【完結】飽きたからと捨てられていたはずの姉の元恋人を押し付けられたら、なぜか溺愛されています!

Rohdea

文字の大きさ
15 / 28

レラニアの策略 (毒薔薇視点)

しおりを挟む


  どうやら、リラジエとジーク様はあろう事か交際を始めたらしい。

  有り得ない。
  リラジエなんかに彼の相手が出来るはずがないのに。

  きっとジーク様は義理で交際する事にしたんだわ。
  そうでなきゃ、あの子リラジエと交際なんておかしいもの。

 

「ふふふ、馬鹿な子。私に引き裂かれるとも知らずにのん気な事ね。せいぜい今のうちに楽しんでおくといいわ……」


  私はから届いた返信の手紙を読みながらそう口にした。


  あぁ、楽しみだわ。
  リラジエの絶望した顔が、また見られるのかと思うと笑いが止まらない。


「ふふふ……」



  数日前、リラジエにジーク様から社交界デビューのエスコートの申し出が来ているらしいと知った私は、止めるために急いでお父様の元へと駆け込んだ。
  けれど、それは一歩遅く、もう止める事は出来そうになかった。




  ……だけど、そこで知ったジーク様から、リラジエへの婚約の打診。
  これはまだ間に合いそうだった。


  


  だから、私は計画を立てたのよ。

  このからの返信の手紙もその計画によるもの。
  まぁ、2人が交際を開始した事は誤算だったけど。私がする事に変わりは無いわ。



「ふふふふふ……」



 


────……


  


「お父様!  リラジエにエスコートの話が来ているのは本当ですの!?」
「あぁ、本当だ。リラジエには今さっき話したところだ」
「え!」

  お父様がいつものつまらない平凡な顔であっさりと言った。
  なんて事なの、間に合わなかった……私は愕然としたわ。

「しかし、聞いたぞレラニア!  ジークフリート殿が何故、リラジエのエスコートを申し出たのか不思議だったのだが、元々はお前の知り合いだったからだと言うじゃないか!」
「え?  それ、リラジエが言ったの?  お父様」
「そうだ。 つまり、ジークフリート殿に頼んでくれたのだろう?  違うのか?」

  やだわ。お父様ったら勘違いしているわ。
  ……でも、そうね。そう思わせておくのもいいかもしれないわね。
  私はニッコリ笑ってお父様に言った。

「そうなの!  だって、このままではリラジエの相手が見つからないと思ったんですもの。なら私の頼みを聞いてくれると思って頼んでみたのよ」

  私はわざと彼と親密であるかのように言った。

「おぉ、そうか。成程な!  やはりそういう事だったのか!  さすがレラニアだな。顔が広い。ルミアに似て社交界の薔薇と呼ばれるだけある!  さすが自慢の娘だ!」
「え?」

  お父様はほくほく顔でそんな事を口にした。

  嫌だわ、お父様……ルミア……お母様と違って私の通り名は“毒薔薇”よ?
  そう言いたかったけど、お父様は嬉しそうに一人でうんうんと頷いている。

  平凡伯爵と呼ばれるお父様は社交界にあまり顔を出していない。
  お母様というパートナーを亡くしてからは特に。

  だから、どこかで耳にした私の通り名を勝手にお母様の時の薔薇と同じだと想像しているのかもしれないわね。
  まさかそんな、勘違いしているなんて思わなかったけど。

  どおりで私の素行に関して何も言わないはずだわ……
  色々と納得した瞬間だった。

「……ん?  でも、そうなるとコレはどういう事なんだ?」

  と、お父様が不思議そうな顔をする。
  “コレ”とは何かしら?

「何ですの?  それ」
「あぁ、ジークフリート殿から、リラジエのエスコートの申し出と一緒に婚約の打診も届いているんだよ」
「……!?!?」

  耳を疑ったわ。リラジエに婚約の打診ですって!?  ジーク様は何を考えているの!?

「そ、それ……リラジエには言ったの?」
「いや、混乱させるかと思ってまだ告げていない。ただでさえ、エスコートの件で目を丸くしてたからな。社交界デビュー後でないと正式に婚約は出来ないから、時期を見てー……」
「!!」

  ──間に合った!!

