【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~

Rohdea

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9. 側近候補はどうしたの?

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  翌朝、目覚めた時の私はとてもスッキリした気持ちだった。

  やっぱりこれって、
  殿下のくれた言葉のおかげ、よね……?
  どこか自分にまとわりついていた重たい鎖が少しずつだけど外されていくような、まさにそんな感覚だった。



  少し起床時間より早く目が覚めてしまったらしい。
  まだ、屋敷の人の気配は多くない。
  マリアもまだ起こしには来ないだろう。

  ベッドから身体を起こし、枕に背を預けながらぼんやりとこれまでの事を考えた。


  4度目の人生の今は、私の記憶にある最初の人生とかなり違い過ぎている。

  中でも1番の違いは、やはり殿下だろう。
  記憶している入学したばかりの頃の殿下と、今の殿下はもはや別人のよう。
  何故か明かされたあの素の口調と態度もそうだし、行動の一つ一つが大きく異なっている。あんな殿下は最初の人生だけでなく、その後の繰り返した人生を思い返しても私は知らない。

  そこまで考えて一昨日、頬に触れられ、抱き締められた事を思い出してしまった。

「……っ!」

  自分の顔が赤くなったのが分かった。
  …………今までの人生であんな風に触れられた事など1度も無かったのに。
  私は自分に落ち着け……と言い聞かす。
  あれは慰め!  殿下に深い意味など無いのだから。勘違いしてはいけない。

  そんな殿下の行動と共に大きく異なっている点はもう一つある。

   殿下の隣に将来の側近候補のロイ・フェンディ様がいない事、だ。

  過去の人生で断罪の時に私の罪を意気揚々と読み上げ、さらには処刑の宣告にやって来た、あのロイ様がいないのである。

  いや、正確には違う。
  彼も学園に入学はしているし、もちろん存在もしている。

  だけど、今世の彼は殿

  私の記憶が確かなら、ロイ様は学園入学の前日に殿下の側近候補として任命され、常に殿下と行動を共にしていたはず。
  それ故、クラスも殿下と同じだった。
  なのにロイ様は今、隣のクラス。殿下と関わっている様子が全く見受けられない。
  おそらく、側近候補に任命されていないのではないかと思う。

「どうしてこんなに違っているのかしら……?」

  ロイ様が、殿下の傍に居ないのなら誰が私の罪を読み上げるの?
  誰が私の処刑宣告をしに来るの?

  そこまで考えてプルプルと首を横に振る。
  期待しすぎちゃいけない。
  まだ、この先、ロイ様が側近候補に任命される可能性だってあるもの。

  今の殿下がいくら過去と違っていると言っても、この先の未来はまだ分からない。
  また、どこかで戻ってしまうかもしれない。
  そう……メイリン男爵令嬢に会えば……

  そこまで考えて、更に大きく首を横に振る。
  思わず、あの嫌な気持ちを思い出しそうになってしまった。
  まだまだ、鎖は完全には外れてくれないみたい。

  この先の事なんて分からない。
  分からないから、私は“今”を信じたい。

  少なくとも、今の殿下が昨日くれた言葉に嘘などは感じなかったから。


  ──今度こそ、私は生きたい。



****




「側近候補?」
「えぇ。殿下は入学前に側近候補をお決めにならなかったのですか?」

  殿下は、宣言通り今朝は迎えに来てくださった。
  なので、今はいつものように馬車に乗り学園に向かっている途中で、私は気になっていた側近候補の件について尋ねてみる事にした。

「あぁ、今は必要ないと言って決めなかった」

  ハッキリ、キッパリと言い切ったものだから、さすがに私も驚いてしまう。

「必要……ないのですか?」
「もちろん、行く行くは必要だし決めなきゃいけないが、今はまだ居なくてもいいだろ。公務ならともかく、学園は勉強する所なんだし」
「えー……」

