【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

文字の大きさ
44 / 45

44. 悪役にされた令嬢と令息による王子との最後(?)の戦い

しおりを挟む



「シャル……コホンッ、アーベント公爵令嬢、いい加減に目を覚ませ!  君が本当に好きなのはそこの男ではなく、わ」
「──ディライト様です!」
「っ!」

  私はジョーシン様のその言葉に被せるようにして答えた。
  ジョーシン様は面食らったような顔をしているけれど、目を覚ませも何も私からすればこの人にだけは言われたくない。

  その後、気持ちを立て直したのか、ジョーシン様はギリギリと唇を噛み苦々しい表情を見せた。

「だから違う!  ディライトではない!」
「違いません!  何度言えば分かってくれるのですか?   ジョーシン様はそんなに私の事が嫌いすぎて、嫌がらせをしたいのですか?  だから私が幸せになる事が許せないのですか!?」

  なんて悪趣味なのかしら!  酷い!

「…………そうだな、許せん」
「!」

  ジョーシン様がはっきりとそう口にした。

  (やっぱり……!)

  私の方がその発言が許せなくて、ジョーシン様を睨む。

「だって、許せるはずがないだろう!  君はずっとずっと私に一途だった!  ……それなのにちょっと浮気した程度で臍を曲げて他の男と幸せになると言うなんて許……」
「ちょっと浮気?  あれがですか?  殿下にだけは言われたくない発言ですね」
  
  ディライト様が優しく私を抱き寄せながら、ジョーシン様に向かって口を開いた。
  声はとても冷たいのに顔はにっこり笑顔のまま。

「私はあの女に、操られていたんだぞ!」
「でも、操られる前からあんな女を一度は可愛いと思ったんですよね?」
「……ぐっ!」

  ディライト様のその言葉にジョーシン様は悔しそうな顔をする。
  何を言っても同情を誘おうとしても無理。
  ジョーシン様が操られる前に、イザベル様に浮気心が働いた事は事実なのだから。

「そんな事より、シャルロッテは怒った顔も魅力的だ」

  ジョーシン様と睨み合っていたはずのディライト様が、突然うっとりした顔を私に向けながら、そんな事を言い出した。

「へ?  ディライト様?」

  (急に何の話??)

「あぁ……うん、可愛い」
「え??」

  ──チュッ

  私の額にキスを落としながらディライト様は続ける。

「いくら可愛くても俺はシャルロッテを怒らせたくはないから、シャルロッテの怒った顔を見せてくれた殿下には感謝だな」
「なっ!  貴様!!」
「だって殿下のようにシャルロッテに怒られて嫌われたくなんかないですからね」

  ディライト様はにっこりと笑ってジョーシン様に向かってそんなことを言う。
  これはわざと挑発しているのかしら?

「…………貴様!  本当にいい性格してやがる!」

  案の定、ジョーシン様はその挑発に乗って来た。

「お褒めに預かり光栄です」
「褒めてなどいない!!  貴様はミンティナの婚約者だった時は大人しかったではないか!  何があってそうなった!?」

  ジョーシン様は真っ赤になって怒り出した。

「殿下。俺は本当に大事な人の幸せの為なら、何だって出来るんですよ。貴方に逆らったり、王族を潰そうとしたり、ね」
「!!  ……ミンティナは!」
「ミンティナ王女は……そうですね。俺の手で幸せにしたい……ではなく、どうぞ自分で幸せになってください、と思っていましたね」
「貴様!!  完全に他人ごとではないか!」

  ディライト様の飄々とした様子に、ジョーシン様は完全に翻弄されていた。

「ははは、確かにそうですね。では、殿下は?」
「は?」
「殿下はシャルロッテをどうしたかったのですか?  貴方の手で幸せにしたかった……ですか?」
「!!」

  その問いかけにジョーシン様が言葉に詰まる。そしてワナワナ震え出した。

「……幸せ?  私の手でシャルロッテを幸せに……?」

  (ジョーシン様はそんな事、考えてくれていなかった気がする)

「俺はシャルロッテをこの手で幸せにしたい。そして、二人で幸せになると決めている。だから、その証も贈りました」
「……証だと?」

  そう言ったジョーシン様がハッとして私の指にはまっている指輪に視線を向けた。

「……その指輪は!」
「俺からシャルロッテへの愛の証ですね」
「……くっ!  何が愛の証だ!  そんなもの外してしまえ!  指輪が欲しいなら私が贈ってやる!」

  そう言ってジョーシン様が無理やり私の手を取って指輪を奪おうとする。

「……嫌!  あなたからの指輪なんか要りません!  意味が無いもの!!」
「俺のシャルロッテに触るな!」

   私とディライト様が叫んだのはほぼ同時だった。

「何故だ!  今からでも遅くは無いはずなんだ!  かつては私の事を深く想ってくれていたのだからな!!  そうだろう!?」
「いえ。もう、遠い遠い昔の話です」

  ジョーシン様が何処に根拠があるのか分からない事を言って来たので、私は即座に否定する。
  不思議な事にあの8年間は、もう私の中で霞んでいる。

「ほら、シャルロッテもそう言っています。なのでどうぞこのままシャルロッテとの事は思い出……いや、そうですね……いっその事、記憶喪失になって欲しいくらいですね」
「なっ!  記憶喪失……だと!?」

