【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

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21. 悪役にされた令嬢と令息は立ち聞きをする

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「とりあえず、またクッキーをたくさん焼いて殿下達やその周辺にも食べさせないと!」
「不思議だよね、何で姉さんの力は食べ物を介してでしか発揮出来ないんだろう?」
「本当よ……だから、今日みたいな突発的な時には対応出来ないのよね!  マルセロがいてくれて助かったわ!」

  (クッキー?)

  イザベル様達は何かしらの“力”を持っていて……それを使ってジョーシン様やミンティナ殿下……王宮の人達を操っている?   洗脳?

  (ジョーシン様のあの変わり様は……全部この二人のせいだったの!?)

  しかも、王族を……王宮の人達を操るなんて何を考えているの……!
  許せない!!

「……!」

  怒りでガタガタと震え出す私をディライト様が後ろからそっと抱きしめてくれた。

  (ディライト様……これは落ち着け、そう言っている?)

「……」
  
  その温もりのおかげで、だんだん気持ちも落ち着いて来る。
  とりあえず、二人の話の続きを聞く事にした。

「だけど、姉さん。あの悪役達はどうするの?  悪役の反撃なんていうシナリオには無い展開になってしまっているんだろう?」
「そうなのよね……」

  悪役の反撃……もしかしなくてもそれって、私とディライト様の事?

「……やっぱり二人の仲を壊さないといけないわ」
「仲を壊す?」
「だって、ジョーシン殿下の王位継承が危ぶまれているのは、悪役達二人が手を結んだからでしょう?  二大公爵家とか言っていたわ。なら、あの二人の仲を壊せば全てマルっと解決するんじゃないかしら?」
「確かに勢力図は元に戻るね」

  イザベル様の言葉にマルセロ様が納得したように頷く。

「私達の力は、私達に好意があれば即効性があってすぐに効くけれど、他の人に全く効かないわけでは無いはずよね?」
「つまり、僕達で地道にそれぞれ二人を誘惑していくしかないって事?」
「他に引き裂く方法がみつからないもの。それに、その為の私達のこの“美貌”があるんでしょう?」
「まぁ……それはそうだけど」
「あんな化粧詐欺の女より、私の方が魅力的だと分からせればイケるわ!」

  イザベル様は余程、自分の容姿に自信があるらしい。
  私達に聞かれているとも知らないでディライト様を誘惑すると宣言している。

  (ますます許せない!)

「どんなに恋人や婚約者を愛していてもね、他にもっと美しい女や男がいれば隙が出来るのは殿下達で証明されているもの、ふふ」
「姉さん、悪い顔してるなぁ……」
「失礼ね!  私の幸せの邪魔をする悪役を退治するんだから、少しくらい悪い顔にもなるわよ!」
「はいはい……」
「あの、悪役男……公爵令息だって、こんな美しい私に迫られたら悪い気はしないでしょう?  隙を見せたあとは一気に魅了して、引き離し完了よ!」

  なんて完璧なのかしらーー!  オーホッホッホ!
  と、高笑いするイザベル様。

「あぁ、マルセロ。一応あなたも悪役令嬢の方を誘惑して魅了しておくのよ!  ああいう女はイケメンに迫られれば目をハートにしてコロッと靡くでしょうからね!  まぁ、あんたの好みじゃないかもしれないけれどそこは我慢なさい!」
「分かってるよ。あ、でも、僕は結構好みだったよ、あのフワフワした感じとか抱き心地良さそう」

  ───その言葉に背筋がゾクッとした。

  (気持ち悪い……)

  誘惑ですって?  誰がされるものですか!
  確かに、客観的に見てもプリマデント男爵家の双子は二人揃って見目麗しい容姿だとは思うけれど、そんなのディライト様とは比べものにもならないわ!
  わ、私の、こ、恋するディライト様は見た目も素敵だけど中身も最高に格好良いのよ!