  それでも、と言いかけた私よりも殿下はさらに続けて言った。

「それに、俺は自分の側に置く奴は身分どうこうじゃなく、俺自身の目で見極めたいからな。ゆっくり決めていきたいんだよ」

  そう語る殿下の顔は真剣だった。
  思わぬ殿下の真面目な顔とセリフに、びっくりして胸がドキンと跳ねた。
  
  ……え?  何で私、胸が鳴ったの……?
  そんな自分に戸惑っていると、殿下はさっきまでの真剣な顔は消して、ちょっと意地の悪そうな顔になった。

「……そういうわけだから、フィオーラ」
「?」
「俺の婚約者はお前だ。よーく覚えておけよ?」
「…………え?」
「さっき言ったろ?  俺は自分の側に置く奴は自分の意思で選ぶって。それは側近候補だけじゃないぞ?  前にも言ったが結婚相手も同じだ」

  確かにそれは聞いたけれど……それってつまり、どういう事?
  まさか、と思いつつ私は首を傾げながら尋ねた。

「えっと……。それってもしかして、殿下は私を結婚相手として望んでいる、という事でしょうか?」
「は?  ……俺はずっとそう言ってたつもりなんだが」

  私は、フルフルと首を横に振る。
  “婚約は解消しない”と言われてただけで、私を結婚相手として望んでるーーそんな事は一言も聞いていない。

「殿下は言葉が足りません」
「……なっ!」

  私の言葉に殿下は軽くショックを受けたようだった。
  そんな殿下の様子がおかしくて私は思わず笑みをこぼす。

  愛だの恋だのといった感情ではないだろうが、殿下はちゃんと私を結婚相手として望んでくれていたらしい。
  それは、もしかすると過去の殿下も同じだったのだろうか。
  一度だってそんな話をした事が無かったことに少しだけ後悔した。



「…………殿下の側近にはロイ・フェンディ様がなるとばかり思っていました」
「叔父……フェンディ公爵家の嫡男か。……まぁ、俺のいとこでもあるから、周りはそれを望んでいたな」

  やはり、候補ではあったのだ。しかも周りが薦めるほどの。
  今、彼が側に居ないのは、ただ殿下が側近候補そのものを決めなかっただけ。
  つまり、いずれはー……。
  そう思うと仄暗い気持ちが生まれそうになるが、そんな気持ちは次の殿下の言葉で跡形もなく吹き飛んだ。

「だが、俺は今後もアイツを側近にする気は無いぞ」

  またしても、殿下はハッキリ、キッパリと言い切った。

「無い、のですか??」

  私の返しに殿下は曖昧に微笑んだだけだった。
  自分の目で見極めたいと言っていたけれど、すでに見極めたとでも言うのだろうか?

  (そのうえで、ロイ様を側近にしないと決めた……?)

  本当に……どうして今世の殿下はこんなに違うのだろう。
  これが本来の殿下の姿だと言うのなら、 過去の私はきっと殿下の事を知らなすぎた。
  もっともっとお互い話をするべきだった。
  今、心の底からそう思った。

  3年生になってメイリン男爵令嬢が目の前に現れた時に、殿下の気持ちがどうなるかは分からないけれど、殿下自身の目で見極めた上で彼女を望むなら……きっと殿下の隣に立つに相応しい女性なのだろう。

  私は嫉妬に狂い、何も見えていなかったのだわ。

「そう言うお前こそ、どうしたんだ?」

  そんな思考に耽っていたら、突然質問が飛んできた。
  だけどその質問の意味が分からない。私は首を傾げた。

「どう……とは?」
「何でお前こそ、いつも1人なんだ?  俺が側にいない時もお前は1人で行動している」

  殿下の指摘はもっともで。私は今、学園でひとりぼっちだ。
  友人と呼べる人間は……いない。

「そ、それはー……」

  私はどう答えたものかと、自分の背中にヒヤリとした冷たい汗が流れていくのを感じた。
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