういう時は、まず国王を先に安全に避難させようとするものなのでは無いのか?  
  なのに、どいつもこいつも我先にと逃げ惑い、国王一家の身を案じる家臣は一人もいないではないか!
  使用人達ですら逃げる事しか考えていない。
  自分のそばにいるのは王妃と王子のみ……

「ははは……はは、ははは……!」
「あなた!?」
「ち、父上……」

  狂ったように笑い出す国王を王妃と王子は怪訝そうな目で見る。

  何が神だ!
  あんなに嘘つきで可愛らしさの欠片もないリディエンヌを追い出しただけだぞ?
  神とはグォンドラ王国を守護する者では無かったのか? 
  なのに何故、我らを破滅へと導こうとするのだ!

「はは……我らは何を間違えたのだろうな……」
「あなた!  いいから、逃げましょう!  命、命さえあればきっと!」
「そうですよ!  建物は燃えても、我らが生きていれば国は大丈夫です」

  そう言い合いながら国王達は逃げ始めた。
  まず、緊急脱出用の通路に向かおうとしたが、その扉がうんともすんとも言わない。

「チッ!  仕方がない!  他の出口に回るぞ」

  炎はすごい速さで燃え広がっており、まるで王宮内を全て焼き尽くす!  と言わんばかりの勢いで迫ってくる。
 
  (……崩れていく……我が国の象徴でもある城が……)

  国王がそう思った時、

「きゃぁぁーー!  熱っ」
「母上!」
「私の自慢の髪がぁぁぁーチリチリにぃぃー」

  逃げている最中、火の粉が当たり王妃の自慢の髪を焼いた。
  一刻も早く避難せねばならないという状況なのに、王妃はその場で立ち止まりショックで泣き出してしまう。
  愛する妻だったが、こんな時に……と国王はイラッとした。
 
「髪なんてどうでもいいだろう!?  いいから早く逃げ……」
「酷いわ!  私の大事な髪を何だと思っているのよ!」
「今はそんな事を言っている場合では無い! こうしている間にも火に囲まれ……うわぁぁ」

  火の粉は国王にも降りかかってくる。

「父上!」
「くっ……」

  (雨が……外は雨が降っているはずなのに……何故こんなに火の回りが早いのだ……!)

「これが……神の……リディエンヌを罰した事への……怒りなのか……」

  国王は呆然としたままそう呟いた。

  こうして退路はどんどん絶たれ、炎はまるで三人をを嘲笑うかのようにどんどん広がっていった……


◇◇◇◇◇◇



「……聞こえないという神の声と今になってティティが現れた件については、後でティティに聞いてみるといいと思う。あの様子なら何か知っているんじゃないか?」
「ですよね……」

  (なにか理由があったに違いない)
 
  ここまで来て、私が本物の聖女だなんて嘘よ……なんてもう思わない。
  だってもう、私の目にはマリアーナが本物の聖女には全く見えないから。

「にゃぁぁぁー」
「きゃぁあ!  来ないでぇぇー」

  そんなマリアーナの悲鳴は今も続いている。
  マリアーナは必死にティティから逃げながら叫んでいた。

「……くっ! 何よ!   ……聖女の守護者……とやらの猫がここにいるという事は……お姉様!  何処かにいるんでしょう!?   黙って見ていないで私を助けて!」
「にゃっ!」
「痛ぁい!」

  ティティが、まだ叫ぶ元気があったにゃん?  と言わんばかりに後ろから猫キックを喰らわす。

「お、お姉様、お願いよ……グォンドラ王国の話も聞いたでしょう?  お父様達が……王宮が大変な事になっている……のかも……しれないのよーー!?  お姉様はそれでもいいの!?」
「にゃーー」

  今度はうるさいにゃと言わんばかりに猫パンチ。

  マリアーナは必死に訴えるけれど、周りの反応はとても冷ややかだった。

  ───そんなの自業自得だろ!  聖女を騙っておいて何を言う!  神の怒りも最もだ!
  ───こんな王女のいるグォンドラ王国なんてろくな国じゃない。
  ───第一王女は逃げ出して正解だ……