  今なら止められる!  

  ついてるわ、私。
  本当に今、知れて良かったわ。
  我が国では正式な婚約を結べるのは、成人を迎えた後、社交界デビューを済ませてからと決まってるんだもの。
  それまでは、“婚約者”と呼んでいても仮約束みたいなもの。


  私はニッコリと、微笑みを浮かべて言った。
  お父様が大好きだったお母様と同じ微笑み。この顔をすればお父様はだいたい私の言う事を聞いてくれるのよ。

「……お父様、それはきっと間違いだと思うわ」
「何だと!?」
「ジークは、本当は私に求婚するつもりだったのよ。エスコートの件とごちゃ混ぜになってしまったのでは無いかしら?  だから、それは私宛てだと思うの」

  さすがに苦しい話だからか、お父様も「そうか?  そんな事あるか?」と、眉間に皺を寄せて考え込んでいる。
  もう!  早くそのお父様の単純なあっさり顔みたいにすんなり信じなさいよっ!


「だって、接点も無かったリラジエを婚約者に望むなんておかしな話でしょう?」
「それはそうだが……」
「だって、私はジークにこう頼んだのよ!  『あなたののエスコートをお願い出来ないかしら?』って」
「そうなのか!?」

  その言葉にお父様が興奮した。

「そうか、レラニア宛てなら納得出来るとは思ってはいたんだが、やっぱりそういう事なのか」
「そうなのよ!  だから、ジークと婚約するのは私よ!」

  (嫌ね、お父様って馬鹿なのかしら?  単純すぎ。これでよく生きて来れたわね)

  完全に嘘よ。嘘に決まってるでしょう?
  嘘だけどもう止められないわ。
  リラジエとジーク様の婚約なんて絶対に認めない。どんな事をしても阻止してやる!!

  それに、結婚なんて家同士のもの。
  姉と妹が変わったところで問題にはならないでしょ。
  むしろ、ジーク様は相手が“私”に変わった事を喜ぶべきね!


「だが、そうなるとこの家は……レラニアが婿を取って継がせる予定だったのに」
「まぁ、お父様。それならリラジエに継がせればいいでしょう?」

  冗談じゃないわよ。
  家のためにろくでもない男を婿として取らされるくらいなら、私は侯爵夫人になるわ!
  だって、 あんな地味妹リラジエより、どう考えても私の方が相応しいもの。

「だがリラジエの相手が……」
「うふふふふ、それがね?  お父様。それなら、とーっても良いお相手がいるのよ」
「何だと?」
「嫡男ではないから、我が家に婿に入れる身分だし……何より、リラジエがなんだもの。きっとジークに嫁ぐよりも泣いて喜ぶわ」
「ん?  それはまさか……」
「そのまさかよ!  まずは私からに話をしておくわね!」

  私はまた、ニッコリと笑ってそう言った。



─────……





  そして、私はに手紙を書いた、というわけ。


  ねぇ、リラジエ。
  仕方がないから、ならジーク様との時間を楽しませてあげる。


  だけど、時期が来たら返してね?
  だって、ジーク様はもともと私がモノにするつもりだったのだから。

 
  あなたには、本当に私が飽きたから捨てた最初の彼──グレイルをあげるから、ね。

しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。 でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います

***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。 しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。 彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。 ※タイトル変更しました  小説家になろうでも掲載してます

姉に婚約破棄されるのは時間の問題のように言われ、私は大好きな婚約者と幼なじみの応援をしようとしたのですが、覚悟しきれませんでした

珠宮さくら
恋愛
リュシエンヌ・サヴィニーは、伯爵家に生まれ、幼い頃から愛らしい少女だった。男の子の初恋を軒並み奪うような罪作りな一面もあったが、本人にその自覚は全くなかった。 それを目撃してばかりいたのは、リュシエンヌの幼なじみだったが、彼女とは親友だとリュシエンヌは思っていた。 そんな彼女を疎ましく思って嫌っていたのが、リュシエンヌの姉だったが、妹は姉を嫌うことはなかったのだが……。

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

処理中です...