【完結】“可愛げがない女”と蔑まれ続けた能面令嬢、逃げ出した先で幸せを見つけます ~今更、後悔ですか?~

Rohdea

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第33話 決着のパーティーの前に

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「リア!  こっちの肉も美味いぞ!」
「はい!」

  私はレイさんから串を受け取る。

「リア!  こっちもいい感じだ。だが、冷めると固くなるから早く食べた方がいい」
「熱ッ」
「大丈夫か!?  なんてことだ……リアの可愛い唇が火傷してしまった!?」
「かっ……し、してません。だ、大丈夫ですから……!」
  
  急いで食べようとしたら、思っていた以上に熱かった。
  そうしたら、心配性のレイさんなのでちょっとした惨事になりかけた。

  以前の肉デートに負けず劣らず大量の肉、肉、肉…… 
  レイさんの肉への情熱がすごい!
  やっぱり、実は筋肉の言い間違いでした! 
  と、言っておけぱ良かったかもなんて私はこっそり思い始めていた。

  (でも、すごいわ……まさか、祖国でも肉デートをする事になるなんて思わなかった)

  多分、建国祭ということもあっていつもより、お店が出ているのだと思う。
  建国祭はいつも次期王太子妃として過ごしていたから今、こうして街にいる事が変な感じだった。

「……レイさん」
「むっ?  どうした、リア。もっとか?  肉が足りなかったか?」
「……」

  大変!  レイさんの思考が食欲に直結しているわ。
  私は苦笑いしながら首を振る。

「いえ。もうお腹いっぱいです……そうではなくて……、間に合うでしょうか?」
「リア……」

  少し不安な気持ちになってしまった私の肩をそっとレイさんが抱き寄せる。

「大丈夫だ。日程は伝えてあるからな。間に合うはずだ」
「……はい」

  私がこの地に再び戻ること。そして公の場に乗り込もうとしていること。
  レイさんはそれを広い心で受け入れてくれた。
  だけど、そこに一つだけ「これだけは譲れんのだ」と言ってある条件をつけていた。

  (そうよね、大丈夫よ……)

「リア。戻ったら結婚式の準備をすぐに始めよう」
「け、結婚式……!」

  その言葉に驚いた私が顔を上げるとレイさんと目が合う。
  レイさんのお顔は険しかったので、照れているのだと分かった。

「は、早くリアのウェディングドレス姿が見たいのだ!」
「レイさん……」

  その言葉の裏にはきっと、決着をつけて絶対に一緒に帰るんだ!  という意味が含まれているはず。
  レイさんからそんな強い決意が感じられた。

  (私が花嫁衣装を着る時に横にいるのはあなたよ、レイさん……)


◆◆◆◆◆


  その頃のウィル王子は────……

「……くっ!」

  ズキンズキンズキン……

  隣国から、タクティケル公爵家の面々が迎えに来て強制帰国となって仕方なく帰国したものの、また更に頭痛が酷くなった。
  まるで、オフィーリアを見つけられなかった事を神が嘲笑っているかのようだ。

  (オフィーリアめ!  本当にどこに行ったんだ!)

  無断で隣国に入国したことや、アクィナス伯爵に何度もしつこく手紙を送り付けていた事を父上にこってり絞られた。

  更に、オフィーリアが見つからなかったので、今年の建国祭は仕事を与えられなかった。
  何故なんだ!  
  私が参加するイベントはいつだって盛り上がった。特に私のトークは、きちんと下調べがされている!  さすが王太子殿下!  と、絶大な人気を誇っていたはずだ!

   まあ、私は忙しい身なので、いつも暇そうにしているオフィーリアに事前にイベントの下調べでもやっていろ、役立たずでも出来るだろ?  といつも仕事を投げていたりもしたが。
  そんなオフィーリアは建国祭の当日、共にイベントに参加しても無表情のまま愛想笑いの一つもせずに殆ど喋らないからとにかく邪魔なだけだった。
    だから、別にオフィーリアなんていなくても一人でやれる!  そう主張したのに父上は首を横に振るばかり。

「何がお前一人では無理だ、だ!  今までは、ちゃんとやれていたじゃないか!」

  おかげで今年は、仕事を振られなかったせいで、世間では無責任な王太子とか言われてるらしい。  この私が!

  (あれもこれも……やっぱりオフィーリアのせいだ!)


  ズキッ……

「くっ!」

  かつてお告げに逆らった王は余命半年だったと聞いたが……自分はもっと早いのでは?
  そんな気すらさえしてくる。

  (どうしてもっと早くお告げを大事にするようにと伝えてくれなかったのだ!)

  そうすれば、コーディリアを愛していてもオフィーリアを追い出す画策なんてしなかったのに!
  神は何に怒っているのだろうか。
  オフィーリアを蔑ろにしたことか?  それともコーディリアと関係を持ったことか?

  (……子供、か)

  迎えに来たコーディリアに身体は大丈夫かと聞いたら大丈夫だとは言っていたが……
  やはり全く実感がない。
  それより、ずっとこっちは頭が痛いというのにアクィナス伯爵の顔が怖かっただのなんだのそんなことばかり言っていて、しまいには夜を誘われた気がする。
  あれは何だったのか。

  ズキンズキンズキン……

  (無邪気で、明るく元気で可愛い女性だと思っていたのに、な)

  何故か分からないが、最近はそんなコーディリアの発言や行動が幼稚に見える時がある。
  どうして一歩下がって私の後ろで大人しくすることが出来ないのだろうか……
  まぁ、それはこれから王妃教育を受ければ……きっと。

「はぁ……結局、私が参加するのは最後のパーティーのみか……」

  だが、頭痛も酷いし……もうこれはしょうがないのだと思うことにする。

「まぁ、私が会場に現れれば絶対に盛り上がるはずだしな」

   ダンスのパートナーはコーディリアでいいか。
  きっと喜んで踊ってくれるだろう。
  そうして、私の隣に相応しいのはコーディリアだと世間に広めつつ……引き続き、頭痛をどうにかする為だけに、オフィーリアを探すしかない……か。
 

  ───そんなウィル王子はまだ知らない。 
  ずっと探しているオフィーリアがこの国に戻ってきている事も。そして唯一、参加が許されたそのパーティで何が起きるのかも────……

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