  そんな声はマリアーナの耳にも届いたらしく、「ひ、酷いわ……」と泣き崩れる。

「リード様も!  どうしてずっと黙って見ているだけなのよーー……婚約者だったお姉様なんかより私の方が可愛いって言って私を選んでくれたじゃない!」
「マリアーナ殿下っ!!  何でそれを今ここで……!」

  名指しされた挙句、婚約破棄の事まで暴露されたリード様が慌て出す。

「……にゃ?」

  その暴露された言葉にティティがピクッと反応した。

「……うっっ!」
「にゃー……」

  ティティとリード様の目が合ったと思ったのと同時にリード様の顔が盛大に引き攣る。

「にゃーーーー!」
「うわぁぁぁ」

  ティティはリード様にも襲いかかった。





「…………ティティは、お前もかぁぁ!  と言ってあの男に襲いかかっているぞ」
「ティティさん……」

  私がティティに襲われているリード様の様子を見ていたら、ダグラス様がちょっと拗ねた声を出した。

「リディエンヌはあの男と婚約していたんだな……」
「ダグラス様?」

  ダグラス様の顔をじっと見たら、彼はちょっぴり面白くなさそうな顔をしていた。
  ……キュン!
  そんなダグラス様が可愛く見えてしまい私の胸がキュンとした。

「彼は名ばかりの婚約者でしたよ?」
「分かっている……だが…………面白くない」
「愛の言葉なんて以ての外……まともに手すら握った記憶もありません……彼はマリアーナとばかり仲を深めていましたから」

  私がそう告げると、ダグラス様がコツンと額をあててきた。
  距離の近さにドキドキする。

「聞けば聞くほど、ろくな奴がいない国だな」
「…………だからでしょうか」
「リディエンヌ?」
「さっき、王宮に雷が落ちたと聞いても。目の前でマリアーナやかつての婚約者がティティに報復されていても……全く私の心が痛まないのです」

  ダグラス様が再びギュッと私を抱きしめる。

「リディエンヌがそうなるのは当然だと俺は思っている。だって、リディエンヌはそれだけの事をされて来たわけだろう?」
「ダグラス様……」

  ダグラス様はチラッとティティの方へと視線を向ける。

「今、痛めつけられている元婚約者の男は、一応、ごめんなさい……悪かった……と叫んでいるな」
「え?」
「だが、あっちのゴミ王女の方はどうだ?」

  そう言われてマリアーナの方を見ると、マリアーナは今も私を呼んでいた。

「──お姉様!  いい加減出て来なさいよ!  私も皆も大変だと言うのに……しかも氷の貴公子と婚約ですって!?  ずるいわ、お姉様!  出てきて説明してよ!」

  口調まで荒々しくなっている。
  それにあの氷の貴公子って?

「一向にリディエンヌに謝るという気配を見せない。それだけでグォンドラ王国の国王達がどんな奴かが分かるな」

  ダグラス様が呆れてようにそう言った。
  たしかに皆、性格はそっくりだと思う。
  それよりも、私はマリアーナの口にした“氷の貴公子”が気になって仕方がない。

「あの……ダグラス様、何故マリアーナはダグラス様の事をご存知なのでしょう?」

  いくらなんでも、グォンドラ王国にまでダグラス様の氷の貴公子の名前は届いていないと思うのだけど?

「…………覚えているか?  あの女は以前に婚約者と一緒に屋敷を訪ねてきたゴミの張本人だ」
「え?  あの玄関で……」
「そうだ。事前連絡も無しに現れた、非常識なゴミだ」

  (あの時の騒ぎはマリアーナだったんだ……!)

「だから、あの時ティティさん……」

  あの急な不自然だった行動は、私をマリアーナから守るため……
  今だって自分だけが飛び出して報復を与えてくれている。

「私、今すぐティティさんをギュッと抱きしめてモフモフしたいです……」
「抱き……!?  ……はぁ、本当にティティはとんでもないライバルだな」
「ダグラス様?」

  ダグラス様が大きなため息と共に、私の顎に手をかけて上を向かせる。

「?」
「ティティにバレたら猫パンチと猫キックの刑は確定だろうなぁ。痛いだろうなぁ………だが!  ティティもいいけど、俺の事も見てくれ、リディエンヌ」

  そう口にしたダグラス様の顔がそっと近付いて来て……

  (───え?)

  チュッ

  私とダグラス様の唇がそっと重なった。

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