  ディライト様は、思い出にする事も許したくないらしい。

  (思っていた以上のヤキモチ焼きなのね)

  そんな目でディライト様を見つめたら、
  
「あぁ、ごめん。他の人はシャルロッテを思い出にするくらいなら、仕方が無いかなと目を瞑れるけど殿下だけはどうしても許せないんだ」
「婚約者として過ごした8年間があるからですか?」

  私が訊ねるとディライト様が苦笑した。

「そうだね。もっと早く俺がシャルロッテに会えていれば……」
「いえ、このタイミングで良かったんです」
「!」

  私が微笑んでそう答えるとディライト様も優しく微笑み返す。

「一緒に婚約破棄されて……悪役にされた私達だったから、今があるんです」
「シャルロッテ……」
「……ディライト様」

  お互い気持ちが盛り上がった私達はジョーシン様の目の前だという事も忘れて、そっとそのまま唇を重ねる。

「~~~!!!?!?」

  視界の隅で何かが暴れていた気がしたけれど、すぐにその存在を忘れてしまい、目の前のディライト様しか見えなくなる。

「……好きだよ、シャルロッテ」
「わ、私もです!」

  ディライト様が抱きしめてくれたので、私も笑顔で抱きしめ返す。
  そうして、私達は何度も何度も互いへの愛を囁きあってたくさんキスをした。





  (あれ?  そう言えば何かを忘れているような……)

  ──そうだったわ!  ジョーシン様!  私ったらジョーシン様の目の前で──……

  (……?  でも、静かだったわね??)

  そう思って辺りを見回すと、絶望の表情をして真っ白になったジョーシン殿下がガックリと膝をついていた。

「……私のシャル……初めてのキス……夢……奪われた…………見た事ない笑顔……ふわふわ」

  何やらブツブツ呟いていて怖い。

「シャルロッテ……」
「?」

  ディライト様がそっと私の耳を塞ぐ。これは、雑音だから聞くなという事ね。
  私は無言で頷いた。
  私の耳が塞がれた事を確認したディライト様は、最後にジョーシン様に向かって何かを言った。

  (…………?)

  その言葉に何か大きなショックを受けた顔をしたジョーシン様はそのまま項垂れ遂に大人しくなった。
  ディライト様が私の耳を塞いでいた手を離しながら言う。

「行こう、シャルロッテ。殿下はもう終わりだよ。あれはジョーシン殿下の面の皮を被った、ただの抜け殻だ」
「……抜け殻……」

  確かにそんな表現がピッタリだと思った。



──


  再び王宮の廊下を歩きながら、ディライト様に訊ねる。

「最後、何を言ったのですか?」
「うん?」
「ジョーシン様に。あれがトドメだった気がしました」
「あぁ……」

  ディライト様はにっこり笑って言った。

「……貴方の気持ちは永遠に届きません、たくさん後悔するといいですよ……って言った」
「……?」

  よく分からなかったけれど、何となくもうジョーシン様がこの先、私に絡んでくる事は無いような気がした。




   ───そうして、私達はようやく、ディライト様を呼び出したウラバトール侯爵達の元に辿り着く。

「あぁ、二人揃って来てくれたのか。これは話が早い」

  連日、話し合いや取調べを行っている彼らには疲労の色が濃い。相当、お疲れの様子。
  また、部屋の中を見回すと……

「!!」

  私はギョッとした。

  (陛下と王妃様が部屋の隅に追いやられている……!)

  完全に縮こまっていて、小さくなっている。もはや、王としての威厳など何処にも無い。

  (これは……)
  
  この国の未来の行く末が見えた気がした。

「……本日、ディライト殿に来てもらったのは他でもない。この度の騒動の諸々の処罰、処遇の決定について。それからこの国の今後の事についての話があったからだ」
「はい」

  ディライト様がギュッと私の手を握って来たので、私もしっかり握り返す。

  (一人じゃないよ!  って気持ちが繋いだ手から伝わるといいのだけど)

  そんな事を思っていたら、反王政派の筆頭、ウラバトール侯爵様がじっと私達を見つめて言った。

「ディライト殿、そしてシャルロッテ嬢……すまないが……二人に頼みがある……」

しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

処理中です...