  (この人達は何より性格が最低だ)

  私が今にも殴り掛かりたくなるくらい憤っていると、二人は「そろそろ戻らないと殿下に怪しまれてしまうわね」と言って会場に戻って行った。

  二人の姿が見えなくなった所で私達は茂みから顔を出す。

「……ディライト様」
「シャルロッテ……」

  顔を合わせるもお互い、それ以上の言葉が出ない。
  何だか色々と情報が多すぎた。

「あの双子は只者じゃないね」
「……はい」
「ジョーシン殿下を始めとして王宮の者達に何かしたみたいだ。洗脳……かな?」
「……はい」

  ディライト様はそこまで言った所で私の事を抱きしめた。
  少し身体が震えている。

  (どうしたのかしら?)

「シャルロッテ……ジョーシン殿下のあの変わり様は操られて洗脳されたから、らしい」
「そうですね……」
「つまり、殿下の本音は違う所にある」
「え?」

  びっくりした私は少し身体を離してディライト様の顔を見上げる。

「殿下の本当の心はシャルロッテの事を愛しているのかもしれないよ?」
「……っ!」
「だから……シャルロッテは……」
「……」

  ディライト様の声が少し震えていた。表情もどこか辛そう。
  もしかしなくても、私がジョーシン様の所に戻るのではって不安に思っている?
  嫌だなって思ってくれている?

  (恋心って、単純ね。そんな些細な事でも嬉しいなんて思ってしまう)

「ディライト様……」

  私はそっと彼の頬に手を触れる。

「例え、ジョーシン様が操られていた事によって発した婚約破棄だったとしても。それに今、もしジョーシン様の目が覚めたとしても復縁なんて有り得ないですよ?」
「シャルロッテ?」
「……だって、イザベル様達言ってましたよ?  自分達に好意があればある程かかりやすいって」
「……」
「それに、さっき話した浮気についてもそうですよ。ジョーシン様も自分で認めていましたからね、イザベル様の誘いに乗ったと」
「あぁ……」

  それにこの国は一夫一婦制。誘いに乗ったというのは……浮気しましたと認めたも同然だった。

「ジョーシン様だって最初は変な術にかかっていなかったはずです。ですが、誘いに乗ったという事は浮気心が働いたという事に間違いないのです」
「……」
「そんなだからあっさり彼女の手の内に堕ちてしまったのでしょうね。ですから、その時点でもう王族として危機管理が無さすぎて失格ですし、そんな調子で本当は私を愛していた、なんて言われても今更遅い!  です」
「シャルロッテ……」

  ディライト様がギュッとさらに強く私を抱きしめる。

  (そう。今更遅いの。だって私はディライト様の事が好きなんだもの)

「……それを言うなら、ディライト様こそ……ミンティナ殿下と」
「それは有り得ない」

  ディライト様は遮るようにして即答した。
  その事に私は密かに安堵する。

  (良かった……それならまだ、側にいられる……)

  ジョーシン様を蹴落とすまでは好きな人の……偽装であっても婚約者でいられる。
  その先に待つ別れは悲しいけれど、ディライト様と過ごした思い出を胸に秘めて残りの人生を生きて行く事が出来るわ。

  (ずっと独り者か、訳ありの男性に嫁がされるかは不明だけど)

  大丈夫。今は嫉妬心も芽生えてしまったけれど、落ち着けばディライト様の幸せだけを願えるようになるはず。いえ、なってみせる。
  いっその事、最後に告白して振られるのもいいかもしれない。
  
「……しかし、あの双子は詰めが甘いよね」
「え?」
「こんな、誰が聞いてるか分からない所で堂々と大声で大事な話をして、しかも肝心の俺達に全部聞かれている。間抜けだよね」
「そうですね……」
「だけど、このまま野放しにはしておけない。特に男の方は俺の可愛いシャルロッテを誘惑するとか言っていたしね」

  (ん?  気にするのはそこなの??)

  その言葉に驚いてディライト様の顔を見ると少し黒い微笑みを浮かべていた。
  
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